「じゃがいもと猫(2)」 はらまさかず
庭木にツメで『大』と書いた猫は、その下に『福』と書きました。じゃがいもは、思わずわらってしまいました。なぜなら、その猫が大福もちそっくりだったからです。
その猫は、大福でした。
大福はじゃがいもに、(こっちへ来い)と手招きしました。
じゃがいもは、ぶるぶるぶるっと首をふります。
大福は、しつこく誘います。
じゃがいもは迷いました。(あの太った猫はこわそうだ)と思いました。それに、じゃがいもは一人で外へ出たことがなく、不安でした。でも、字を書くことのできる猫と話をしてみたい。
じゃがいもは行ってみることにしました。じゃがいもは、おじいさんをおこさないように、そっと家を出ました。
「やあ、おれの名前は」
大福がそう言うと、
「大福でしょ」
じゃがいもが先に言いました。
「うわさ通り、おまえは字が読めるんだにゃ?」
「うん」
「じつは、お前にたのみがあるんだ」
大福は、じゃがいもの肩に手をおきました。