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「ギンガのハロウィン」 はらまさかず

今夜の喫茶ギンガは、いつもとちょっと違います。
お店のなかが、ハッピーハロウィン。
「どうしたの、マスター」
ぼくが、きくと
「ことしもなんだか、さみしいからさ」
と、かぼちゃの仮装をしたマスターがいった。
「都会のほうでは、さわいでるみたいだよ」
「ふーん。はい、かぼちゃプリン。サービス」

ぼくは、プリンを食べた。
うん、おいしい。
それにしてもマスター、仮装なんてしなくても
かぼちゃにそっくりなのに。
「あ、そうだ。さっき、外に、おばけの仮装をした猫がいたよ」
ぼくは、プリンを食べながらいった。
「おばけ? ああ」
と、マスター。
「マスターも見た?」
「ううん。その猫、太った猫といっしょだったでしょ」
「そうそう。何で知ってるの」
ぼくは、ふしぎに思って、きいた。
「ふたりはね、年に一度、ハロウィンの日にだけあえるのさ」
「そうなの」
「そうさ」
「ロマンチック。そういえば、なんだかしあわせそうだったなあ」
ぼくはそういって、マスターを見た。
マスターもさっきの猫みたいにしあわせそうな顔をして
窓の外をながめていた。

(喫茶ギンガ 第16話)


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