「もうすぐクリスマス」 はらまさかず
最近、ずいぶん、寒くなってきました。パグ犬のじゃがいもは寒がりなので、あまり外に出なくなりました。いつも、おじいさんといっしょにコタツに入ってすごしています。野良猫の大福は、まあ、いつもの通り。気がむいたらどこかの家に行き、食べものをもらったり、車の下でねむったりします。くものアンダーソンは、かりんさんと部屋でテレビを見ています。みんな、それなりに楽しく暮らしています。
でも、うさぎのメイはべつ。メイはひとり暮らしを始めて最初の冬です。
メイの家は、マンションのかべを背に、段ボールで囲んだだけですから、寒いのなんの。しかし、ペットとしてではなく、ひとりで生きていくということはそういうことです。メイは、体をぐっとちぢめ、寒さにたえていました。すると、
「おーい、元気にやってるか」
小屋のドアをあけて入ってきたのは、大福です。
「寒いけど、ちぢこまってばかりじゃ、つまらないや。いこうぜ」
「どこに?」
メイがききました。
「まあ、ついてきなって」
大福とメイは手をつなぎ、夜のまちを歩いていきました。
「ほら」
そういって、大福が見せてくれたのは、
「わあー」
くらやみに浮かび上がる、クリスマスのイルミネーションでした。
「ここんち、すごいんだ。ばあちゃんが、毎年、どんどんすごくしてくれるんだ」
「きれいだねえ」
メイが、うっとりとして、いいました。
二人はしばらく、手をつないだまま、イルミネーションにみとれていました。
ずいぶんと冷えこんできました。それもそのはず、雪がちらちらとふってきました。
「冬はさ、いつも、いっしょにねようか。おまえんちで」
大福がいいました。
「うん。いっしょにくるまってねると、ぜったい、あったかいね」
メイは、おおよろこびです。
ふたりは、手をつないで、夜の道を帰っていきました。
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