「サンキャッチャー」 はらまさかず
久しぶりの喫茶ギンガ。
「どうしたの? 元気だった」
と、マスター。
「うん。なんか、いろいろ忙しくて」
と、ぼく。
マスターのコーヒーを飲みながら、
ぼーっとして、ソファーに腰かけていると
目の前でガラスの玉がキラキラときらめいた。
「なにそれ?」
ぼくがきくと、
「サンキャッチャー。最近はまってるんだ」
「サンキャッチャー?」
「そう。太陽の光にあてると、まわりにいっぱい虹を映し出すの」
マスターが説明した。
「目には見えなくても、太陽がふりそそぐところには、必ず虹の種がいっぱいあるんだ。サンキャッチャーが、それを目に見せてくれるわけ。
ほら、プレゼント」
マスターは、ガラスの玉を、ぼくに差し出し、
「昼間、太陽にあててみてよ」
といった。
ぼくが、ガラスの玉をながめていると、
不意にマスターが
「夜、お話を書いてるんでしょ?」
といった。
「知ってるの?」
「うん。こないだ、新聞よんだ」
マスターはにっこりわらった。
「幸せの種は充満してるけど目には見えない。それをお話にして、書いて、目に見えるようにしているんだね。サンキャッチャーといっしょ」
と、マスター。
「そんないいもんじゃないよ」
ぼくは、少し照れくさかった。
「応援してる」
「うん、ありがとう」
(喫茶ギンガ 第20話)