「古本さんの本」 はらまさかず

 古本(ふるもと)さんは、歯医者さんです。
 読書家で、めずらしい本をたくさん持っています。
 そんな古本さんが、最近、なんだかご機嫌です。
 「いい本が入ったんですか」
 ってきいたら、「わかるかい」だって。

 「それがね、すごい本なんだ。ぼくがねてる間に、文字が少しずつ動くんだ。だから、読むたびに違うのさ。もう、ぼくは、この一冊があれば十分だ」
 古本さんが言うには、文字が動く本は、どこの本屋さんにも売っているらしい。それを、花を育てるように大切に読んでいくと、文字が動くようになるのだそうだ。

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