選んだカード、やるかやらぬか自分次第
ドバイに、Japanese boutique bakery ”yakitate ”と言う
近年、オーブンしたお店が
あります。
そこは、
順調に売り上げを伸ばし
新しくあ出来た大きなモール "dubai ibn battuta mall”
へ2店舗目をオーブンするための準備をしています。
Yakitateはパン屋+日本食で、
8月から2号店のオープンです。新店舗は
センターキッチンにする予定で、そのセンターキッチンにて製麺開始です。
お店では
パン+日本食(寿司/ラーメン/焼肉コーナーも有)+シーシャ(水タバコ)と、
日本とドバイをミックスした
カジュアルなレストランになるみたいです。
現在は内装途中です。こちらのパン屋さんは名前の通り、日本のパン屋さんでは良くあるキャラクターパン(アンパンマン、キティちゃんなど)や、焼きそばパンなど、欧米ではあまり類を見ないソフトブレッド、クリームパンのようなフワフワした日本のパン屋さんでは定番の商品、食感をウリに展開されており、現地の方々にはウケも良く、テイクアウトできますし、イートインカフェコーナーも有り、メニューにはカリフォルニアロールような寿司から、焼き鳥プレート、牛丼などの日本食が並んでます。そこで2店舗目のオープンに合わせて、以前からメニューにあるラーメンのレシピを再編成されたいそうなのです。この案件には制約があり、ベーカリーのキッチンで独自の製麺とスープ作りを1週間で仕上げる事、日程は8月を考えてるようです。
「1週間で製麺からスープって
かなりのハードスケジュールだなぁ。練り捏ね伸ばし迄はベーカリーキッチンの器材で出来たとしても、麺切りは、あの家庭用のコンパクトなタイプか。
その組み合わせ
も海外っぽいと言えば海外っぽいけど、面白いですね、で、小麦粉は業者指定のモノを使うのね、なんとなくイメージが見えてきましたよ、小麦粉やカンスイなどの詳細を確認したいので、直接メーカーに連絡してみますね。
これから先は、現地のエージェントとやり取りして、イメージに寄せて行ったが良さげやね、て事で、その旨をお伝え願いますでしょうか、よろしくどうぞ!まさき、ありがとうね!」
8月まで2カ月ちょい、
もうすぐじゃないか、
まずは現地のエージェントと
材料、器材、報酬の確認をせねばだ。
あ、そうだ!
渡航中、ワンコロ達の
お世話を誰に頼むか。
ペットホテルなんぞに入れたら
おそらく、稼ぎがほとんど、
そこに流れていくだろうし、
ゲージの中はあんまりだ。
実家の妹に頼むか?
また、面倒事だと眉間にシワを寄せられるだろうなぁ、
まぁ、選択肢をピックアップしながら進めなくちゃだよ。
おっと、電話だ、
「はい、もしもし、お世話になりまーす、毎度、いかがされました?はいはい、もちろんです、で、場所は?門司港駅の横?199沿いの、はいはい、あそこにある物件でギャラリーをされるので、内装ですね、もちろんです!一度、現場にてイメージと日程諸々を調整しましょう!でわ、3時に待ち合わせで!はい、ありがとうございます」
いやっほい!
内装仕事っと
ありがとうございます!
嬉しいなぁ
ナイスです。
「ども、お世話になりまーす!
現場を見に来ました、
ここですね、前迄は、美容関係?化粧品屋さんやられてたんですね、で、備品道具諸々片付けて、スケルトンにしてから、壁天井は漆喰で、床は板貼りですね、承知しました、また、やりながら、細かいとこは合わせていきましょう、オープンは秋冬辺りでよかったですか?半年近く、期間有るんで、スケジュール見ながら、ボチボチ進めていきますので、よろしくお願いします!」
このオファーくださったのは、
門司港駅横で、レストラン「プリンセスピピ」をされており、
名物の焼きカレーは、タイ国のレッドカレーをベースに作られてて、このお店の内装(地下の洞窟フロア)も、以前、お声掛けくださり、オーナーのイメージするトルコのカッパドギアに寄せて仕上げさせてもらった経緯もありと言うのが今回の流れ。そもそも、マスターのたろちゃんは30か国近く旅されてる旅好きで、DIY好きなので話しも合い、やりやすい。オーナーのくりこさんは、美大出で、
布を使って、縫い合わせて
コラージュのような作品を作る
布絵アーティスト。
もちろん
リネンやシルクなど使って
独自のデザインの
お洋服作りもされてる、
工房、ギャラリー、
アトリエ的な
空間を作るって訳だ。
今から取り掛かる
道具は、
バール、脚立、丸のこ、
インパクトでヨシ。
8月に向こう行く迄には
中を片付けて、
スケルトンまでと、
よし、
明日から始めよう。
「佐藤さん(現地エージェント)、初めまして!
お世話になります、
yakitate のラーメン作りを
する上で、現地に行く迄の期間、yakitate 様の意向諸々をお伺いして、こちらである程度
組み立てていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。製麺に関して、粉、カンスイは日本の商社より仕入れられるのですね、メーカーは?、はい、そちらの水は軟水、硬水?、ミネラルウォーターですね、あ、はい、yakitate の
キッチンシェフの方が日本人で
ベーカリーのチーフなんですね、でわ、そちらの方、お名前は?クニさんですね、でわクニさんと材料、器材などの詳細を詰めていきますね、よろしくお願いします」
「クニ(yakitate bakery チーフシェフ)初めまして、さとさんから、ある程度の流れはお聞きされたとは思います、そちらで調達して欲しい野菜、鶏ガラなどを、こちらでリストアップしますので、それらの有無、または、代用出来そうなモノが有れば教えてください、また、日本で安価でも所変われば、同じモノでも原価が高くなる食材も
ありそうですし、また、yakitate オーナーの目指してる味の座標的なのも知りたいので、どうぞよろしくお願いします!」
使用するメーカーは
日清製粉ね、
小麦粉の種と性質、
カリウム、ナトリウムの割合、
カンスイはオリエンタル酵母。
水は硬水に近い軟水(ボトル入り)、お国柄、豚由来、酒みりん類は有りませんし使えませんよと。
粉を混ぜる際の
加水率を下げる→スープ絡む。
捏ねる、伸ばす、圧延(何回にするか)、厚さ調整、ロール、寝かす、麺切り刃は2ミリと4ミリ、ストレートと、揉んでチヂレだな。
鶏ガラ、寸胴、水、
香味野菜、炊く、濾す。
塩、醤油のタレ2種用意しとけば、担々麺の様な辛麺にもイケる。
鶏チャーシューは
低温調理でしっとりと、
盛り付けする前に炙るか。
味玉子もいる、
色合いの薬味ネギ類は現地の市場で見て決めよう。
大まかなイメージをスケッチしてと。
このラーメン作りの案件を
聞いた時、上海にいる友人が頭に浮かび、この案件を話してみた。と言うのも
この友人が10数年程前?
博多で長年修行し習得した
ラーメン作りを上海で試したい、お店をやる!と決まった時、「オープン前から手伝ってくれないか?」と声をかけてくれて、私は「もちろん!」と即答した。このラーメン屋さんは
「豚骨拉麵 日本風味」の看板を掲げ、兄弟でしっかりと切り盛りしており、
製麺も自家製、職人気質で、なんせ価格設定が外国でよくある日本ブランド価格(ちょいとお高い)ではなくて、現地の方々に食べて貰いたいからとの思いで、お店に入りやすい大衆価格にした事もあり、今じゃ姉妹店の出来る人気店になった。
もしやと思い
ドバイの話しをしたら
とても興味深いけど
丁度、日本料理店を
オープンする為の
真っ只中だと言う。
どっちつかずなぼんやりが確信となった。
自分の人生において
自分で引いたカードであると言う事。
また、選んで下さった
おてんとさまに感謝した。
なんか、楽しいなぁ、
楽しいと毎日が
あっと言う間に過ぎて、
こっちの内装現場も
スケルトンなって
壁天井のボード貼りも終えての漆喰塗りだもの。
もう、7月に入って梅雨明けを待つだけだけど、この時期はインドア作業にもってこいだ。
晴れ間には、町内の草刈りと
頼まれてた納屋の片付けをやろう。順調順調。
「クニ、
お世話になります、
そちらの新店舗、
進行状況は
どんな具合ですか?
え?
工事が予定通りに進んで無い?
あらら、外国ではよくあるパターンですね、て事は、8月はまだまだって事?わかりました、仕方ないですね、私のスケジュール?
はい、寄せていけるように調整して行きます、はい、行きますとも!仕事でドバイに行くなんて機会を逃すもんですか 笑 現場の目処が立って来たら連絡くださいませ」
まさに外国事情あるあるだよ。
日本は、その辺
キッチリし過ぎてるくらいだもんね、期日迄におさめないと
信用問題がなんとかかんとか。
ま、私が焦っても事は進む訳では無いから、流れに任せて、やるべきことやる、それだけ。
今週は
子どもを博多に迎えに
行く週だわ。
博多山笠終えると同時に
福岡の梅雨が明けるのは
いつも通り。
学校は夏休みになり、
子どもが帰って来る、
そしたら、一緒に壁の漆喰塗りをやるのも良いな、よし、そうしよう。
東の空がピンク色に朝焼け。
明るくなると同時に
蝉が大合唱を始める。
私は太陽よりも早く起きて
掃除だの朝の用意だのと
ゴソゴソ。
真夏の外作業、
草刈りは特に
午前中には終わらせておきたい。
年々強くなってるんじゃないかと思える日差しは、熱射病で運ばれて行く人たちが増加してるのを見れば分かるし、まさに自身が肌を焦がし草刈りするから
よくわかる。だから、蝉の大合唱から
7時過ぎには草刈機のエンジンをかけたい私にとっては
大歓迎の序章、イントロになる。
午後からは
汗を流した後のクールダウン。関門橋の下にある和布刈公園の横、めかり塩水プールに子どもを連れて行く。その名の通り、関門海峡の海水を汲み上げ濾過したプールで、私が子供の頃からずっとある。
平日は貸切状態のように
ゆったりできるから
オススメ。
または、小倉南区にある
菅生の滝へ行きマイナスイオンを浴び、木漏れ日の中、ヒリヒりする肌を川のヒンヤリにしばし浸かる。
お盆を過ぎると
海はクラゲが出るから
山での遊びが主流になる。
キャンプも好きだけど、
我が家自体が
ある種、キャンプの様な
状態なので、ここで事足りてるのも確か。欲言えばキリが無い、そりゃ温泉♨️あれば最高。あれがあれば良いなぁ、これがあれは良いなぁ、、人は、ひとつの欲を満たすとまた、次の欲が出る、意識の向上とは
また別のね。
これが、無駄使いのはしりとなりかねない。
結局のところ足りてるのです。
先人の言葉で言えば
「足るを知れ」
消費社会がいかがなものか?と
聞こえて来そう。
サラリーマンを辞めて1年ちょい、大変だった時期もあったけど、今、こうやって子供と夏休みを過ごし、子供からすると、お父ちゃんの仕事を知り、また一緒にやってみたりと、これは私が人生に置いて大切だなと感じた事を少しずつだけどカタチとして現れてきてる、目に見えてね。ホント感謝しかない。
誰に感謝って?
みんな、周りの人たち、
住んでる環境、地球、
先祖様、先に行った人や
すべてに、あなたに、
生きてる今に感謝。
フリーランスになって安定した収入は無いけど、自分で時間の使い方をメイクできる自由さ、頭、体を使う。これ、すごく生きてる充実感を感じる。
時間の使い方大事、
我々や生き物にとって
時間とは命。
時間の使い方は
命の使い方なのかなとか。
そのくせ
寝るのが大好きだから
人生の1/3は寝てることになるね。
先のことなどわからない、
誰しも同じ。
夢の叶え方、その方法が
わかった。
重い腰を上げ
それに向かって動きだす。
それだけ。そうすると、ヨットの帆が風を掴んだように進みだすんだ。
どんな日も、どんな時も
それを兎に角続けること。
自分のペースで、休憩しながら。それだけ。
「今回の待遇はホテル滞在費と往復航空券、報酬は
AED5,000 でOKだそうです」
私のボスは私の心。
お盆が過ぎ、
アトリエの内装漆喰塗りも
出来上がり、夏休みが終わる子供を母方に送り届ける。
ドバイのクニさんから
「お世話になります。
今日はまたスケジュールの件で連絡しました。
工事が予定通りに進んでなく少し遅れる事になりそうです。
当初、新店舗オープンからラーメンを提供したいと考えてたのですが、他にもメニューもあるので、段階的にメニューを増やして行く事に考え直しました。
そこで中野さんには9月に来て頂きたいのですが、スケジュールは中野さんに合わせます。
二転三転して本当に申し訳ないですが、よろしくお願い致します。
「クニさん
お世話になります
では
9月の予定を
組み直して
こちらの
仕事の段取り、
スケジュールが組めてきたので
ご連絡致しました。
私の予定としては
9月3〜6日の中で
そちらに
渡航できたらと
思っておりますが、
そちらの
進行状況など
いかがでしょうか?
「お世話になります。
中野さん
すいません、
返信遅くなりました。
オーナーに相談してからまた返事いたします。
今の状況はやっと工事が終了して検査などもパスしてやっと厨房が使える状況です。
オーナーに相談したところ、次の日曜日からソフトオープンで開店するので、オープン後は忙しいのでもう一ヶ月遅らせて欲しいとの事でした。
すいませんが10月上旬でスケジュールを組んで頂けますか?
度々申し訳ないですが、よろしくお願いします。
「お世話になります
クニさん
では、
10月10〜12日
出航の
1週間で
どうでしょう?
中野さん
了解しました。
10~12日の間でお願いします。
エアチケットを予約次第連絡致します。
「おはようございます
クニさん
承知しました!
では、
このスケジュールで
準備諸々
進めてまいります
お手数お掛けしますが
よろしくおねがい致します
「お世話になります。
中野さん
すいません、
お待たせしました。
航空券を予約しましたので
お送りします。
ご確認下さい。
「クニさん
お世話になります!
承知しました
確認いたします!
今確認しましたところ、
帰りが
バンコクにて
トランジット
18時間くらいあります?
「中野さん
はい、そうなんです。
行きは1時間ぐらいなんですが、帰りの便が少し長い待ちになります。
「クニさん
わかりました、
ところで、
そちらに行く際
スマホをそちらでも使用できるようにするには
こちらで何かしらの設定?を行なっておくのでしょうか?
このような、
渡航の際に
用意しておいたが
良いよというような
注意確認が
ございましたら、
すみませんが、
ご教示頂けると
助かります。
随分と
海外行ってないもので
世界が変わってると思います😆
「中野さん
日本の携帯もローミングサービスがありますが、当店にwifiがあるので、それを利用して頂ければ良いので設定は必要ないです。
こちらに来てからで大丈夫です。
後は以前にも連絡しましたが、お酒は買えないので必要であれば、日本からか免税店かドバイの空港(イミグレーションの後で購入可能)でご用意下さい。
クニさん
了解致しました
お疲れ様です。
中野さん
ドバイからアマゾンで低温調理器を注文しました。
ただ到着するのが中野さんが帰られる前ぐらいになりそうです。
12日の金曜日は当店のドライバーが中野さんを迎えに行きます。
中野さんの顔写真を送っていただけますか?
「クニさん
お世話になります
はい!
でわ早速。
それと、
11日
木曜日です!
中野さん
あっそうでした。
木曜日の夜でしたね。
間違えました。
さてと
ワンコロたちは
散歩代行の
井上さんに頼んでみたら
受けてくれたので
ウチに散歩に来てもらいの、
飯と水をやって貰う。
よしよし、ワンコロ達にストレスの無いフォーメーションを組めてきたぞ。
おみやげは、
みりん干しなど干物にお菓子、サトさんにはやっぱ、
酒だなぁ。
戸締りヨシと。
歩いて駅への電車でゴー。
乗り換えての、
小倉博多は新幹線
地下鉄空港線終点
タイエアラインへ
チェックイン。
ゲートへ向かう。
CAがまた気分を盛り上げてくれる。
シートはエコノミー。
席に着いたら
フワッと外国の匂い。
ビールを頂く。
離陸時の福岡は曇り雨。
見慣れた陸地が遠く小さくなり行く空の旅。
厚い雲を抜ける
雲の上はふわふわ絨毯。
西遊記に出てくる
大きなお釈迦様が涅槃してそう。
雲の絨毯の上は
目の冴えるようなスカイブルー一色。
四角いフレームがあるとすれば、
横真ん中1/5 雲の絨毯、
その上は
スカイブルー、雲の下は
オーシャンブルーのシンメトリー。
鯨や魚は空を飛び
鳥や蝶は海の中。
おもしろいね。
ビールをおかわりし
ほろ酔い心地良さに
目を閉じた。
機内アナウンスで
間も無くバンコクへの
到着を知らせる。
柔らかなハイトーンボイスが流れる。
陸地、川、緑、
区画された住宅街。
「懐かしいなぁ」
着陸、ドアが開く、
タイの空港のこの匂いが
ボヤけてた、昔の
思い出をくっきりとなぞる。
「帰りを楽しみに」
さて、トランジット、
チケットに記された
乗り換えの
搭乗ゲートを探す。
同じく、タイエアライン。
モニターの表記に
アラビア語が多くなってきた。
「え〜っと、
to Dubaiは〜
あった!」
搭乗口に
向かっていく。
周りを見ると、
アラブの民族衣装の人の中に、どうやら
アジア系は私だけみたいだ。
機内はゆったりとした
ソーシャルディスタンス。
真ん中の列3席で
横になってる人もちらほら。
そんな中、私と目が合い
わざわざ私の横に来て
話しかけてくる
若いアラブの青年。
バンコクで買ってきたと言う
エナジードリンクを
隠し飲むような
素振りをするので
「効くのか?」と尋ねると
「もちろん」
飲んだ事のない私は
受け売りにしかすぎないけど
バンコクを始め、異国で販売されてるその手のエナジードリンクは成分濃度が高いので効くと言う。
機内食は
チキンを頼んだ。
ビールも。
料理のちょいとした
スパイス感に
私の気分は
すでに現地に到着してるかのようだった。
英語しか聞き取れないアナウンス、なにを言ってるのかわからないそこに、まさに知らない国がある。
モニターに映る
現在の飛行位置が
アラビア半島を映し
Dubaiに近づいてきた。
夜の9時を回った頃か
暗い窓の下に
雲の隙間から
ホタルのような灯りが
チラつきだした。
チラチラが増えてきた。
ハイウェイでは点が線を描き流れてる。
着陸態勢から
車輪が
大地にタッチダウン。
減速、停車、
ようやく着陸。
ハッチが開く。
生暖かい空気に
「ウエルカム!」と
にこやかなスタッフ。
荷物コンベアで
最後に出てきた
私の荷物。カートに積んで
すんなりと入国スタンプ。
何でも屋さんのお料理仕事。15時間?もっと?
オファーを頂きましたクライアント様の地に到着。
到着出口にて、
写真で見てた
現地の、
お迎えに来られた
スタッフに
気がつくと
お互いニコッと。
握手して
サラーム。
はて、
挨拶はサラームで
よかったのかな?
配送用のカーゴバン、
助手席に乗り
「nice to meet you .my name is yoshio
ハイウェイは
ドバイの高層ビル街の
真ん中を抜けていく、
ネオンサイン、
大きなエキシビジョンに
映るのは
飛行機の機内にある
パンフレット、雑誌に載ってるようなビッグブランドメーカー。
あのタワーもある、
ブルジュカリファ。
右手には海岸線と
並走する地下鉄。
ハイウェイを下りて、
20階建てくらいの建物の
真ん中に大きな鍵穴。
アーチ状のホールが
シンボルのような
ゲートになってる。
ピンク色の建物。
そこの側に
大きな新しいモールがある。
ここの入り口に構える、
今回の仕事先
ヤキタテ
ジャパニーズベーカリ。
到着。
ガラスドアの前には
相撲取りのような
エジプティアン2人が
ドアを開けてくれた。
ドアマン兼ガードのようだ。
お店は
ミスタードーナツのような
ポップさもある。
中に入り左手のテーブルに
オーナーがらしき人が座っており
笑顔で迎えてくれた。
ニコラスケイジに似てる。
「マイネームイズ
アーメッド」
握手をして自己紹介、
ようやく対面する、
ベーカリー
チーフシェフのクニ。
エージェントの
さとさんも来られて、
ご挨拶。
一連の流れを話すと
メニューを渡されて
「好きなものを食べてくれ」と
。
いろいろと有るが
「あなたのおすすめを頼む」
お料理が来る間、
お店のスタッフが
運んで来てくれたのは
大きな水パイプ。
まずは、
オーナーがふかす。
次に私へと勧める。
私は話した「以前、これを見たことある」
「どこで?」
「アムステルダムで見た、ボングだろ?」と話すと、
アーメッドは笑いながら、
「これはシーシャと言って、この辺、中東文化の嗜好品の水タバコでね、
いろいろなフレーバーが有るから楽しめるよ」
「そうなんだね、じゃあ
こっちには葉っぱは無いの?」
「こっちだとアウト、
死刑もんだよ」とニヤリ。
ボコボコボコボコ、
プハーっと煙を吐く
「ナイスな吸いっぷりだね」
「そうかい?ありがとう、アップルフレーバーいいねえ」
さて
これで外国お国事情を
ひとつ覚えたぞ。
もちろん
お酒もノー。
そうするうちに
テーブルの上に
メニューが運ばれてくる。
揚げ物が多いかな。
「着いたばかりなので
早めに切り上げて
チェックインされて
明日からに備えてください」
ホテルは
モールのそばにある
連結された
新しい建物
「premium in」
ルームキーをわたされ
エレベーター。
部屋は10階の1019。
紫色のライティングで
ムーディーな部屋。
エアコンきんきん。
ガラス張りのバスルーム。
大きな窓から眼下の夜景。見えるのはモールと駐車場くらい、遠くにライティングされたビル群。TVをつけるとアラビック一色。
来たぞ来たぞ、とうとう来たぞと胸踊る。
ひとまず
シャワー浴びて横になる。
目が覚めた夜明け前。
窓の外では
太陽が徐々に
夜のマスクに隠れてた
街の姿を照らし出す。
建物の上が半円形の建物が
目につき、住宅街もある。
左手には海、そこに並走する、昨日見た地下鉄とハイウェイ。ハイウェイの先には、ビル群がある。ビル群の見える風景は、世界中の都市部に見られるあの風景と同じだけど、ここは景色に、うっすらとフィルターがかかってる。砂漠地帯ならでは、砂の細かな粒子が織りなすサンドフィルター。
TVをつけると、
大きなモスク、サッカー場4面合わせたくらいの敷地で、画面に映るアングルが、よく大きなスタジアムでの、サッカー中継などて真上から全体を写してるあのカメラ位置。何百?いやもっとかも、民族衣装のみなみなさんが、これまたウヨウヨと蟻の大群にも見えたりして、
広場の真ん中を中心に
天気予報でよく見る、
台風の様な渦の如く
ゆっくりと回っている。
音声は
イスラム教ならではのお祈り、コーランが鳴り響く。
また、別のチャンネルでは
ラクダレースの中継をやってたりと、目にするもの全てにおいて、異国文化の新鮮さと興味を覚えずにはいられない、私はまるで産まれたてのヒヨコのようだ。
シャワーを浴び着替えて、
朝食を食べにレストランへ。入り口には、ローリンヒルに似たアフリカ系の笑顔の可愛い嬢さんが「グッモーニン」ルームキーの提示とサインをすませると屋外プールの見えるテラス席へ案内された。
レストランは観光客、ビジネスマンとなかなかの賑わい具合。
セルフ形式のビュッフェスタイル。
品数が多く
サラダ、フルーツ、ヨーグルト、シリアル、チーズ、各種ブレッド、ハム、ベーコン、煮物、スープ、焼き野菜、これでもかと言うほどカウンターに所狭しと並ぶ。玉子焼きはオープンキッチンにオムレツ専用シェフが居るので好みの具材と焼き方を伝えると良い。
ついつい欲張り、盛り合わせの皿がディナーのようにテーブルの上に並ぶ。
仕事柄、個人的にも
どんな味、食感なのか
知らずにはいられない。
そしてサーブしたものは
残さずキチンと頂きます。
「美味しかったなぁ
朝から満たされた、
明日も楽しみだ、
さて、用意して出勤するか」
そう、
ドバイに来る
4日程前に
エージェントの
サトさんから
「耳に入れておいた方が
良いかと思う話しが有り、
3か月程前かな、ヤキタテで
ケーキ、スイーツメニューを新しく作るにあたり
パティシエを
東京の紹介所から
1名来て貰いました。
26歳くらいの青年です。
期間は2週間契約でした。
到着して、翌日キッチンにて、先ずはケーキのスポンジをあげて貰うと、スポンジが上がらない(膨らまない)、常時ベーカリーキッチンにはシェフが8名程居て、派遣された青年は、まだ来たばかりで疲れもあり、コンディションがベストじゃないんだろうと、みんな思ってました。
そして翌日、もう一度、スポンジを作って貰うと、また上がらない。スポンジはスイーツ作りにおいて基本中の基本。ベーカリーキッチンのシェフ達に、どうしたの?と空気が流れだし、オーナーのアーメッドが遠回しにやんわりと「大丈夫?今回は新メニューでマカロンを作って貰いたいのだけど、出来そうかい?」
彼は「もちろん!」
「オッケー、
じゃ作ってみてくれるかな」
結果、彼は
作れなくて、
結果を出せなかったんです。
その時点でアーメッドは
「君は必要無いから身支度をして帰ってくれ日本に」
青年は
「今日まで居た賃金を払ってほしい」
「君はこちらのオファーに
出来ると答えて来た、私は
それを踏まえて、メニュー、店のスケジュールを組んでる。それが君のおかげで台無し、随分と変更をしなくてはならない、つまり、君は我々に損害を与えてるんだ、理解できるかな?これはビジネスなんだ。もし、それでも不満だと言うならば損害賠償含めた手続きをしなくてはいけない」
で
そのまま肩を落として空港へ。
そうしないと
ホテル代もかかりますからね。
これを
渡航寸前に
聞かされた私は
ハードルを
ググッと引き上げられた。
相撲の廻しを腰に締めたようなシャンとする感。
仕事に対しての
責任感。
後には引けないし
引くつもりもない。
コチとて生活かかってるから真剣なんだ。
飛んでやる、飛び超えて
お互いに喜びを分かち合う。
必ずカタチにしてやるぞ。
外国では
実力主義がはっきりしてる。
目的が明確だから
情で目的がボヤけることは
ほぼ無い。
逆に出来る才能は
どんな人でも認められ
受け入れられる。
よほどの何かが無い限り。
支度を済ませ
お店に向かう。
ホテルとモールの連絡通路を抜けて行く。
8時過ぎのモールの中は
まだ眠っている。モール内をクリーニングしてる人くらいしか居ない。
モールと言っても高さ20m位はあるドーム型の天井にブルーのタイル張りで装飾されたり、幾何学模様、カリグラフィー、イスラム建築と呼ばれる代表的なものだ。床は大理石。ひんやりする。広大なモール内はエリアによって国別になってるようだ。あちらはターキッシュ、こちらはチュニジア、また向こうはモロッコなど、中東諸国、アフリカ、インドと多様な文化を味わえる。とても楽しいアミューズメント。
15分程行くとお店のある
入り口が見えて来た。
スタッフが
ガラスドアを拭いてる。
「good morning!」
店内では
朝のカフェメニューの
セッティングをやってる。
更にドアを開け厨房へ
「おはようございます!
今日から1週間よろしくお願いします!」
朝のベーカリーキッチンは
活気がある。
クニが
カフェで淹れたての
ラージコーヒーを持って来てくれて
「よろしくお願いします、
何かわかんない事有れば
遠慮なく言って下さい、
とりあえず、このキッチンでスープと麺の試作を作ります。
完成したら隣りにあるレストランキッチンでラーメンを作るようになります、後で案内しますね」
「わかりました」
まずは、
寸胴など調理器材の場所を
聞いて、バックヤードから必要な物を持って来て揃えていく。
冷蔵庫から鶏ガラを出し、
ボールに移して、水で流しながら掃除を始める。これは鶏ガラなのか?と言うほど身がついてる。
「これは、いいスープが取れそうだぞ」
寸胴に鶏ガラ、モミジ、香味野菜、
水を入れコンロの火にかけた。
次に
醤油のかえし(タレ)作りに取り掛かる。
仕入れてる醤油は濃口と薄口、味見すると普段使う醤油とはかなり違うモノではあるが想定内ではあった。
日本に居ても醤油の種類は色々ある。ましてや海を超えて来るモノとなると、取引をする商社にもよるが限られて来るのは当然。
「手に入る材料で狙ってる味に近づけよう」
気がつくと
そろそろお昼だ。
クニは隣のレストランキッチンに案内してくれ、そこに居るシェフ達を紹介してくれた。
寿司シェフはネパール、
焼き場コンロ前は、スリランカ、インド、洗い場はエチオピアのスタッフが所狭しと動いている。
「ここで好きな物を食べて下さい、もちろん作っても良いですよ、ここでラーメンを作るようになります、麺茹で機はこれです」
洗い場とコンロの間に
麺茹で機。決して広いとは言えないキッチンに調理器具、シェフ達がぎゅうぎゅう。隣りのクリアで広々したベーカリーキッチンの後に見てるから尚更そう感じる。実際そう。
キッチンにいるシェフ達に
挨拶をして、それぞれの持ち場で作ってる料理の流れを見ていた。それぞれオーダーされた料理が出来上がり、皿に盛り付ける前に
「少し味見させて」
「yes chef !」
盛り付けは彩り豊かで
奇抜さに目を引くが、味の
改良の余地は充分にある。
30分ほど動線など確認しながらシェフ達と話してると、みんな出稼ぎに来てて
また人懐っこい。すぐに打ち解けて仲良くなった。
そこにはもう
言葉の壁は無かった。
ベーカリーキッチンが
アップタウンなら
レストランキッチンは
ダウンタウン
そんな感じ。
ベーカリーキッチンに戻るとクニが
「日本の調味料以外の生鮮食材は、このモールの中にあるスーパーで買って来たりもするんですけど、行ってみませんか」
「もちろん!」
あるある色々ある。
生活用品、電化製品、服飾ありとあらゆるもの。
食料品コーナーには
肉屋、魚屋、ナッツ専門、ドライフルーツ、スパイス専門、ヤギのミルク、彩り鮮やかな野菜、よく見ると葉物野菜はヨーロッパからの輸入品が多い。それにかなりの割高。砂漠地帯なので野菜は自ずとそうなるんだろう。
原価も考えながら使えそうな食材をカートに乗せていく。
クニが
「これ知ってます?食べた事ありますか?」
「プルーン?」
「これ、デーツと言って
プルーンみたいな感じですけど、こっちの人達はラマダン(断食)明けに
最初に食べたりする国民食みたいなモノです。栄養価も高くて、僕も好きで日本に帰る時とか、よう買って帰りますねぇ」
京都弁のイントネーション
なんとも聞こえの良いこと。はんなり。量り売りデーツが山積みになったコーナーで、そこに居た店員に
「テイスティングで一つ良い?」
「ほれ」
これは美味いドライフルーツ。新しい食材をまたひとつ覚えた。
レジを済ませて、大きなカートごとお店に運んで行く。同じモール内だから問題無いのだとか。ゴルフ用のカートみたいなのに乗って移動してる人達もいる。
お店に戻り、スープの炊き具合を見ながら塩タレ作りに取り掛かる。
甘い匂いのベーカリーキッチンが、ラーメン屋さんの匂いになっていく。
3時を過ぎた頃か、クニが
コーヒーと少し形のくずれた、ウインドウに出せないチーズケーキを持って来てくれて、一息ついてると、遅番のスタッフが出勤してきだした。その中に、長崎出身の女性で、ベーカリーシェフのミキさんを紹介され、ハキハキとした方で仕事さばきも良く、笑顔がチャーミング。話してると今回のドバイ案件を教えてくれた
九州のパン職人の先輩と縁の深い人だった。
それですぐ打ち解ける事も出来た。
そうしてるうちにスープも
炊きあがってきた。
レストランではディナーに訪れた客で賑わい、てんやわんやのキッチン。
オーナーのアーメッドが
やって来て
「ハイ!順調に進んでる?」
「スープとタレを合わせてみるからテイスティングしてみよう」
見た目の白湯度、材料分量も同じだけど、イメージする味には、かなり遠い。アーメッドと顔を見合わせ、
その感じたままを話すと
彼もそう思うと。
鶏ガラを炊いてるスープの匂いは同じなのに。
味が同じじゃない。
考えてどうにかなるものでもない。
時計は9時を回ってる。
今からすぐに同じじゃない何かを突き止めるには、
集中力も落ちてきた。
今日は一旦ここで切り上げて、明日の課題にしよう。
アーメッドにその旨を伝えると快く「明日もあるから、ゆっくり休んで」
現場のスタッフに
おつかれさまと声をかけて
店を出た。
外は乾いた風が心地よく、オレンジ色の灯りが建物を照らし、空の星、月だけを見てると、ここから自分の家まで、車で2時間位で帰れそうな気さえする。
そのまま外を散歩しながら
ホテルへ戻ることにした。幹線道路にも面するホテルだが、近隣は開発中の土地や建設中のマンション。
モールを離れると人は余りいない。地下鉄の駅からパラパラと乗降客がいるくらい。30分ほど歩くとホテル。
部屋に着くと、今日のメニュースケジュールの進行具合、明日のメニュースケジュールを確認したのち、服を脱いでベッドで体を伸ばした。
すんなりと事が運ぶとは思って無かったが、現実そうなったスリルのような緊張感が、なんか面白くてワクワクさせる。
「大丈夫、できるから」
いつのまにか寝てた。
目が覚めたら4時前。
窓の外はまだまだ暗い。
熱めのシャワーを浴び
スッキリしたところで
SNSに状況をアップする。
日本はBehind7hour。
TVでコーランチャンネルをつける。知らない土地に少しでも早く馴染みたい。その為には文化風習を学ぶことが大切。普段聞き慣れない音階、メロディは、見るもの全てにリプログラムするような働きに
新鮮さを覚える。
今日のメニュースケジュールを確認してても
昨夜とは違うアングル、
ロジックが見えるようなマジック。
良い兆候。窓の外が明るくなって来た。7時前。
朝食に行くか。
レストラン入り口に
昨日のお嬢さん。
「good morning」
ルームカード、サイン。
「you Chinese?」
「NO japanese」
「そうなのね、中国から来るお客様も多いから。お席に案内するわ」
「大丈夫、ひとりで行けるよ、ありがとう」
オープンキッチンの卵焼きシェフも昨日のシェフがいる。目が合ったので、
「シェフおはよう、今日一番のスペシャルを頼むよ」
「イエッサー!」
カウンターで皿を取り
手前にあるフルーツから盛り合わせていく。
一杯になった皿を持って
昨日の気に入ったテラス席のソファーへ行くと先客が居たので、窓際のテーブルチェアに皿を置き、そのままカウンターへ行って皿を取り、パン、クリームチーズのようなペースト(これが何だか美味しくてクセになった)に豆の煮物、デーツもたんとある。
また、両手に料理を盛った皿をテーブルに運ぶと、卵焼きシェフが私を見つけて、テーブルまで運んでくれた。
「あなただけのスペシャルですよ」
「ありがとうシェフ、ところで、このクリームチーズのようなの、昨日初めて食べたが、とても気に入ってるよ。これは何だい?」
「ありがとうございます、ミスター、それは
hummusと言います」
「ホムス?」
「ガルバンゾ(ひよこ豆)のペーストで、中東、イスラム諸国では基本的な食事です」
「へーなるほど、美味しくてハマったよ」
「それは良かったです
お好きなだけお食べになられて下さい」
hummusか、
どうやら
恋に落ちたようだぞ。
部屋に戻り支度をして
店に向かう。
モール内を
同じルートで行くにしても
視点を
昨日とは少しずらして
塗り絵の塗ってないところを塗るように
注意深く見てると
新たな発見に
ついつい足を止めて
写真を撮る。
エジプトエリアでは
ピラミッドの壁画にあるような、獣と人間を合体させたような色んな種類の高さ6〜7mある石像が印象的。
日本食レストランもある。
お店はまだ閉店中。
表のメニューに目を通す。
寿司、ラーメン、丼。
写真を見て、引きつけられる感じは無かった。
キョロキョロしてるうちに
お店に着いた。
「good morning!」
ホール、キッチンと
早番スタッフが笑顔で
返してくれる。
クニが
「今日はどうされますか?」
「もう一度スープを炊きながら、製麺をやっていきましょう。製麺の際はベーカリーの器材を使うので、練りが空いたら声かけて下さい」
「オッケーです、あと、レストランキッチンのシェフをラーメン担当で覚えさせたいので今日から一緒に教えて貰って良いですか?」
「もちろん!」
スリランカ出身の
名前はパラビン。
鶏ガラ、モミジの掃除の仕方から始まり、香味野菜、水を寸胴に張り、今日は昨日のスープを踏まえて、材料の割合を変えて炊く。
パラビンがノートに書き留めていく。
丁度、クニからミキサーが使えますよと。
製麺は粉、水、かんすいの割合を変えたものを3種類、10玉分ずつ位混ぜて練る。
それぞれ生地をまとめて
圧延、合わせる、圧延と
何度か繰り返し表面のコンディションが整ってきたら
厚み、麺切り幅を揃え
ロールし寝かせる。
スープのアク取りを教えながら、隣りのコンロで鶏チャーシューと煮卵の仕込み。
こまめにノートをとる
パラビンに
「料理を作る、覚えるにおいて書く事以上に大切な事がある。それは、調味料を加える度、一回一回、味見をして、舌で味を記憶する事。絶対に忘れないで」
「yes chef!」
遠い外国にある日本食レストランのキッチンで従事する外国人シェフ達は、そもそも日本食を食べた事がない人、少なくない。大抵が、どこかの日本食レストランで働いてた友人そのまた友人から聞いた作り方だったりと、そのものがどういう料理かすら知らなかったりする。手がかりである、料理の見た目とレシピから編み出される、空想上の料理と言っても過言ではない。食べた事ないから仕方ない。そのアレンジ感、それはそれで面白いが、いざ私も日の丸を背負って、こうやって遠い異国の地で料理を作りに来たからには、基礎的な日本の味を知らしめなければならない。そうする事で、舌で覚えたシェフ達が、そこから先、また必要とする友達へと伝えて、末広がりに継承されていってくれる事を望んでやまないからだ。
牛丼と焼肉丼の違いを教えるし、ある時は、天ぷらを知りたいと言うので、作って見せて食べさせると美味いと言う。しかし、画像やサンプルケースで見る天ぷらの衣が黄色く見えるから、天ぷらは黄色でなければいけないなど、言いだす時もあった。
説明はしたものの、彼らのイメージを優先させたいならば、方法として溶き粉にターメリックを入れればと答えたが、それは日本の味ではないとも付け加えた。
料理は五感である舌で
味、食感を覚えていく。
そうすれば、異国の地で
言葉が通じなくても、
伝えるべきものは伝わる。
踊りをおしえたければ
踊ってみせる。
そういう事。
スープの火加減を調整しながら清湯(チンタン)と白湯(パイタン)の違いも教えた。今回は鶏白湯なので炊き上げる際、鍋底の焦げに注意を払う事、動物性油脂である鶏油をしっかり乳化させる事を重点においた。
レストランキッチンへ行き来しては、各々シェフ達の故郷の料理やオススメの景色、ほっこり情報を聞くのが楽しみになってた。
口を揃えてシェフ達が「日本へ行きたい!日本で働きたい!」と言うので、正直に物価や生活するにあたり必要なお金も掛かるし、厳しさを感じることが多いと思うが、もし、どうしても行きたいならば、君たちシェフは自国の料理の基本をマスターして行くのもひとつの手だぞ、特にスパイス使いは人気があるからねと教えた。
インターネットで見る
日本に惹きつけられてるんだろう。そりゃそうだ、20代、30代のエネルギッシュな年頃だもの。
スリランカのシェフが
「chef DID you go to Deira?」
「no dont go
where? whats Deira?」
Deira(デイラ)とは
ドバイの旧市街地にある
地区の名称らしく、賑やかで夜も楽しいと言う。
とても興味深い面白い情報じゃないかと言うと、
「イェース シェーフ」と
いたずらなスマイルに
ハイタッチをし、
面白いフレーズが浮かんだので歌った。
wanna go to Deira〜
can I borrow Dirham♪
行ってみたいなデイラ
借してくれるかディルハム(ドバイの通過)
彼らは面白すぎると笑いこけ、みんなとハイタッチ。
このフレーズを気にいったようで彼らは口ずさみだした。
アホさ加減、笑いは世界共通。
ベーカリーキッチンに戻り
寝かせてた生地を揃えて
3タイプの生地を
それぞれ2種類の太さの
麺切り機に通す。
なかなか良い出来具合。
縮れ麺はそれぞれ1玉ずつくらいにしておく。
切った麺はパットに並べて
乾燥し過ぎないようにする。
スープの具合いもなかなか良い。
レードルにすくい
塩だけで味見をする。
材料の配分を変えて
昨日のスープとの違いと
なんとなく目標に近づいてるがボヤけてる。
ちょうど、アーメッドが
来たのでテイスティングして貰う。彼も昨日のスープより良くなっては来てると
言い「明日の夕方、私の気に入ってるラーメン屋に一緒に行こう」
お昼頃、クニが
「アーメッドから明日の事聞きました?僕も一緒に行きます、それと、今から、お昼ご飯ですけど、僕の知ってるラーメン屋があるんですけど行きませんか?」
「行きたいです」
クニは
真っ赤のジープラングラー。
ラジオのローカルFMがテンポの良いヒットチャートを流す。雲ひとつ無い空にドライ40度の気温が、流れる音楽にローカルエフェクトをかける。
空港からお店まで来たハイウェイを通りビル群を抜けてると黄色のランボルギーニカウンタックが甲高いエキゾーストを響かせて横を過ぎて行く。ドバイモール(ドバイで一番大きなモール)から数ブロックの所にラーメン屋さんがあった。アジア人ぽいスタッフが作ってる。中華鍋で野菜を炒めてスープを合わせて作る、どさんこ系。もちろん鶏ガラで、味噌か醤油。店内を見渡すと、おそらく出資者は日本人、北海道の人では無いかと思われるお店の切り抜きや、趣向であろうか、若者向けのパンクロックぽさを匂わせる物も貼ってある。
クニは味噌ラーメン、
私は醤油ラーメンを。
この店は
なかなかの人気だとクニは
話してた。
「ごちそうさまでした」
ドバイで人気のある
いちラーメン屋が
どんなものかと気になってたので参考になった。
今、私が作ってるものとは
異なる線を引く物で、
自信と手ごたえを感じた。
帰りしな
ヤキタテのオフィスがある
建物へ寄り、調味料、材料の在庫確認と必要な物の積み込みを済ませて店へ戻った。
今晩の試食に向けて
トッピン具を整えていく。
薬味をモールの中にある
スーパーへ行きチョイス。
ナッツ、ドライフルーツ、スパイスが目について仕方ない。同じナッツやスパイスでもランクがあり、それは値段に表れてる。
中でもナッツのスパイスフレーバーをテイスティングしたモノは大好きになった。
スーパーの先には
フードコートがあり各国の
ファストフード的なのが
ズラリと並ぶ。
とりあえず一周して戻ってると、トイレに行きたくなったのでトイレマークの目印を追って用をたす。
トイレを出て従業員用通路みたいな曲がり角の、くぼんだスペースに、ふと目をやると、男性が4人ほど床に布を敷き正座の様な姿勢からおデコを床につけて礼拝をしてる時間だった。
ムスリムの人達は1日5回(ファジュル(夜明け)、ズフル(正午過ぎ)、アスル(午後)、マグリブ(日没後)イシャー(夜)の礼拝の時間になると、街の至る所にあるモスクから、アザーン(Adzan)と呼ばれるアッラーへの祈りの言葉が大音量で流れ、お祈りをする。
私も釣られて
正座はしなかったが
頭を垂れ、敬意を払い
店へ戻った。
さとさんが
仕事で近くに来たからと
様子を見に寄ってくれてた。
進行状況や目新しく見た物事を、遠足から戻った幼児が母親に話すように話すと笑いながら「よかった、楽しんでますね」と言い、さとさんは、また仕事に戻った。
レストランキッチンへ行くと
私を見るなりシェフ達が
いたずらなスマイルで
アゴをクイッと突き出すので、私は
「WHAZUP NIGGA!」と言うと
「WOO!WHAZUP!」
と彼らが拳を伸ばして来る
私も合わす。
早番遅番代わって、日が暮れ夜。アーメッドが来たので試食会をスタート。
ホールチーフやクニ、
レストランシェフ。
みんな小鉢を手にし、
9枚の丼鉢に
醤油、塩の2種の
素ラーメンを、
それぞれの麺の太さ、
絡み具合を調べながら、
トッピン具、薬味は自分でのせる。
食べたあと
皆の感想、この時点でクリアしたモノなどをミーティング。
3タイプ作った麺のうち
「これが良い」と皆の意見が一致した。よし!麺クリア!
トッピン具はどれもいい、
もっと増やしてはどうだ?
と言うので、考えとくと答えといた。
さて、スープ。
アーメッド、クニ、私は
しっくりこない。
タレをもっと沢山入れてみたらと言うが、それじゃ塩味が立ちすぎて頂けないと
実際に加えたものを食べてもらい説明する。
重要なスープをクリア出来ず片付け。
時計は10時を過ぎ、
課題をまた明日へと
ホテルへ持ち帰る。
充実さの反面、疲れもぼちぼち。
冷蔵庫にある持って来た
缶ビールをやっと
1本空けるも
あまり旨く感じない。
ふに落ちない何か。
なんだろう。
グルグルとループする
なんだろう。
体はスッキリしたいので
バスタブにお湯をためる。
浸かってると、クーラーで冷えた体がほぐれていくのがわかる。出しっぱなしのお湯が溢れて、バスルームのトイレもビシャビシャ。あーあー、海外あるある。
ま、いっか。
とりあえず体を拭いたバスタオル、その辺にあるマットタオルをかぶせて最低限
にとどめ、ベッドに横になる。
3日目 朝
いつも通りの夜明け前。
そうだ!と思い
上海のニャンにいへ電話してみる。向こうは昼前くらいか。繋がった。
いつも通りの元気な声
「你好マー」
你好、你好!
今、ふに落ちない状況を
話してると
いろいろなパターンを
想定するヒントをくれた。
「謝謝!」
ほつれてた糸が解けていくような。
小さな光が差し出した。
初日、2日目と材料配分を
変えたところからの延長線にある「もしかして」に
焦点をあててみようと
やる気が湧いてきた。
そう思うと、なんだか急に
お腹が空いて来たので朝食を食べにレストランへ。
入り口のお嬢がいる。
「good morning!」
「あなたは観光に来てるようじゃ無さそうね」
「そうなんだ、隣のモールの中にあるヤキタテ ジャパニーズベーカリーの仕事で来てるんだよ」
「あら!あなたシェフなの?」
「そう、カンフーのマスターとでも思ってた?」
「わからないわ、面白い人ね」
「もしよかったら、お店に来れば、お茶くらい奢るよ。それともシーシャ?」
「ありがとう、シーシャはやらないわ、それに、ここの仕事の後、また別の仕事に行かなくてはいけないの」
「オッケー、気が向いたら
私を訪ねてくればいい、わかるよね?私の名前は」
「そうね、ありがとう」
卵焼きシェフのとこへ行き
「いつものスペシャルを」
「イエッサー」
いつも通りの皿には
いろいろとのせて、あのソファーシートへ運ぶ。
hummusもこんもりと。
「ミスター、このオイル、
zaʕtar(ザタール)が入ってて、hummusにかけるのをお勧めします」
卵焼きシェフ。
「ザタールとは?」
「ハーブです」
「使ってみるよ、どうやるか、ここにかけてみて」
ダイナミックにかける。
スライスしたハードブレッドをトーストして
つけて食べたら、あ、美味い。
卵焼きシェフがニヤリ。
「このhummus、作り方を教えてくれない?」
「いいですよ」
「明日、もっと早く来るからその時にいい?」
「オッケー」
ありがとう。
後ろから
入り口にいたお嬢が
コーヒーを持ってきてくれた。
「ありがとう!優しいね」
「お客様へ当然のサービスよ、あなたhummus好きなの?」
「大好きになって虜だよ」
「私は苦手、オエってなるわ」
「そうなんだね、好みは人それぞれだからね」
「ババガヌーシュは食べた?フムス の横にあったでしょ?ナスのペーストよ」
「あ、あれね、食べたけど
このhummusに今のところ夢中だよ」
ババガヌーシュとは
「男を自由奔放に魅了する女」と言う意らしい
「ごちそうさまでした」
部屋に戻り支度をして
今日の仕込みメニューを
ノートに書く。
ウエストポーチに入れて
慣れてきたコースを行く。
バンダナ代わりに頭に巻いた手拭い、Tシャツ、チノパン、keenのサンダル。ウインドーに映るのはいつもの自分。今、ドバイでホテル通いの仕事をしてるなんて!それも好きな料理の仕事。エキサイティング!
これにはリミットがある。
リミットがあるからこそ
集中し熱量を注ぎ込む。
それも前半を過ぎ中盤。
組み立てて来たモノを
整理して固めていく時だ。
「おはようございます!」
「G.M chef!」
エプロン、ヘアキャップを着けて、勝手のわかってきたカフェで、カップにコーヒーを注ぎ、クニのところへ行き今日の仕込みの流れを確認する。
昨日オッケーの出た麺の
製麺と微調整諸々。
辛麺用のタレ作り。
スープは出来上がりを今までの1/3程の量に減らして試してみたい事があった。
クニが低温調理器がAmazonで届いたと見せてくれたので、早速、鶏肉を仕込み、寸胴に水を入れて温度設定をしようとコンセントに挿しスイッチを入れるとプラスティックの焼ける臭いがし煙が上がってショートした。電圧変換器が必要だった。鶏のしっとりチャーシューが遠のいた。
仕方ないので、オーブンと鍋を使ってのチャーシュー作りに切り替えた。
スープの材料配分を変えて
作ることをパラビンに伝え
仕込みを始める。
材料を探しにレストランキッチンへ行くと、
待ってましたと言わんばかりのニヤケ顔で、
「wazzup niggaa!」
昔からの友人のような愛嬌の良さ。
「hey guys important
to do learn a cookin?」
「recognize tongue!」
「come again!」
「recognize tongue!」
「very good!」
ゴマ油を探しに来たのを
忘れるとこだった。
辛麺用のアクセントを
作るにあたり、
お店のメニューを見てて
盛り付けが
大袈裟なくらい派手、
遊び過ぎ?マジック?と受け取れるような、目を引くエンターテインメント性を感じずにはいられない。
むしろ、そこに重みを
置いてるのかと。
昼下がりの店内に目をやると、
スモーキンルーム(レストランはベーカリーカフェのノンスモーキンルームとセパレートされてる)では
ゆったりとシーシャを燻らせる女性たちがおしゃべりを楽しんでる。
日本を意識した内装、装飾品は独自の解釈をされた上で組み合わされ、時折その斬新、ユニークさは自由という発想の枠を取り払ってくれる。
ベーカリーキッチンで
スープの塩梅を見ながら
製麺を行い、ストレートと縮れ麺を半々で。
何玉か遊びを練り込んだモノも作る。
夕方になり
アーメッドがやって来て
「どう?今から行ける?」
「用意するから少し待ってて」
スープの炊き上がりがもう少しかなというところ。
パラビンにあともう少し様子見ながら炊いてほしいと
頼む。
カフェで待つアーメッドのところへ行くと
丁度、サトさんもやって来て「一緒に行きますよ!」
アーメッドは最新のランクルにGFと、クニのジープに私は乗り、サトさんは仕事用のバン。
夕方の幹線道路を市街地、ビル群の方へ向かう。
ネオンが点灯しだすと
華やかな雰囲気が出てきた。
海沿いのニュータウン的な
近代的でカッコいい建築物が集まってる一画、
ファッションビルの1Fに
「YUI」と書かれた看板の
ラーメン屋さんがあった。
中に入るとシンプルな雰囲気で、壁にはスケートボードを飾り、中にはNIGOの
関連するグッズも並べてる。
アーメッドが
この辺りはファッション、
流行りの好きな人たちが
集まりやすいエリアなんだと教えてくれた。
YUIのオーナーは
30代のコリアンで
日本の若者カルチャーに
熱心だと。道理で、それを見て取れた。厨房が見えるので
私は近くへ行き見てると
スタッフと目があったので
オススメを聞くと
「塩白湯!」
席に戻り、私は塩白湯、
それぞれ、醤油、坦々麺、とオーダー。
運ばれてきたのは
ビジュアルもシンプルながら、レモンスライス乗せてたりと洒落てる。
スープは美味い。
濃厚な鶏白湯。
乳化具合がしっかり成されている。
みんなのスープをテイスティング。普通に美味い。
食べ終え、厨房設備を見てると、寸胴は一番大きなサイズに、コンロもそれに合わせた最大火力の物。
その火力ならではの
臭みも無く
乳化具合に納得。
「ごちそうさまでした」
一杯1800円くらい。
ドバイのこの立地でこの味
この値段。
ここに集まる客層がフィットするから成り立つ。
商売は薄利多売か
特定の層に定めるか。
いずれにせよ買い手が
満足できるモノであれば
いいのだ。
マネーゲーム。
うまかった余韻が
引いてきたところで
クニとサトさんは家に帰り
私はアーメッドの車に乗り
お店へ。
車の中でアーメッドが
「どうだった?」
「美味しいと思う、ラーメン1本で勝負してるだけの
クオリティだ。器具を見れば一目瞭然。だが私の作ってるのも違いのわかる鶏白湯だよ。YUIは良い刺激になったね」
「それはよかった、anyway
どうやって英語覚えの?」
「音楽や映画だね、broken Englishだけど伝わってる?」
「yes!yes!」
「anyway、君は日本のパンをどうやって知ったんだい?」
「僕はイギリス育ちで旅行好き。20〜30代とバックパッカーだったんだ。色々な国を周ったよ。もちろんアジアもね。日本に行った時は興味深いものが多く、中でもパン屋さんでソフトブレッド、キャラクターの顔のモノ、焼そばパンを初めて見て食べた時は、あまりの旨さに驚いたよ。ヨーロッパではお目にかかるモノでは無いからね。そこから追い求めるようになり、これを持ち帰りたいと思いが強くなってね。それが今って訳さ」
「いいねえ、無いものを持って来ると言う着目点。
私がこっちに来てhummusに恋したのと同じようなもんだ」
「hummusが好きなの?」とGF
「気に入ったよ、日本に戻ったら作って食べたいね」
と
たあいのない話しを
してるとお店についた。
外は陽が落ち星が目立つ。
外食の盛んな習慣か、
家族連れやカップルが
どこで食べようかとモールに吸い込まれて行く。
外の芝生の上には猫が一匹寝転がる。
アーメッドが、旧市街地にあるヤキタテ1号店から連絡があり、どうしても今から行かなくてはならなくなったと言うので「今日の試食はどうする?」
「すまない、難しいと思う
明日の夕方にしよう」
「オッケー明日ね」
店に入るとなかなかの
混み具合。ホールスタッフもバタバタしている。
ベーカリーキッチンに行き
火を止めたスープを見て
味見をする。
「やっぱり」
もしかしてが
的中してるかも。
スープを丼鉢一杯ぶん
小鍋に移し、冷蔵庫から麺をひと玉取り、
丼鉢にタレを入れて
レストランキッチンへ。
遅番のシェフ達も
せわしくピークの真っ只中
「wazzup!」
合間を抜けて奥の麺茹で器へ麺を放り込む。
小鍋を空いてるコンロに乗せ点火。
沸いてきたスープを丼鉢に注ぎ、麺を上げお湯を切り丼へ。箸で麺を整えスープをすする。
「なるほどね」
麺を一口食べると、横でパラビンが見てる。
「食べてみて」
パラビンの目がニヤりと
なった。
それを見た他のシェフ達も
俺もひと口!と。
うなずく彼らを見て
ベーカリーキッチンに戻り
遅番のベーカリーシェフ達に「ラーメン食べたい?」
「of course!」
6杯ほど作って皆に
食べてもらった。
シェフミキが
「久々にラーメン美味かった!」
まだ完成では無いけど
確信する手ごたえを得たので、今日は片付けてあがろう。
see you tomorrow bye!
9時前のモールは
賑わいの中。
ん!セレクトショップのような古着屋。物色する。
冬物が無いのは当然か、
子供服のコーナーで
これかわいいなとTシャツ
一枚持ってレジへ。
初めての買い物。
スーパーでスパイスナッツを200g。
喧騒の中は朝とは別世界。足取りがゆっくりなり、
噴水の縁に腰をかける。
ナッツを摘みながら見渡し
この賑わいに同化するで、ようやく馴染んできたような嬉しさすら覚えた。
ホテルのロビー、
レセプションカウンターに居るスタッフと目が合うと「おかえりなさい」と
言うように会釈で迎えてくれ、
エレベーターのボタン押し
レストランの方を見るとディナータイムで席も埋まってる。
エレベーターの扉が開き
降りて来た客がレストランへ向かって行く。
10Fを押す。
部屋に戻ると、
今日の成果で得たレシピの
配分を引き上げて
明日の仕込みの分量を計算
し書き写した。
そのままベッドに転がると、あくびと共に眠りについた。
4日目 朝
6時過ぎに目が覚め
外は明るく、服も着たままだったので、熱いシャワーからのスタート。
昨夜は夢も見ず深く眠りにつけた。
時差ぼけが少しずつ
ローカルタイムに近寄って
る。
シャワールームを出て
バッグを見ると着替えが
ラスト。洗濯物が溜まってた。ランドリーカードにチェックしてルームサービスの見える所にまとめて置いた。
朝食をとレストラン。
エレベーターの中で
あ、hummus!
レストラン入り口
いつものお嬢は居ない。
ボーイにルームキー、
サイン。
食事客はまだ3組くらいだ。
卵焼きシェフの所へ行くと居た。
「hi chef!」
「good morning!mr.
come in! here」
覚えててくれたようで
奥のキッチンから
材料のヒヨコ豆、タヒーニ(胡麻のペースト)、スパイスクミン、大蒜、オイル、塩、レモンを並べて見せてくれ、ミキサーを指差し、全部ミキサーすると言う。
出来上がりがアレですと
ビュッフェカウンターの上にあるhummusを指し、
EASY!EASY!
「alright! thank you chef!」
you welcome!
「and special omelette
please!」
yes sir!
コップにオレンジジュースを注ぎ流し込む。
また注ぎ、いつものソファーへ。
ピタパン の中にhummusを
塗りトマト、オニオンスライス、リーフサラダ、オリーブを入れ、ザタールオイル、クラッシュナッツ、レーズンのサンド。
マッシュルームのスープ、
レンズ豆のトマト煮込み。
スペシャルオムレツ。
物足りないようなら
カリっと焼いたカンパーニュのスライスにhummus、
フルーツを摘む。
水面の揺れるプールを見ながら、
王族などメイドの居るような人達は普通にこんな生活をしてるのだろうと思うと
特別な今のこの時間を
味わい深く感謝し
手を合わせ
「ごちそうさまでした」
今日はなんとなく
モールではなく、
外から行ってみようと思い
ホテルを出て道路沿い、
芝生を歩いて店へ。
カラッとした日差しが
徐々に強くなるのを感じる。
道にゴミが落ちてないのも感心するが、お酒が飲めない国なので、日本で見かけるヨレた人間がいない。
これは凄いと思う。
多少なり、郊外に行けば
売ってたりするらしいし
レストランキッチンの
シェフ達は、自分達の部屋ではウイスキーのようなのを飲んだりするよと写真を
見せてくれた。
あとライセンスを持ってる
ホテルのバーなどでも飲む事は出来るようで、生ビールが1杯1500円だと話してた。
店に着くと暑さも
クーラーでスーッと引き、
「good morning!」
みなさんいつも通りの
元気な笑顔。
クニもいつも通りのクールな感じ。基本的に仕事の話し以外、余計な事は喋らない、口元笑っても目が笑ってない。30代サーファー。
日本語を喋るのは久々だと話されてた。
日本を出て異国の地で
活動されてる人に共通するのは強さを感じる。
強さと言う表現が
私が伝えようとする
ニュアンスに含んではいるものの完全ではない。
たとえるならば
昭和の、ジャニーズ
タノキントリオ。
アイドルから大人になり
芸能会に残った
田原俊彦と
レーサーへ進んだ
近藤真彦の違い。
野村義男は置いといて。
ぬるま湯の中の人間と、
生と死、隣り合わせで
生きる人間。
後者マッチに通じる匂い?
目の奥にギラつく強さみたいな。
ここにおいては仕事に対してストイックなオーラを持たれてるクニ。
やはり、そのような方が
近くにいると私も良い意味で感化されて取り組める。
シェフミキもそうだし、パラビンもそう。故郷を離れて強くなる。尊敬する。
高速道路の入り口を抜けて
本線へ入って流れに乗るように、私はエプロン、ヘアキャップを着け、ギアを上げ仕込みを始める。
パラビンに
スープの材料、分量を伝え
材料の掃除をした後
点火したスープの子守を頼み、タレ作り、トッピン具作りに取り掛かる。今日の試食で麺は1日寝かせた昨日のを使う。とは言え、明日も必要なので製麺もやらなくててはならない。
時計の針を早回しにしたかのようにあっという間に夕方。
気分的にはお昼くらいだった。
アーメッド、GFが
「hi!」とキッチンに来て
GFが「これを使いたい、どう?」と
新しい丼鉢を見せてくれた。麻柄模様をあしらった
丼鉢。
「とてもいいね!ナイス」
そこに、
サトさんも仕事帰りに寄ってくれた。
「サトさん、おつかれさまです!今から試食しますけど、どうすか?」
「お!いただきますよ!」
スープを見て味見。
パラビンに、アーメッド達に試食を作るから
丼鉢と麺、諸々を
レストランキッチンに運んで貰う。
スープを濾し、人数分を
小鍋に移しレストランキッチンへ。
作業台に丼鉢、トッピン具を並べてタレを入れる。
小鍋を火にかけ、麺を茹でる。スープを丼に注ぎ、手際よく麺を湯切り。
箸で麺を揃えてトッピン具。真上からのバランスを見て薬味を添える。
シェフ達はそれぞれ手を動かしながらも見守るように
視線をくれる。
「ok! let'sgo!hurry up!」
ホールスタッフに運んで貰う。
残りの一つを持ちテーブルへ。
興味を持って出来上がりを
見ているアーメッド達に
「さ、どうぞ試食です」
レンゲでスープを啜り、
もう一度啜った
アーメッドと目が合う。
ずずずっと麺を吸うサトさん。
あ!忘れてた、
キッチンから急いで
辛麺用オイルを持って来て、テーブルに置くと
「whats this?」
「chille oil for TANTANMEN」
おそるおそるスプーンで
回しかけるアーメッド。
スープを啜り、ニヤリと
wow!!
続いてクニ達も回しかける。麺を食べる。
アーメッドが
「perfect!!」
「thank you so much!」
みんなの顔が綻び、GFが
「あなたを見た時、
見た目からこの人は
出来ると思ってたわ!」
私はカンフーのポーズで
おどけてみせた。
それを見ていたホールスタッフ達にも、このナイスな空気感が伝染したのか、
目が合い、すれ違う度に
「やったね!」と声をかけてくれハイタッチ。
喜びを共有する一体感は
なんとも心地よかった。
ちなみに、
辛麺用のオイルには数種のスパイスとパン作りで使う炭粉をアクセントに取り入れた。「黒い辣油」
奇抜さ、見た目から想像しがたい味、辛味。
安堵、達成感。
肩の荷が降りた。
サトさんをホッとさせる事
もできた。
アーメッドのGFが
「レシピは残してくれてる?パラビンに教えてくれてる?」
「もちろんだけど、
私が居る間は一緒に仕込みをして、体と舌でしっかり覚えて貰うよ」
「オッケーお願いするわ」
アーメッドが
「残りの日程は、メニューのレシピ見直しを頼むよ」
「イエッサー ボス」
ベーカリーキッチンの
シェフミキや遅番シェフ達も喜んでくれて
シェフミキが
「仕事終わったら、美味しいチャイ屋さんが近くにあって行くけど、チャイを
飲みに行かない?」
「嬉しいね、女子からの誘い、行く行く!」
「あと2時間くらいかかるから、それくらいにココで」
「了解」
レストランキッチンへ
行き
「I feel so so good!」
シェフ達が
「ラーメンオッケーだったんだろ!」と言うので
yeeees man!と
ハイタッチしながら
wanna go to deila〜
can I borrow dirham🎵
pleaseと
シェフ達に手を出すと
NO〜 と手をペシンとされた。
レストランメニューを
見ながら
オーダーで作ったものを
少しずつ味見し、
気になった味付けのメニューにチェックを入れていく。
ラストオーダーが出た後に
ベーカリーキッチンへ行き
シェフミキとネパールのシェフと一緒に店を出る。
夜風にあたりながら
地下鉄の駅方向へ行くと
こじんまりした
コンテナショップが
ライトアップされ、
店の前に置いたハイテーブルで食べてる人、飲んでる人達。
美味しそうな匂いがする。
メニューを見ると、
シャワルマ(チキンのラップロール)、ポテト、チャイ、パフェ。
全部食べてみたいので頼むと丁度シャワルマが最後の一つだった。
ひとまずチャイで
三人で乾杯。
美味しい!
じんわり滲み入る。
さすがシェフミキ。
ドバイでの生活や、日本での日常を話してると、
ミッションクリアした事もあってか、肩の力が、ほぐれてくるのがわかる。
昨日迄、ホテルの近くに
このお店があったのにも気づかなかったんだもん。
ようやく、風景が目に入ってきだした。
喋るだけ喋ると、地下鉄の最終もそろそろだからと
シェフミキ達とバイバイし
ホテルへ。
部屋に入ると
ランドリーが戻って来てて
ご丁寧に、Tシャツ、手拭いまでアイロンされ、一枚ずつハンガーでラッピング。
すごいなぁと、伝票を見るとワイシャツ同様に全部
加算されてて驚いた。
国内外のホテルでランドリーを使った事が無かったに等しい。そこまでのホテル滞在も無いし、長期の時はゲストハウスだった。
コインランドリーだったり据付けの洗濯機だった。
とりあえず残りの日数を考えると、ランドリーには
出さなくて済む。
今日はシャワーを浴びて
横になろう。
おつかれさま。
5日目
7時前に目が覚める。
洗面を済ませて朝食へ。
good morning
レストランの受付は
ボーイ。
卵焼きシェフも今日は違う。
「hi! inside all 」
「yes sir!」
皿にサラダとハムを乗せ
コンベアトースターに
カンパーニュスライスを
3枚乗せると、私の席の様になってるソファーテーブルに皿を置き、トースターの
カンパーニュを皿に取り、
その皿にhummusとオリーブも。ラージカップにコーヒーを注ぐ。
外を見ながら食べてると
水着を着た白人のおじさんが早々とプールに入ろうとしている。
陽が差してきてる。
気持ちいいだろうな。
水着は持って来て無かった。
ボーイがオムレツを持って来てくれた。thank you!
「you welcome!」
ざっとひととおり、
ここにある料理を食べた。
朝食のルーティンの中で
タイトルを防衛し続ける
チャンプのように、
皿の上に存在する
hummusは無くてはならないものとなった。
「ごちそうさまでした」
いつもよりゆっくりした
足取りで店に着き
レストランキッチンへ。
仕込みを始めるとこだった
シェフにまずは、米の洗い方から教える。日本の米ほど粘りは無いがインディカ米では無い。次に味噌汁を
作り、味見をして貰い、
味噌湯ではない事をしっかり。出汁の味を再度確認させる。
「recognize tongue!」
パラビンが来たので
ベーカリーキッチンで
昨日のレシピ覚えてるか
尋ねると、メモしてると言うので、ではと、
材料を作業台に持って来て貰う。鶏ガラの掃除から。
一連の流れパラビンをメインに一緒にやり、コンロにかける。
製麺はクニにも加わって貰い行う。
生地を寝かせて、コーヒーブレイク。
クニにdeilaの事を聞くと
「行ってみますか?」
「え!まぢすか!」
「いいですよ、今日、夕方で仕事あがって、メシ行きましょ」
「はい!」
sightseeing
おのぼりさん。
おのぼりさんたら
おのぼりさん。
キョロキョロキョロキョロ
おのぼりさん。
人混み喧騒おのぼりさん
油断は禁物おのぼりさん
金すられるなよ
おのぼりさん。
ゆるみすぎるなよ
おのぼりさん
様々な教訓思いだす。
お昼になり、
お土産で持って来た
じじ屋の身厚の鯖みりん干しをレストランのオーブンで焼き、味噌汁と炊いた米をクニへ。
「おー!美味いですねぇ」
私はメニューにある牛丼を
レストランで作って貰う。
ここで、これは焼肉丼だよと教え、焼肉丼ならば
リーフサラダをのせると
見栄え色取りもいいよと
作って見せる。
半熟の目玉焼きをのせれば
perfectだよと。
そこで「オー!」となるかと思いきや、半熟目玉は
賛否両論でしっかり焼く派も多い。
そこは各々お好みでと。
ベーカリーとレストランを
行ったり来たり、
遅番スタッフに入れ替わり
夕方になり
「そろそろあがりますけど
どんなですかぁ?」
キタキタ、キタヨ!
「はい、すぐに!」
レストランキッチンの
シェフ達が「シェフどうした?何かあるのかい?」
I go to deila〜🎵
「行くのか!
行くんだなデイラに!」
イェース!
「楽しんで来て!」
ありがとう、
皆さんまた明日!
「メシ何がいいですかぁ?」
「なんでもいいですよ
おまかせします」
「わかりました、あ、
メシの前に、1号店寄らな
あかん用事あるんですが
いいですかぁ」
「どこへでも行きます、
連れてってください」
幹線道路で街を抜け
トンネル抜け、年季の入った建物が中洲のような川沿いに並び、人びとの往来、
チカチカネオン。
パーキングビルに車を停める。
生活感が見れる路地。
横道裏通り。路面でケバブを焼く煙匂い。呼びこみ。
賑わうオールドタウン。
この雰囲気ごちゃ混ぜ感。
人混みの中を少し歩くと
1号店があった。
新しい店の半分くらいだけど、若者層を中心に席は埋まってる。表にはテラス席もある。中でキッチンのシェフ達を紹介される。
nice to see you!
用事を済ませると、店をあとにし、クニは界隈を案内してくれた。
アジア系、フィリピン系も
旧市街には多いようだ。
明かりの少ない路地の雰囲気は、ゴミ箱の溢れてる感じといい、その臭いが入り混じるカオス感といい、
どこの国にも通じる。
その辺に車やバイクを
無造作、乱雑に停めてる感も。
その車が、バキバキにチューンしたゴールドのジープラングラーのオープンだとか、艶消し黒のカウンタックだったりするのを見るとドバイらしさを感じる。
ドバイに来る前に、
周りの人達から様々な
前情報、憶測、思い込みなどを聞かされた。
車は空を飛んでるとか。
それを聞いた時は、
フィフスエレメントの世界ではないかと半信半疑ではあった。やはり飛んで無かった。しかし、ポリスカーは世界の車が多様に使われてるようで、フェラーリもあったし、日産エクストレイル、GTR!、カマロもあった。
2シーターのパトカー楽しいだろうなと。
日本は
フェアレディZのパトカーをどこかで使ってた。
路地裏から明るい繁華街
ジュエリーショップが目立つのは世界でも有数のゴールドの国だとか。
電化製品スマホ、SIM、
小物、レストラン、世界各国この雰囲気がもてなす安定のそろい踏み。
足もとを見ると、昔、よく
公衆電話ボックスに貼りまくってたデリヘルのビラ。
そのドバイ版が至る所に落ちており、橋の縁の上に置いてたり、思わず懐かしさ(日本では見ることが無い)に綺麗なのを選りすぐり、帰国して誰かにお土産であげようとポケットに入れる。
クニが「好きですねぇ」
男でコレ興味ないのはゲイの方たちくらいかなと。
「あそこ、あそこの角のホテル、K international Hotel の地下にあるBARは
アラブ中東系の女が居て、
ソレですよ」
へー
「で、通りを挟んで向こうの、ほらあそこ、緑と赤のネオンのあそこあるでしょ、あそこはアフリカ系、
他にアジア系の店とかありますねぇ」
いろんな国が揃ってて世界大会ですね、てか、よく知ってますね、行ってるでしょ良く。
「よくは行ってませんけど行った事ありますよ
こっち来た当初はですね。
ちなみに、だいたいどこもラストが2時くらいなんで、
それくらいのが安くなります。早い時期は通常価格です。女の子達も出来るだけ稼ぎたい、少しでもお金持って帰りたいじゃ無いですか。ゼロは嫌ですよね」
だいぶ貢献されてるなと
思ったけど、それを口に出すのはやめといた。
「あ、ここです、ここ行きましょ」
人通りの多い
地下鉄入り口付近。
picnic とネオンの食堂。
店の表にあるグリルでは
鶏の丸焼きが、大きな鉄串
1本に3羽ずつ刺さり、
それが4〜5本、グリルの中でゆっくりとクルクル回る。焼け具合、匂いにお腹が鳴く。
店に入ると、日本の定食屋のような雰囲気の
レバニーズレストラン。
テーブルに着きメニューを
見ると、もりっとサラダ、スープ、ピタパン (おかわり自由)、鶏グリルの削ぎ切り、hummus!の定食セット。
クニが
「これでいいですかぁ」
お願いします!
ミネラルウォーターも頼み
あれやこれやとペチャクチャ話し、この人、仕事場では無口でクールだけど、
仕事から離れると話されるんだなと。
運ばれて来たお料理も
綺麗に完食。
「ご馳走さまでした」
店を出ると、クニは部屋に帰ると言うので私は最終の地下鉄でホテルに戻るから
ここで大丈夫ですよと。
明日、店に来なくてホテルにも居なかったら捜索願いをお願いしますと言うと、「大丈夫でしょ」と別れた。
気の向くままあっち行きこっち行き、のらりくらり、
ひとけのない路地を抜けたら、あ、この通りに出るんだなと。いきなり後ろから羽交い締めにされ暗がりに引きこんでいくような人には遭遇してない、プッシャーもいなけりゃ、飲んだくれの酔っ払いなど居る訳無い。そうしてるうちに
時計は11時を回り、特にナニをしたい気分でも無いので地下鉄の駅に向かう。
こらまた近代的なフューチャーな駅の作り。
目的地は20駅くらい先にある。途中乗り換え。
ホームに行くと、女性専用車両もある。間違えないよう地下鉄に乗る。
地上に出て窓の外、右側の夜の海にドバイパームリゾート(葉っぱの形をした、あの高級人工リゾートエリア)の明かりが遙か向こうまで続く。
人が少なくなり席が空いたので座ってると、すぐに乗り換え駅に着いた。
着いたが、この先に行く車両はもう無いと言うようなアナウンスが流れて、みんな降りてる。
私も降りて、駅のスタッフに地図の目的地駅に行きたいと告げると、指差して、バスに乗れと言う。
言われたまま行くと駅から出てバス停があり、おそらく同じ方向ではないかと思われる人達が並んでる。
バスが来て、フロントの行き先を見ると IBNの文字が見えたので乗る。空港内のエアポートバスのような作りだ。幹線道路に出て、途中いくつかのバス停に止まると、先の方にライトアップされたホテルが見えてきた。駅の前のバス停で降り部屋に戻ると12時半だった。なんとか辿り着いた。
歩き疲れたので、服を脱ぎ
そのままベッドに入った。
6日目 朝
7時前に起きシャワーを
浴び朝食へ。
入り口に
あのお嬢さんが居て
目が合うと「あら!」と
言うような素振りで
good morning!
ルームカードとサイン。
私の後ろから家族連れの観光客らしき人達が来てたので「ごゆっくりどうぞ」
thank you
卵焼きシェフもいた。
目が合い
長い付き合いのように
フライパンを指差し
私が手を合わせて見せると
手をクルクルと回し
丁寧にお辞儀を返してくれ
卵を割り出した。
皿を持ってトングで盛り付けていく流れる動作は迷い無駄なく美しく、
スムーズ。
そのままあのソファーへ
着き手を合わせて頂く様を
なんなら
このレストランでの朝食
ガイドマニュアルにしては
どうだ。
途中に軽やかなステップを
入れたりすると、など
派生するアイデアが
とめどなく溢れてくる。
それを生み出す源が
このhummus。
「いただきます」
今日は
レストランに
朝からピークの波が来てる
食べ終わったテーブルの食器を片付ける音があちらこちらで、隣のテーブルでは
ビジネストーク、向こうでは子供がキャッキャと。
私も空気を読んで
「ごちそうさまでした」
コーヒーをカップに注ぎ
そのまま持ってエレベーターで部屋に戻る。
一息ついて支度して店へ。
ベーカリーにいたクニへ
「おはようございます、
昨日はありがとうございました」
「捜索願い出さずに済んだようですね」
「ですね」
パラビンに
今日は
昨日と同じ仕込み、
タレ作り、トッピン具作り
の流れを説明。
ランチは昨日作ったスープでラーメンを食べたいスタッフ達に作るよと。
私は
レストランキッチンへ行き
料理メニューで使うソースなどの再調整と日本食では
定番のチキン南蛮をメニューに加えるべく提案の試作作り。
wazzup bro!
ニヤニヤして
昨日はどうだった?
楽しんだか?とシェフ達。
「楽しんだよ!サロンには行かなかったけどね」
そうか、外国人は
何倍ものお金を払わなくてはならない。
行く時はローカルの
慣れた人達と行くのがベスト。
我々は行かないけどね。
「だろうね、ありがとう」
お昼
チキン南蛮を作り
クニ、シェフ達と
エキシビジョンでユベントスとマンチェスターユナイテッドのサッカー中継を見ながらランチ。
パラビンにラーメンを
作って貰い麺を上げる時間を計って、タイミング、湯切りをしっかりやるのは大事だと教える。
覚える飲み込みが早いので
助かる。
夕方になると、
アーメッド、GFが来たので
ラーメンをパラビンにオーダーし、アーメッドに持って行くと「盛り付けをもっと増やしたい、アレをのせたい」と。
「アレとは何のことだ?」
「ちょっと待って」
スマホを取り出して何やら
「これ」
見るとナルトだ。
「私はオススメしない」
「why」
「because too many!
dont like」
それでなくても
鶏チャーシュー、味玉子、
コーン、青梗菜、水菜、赤玉葱スライス、刻み海苔で
埋まってる。
しかし、商品としてお店で
提供するのはアーメッド。
「please be your choice」
「ok!」
チキン南蛮を出すと
「very nice!like it!」
これのレシピを残してくれるんだろう?
「もちろん良いよ」
他に再構成したメニューの
ビフォーアフターを比べて
気に入ってくれたので良かった。
「ところで、昨日デイラに
行ったんだって?向こうのお店にも寄ったんだろ」
「あのカオスな街の雰囲気は好きだよ、お店も活気あるね」
「お酒は飲むのか?」
「たまに飲むくらい」
「僕もさ」
「遊び連れてってよボス」
「ハハハ、そうだね」
アーメッドの横に座るGFの
視線を感じたので、わざとらしくGFを見ながら
「この話しはここまで ダン」
GFが爆笑し
「ターキッシュコーヒー飲んだことある?」
「ない」
「飲んでみない?」
「いいね」
独特のポットみたいなのから
注がれるコーヒーは濃く、
スパイスカルダモンの風味がとても合う。
「美味しいね!」
「そうでしょう!良かった」
ベトナムコーヒーに
通じるものを感じた。
今日は区切りが良いので
これであがるよ。
「もちろんどうぞ」
モールのスーパーで
計り売りのスパイスを
自分用にチョイス。
スパイスナッツは
お土産用に数袋作って貰う。
デーツは明日でもいいか。
そう、明日で仕事も終わり
明後日には帰国。
誰かと共有した時間から生まれた喜びが、簡単では無かった時ほど、色濃く、沈む夕陽のようにエモーショナルに滲みゆく。
部屋に戻ると、
明日、明後日の着替え以外をノースフェイスのバックバックに順序よく詰めていく。残りスペースがお土産の目安。
シャワー浴びバスローブで寝転がりTVをつけると
砂漠にテントを張り、星空の下、火を焚き囲み、妖艶な女性たちがアラブ音楽に合わせてベリーダンスのような踊りをしている。それをうつろな目で座って見ている観光客らしき団体。
砂漠ツアーのプロモーション映像のようだ。
街から離れるとすぐに砂漠だとサトさんは話してた。
郊外に行くとチャイハナのようなカフェ、休憩処の
シーシャにチョコを入れてくれる所もあると聞いた。
この観光ツアーの観光客のうつろな目は酩酊してるのではないかと思えて仕方なかった。アフガン、モロッコは有名だと各地を旅する人から聞いた事がある。
そのまま寝落ちした私は、モスクから流れる大音量のアザーン(祈りが始まる合図の呼び掛け)で目が覚めた。ついたままのTVからだった。
7日目
着替えてレストランへ。
入り口のボーイに
ルームカード、サイン。
卵焼きシェフに
「シェフ、スペシャルを」
ピタパン を4枚取り
サラダの皿、フムス の皿にオリーブ、ザタールオイル。どんどんシンプルになってきた。オレンジジュースとデーツを持って席に行ってると、向こうから来るコーヒーを持った老夫婦が私の足元に視線を落としたので、見ると裸足だった。大丈夫、カーペットだし問題ない。気持ちいい。
「 good morning」と
言うと、笑顔をくれた。
妙なアジアンだと思ったか。dont care
「いただきます」
ひとつずつの動作も丁寧に
やってみたり。ゆっくりとする動作は、瞬間瞬間を噛みしめてる証。更に今は、
時の流れを遅めてほしい
心境の表れだろう。
こんなふうに感じて思える瞬間が、この先の人生で
いくつあるだろう。
今こうやって、それを感じてる私は、ここまでの過程、how-toを学んだ。
それをこれからの時間に実践していけばいい。
「やる時は本気でやろう」
そう思うとまた胸の奥が
満ちてきて、体温が少し上がったような感じがした。
「ごちそうさまでした」
店に行き
パラビンにスープと製麺、
鶏チャーシューの仕込み
わからない事があれば
私に声を掛けてと伝える。
私はレストランキッチンで
新メニュー提案の試作
お好み焼き(キャベツ、シーフード、アボカド)
ソース、マヨネーズ、
鰹節、青のり、レモンを絞って。
考えただけでも美味いと思う。
作ってると
シェフが横の作業台で
大きな牛肉のブロック、20kgほどを掃除(筋などを取り除く)しだして、取り除いた筋などををボールに入れてる。
「そのボールの筋などは
どうするの?」と聞くと
「僕たちの賄いにする」
「どう料理するの?」
「塩胡椒で炒める」
「硬くないか?」
「大丈夫、いつもだから」
私は思いつき
「それ全部使って料理して良いか?私が賄いを作りたい」
「yes chef!!」
大鍋でお湯を湧かしボイルした後、醤油砂糖香味野菜でコトコト夕方まで炊き
筋煮込みを作った。
出来上がりを米の上に乗せて食べて貰うと。
「なんだこれは!すごい美味しい!これはメニューに入れたい!」
アーメッドとサトさんも来たので食べて貰うと
「美味い!」
サトさんが
「日本酒飲みたいね!」
ごもっともです。
japanese traditional soul
food.
みんなに
ホルモンの話しをした。
もともと掃除して捨てる部に、アイデアと言う魔法をかけて堂々たる料理にした。商売とはそういう事だよと。
ホールスタッフもみんな
筋煮込みを聞きつけ
きれいになくなった。
ナイスなディスカッションができた。
クニが
「明日から遅番なんで
今日でお別れです。
ありがとうございました、
また、多分、経過みて何年後かわかりませんが、
メニューの味がブレて無いかとかで来て貰うように
なると思いますので、その時はよろしくお願いします」
こちらこそ有難うございました!その時を楽しみしてます。来れて良かったです。ハグ。
サトさん
「ヨッさん
明日11時前後に迎えに来ますんで、観光に行きましょう!」
「まぢすか!わかりました」
「チェックアウト済ませたら、ここお店に居て下さい。予定としては夕方にお店に戻ってくる感じで」
「了解です!」
アーメッド、GFのティトに
thank you so much!
I also hope that I can meet you next. I wish for that!
「yes me too!thank you!
yoshio」
ベーカリー、レストランと
それぞれのキッチンへ行き
「hi guys I go back to japan on tomorrow.
I never don't forget .worked with everyone.I wish next time to see you. When you come to Japan. Please Message for me.
connects in FB.
thank you very much!」
みんなとハグ。
パラビンに
「trust you. please ask me. you Don't understand .ok?」
yes chef!
シェフミキ
「明日早番だからまた会えるね」
「ですね!」
ホールスタッフは
忙しそうだったので手短に
挨拶をして店を出た。
スーパーでデーツを買って
部屋に戻る。
バックパックにパッキングしていく。
冷蔵庫には1ダース持って来て1本しか飲んで無いビールが埋まってる。
明日、レストランキッチンに持って行っでやろう。
机の上、引き出しの中、クローク、ベッドサイド、忘れ物が無いかチェック。
着てた服も袋に入れてパッキング。バスローブを着る。紫のライティングのムーディーな部屋。窓からの夜景も見納め。
目に映るひとつひとつが
私をもてなしてくれた。
明日は観光だ。寝よう。
8日目
7時に起きて
バスタブにお湯をためる。
ローカルの音楽チャンネルをつけて風呂に浸かる。
スッキリしたとこで、
着替えてレストランへ。
受付のお嬢がいる。
good morning!
how are you
「私は元気、あなた仕事は順調?」
「順調に終わったので
今日チェックアウトだよ」
「そうなのね、またドバイに来るの?」
「来たいね、ここの朝食を
食べに」
「そうなるわよ、ゆっくり食事されて来てください」
「ありがとう」
卵焼きシェフに
「今日が最後だから
忘れられないようなスペシャルを」
「わかりました、チリは好きですか?」
「好き」
「最高のやつを作ります」
「よろしく」
カンパーニュとピタ。
フルーツ、サラダ、ヨーグルト、フムス 、ハム、チーズ、グリル野菜、豆の煮物。オレンジジュース。食べ納め。
「いただきます」
テラスのプール。3階の大きなガラス張りから見える景色は、立ち並ぶベージュ系の建物の屋上と空が地平線の方へ連なり陽が照らす。
卵焼きシェフが
チリを刻んだオムレツを
持って来てくれた。
「スペシャルです、召し上がってください」
ありがとう!
30分ほどかけて
ゆっくり食べた。
空いた皿をボーイが
下げに来て、
「would you like a coffee ?」
yes please
「sugar&milk?」
no thank you.
コーヒーを運んで来てくれた。
香ばしい香りと
微かに流れる
ダウンビートのチルアウトが気分をニュートラルにトリートメントしてくれる。
ゆっくり飲み干すと
席を立ち、卵焼きシェフに
手を合わせて、ありがとう!
卵焼きシェフも手を合わせてお辞儀。
受付のお嬢はいなかったのでそのままエレベーターで部屋に。
ゆっくりと見渡し最終チェック。冷蔵庫のビールを出す。忘れ物なし。バックパックを肩にかける。
クロークの鏡に映る私は
Tシャツ、寅一の黒の7分ニッカ。ヨシ。
「お世話になりました」
ルームカードを持って
ドアを開けて出る。
ドアに記される
ルームナンバー1019。
今日は10月19日。Flyday
そして私の誕生日。
この数字が示すものが
偶然だとか考えない。
全て、流れの中に私は居るだけ。
気分はとても良い。
外のコンディションのように雲ひとつない空。
「ありがとうございました」
エレベーターでフロントへ降りてチェックアウトを済ませる。
「当ホテルに滞在は
いかがでしたか?」
「とても良かった。あとフムス に恋に落ちたよ」
「フムス ?食べるフムス ?そうでしたか、それは良かったです、またお越しいただけることお待ちしております、ありがとうございました、良い旅を」
「ありがとう」
また別のアングル、
キャラクター設定でカメラをまわすならば、
今のチェックアウトのシーンを再現すると、
「いかがでしたか滞在は?」
「気にいらねー」
「何か不備がございましたでしょうか?」
「あの女、レストランの受付のあの女だよ」
「はい、女性スタッフがいかがなさいましたでしょうか」
「つんけんとした態度が気にいらねー、が、気に入ってる」
「え?はい、ありがとうございます」
「ありがとうございますじゃないんだよスカタン、このホテルに来たために、俺の心は乱されちまって病気になった。そこでお前に聞くんだが」
「はい」
「あの女、幾らだ?」
「え?」
「あの女は幾らだって聞いてるんだ」
「申し訳ございません、当ホテルではその様な斡旋も交渉も致しかねます」
「ホテルも商売でやってるんだろう?幾らだったら良いんだ?え?言ってみろ」
「ですから、当ホテルでは一切そのような」
「オラァなタマなら幾らでもあるんだよ、ほら!」
ボストンパックから札束を掴み取り宙に撒き散らす。
「お客様、お客様、困ります!その様な、その様な、でしたら、その様な所で」
「おめぇ、俺は、あの女がいいと言ってんのがわかんねーのか」
フロントマンのネクタイを掴んでグッと引き寄せて、鼻と鼻が付きそうなところで、札束をフロントマンの胸のポケットにねじ込む。
「スタッフに御好意頂けたのは当ホテルとしても大変光栄ではございますが、はい、しかし、困ります、お客様」
「じゃあ」ともう1束
「ですから、困りますぅ」
目でセキュリティに合図し
やって来た2人。
その2人に
「お前達はしばらくバカンスにでも行って来な」と
札束を一掴みずつ持たせると、2人は目を見合わせて
そのまま出て行った。
「おい!おい!君たち!ちょっと!」
それを見ていた
チェックインに訪れた家族連れ、観光客の団体。
無邪気に札を拾いとる子供の手を引っ張って引き返していく。
フロントマンはお手上げ。
内線電話が鳴り、
裏で雑用をこなす
女性スタッフは呼ばれ、
フロントの有り様、
辺りを見回し困惑顔で
「いかがなさいましたか?」とフロントマンに。
来たや否や、男はoh!と
女性の前で両手を上げ
ひざまづき、
ゆっくりとサングラスを取る。3秒見つめたあと
「俺はお前にイカレちまってる、一緒に来てくれ、側にいて欲しいんだ」と
胸の前で両手を組む。
男の目を5秒見て、
厳しい表情の後、
女性はフッと笑い
「sure」
結いてた髪をほどき、
ボストンバックを持ち
男に手を伸ばし
「行きましょ」
何事もなかったかのように
出口へ。エレベーターが開き、チェックインに訪れた観光客とすれ違いながら
エレベーターに乗ってドアが閉まる。
カット。
ブルースブラザーズに登場するジェイクこと、ジョンべルーシに捧げるオマージュにもなる。
笑いがこみ上げてきそうなモールの中、バックパックを背負ってビールの入った袋を片手に店へ。
店内には数組のお客さん。
ホールスタッフが
hi!chef!
それぞれのキッチンへ行き
皆さんに挨拶して、
シェフミキに
「バックパックを裏に置いてていい?」
「いいよー、サトさんと観光でしょ!楽しんで来て!」
「うん、ありがとう!」
レストランキッチンへ行き
「差し入れがある、ビールだけど欲しい人いる?」
「of course!!」
「みんなでシェアして」
「thank you!thank you!chef!」
「 you welcome」
カフェでコーヒーを
飲んでると
サトさんが来て
「よっさーん、お待たせ、行きましょう!」
真っ黒のコルベット。
「サトさんカッコいいね」
「いやいや、もうガタきてますよ」
幹線道路を旧市街地へ向けて走る。
「今日ね、家を出る時
ウチの嫁さんが、今日のあなた楽しそうねって言うのよ。僕は日本から来たゲストをよく観光に連れてくんだけど、基本みんな取引先だったりのビジネスマン。お互いに保ってるラインみたいなのもあってさ、つっこんだジョークを言うなんてほぼ無いよね。だからどうしても業務的と言うか。そんな僕を、いつも嫁さんは見てるから、今日の僕がニヤニヤしてたのかどうかわからないけど、いつもと違うのを感じたんじゃないかな。だってほら、よっさん見てよ、僕、短パンだし」
サトさんは同い年。
元々、有名な車のプラグメーカーNGKで中東からアフリカエリアを一括して任されてたような人。ほぼ毎日各国出張だったとか。時代の流れで車業界に電気自動車が登場し始めると、先を見据えたサトさんは会社を辞め、長年培った経験を活かし、日本と現地を繋ぐ個人商社を始めた。「大手が幅を効かせるから大変ですよ」と本人は言うが、持ち前のバイタリティで現在に至る。
若かりし頃はバックパッカーで世界各国を渡り歩いた事から現在のドバイ事情まで面白おかしく話してくれる。
例えば、
世界一高い と言われてる
タワー
burjkhalifa は出来上がる寸前に
2009年前後の
ドバイショックと言われる
金融ダメージ、 アラブの春 と呼ばれてたのを耳にされたことは?
治安も悪くなり
お金が尽きた
ドバイが隣の県の
abūdhabīī に費用
を捻出してもらう肩代わりに、ブルジュドバイだった名前を
Abū Dhabīの長の名前 khalifa に変えられ、最上階の部屋を執務室として明け渡したとか。
ドバイやアブダビと他5つの県? 計7つで国を構成されており、首長は常にアブダビの長がなるとの事。それは、何故かというと、油が出るからお金があるので。そのような社会地理、歴史を交えなら、川沿いの旧市街地へ。
昼間の旧市街地は
また景色が良く、運河のような河口、大きな川沿いには対岸に行くポンポン船の様なのから貨物線まで、岸壁に並ぶ。対岸迄の距離感雰囲気はどことなく関門海峡にも似てる。
まずは旧市街地にある、
スーク(市場)へ。
路地の両サイドには所狭しと詰め込んだように、スパイス、民俗衣装、雑貨、民芸品、揚げ物屋など並ぶ店は各国共通のカテゴリ。
スークと呼ばれるここは
世界一の流通量と言われる
ゴールドスーク(金)
スパイススーク(香辛料)
で有名。
ひとつ横の通りには
軒先を連ねるゴールドショップ。世界一の金細工がガラス張りのショーウィンドウに飾られて、ここを通る観光客は写真を撮る。
多様なデザインのゴールド、中でも多く目についたのが、ファティマ(手のひらに目が付いたあれ。幸運のシンボル)のペンダントヘッド。
賑やかな喧騒を盛り立てる呼びこみ。観光客をウチにウチにと大きく派手なジェスチャー。日本人を見ると
「ピカチュー、どこ行くねん!、これ最高やでー!」と大きなの声で関西弁が飛び交いだす。
面白い。なにより関西人の行動力、インパクトは世界に通用するさまを、見せつけられた。浪速の商売人魂。流石。
歩いてると呼びこみに強引に手を掴まれ民俗衣装店に
連れ込まれる。
あれやこれやと慣れた手付きで膝下まである中東の白いワイシャツみたいな衣装を、頭からすっぽり着せられて、600ディルハムからスタートして、300まで下げるも、「じゃ。幾らなら買うねん、ジャパニーズ?」と電卓を渡され、打ち込んだ数字が20。
ありえないと店主の目が宙を泳ぐ。無理なら脱がせて私は行くからと。
「考えなおしたら店に来い」と脱がす。
1ディルハム、30円くらい。
スークを抜けて川沿いの
港へ。
2〜30人乗りのポンポン船。真ん中に長椅子ベンチが二列あり、背中合わせで座る。10分もかからずに到着。オールドドバイと呼ばれるこの地域はその名の通り、昔から続く歴史的建築物が色濃く残り、中をリノベーションした宿などミュージアム、路地の軒先では民俗衣装を着た皺の深いおじさんたちがタバコをふかしている。
私は建築物のドアについてる金属の取手や水道の蛇口、昔ながらの錠前や蝶番
アイアン装飾などを興味深く見いる。
街のモスクからは大音量で
礼拝のお知らせが響き渡る。
「よっさん、ぼちぼち戻りましょか」
船着場から船で戻って
スークを抜けて駐車場。
「よっさん、アーメッドから預かってた今回のギャラです。全部ドルにしてますので確認してください。あと、空港までは店の車で送ってくれるとの声です」
「了解です、サトさん、色々とありがとうございました!また、何か有ればぜひお願いします」
「もちろん、こちらこそ」
サトさんと話してるとあっという間に店に着いた。
店にバックパックを
取りに行くとホールスタッフのチーフが、ベーカリーキッチンに行ってと言う。
行くと、いつも通り皆さん仕事されてて「また会おうね」と別れ際のやり取りをしてると、お店のスピーカーから大きな音でスティービーワンダーのhappy birthdayが流れると、ホールスタッフ、シェフたちが、ろうそくのついたチーズケーキを持って流れ込んで来て、ハッピーバースデーを歌って祝ってくれ、
ろうそくの火を吹き消すと
みんながおしくらまんじゅうの様になりながらも
声を掛けてくれた。
あまりにもの展開の早さに
驚きよりも、流れのテンポを崩さないように気をつけた。冷めやらぬ時に私はポケットからスマホを取り出すと、それをニヤニヤしながら見てたサトさんが「撮ってあげるよー、はい、みんなコッチ向いて1-2-3!
はい、もう一枚1-2-3!」
「hey buddy!
thank you so much!
Ilove you guys!」
ヒューヒューパチパチ。
撮り終わるとスーッとそれぞれの持ち場にみんな戻って行った。
「よっさん、僕ね、短期間でスタッフみんなとこんなになるなんて思いもしなかったよ。愛されてるね」
「何言ってんすか、サトさんのおかげですよ!本当、ありがとうございました」
ドライバーが迎えに来たので、みんなにもう一度お礼をして、外に出た。
「サトさん、また!」
「よっさん、またね」
ハグをした後、
荷物をバンに積み
空港へ向かう中、
ジェットコースターのようなさっき迄が徐々に
押し寄せてくる。
空港に着いた時は街灯が灯りだした。
ドライバーに、ありがとうを告げハグし、出発カウンターへ。チェックインを済ませて、両替所で、手持ちのディルハムをドルに替える。フードコートに上がり夜の滑走路が見えるアラブレストランでケバブとビールを頼む。
ビールを流し込むと
久々の酔いがドバイの余韻から、次のバンコクへと滑らかに気持ちを乗せてってくれた。
「バンコクでトランジット
18時間、久しぶりだなぁ」