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情けは人の為ならず 無一郎くんから学ぶ思いやりの心

刀鍛冶の里編は無一郎くんの成長物語でもある。

過去のトラウマから記憶を無くし他人へ辛辣な態度を取り続けていた無一郎くんは、刀鍛冶の里での炭治郎たちとの関わりの中で徐々に記憶を取り戻していく。

小鉄くんと問答しどんなに拒まれても自我を押し通していた無一郎くんは炭治郎から

『配慮がなく残酷である』

と窘められ、その様子には悪意は無かったものの他者との接し方に問題があるように描かれていた。

その後「人の為に何かをすると巡り巡って自分の為になる」と炭治郎から言われた無一郎くんは、鬼に襲われている小鉄くんを目の当たりにしたが『里長や技術の高い人物から優先的に助けるべきだ』と小鉄くんを見捨てようとする。 

しかし、先ほど炭治郎からかけられた言葉を思い出し、次の瞬間には小鉄くんを守っていた。

あの無一郎くんが自分を助けてくれたということに泣いて喜ぶ小鉄くんから「他の仲間も救ってほしい」と頼まれ、一時はスルーしようとするも今度はお館様からかけられた言葉を思い出し、自分の行動に疑問を抱きつつ鬼の元へと向かう。

攻撃を受け水獄鉢に閉じ込められた無一郎くんは自分の判断ミスを嘆いていたが、初めて他人の為を思い救った小鉄くんに今度は自分が助けられる。 

玉壺から攻撃され自らの命も危ういのに身を呈して自分を救出しようと奮闘する小鉄くん。

その姿を見て感情を露わにしながら叫ぶシーンは今までの冷淡な無一郎くんとは全く違い、 無一郎くんがリアルタイムで抱える戸惑い、葛藤などが絶妙に表現されていた。

人の為にすることは巡り巡って自分の為になるということ、人は自分ではない誰かのために信じられないような力を出せる生き物だということを炭治郎と父親から聞いた無一郎くんは

『うん、知ってる 』

と呟いた。記憶を取り戻した瞬間だった。


致命傷を負ったはずの小鉄くんは生きていて、 後にそれが煉獄さんのおかげだと知った無一郎くんは在りし日の煉獄さんを偲び涙を流す。 

新入りの自分を熱く励ましてくれたこと、死して尚、人命を守ったこと。

あの涙は、無一郎くんが記憶と感情を取り戻したことによる煉獄さんへの感謝と尊敬が込められた、霞柱ではない一人の14歳の少年としての涙だったのだと思った。

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