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人生、哲学、愛━━そして聖剣伝説 LEGEND OF MANA

 『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』、ずっとやりたかったんです。

 なんかもう、「聖剣伝説として」ではなく、「単純にRPGとして」気になっていた。PS期の2D表現を極めたようなビジュアル、独特極まりないシステム……実際、周囲の人からも「多分聖剣LoM好きだと思うよ」と言われ続けていました。そして自分としても、「多分このゲーム絶対好きだろうな」と。

 そんなこんなで「聖剣LoMはいつかやろう」と思い始めて、2~3年くらいの月日が流れました。で、今こそ『聖剣LoM』を遊ぶ時だと。待ちに待った『聖剣LoM』を、とうとう遊ぶ時が来た。

 そこにあったのは、人生だった。
 そこにあったのは、哲学だった。
 そこにあったのは、愛だった。

 あまりにも壮大で、かと思いきやちっぽけで、それでもどこか身近な気がする世界。そんなファ・ディールでの冒険を、これから書いていきます。まさに、「冒険の日記」だと思って読んでいただければ。

 なんかやたらと壮大そうなタイトルですが、そんなに大したことは書いてないかもしれません。何卒、よろしくお願いします。こまけだら。




オープニング

 聖剣LoMは一応リマスター版が発売されているのですが、今回は実機でプレイしました。なぜなら、私の聖剣LoMの楽しみのひとつに、「このグラフィックを万全の状態で堪能したい」というものがあったから。

 実はこのゲームを遊ぶ少し前に、『サガフロンティア2』というゲームを遊びました。そこで痛感したのが、「PS期の2Dグラフィックは実機で出力しないと、本来の絵面を体験できない」ということ。PSでの描画に最適化されている以上、PSで出力しないとグラフィックの味が損なわれる。

 なんだかいきなりマニアックな話で申し訳ないけど、聖剣LoMに関しても「間違いなくそうだろうな」と感じていた。だから、わざわざ中古でPSの聖剣LoMを買ってきた! そして、グラフィック最高! 文句ナシ!!

 もう、最高のグラフィックでしょ。正直、このグラフィックは現代でも通用すると思う。なにか、失われてしまったロストテクノロジーすら感じる。

 そもそも、私は『FFT』『サガフロ2』『ゼノギアス』あたりの、「2.5次元ドット」みたいな表現が大好きだった。その話をするたび、周囲の人から「じゃあもう聖剣LoMしかないんじゃないですか?」と言われていた。だから、勝手に聖剣LoMへのハードルも上がりまくっていた。

 もう、大満足ですね。これは究極のドット表現です。
 文句なしに、「到達点」のビジュアルだと思います。

 ぼくが、ドミナの町があると思うから、あるんだって。詩人のポキールも言ってたよ。世界はイメージなんだって。他の人はチガウって言うけど、草人はそれを知ってるの。

 家の前にいた草人<くさんちゅ>が、妙に深いことを言う。
 聖剣LoM、深すぎる。

 そうだ、ひとつ言い忘れたことがあった。さっき、「今回は中古のソフトを買った」と言ったじゃないですか。それで、ちょっと軽い奇跡が起きちゃって。なんかケースの中に「先代所有者の攻略メモ」が入ってたんです。

 それが、これ。

 この文字のかすれ具合と、風化して茶色くなったセロハンテープの跡……どう見ても私がその場で仕込んだものではない「年月」を感じるでしょう。たぶん、本当に聖剣LoM発売当時のプレイヤーなのではないでしょうか? え、つまり数十年前に遊んだ人のメモってこと? すごくない?

 せっかくなので、今回はこの攻略メモを随所で使いながら遊んでみることにしました。ありがとう、先代攻略者。あなたの思いは受け継ぎます。まぁ、ゲーム冒頭なので何書いてるか全然わからないんですけど。

 こんな感じで、割と適当な日記だと思って読んでください。
 どうでもいい日記が、およそ60本近くあるような記事です。


ニキータ商い道中

 デブくてかわいいニキータと一緒にやってきたのは、ドミナの町。曲が良すぎる。この曲、誰が書いたんだろう? なになに、下村陽子? おお、なんだかよくわからないけど、この人きっと売れますよ!

 この音楽に、この緻密なグラフィック。もう、至福のひと時です。なんだか、本当の意味で「こんな世界があったらいいのにな」という世界観に足を踏み入れている気がします。

 そしてドミナの町にも、大量の職人芸グラが用意されている。特に室内。武器屋と、その2階のグラフィックとか、これが使い回しでもなんでもないのがヤバい。もう、グラフィック目当てで遊び始めた身としては、正直何も言い残すことがない。ありがとうございます。

武器屋の2階が好きなんだ、この生活感が

 そしてアーティファクトを使って「リュオン街道」を設置することになったけど、サッパリ意味がわからない。マナのレベル? 属性の関係? マイホームからの距離によって敵が強くなる? うん、日本語でおk。

 まさに『FF8』や『サガフロ2』のシステムなんかがそうだけど、スクウェアの不思議なシステムは「なんて革新的なシステムなんだ!!」という感動より、シンプルな困惑の方が先に来る。そこが面白い。まず、「どういう発想?」という困惑が先。で、聖剣LoMのランドメイクもかなりそれ。

 そしてリュオン街道にプレイヤーを導いてくれそうなタマネギ男がいたので、率直に「難しくてよくわからない」と伝えてみた。

好きなように楽しんでごらん。
何もしなきゃ何もおきないし、何かやってりゃ何かおきる。
難しいことは考えないで、雄たけびでも上げながら暴れてみればいいさ。

 うーん、何の説明にもなっていないのに、謎の勇気が湧いてきます。

 しかし改めて考えてみると、このセリフ、聖剣LoMのすべてだと思います。何もしなきゃ何もおきないゲームだし、何かやってりゃ何かおきるゲーム。それが聖剣LoM。それこそが人生。

 ここで話せるドゥエルのセリフ、全部好きなんですよね。「好きなコの名前を大声で叫びながら戦うんだ。それしかないよ、ホントに。」って、もう完全にドゥエルの脳内ボイスがケンドーコバヤシになってる。ケンコバ並の人生の含蓄をこのタマネギ男から感じる。したらな!!

 しかしこのドゥエルや草人のみんなで寄ってたかって抽象的なことばっかり言ってきて、妙に煙に巻かれる感覚……なんだか『少女革命ウテナ』の榎戸洋司回を見てる時とほぼ同じ気持ちになります。伝わりづらい?

 そして、妙に熱くてカッコいいボス戦BGMのチグハグ感。街の音楽はあんなに「THE・ファンタジー」といった感じの曲調なのに、ボス戦になると異様に熱い。このチグハグさが、むしろ「らしさ」に繋がっている気がする。

 下村陽子、ああ俺たちの下村陽子。


小さな魔法使い

 街のはずれで、なんかふたりの魔法使いと戦うことに。
 何気に、このゲームってキャラデザかわいいですよね。

 そして喧嘩両成敗したと思ったら、このふたりが平然と俺の家に住み着いてしまった。別に許可出してないんだけど? え、何勝手にリビングに居座ってるわけ? 大家さん!? ちょっと大家さん!?


ペット牧場

 「イカレモン」というよくわからない名前のアイテムが手に入り、流石に気になったので地面に置いてみたら……本当にイカレモンだった。果物まで無駄にかわいいところ、すごく良い。徹底したデザイン。

 そして「ペット牧場」なる機能が解放されたけど、ここでポケステが要求される。だからポケステ持ってねえって! PS期のスクウェアタイトル遊ぶといつもこうだ! ポケステ持ってる前提で話しかけてきやがる!!

結局「リング・りんぐ・ランド」は未プレイです


ガイアの知恵

理解なんてできない! あきらめるなんて、弱い心から生まれてくるものだわ! 彼女はわたしよりずっと強い心を持っていたのよ!
悪魔が彼女を変えたの! 私は彼女を元にもどしたいの!
今の彼女は、もう今までの彼女とは違うの……

人は自分を自分で決める力を持っている。
あなたは、それを知るべきだ。その人はあなたに色んなことを教えようとしている。それに耳を傾けなさい。

 聖剣LoM、哲学。

 ある意味、ここで「エスカデ編」がスタートしていると言えるんでしょうか。ダナエは「彼女」のことを理解できないと憤り、思ったより3Dの動きが気持ち悪いガイアに相談してみる。そして返ってきた回答は、「人は自分を自分で決める力を持っている。あなたは、それを知るべきだ」。

 このセリフ、エスカデ編を終わらせた今だから言えますけど、エスカデ編の「すべて」じゃないですか? 人は自分を自分で決められる。それに耳を傾けよう。いや、傾けるべきだった。聖剣LoM、深すぎる。


果樹園

 なんかシレっとすごい美術表現をしている気がする。
 これ、木の表情が動くの絶妙にキモくていいですよね。

 このビジュアル周りを含め、聖剣LoMの「この世界には何かすごいものがあるような気がするが、やっぱり何もない気もする」という絶妙なバランス感覚が結構好きだったりします。「何かがありそうな気がする」という意味深なオーラを出し続けるのが上手いんですよ、このゲーム。

 ちなみに、果樹園が解放されたあたりで、あの(推定)数十年前の攻略メモの1枚が「果樹園における種の配合表」なのではないかということが判明しました。ちょっと謎に感動してしまう。

 なんか、こっちはこっちでサブクエみたいになってきてるというか……「意味のわからない攻略メモを読み解く」という、古文書の解読のような楽しさが生まれてきてます。


まいごのプリンセス

 このマップ上で話しかけてくるのはルールで禁止スよね?

 「瑠璃」が本格的に出てきました。
 こんな顔が良いだけのストーカー、困るんだけど。

 この「宝石泥棒編」、一度アニメ化されていたこともあって、さすがに存在は知っていました。一応、この話を書いているのがサガフロのアセルス編を書いた人と同じなのも知ってた。もう納得感しかない。この「ねっとり感」っつーんですか? 異様にネバっとしたテキスト、知ってる味よ!!

少女趣味だよねー良いよねー

 ジ、ジスロマックおにいさま!?!?!?!?!?

 あとあと身に染みてくるのですが……わたし、若干「真珠姫」が苦手なんですよ。思い返してみると、この初対面の相手を「おにいさま」呼びしてくる迂闊さの時点で、やや苦手だったのかもしれない。また後で話します。


獣王

 

 豆一族を探しに、ジャングルへやってきました。
 しかしこのジャングル、正直いい思い出が全くありません。マップは複雑だし、何よりこの「獣王」というクエストでやたらと雑魚に苦戦を強いられたから。なんか、途中で出てくるゾンビみたいなヤツが倒せない。

 元々この時期のスクウェアタイトルはひと癖もふた癖もある難易度でお馴染みだけど、まさか「シンプルに雑魚に勝てない」という詰み方をするとは思わなかった。そして、対策を練り始める。

 いろいろ調べてみた結果として、とりあえず初心者は「弓」を使ってみるのがいいらしい。さっそくドミナの町で弓を調達。ジャングルで狩人になってみる。するとどうだろう、敵を近づけず遠距離から安全に撃破できる。

 でも、なんか俺の思ってた聖剣伝説と違う。
 もっとこう、気持ちのいいアクションを倒しむのが聖剣伝説じゃないのか。聖剣初プレイが何を言う。でも、思ってた聖剣と違う!!

 剣のような近接武器を使うと聖剣伝説っぽい戦い方ができるけど、思いのほかしんどい。弓のような遠隔武器を使うと思いのほか楽に戦えるけど、作業感がすごすぎる。剣を握らなければおまえを守れない剣を握ったままではおまえを抱き締められない。渋々、しばらく弓で戦うことになりました。

 「るったらーじゃねぇっつの……」と思ったら、既に登場人物が先回りして「るったらーじゃねぇっつの……」と言っていた。この「絶妙に腹が立つ」感じのキャラ描写、聖剣LoMの十八番ですよね。

 どいつもこいつも、微妙に腹立つキャラしてる。それをかわいいグラフィックで絶妙に中和できてなくて、なんとも釈然としない気持ちだけが残る。これ、聖剣LoMのいいところだと思ってます。

野菜日記①:
「アルマジロみたいなキャベツあるー!」と思って収穫してみたら、
本当にアルマジロキャベツだった


星に願いを

 次にやってきたのはデュマ砂漠。先生がどうこう言い出して砂漠をさまようハメに。イベント自体もなんか不思議な感じだし、生意気な学生に道をふさがれるし、聖剣LoM濃度の高さに頭がクラクラしてくる。

 しかもこのデュマ砂漠、真っ当にやっていると気が狂いそうなマップ構造になっている。もう攻略見ました。やってられない。ジャングルもそうだったけど、割かし素面で真っ当にやってると気が狂うマップ構造が出てくる。

 そして、世界を滅ぼしかねない「星を生む」魔法が発動されてしまい、この世界は炎の海に……なるはずもなく、たくさんの花火が打ち上げられて終わった。なにこのオチ。なにこの不思議なイベント。ヤバい、LoM濃度がどんどん高まってきてる。不思議なゲームすぎるってこれ。

 ただ、この「世界を滅ぼしかねない魔法だと思って使ったら実際は花火だった」という肩透かしオチ、さっき言った聖剣LoMの「なにかがありそうに見えて、その実なにもない気がする」という世界観を体現しているような気がする。この絶妙に「スカされる」感じがたまらん。わかる?

野菜日記②:
「ドッグピーチ」の犬の遺伝子が強すぎる感じにじわじわくる


精霊の光

まず、基本は『ぐま!』
これにはあいさつの意味もあるし、YESの意味もある。

反対語は『まっ』
これは、NO。ダメ。あるいはさようならの時も『まっ』。

『ぐ~』はあなた、
『ま~』は私。
『ぐまぐまま』は友達です。

『ぐまぐま』はアナグマのことを指し、
『まぐまぐ』はそれ以外の生き物の意味です。

『んぐ』は光や星を指し、『んま』は闇や夜のことです。
そして『んぐんま』はランプ。

『ぐままままー』はたくさん。
『ぐ』は少し。
『ぐーまー』は音楽のこと。

『ぐま-』はどうぞ、
『ぐげ』は嫌な気持ちの表現。
『ま?』はギモン文です。

 助けてください。

 こんなの覚えられるわけがない。「まぁでもこういうのって大体ゴリ押しでなんとかなるやろ」と思い、その辺のアナグマ相手に「ぐま」と言ってみたものの、あっさり会話が終了。どうやら機嫌を損ねたらしい。

 しかもこのアナグマコミュニケーションを数匹のアナグマ相手に成功させる必要がある。1匹でさえ無理ゲーなのにランプ全部売ってこいとか無茶言ってんじゃないよ!!!

 ということで、“““““本気”””””出させていただきました。

 わざわざメモ帳に、物理的にアナグマ語をメモる。そしてアナグマのセリフを実際に書き起こし、言語をひとつずつ当てはめていく。以前、実際に日本語をリアルタイムで別言語に翻訳してもらったことがあるのだけど、その人はノートにメモを取っていた。うーん、翻訳にメモって大切ですね。

 実際に、「んま んぐ ぐままま ぐ〜 ぐま ま?」を「夜 光 たくさん あなた はい! ?」に直訳して、「ぐま!(ランプがあります)」と答えてみる。そうしたら、コミュニケーションが成功した。ランプが売れた。巻き起こる謎の感動。有史以来、人類はこうやって発展してきたのかもしれない。

 なにこの唯一無二の感動。きっといろんな人が英会話などを習って覚えるはずの感動を、私はアナグマ相手に人生で初めて発動させてしまった。なんという機会の損失。この悲しみをどこにぶつければいいのか。

「キミには夢がないのかい?
 キミと話をしていると、ボクはさびしくなってしまう……」

「私は毎日、楽しい夢見てるわ。
 あなたと話してると、今の自分が否定されてるみたい。」

「夢を持とうよ、リュミヌー。
 今のまま閉じこもっているのはよくないよ……」

「私の夢、夜見る夢、楽しい夢、
 それは全部あなたには見えない嘘の夢なの?」

 聖剣LoM、人生。

 こんなに頑張ってアナグマ語を習得して、こんなに頑張ってランプを売りさばいて見せられるイベントが、男女間のすれ違い。花束みたいな恋をした始まってる? お互いにとっての「楽しい夢」が違っていた。それだけだった。はずなのに。ふたりは別れを告げる。

 個人的には、このあと出てくる「ベッドに入ったら、ランプは消すでしょう?」というセリフがめちゃくちゃ好きです。聖剣LoM、大人のゲームすぎる。ランプが大きくても、小さくても、愛の前では本当は関係がないはずだった。夢の大きさが違くても、愛を育める……はずなのに……。

 あんなに翻訳頑張ったのになんでこんな気持ちにされなきゃいけないワケ?

 ギルバートって、少しヘンだったけど、悪い人じゃなかったわ。彼はもっと大きなランプが欲しい人なのに、私のランプはとても小さいの。

 ランプが大きくても小さくても本当は関係がないはずなのに。
 だってそうでしょう? ベッドに入ったら、ランプは消すでしょう?
 実を言うと、ちょっとだけ沈んでいます。


もう1人の自分

 ある日突然、ドミナに自分の暗黒面が現れた。
 嘘でしょ……………。

 なんて言うか、コイツはその、オレの暗黒面なんだとか。まぁ、多分、暗黒面らしい。暗黒面なんだからもっと暗黒面らしく自信持ってくれよ。

 何の脈絡もなく暗黒騎士のジョブクエが始まる感じ、聖剣LoMでしか許されないかもしれない。「しかし、オレ自身、誰かの暗黒面でしかない自分ってのがよくわからねぇ。」じゃないんだよ。もっと自信持てよ! 俺の暗黒面がこんな自己肯定感低いの逆に自信なくすわ!!

 が、強い。俺の暗黒面が強すぎる。

 なんだか若干特殊な条件で出現するイベントらしく、ボスのシャドウゼロワンが明らかに現時点で戦う強さじゃない。「頑張れば倒せるかも」という可能性すら感じない。うん、多分無理だわ。

 ということで、諦めました。


危険なアフタヌーンティー

 そんなこんなで、ドミナの町にいる俺の暗黒面からミンダス遺跡に逃げ出してきました。勝手に念力を注入されました。勝手に入れないでください。

 しかし、前門のシャドウゼロワン後門のミンダス遺跡とでも言うべきか、この遺跡もマトモにやっていたら気が狂うマップ構造になっている。ていうか、もうジャングルとデュマ砂漠を越えている。この遺跡に真面目に向き合うと発狂する。なんなんだよ「シンクロしてます。」って。

人生には冒険がつきものさー!
エンジョイできるヤツだけが大きくなれるのさー!

そやね、茶ぁ飲んで、もう忘れよ。

 聖剣LoM、人生。

 ……いや、なんかいい感じのセリフで丸め込まれそうになっている気がする。この明らかにヤバいマップ構造を「人生には冒険がつきものさー!」の一言で丸め込もうとしている気がする。俺は茶ぁ飲んでも忘れんぞ。

 ミンダス遺跡って、多分ギミックそのものがそこまで入り組んでいるわけではないと思うんですよ。ただ、肝心のNPCが「シンクロしてます。」「私はカギです。」「来ない まだ来ない」みたいなレジェンドオブマナ語でしかしゃべらないから、マップに何が起きてるのか全くわからないのがヤバい。

 ていうか、サボテン君日記で実質的に開発チームもミンダス遺跡は迷うの承知で作ってることが発覚して、さらに気が狂いそうだ。「いっぱいいちをわすれて、くらくらしたらしい」じゃないんだよ。あ、何気にこの記事だとサボテン君日記が初登場ですね。


もう1人の自分(リベンジ)

 ミンダス遺跡でちょっとレベルが上がったので、シャドウゼロワンに再挑戦してみたら……なんかぬるっと勝てました。

 あんなに苦戦したはずだったのに、ちょっとレベルを上げて武器を槍に変えて、↘△で延々とハメたら普通に勝てました。いやこれどっちかっていうと槍の↘△ハメが強いだけじゃないか? 

 あと、ゲーム内の必殺技の習得条件に、武器の使用回数だけでなく、「ジャンプ」や「前転」といったアビリティの使用まで要求されていることもこの辺で知りました。そんなん気づかなくない? どおりで槍の必殺技増えないと思ったんだよ。聖剣LoM、深すぎる。

野菜日記③:
サイメロン、流石にキモい


鍛冶屋ただいま閉店中

 なんか徐々に聖剣LoMの絵作りに目が慣れてきたせいで普通に感じてしまうけれど、冷静に俯瞰するとすさまじく気合の入った部屋ですよね。やっぱり聖剣LoMのビジュアルは「室内」で真価を発揮していると思います。

 ってことで、ウルカン鉱山にやってきました。
 どうやら鍛冶屋の「ワッツ」を呼び戻す必要があるそうです。

 ……と思ったのに、またしてもボスで詰みました。
 
シャドウゼロワンをようやく倒したと思ったのに、また詰みました。名前もよくわからないけど、ふたつに分裂するこの植物みたいなヤツがありえないくらい強い。聖剣LoM、引退か?

 まず、片方を撃ち落としても、放っておくと爆発する。逆にもう片方を撃ち落とすと、そこそこ痛い鱗粉的なものをまき散らしながら接近してくる。つまり「両方を撃ち落とし、片方の爆発と片方の近接攻撃を意識しながら、なんとかHPを削りきる」ことが求められる。これなんて無理ゲー?

 ちなみに、リアルにここで2~3日くらい詰みました。
 結局倒せたっちゃ倒せたのですが、「ペットと味方を肉壁にしつつ画面端からひたすら弓を撃ち続ける」という最低野郎<ボトムズ>極まりない戦術で撃破しました。最大の功労者はコロナです。やっぱりこれ弓ゲーですね。

野菜日記④:
こんな不気味な芋、家の畑に生えてたら泣く


ワッツのハンマー

 ワッツシリーズ、続行。

 ワニ革を1万ルクで売ってほしいと言っているアナグマがいた。ちょうど近くにワニ革を500ルクで売ってくれるアナグマもいた。ビジネスチャンス到来。さっそく500ルクのワニ革を売ろうとしたら、気が変わったらしい。

 アナグマ、根絶やしにします。

 まぁこのイベント自体の感想はそんな感じなのですが……なんか、ここで出てくるサボテン君日記の内容がすごくかわいいんですよね。

わっつってひとが、はんまーをなくしてこまってたのを、たすけたらしい。いっぱいいいことするのは、いいよね。さぼてんにもときどき、えほんなどよんできかせてください。けっこう、すきです。でへへ。

 お前かわいいかよーー!!

 このあたりから、じわじわとサボテン君日記の愛嬌にやられていった気がします。サボテンにも時々、絵本など読んで聞かせたくなりました。

野菜日記⑤:
かわいいレタス


武器防具作成

 勝手に我が家に乗り込んできて工房を制作したワッツ、どうやらマジで1000000回打ち続けるまで帰す気がないらしい。助けてください。

 ようやくここで「武器・防具開発」のシステムが解放された……のですが、正直イマイチ使いこなせませんでした。ちゃんとやればとんでもない武器ができあがるらしいけど、全ッ然システムがわからなかった!!

 とりあえず、ミスリル銀で作ったハンマーはいい感じでした。なんか手持ちの素材でカンカン叩いてみたけど、正直違いはわからない。でもこの時点の攻撃力31は圧倒的な火力だったので、「ゴルディオンハンマー」と名付けてみる。ミスリル銀になれええええええええええええええ


楽器作成

 ワッツの次は、学生が俺の家に乗り込んできた。
 しかも勝手に楽器作成部屋を作っていた。家主の断りなしで。
 みんな俺の家のこと公民館だと思ってんの?

 このイベントも、どっちかっていうとサボテン君日記の方が印象的でした。内容は下にあるけど、「もうこれは相当なやり手が書いているのではないか」とすら思えてきた。あまりにもLoM濃度が高い。というか原液。

 あまりにも気になって調べてみたところ、どうやらエスカデ編などを担当している方がサボテン君日記も執筆されたのだとか。うーん、わかる。わかるぞ。どうやらこの井上サンって方がLoM味を担ってるんだな。え、『MOTHER3』も関わってるの? 逆に『MOTHER3』気になってきたけど?

がっきをつくれるようになったらしい。
なんだかきようだとおもう。
それってやっぱりすごい。
そしてそのがっきでまほうをはなって、そこいらのらびちゃんやら、とかげちゃんやらを、ころしまくるわけですね??
なみだがこぼれました。


うごめく森

 「お代はラヴでけっこう。」、人生で一度は言いたいセリフランキング上位入り確定ですね。読者のみんな、お代はラヴで結構だぜ。

 このクエストも合間合間で割とシリアスな妖精のお話が展開されるのですが、締めのセリフが「まぁ、なるようになるでしょう。」という何とも気の抜ける感じ。実に聖剣LoMらしい。エスカデ編なるようにならないんだわ。

 聖剣LoMって、この「クエストごとの締めのセリフ」がすごくいいんですよね。割と感動的だったり、シリアスなお話をしている時も、決まってオチのセリフだけは妙に気の抜けた感じにしてくる。いいね、グー。


岩壁に刻む炎の道

 この言い回しのねっとり感、完全にアセルス編の味だ。

 このあたりで、少しずつ「割とシナリオ担当者の個性がイベントごとに色濃く出ている」ことに気づいてきました。特にエスカデ編とアセルス編なんか、同じお店でチョコレートサンデーとモスコミュールを一度に提供しているような奇抜さを感じます。

 だけど、それぞれのイベントで担当者の味を出しながらも、それ以上にゲーム全体を覆う「レジェンドオブマナ味」が強烈すぎて、結果として良い感じにまとまっているようにも見える。ここがすごい。

 「LoMはこういう世界観なんです」という全体的な圧が、ロードローラーの役割を果たしていると言いますか。個性は殺さずに、ゲームの味はしっかりと……いや濃厚すぎると言えるまでに打ち出している。なんとも奇跡的なバランス感覚。崩壊寸前のジェンガみたいなゲームだと思います。

「核を奪われた珠魅は死ぬ」という設定、中々すごい


二つの炎

アーウィンとエスカデ、私とマチルダ、四人はおさななじみだったわ。
マチルダは司祭の家に、エスカデは騎士の家に生まれて、両家は王家を支える両輪だったわ。

(中略)

でもこの世界、悪魔だとか、妖精だとか、そんなことにこだわる人なんていないわ。エスカデはそれに嫉妬したの。アーウィンを鉱山に追い込んで奈落へ突き落そうとしたの。エスカデはアーウィンが災いを起こすなんて言ってまわってるけど、タネをまいたのは彼よ。

 もう、誰も信じられない。

 しかも、この状況説明はダナエから行われたものでしかなく、エスカデとマチルダはこの複雑極まりない関係をまた違った形で捉えている……はず。なにこれ、昼ドラ? 聖剣伝説で昼ドラやろうとしてるのかな?

 エスカデ編って、この「知らない痴情のもつれを延々と見せてくる」ところがすごいですよね。本当に自分と関係のない痴情のもつれが目の前で起こり続けるだけのに、なぜだか妙に気になってしまう。やっぱ昼ドラですよ。

 しかも、10巻くらい続いている恋愛漫画の、最も話がこじれている7~8巻あたりから突然読まされているような感覚もある。こっちは前段となる1~3巻の内容を知らない。もう愛憎劇が始まっている最中にいきなり持ち物なしで放り込まれる肩身の狭さがすごい。ついていけない。

今週の格言


石の魚

 エスカデ編のこってりした味わいにウンザリしてきたので、キルマ湖でも眺めてリフレッシュすることに。そうしたら、大量のペンギンに遭遇した。

 わかってきました。
 多分、聖剣LoMって冷静に遊んではいけないゲームです

 だけど、それと同時に、キルマ湖の風景が本当に美しい。昨今のオープンワールドのゲームなんかで「すごい絶景だなー」と感じることはあっても、ここまで率直に「この世界で暮らしてみたいな」と思える絵作りは、聖剣LoMならではだと思う。シンプルに、ここに住んでみたい。

 そしてこの白昼夢みたいなオチ。

 最近、仕事がずっと忙しくて……聖剣LoMをプレイする時間も、どうしても夜中の23~24時付近になってしまうわけです。なんか、夜中に変な夢を見そうだ。こんな不思議なゲームを寝る前に遊んでいたら、夢の内容まで不思議な感じになってしまいそうで怖い。

 だから、聖剣LoM自体は面白いと思っているけど、それを上塗りしていく「白昼夢みたいなゲーム」という印象がすごすぎるんです。

 20年経って久しぶりにこのゲームを思い出した時、自分の脳内で「なんかこういう不思議なゲームがあったんだけど、実在してるゲームだったのか自分の妄想だったのかよくわからない」的な存在になってそう。怖い。

野菜日記⑥:
シャチナス、ギリギリ怖さが上回ってる。


流れ行くものたち

 もう、これ以上あなた方の痴情のもつれに巻き込まれたくない。

 とか言いつつ、エスカデ編のクエストを優先的に進めてしまっている自分がいる。だって他人の恋愛模様気になるんだもん。他人の痴情のもつれ気になるんだもん。俺は猫屋敷まゆだ。

 しかも、肝心のダナエとアーウィンはレジェンドオブマナ語で会話を進めている。ディスカッションすら若干抽象的なのどうにかしてよ。本当にウテナの榎戸回見てる時と大体同じ気持ちだよ。

「どうすればいいと思う?
 死んで行く人間を間にして、私は何ができると思う?」

「マチルダに伝えろ。
 全てが崩れ落ちる時、全て夢だったとわかる。」

 そして、またしても詰んだ! この狼みたいなヤツ、ゴルディオンハンマー(ミスリル銀)では勝ち目がない!!

 このことをインターネットに書いていたら、「聖剣LoMってそんな詰むようなゲームだったっけ?」「こんなに詰む人いるの?」といった心温まる応援のメッセージが送られていました。こんなに詰む人、います。

 しかも、今回ばっかりは本当に勝てる気がしない。ジャングルの雑魚は武器種の問題。シャドウゼロワンは単純なレベル不足。あの植物みたいなのはギミックの難易度。この狼、ただただ強いだけ。もう、総合的にいろいろなものが足りてないと思われる。

 ここから、「いま手元にあるものをかき集めてどうにか勝てないか」を模索するターンに入った。なんとなくミスリルアーマーを作ってみたり、それとなくレベルを上げてみたり……わからん、俺は雰囲気でLoMをやってる。

 そもそも、これまでの戦いだって「試行錯誤の果てに何とか倒した」というより、「武器と戦い方を変えたらうっかり倒せてしまった」みたいなラッキーパンチ的感覚が強くて、聖剣LoMそのものが上達している感覚は全然ない。あまりにも聖剣LoMの理解度がふわっとしている。

 しかし、これまた弓でなんとかなりました。
 やっぱ弓ゲーだってこれ。

 ちなみに、一度敗北して「もう引退です……」状態になっていたら、このボス相手にコロナとダヤンダック隊長(ペット)が復活するまでの時間を稼ぎきり、私の蘇生に成功するという奇跡が起こりました。もうクリアするまでコロナとダヤンだけ使おうと思います。

 あのボスの攻撃をコロナが必殺無敵でかわした時の「ウ、ウオオオオオオオオオオオ!!!!!」という大盛り上がり、みなさんに伝わらなさそうなのが悔しい。何気に、味方のCPUそこそこ優秀ですよね?

人はみんな光さ。
人を照らしながら、その後ろに影ができることをおそれている。
でも私は見てきた。影なんてどこにもない。

見るのは未来だけでいい。
罪の意識は、君を記憶の檻に閉ざし、鍵をかける。
鍵を開けて。
自分自身が許せない人が、誰を許せるというの?

 聖剣LoM、人生。

 なんだか茶化した言い方をしていますが、このセルヴァのセリフは本当にすごいと思っています。ていうか、ゲーム内でも3本の指に入るくらい好きなセリフです。「影なんてどこにもない」と言い切る力強さ。

 なんとなく……「この言葉が、きっとどこかの誰かの人生を救ってきたのだろうな」と感じるセリフが好きです。ちょっと前に、『ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師』という作品を読みました。知らない人はぜひ読んでほしい。

 詳細な内容は説明してもよくわからないと思うので割愛するとして、その作品も「この作品が、きっとどこかの誰かの人生を救ってきたのだろう」と、強く感じるお話でした。言葉は誰かの人生を変える。良い意味でも、悪い意味でも。

 「自分自身が許せない人が、誰を許せるというの?」という言葉にどれほど突き動かされた人がいるのか。どれほど救われた人がいるのか。なんだか、思いを馳せてしまいます。そんな力が、聖剣LoMにはある気がする。

こまけだらって何?


ポキール・夢への誘い

大地は記憶する、星の全てを。
大地は教える、過去の全てを。
石達が歌う時、草木は芽吹く。
草木芽吹くとき、影無き光が大地を照らす。

天空に輝く一つの光は、楽園の鳥の着飾る羽根に砕け、虹の七色は星を彩る。時の呪縛、地の呪縛、解き放ちてただ一つ、自らの由(よし)を知れ。

 え、宝具撃とうとしてる?

 やっぱ、聖剣LoMって「テキストのセンス」が抜群ですよね。
 セリフ以前に、ゲーム全体を覆うテキストの切れ味がすごい。

 その上で、エスカデ編は矢継ぎ早に痴情のもつれが飛んでくる。
 ポキールの力で、おばあちゃんになる前のマチルダが登場。アーウィンとエスカデを交えて、「ちょうどいろいろゴタつき始める3巻あたりの話」を見せてもらえる。マチルダのために世界を滅ぼそうとするアーウィン……うーん、これが「セカイ系」というやつでしょうか。

「私もあなたも、大人達のわがままに振り回されてばっかり」

「生きるんだ!そんなに嫌な世界なら、いずれオレが滅ぼしてやる!」
「オレ達には生きる力があるッ!なぜそれを押さえこんだままでいなきゃいけないんだッ!」

 、なんとな~~~くダナエの方に思い入れがあったので、この選択肢で「ダナエに付く」を選んでみたんですよね。そしたら問答無用でエスカデが襲いかかってきた。野蛮人め! これだから男って!!

 しかも、その問題無用で襲いかかってきたエスカデを倒したら、特に何も言わずイベントクリア。もう、頭がおかしくなりますね。せめてなんか言え! エスカデの印象どんどん悪くなってきてるよ!!

 この「問答無用で襲いかかってきた事件」、やや尾を引きます。

人物図鑑のマチルダが若い頃の姿も載せてるやつ、
マッチングアプリとかでも同じことしてそう

 

彷徨の回廊

 あんなこと言っといてなんですけど……マチルダとアーウィン、最推しカプなんですよ。もう、関係がいじらしすぎるのです。お互いがお互いを想っているのに、こんなに想っているのに、なぜか遠ざかってしまう。

 というか、マチルダが好きなのだと思います。

 最近、自分は「いじらしい人」が好きのだと気づいてきました。だから、聖剣LoMもマチルダが大好き。10年経っておばあちゃんになっても、好きな人に出会えたら嬉しい。でもお互いのラインを踏み越えることはない。幸せの形は自分で見つけたいから。マチルダ、なんていじらしいんだ。

 どんどん話が脱線していくのですが、私は『わたしの幸せな結婚』という作品が大好きです。アニメ・実写映画・小説を制覇したくらいにはハマっていて、その主人公である「斎森美世」というキャラが大好きなんです。マチルダには、そういういじらしさがある。わた婚、読んでください。

ダナエ、私とアーウィンは、お互いの自由を奪ったりしないの。
彼が世界を滅ぼすと決めたら、私はよろこんで、それを受け入れるわ。

 だけれど、半分くらいはマチルダのせいでエスカデ編の話がこじれていると思う。エスカデ編のメインヒロインは間違いなくマチルダだけど、同時にエスカデ編の諸悪の根源もマチルダなのではないかと思えてくる。

 この「お互いに自由でありたい」という姿勢があったからこそ、マチルダとアーウィンの関係……もっと大きく言うと「エスカデ編のお話」は、「君のために世界を滅ぼす」的なシンプルラブストーリーにならなかったのではないか。大人な恋愛すぎて、こじれにこじれちゃったのでは。

 なんとなく、恋は「束縛」で、愛は「受容」なのではないか……と、ずっと思っています。誰かに恋をした時の、燃え上がるような気持ち。「この人を自分のものだけにしたい」と、ひとり占めしたくなる気持ち。あれはきっと、「束縛」なのです。恋しさとは、想いで誰かを縛りつけること。

 逆に、その果てにある「愛」は、受け入れることなのだと思います。初めの燃え盛るような想いは、とっくに消えかかっているかもしれない。少しずつ欠点も見えてくる。だけどお互いを知り、お互いが歩み寄ることで、子どもの恋は、少しずつ大人の「愛」になっていく。受容なくして、愛はなし。

 そんな受容の果てにマチルダが導き出したのが、「お互いの自由を奪わないこと」なのだとしたら、それはある意味、極限の「愛」ではないかと思ったりします。

だいじょうぶ。私の幸せは私が決めるから。
あなたはあなた自身が幸せであるように生きればいいのよ。

 それなーー!!
 サボテン、たまにはいいこと言うじゃん?

 いやしかし、エスカデ編はゲームどころか自分が今まで触れてきた作品の中でも、全く味わったことのないタイプのお話でした。ってか、こんな昼ドラと自己啓発本を同時に頭の中に流し込まれるような感覚、オンリーワンすぎねえ? なんか、思想の強さに圧倒されます。


災いを呼ぶ人形

 こんなポップでかわいいステージが「ゴミ山」なところに、いよいよ極まったセンスを感じます。なんとなく、サガフロの「地獄」を思い出します。


お父さんのほうき

 何やってんだお前ェっ!!!!!!!!!!

 まさかのサボテン君がイベント初参加……と思ったのに、この狼藉。キサマ、日記の頃からちょいちょい憎たらしい言動を繰り返しているとは思っていたが、いよいよ実力行使に打って出たか。

 しかし、このゲームにおける「サボテン君」って、ほんと絶妙な塩梅の存在感ですよね。マスコットと言うには憎たらしさと毒づきが強すぎるけど、全くかわいげがないわけでもない。ほどよく「コイツ……」と思えるくらいの距離感をずっと保ってきています。


上天の光

 エスカデ編の幕切れ、それは愛した人と離れ離れになり、ただ悲しみに暮れるマチルダの姿だった。こんなオチがあるかーーーーー!!!!!!

 あまりにも衝撃のオチだったから、過程をすっ飛ばして結末から書いてしまいました。お互いの自由を認め、お互いが譲り合う。それが愛の形だと思っていた。だけれど、その選択の結果として、すべてが引き裂かれた。

 そんなマチルダとアーウィンの末路、ある意味「エスカデ編」の物語を象徴しているのではないかと思います。つまるところ、簡単に言ってしまうとこれは「全員がお互いのことを思って行動したら、ことごとくダメな方向に行った」という、すれ違いのお話なんじゃないかと考えています。

 だからこそ、最後のマチルダがひとり孤独に泣く幕切れが美しく見える。「個人の幸せの追求」と、「誰かと愛し合うこと」は全く別のこと。愛は絶対的なものではなく、相対的なもの。そんな愛の残酷さが、この物語を彩っている。あ、あぁ……胸が苦しい…………。

「あなたに会うまでの私は、
 自分のあるべき形を、周囲の力で決められていたの。」
「あなたに会って、ようやく、私は私を創造することを始めたんです。」

「マチルダ……
 オマエの存在はオレの胸にずっとつかえていた。」
「もしオレに生まれ変われるチャンスがあるなら、もう一度悪魔として生まれたい。何かを創造できるななら、無数の悪魔を世に放ち、世界を混沌に陥れたい。そのために、今はただ、オマエという呪縛から逃れたい。」

 ついさっきカッコつけて語っていた「恋は束縛、愛は受容」の話ですが、個人的な好みで言うならば、私は「恋」の方が好きです。

 なぜなら、「受容」ほど責任が重いものはないから。
 「他人を受け入れること」って、きっと想像以上に難しいことです。たとえば、あなたの身の回りにうっすら「苦手だな」と思っている人がいるとしましょう。実際に、その人とは何度か険悪になりかけていたとします。

 率直に、その人を、許せますか?
 どんなに苦手だったり、どんなに愛していたとしても、その人の自由を認め、受け入れられますか? いやーそれは人間なら難しいでしょう。できるかもしれないけど、精神的ハードルは高いんじゃないでしょうか。

 だから、個人的に「受け入れる、許す」といった受動的な感情の動きは、「好きになる、愛する」といった能動的な感情の動きより、複雑かつ鈍重になりがちだと思っています。だから、私は恋の方が好きです。

 だって、能動的に誰かに気持ちを向けている方が楽しいから。その方が楽だから。愛を育むことが人生をかけた鬼ごっこだったとして、永遠に誰かから逃げ続けるより、永遠に誰かを追い続ける方が、気持ちとしては楽でしょう? 誰かに求められ続けることって、非常に疲れます。

 だけれど、そうではなく、他人を認め、受け入れることができた時に、その思いは「愛」として形作られる。鬼ごっこをしているうちは、愛じゃない。愛は責任を負うこと。愛は相手の人生の片棒を担ぐこと。その責任を果たせる人だけが、愛を成せるのだろうなと思います。

 エスカデ編は、そんな恋と愛の「狭間」を描ききった。そこが素晴らしいと思いました。あなたのおかげで、私の世界が形づくられた。あなたのおかげで、初めて世界を無碍にしてもいいと思えた。

 でも、そんなふたりの「間」には、なにがあったわけ? 
 そんな、一方通行な思いのお話でしたとさ。

 いやーしかし、これからどんな気持ちで遊べばいいんでしょうね?

 聖剣LoMの「なにかが起きても、実のところ世界はそんなに変わっていない……けど、その世界の中の人や生きものは移ろっているかもしれない」という描写の距離感がかなり好きなのですが、エスカデ編はそこが究極に達している感じがしますね。極論、主人公的にはどうでもいい話だし。

 もう、今日はなにもできません!!


ランドメイク事故編

 詳しい方はなんとなくここまでの順番でお察しだったかもしれませんが、実は「ランドメイクの手順」はここまで攻略ガン見で進めていました。ところが、ちょうどエスカデ編が終わったあたりで、「最初の土地選びの段階でマスがひとつズレていた」という最悪の事実が発覚しました。

 結果として、さびたイカリとサンゴの燭台を置くための土地が微妙に足りておらず、緻密に練りあげてきたランドメイク計画が、いま音を立てて崩れ去ったというわけです。

 もう額から断崖の町ガトの滝のごとく冷や汗が流れ出しているのですが、ここでしっかりと次善の策を考えられるのがスマートな大人ですよね。なにかひとつを犠牲にする前提で、ここからの最善策を割り出してみました。

改善策①:
「別に月読の塔くらいなくてもなんとかなるのでは?」
 →ストーリーに必要らしい

改善策②:
「別にマドラ海岸くらいなくても何とかなるのでは?」
 →ストーリーに必要らしい

改善策③:
「別に港町ポルポタくらいなくてもなんとかなるのでは?」
 →ストーリーに必要らしい

 もう、終わりやね。
 
完全に例のフリーレンの顔になってます。

『葬送のフリーレン』1巻より

 しかし、ここで起死回生の一手を思いつく!

 ここまでチラチラと載せていた謎の「野菜日記」のコーナー、みなさん覚えてますか? 痴呆症じゃなければ覚えてますよね? アレは、本来「果樹園」を配置するために進めていたものだったのです。

 トレントから果物や野菜を60個収穫すると、AF「黄金の種」が入手できる。それを狙っていたのですが……渋々、その果樹園の場所に別のAFを配置すれば、ストーリーに必要なランドはすべて配置できる! あぁ、果樹園がストーリーに関係ないランドでよかった!! ウソ、私、頭よすぎ……?

 しかし、この決断をくだした直後、ちょうど60個を達成してトレントが私に黄金の種を渡してきた。お前、そんなに傷口に塩塗りてえか? わざわざ汗水垂らして収穫した時間、全部無駄でした。野菜日記なんて知りません。なにもかも消えてしまえ。野菜も果物も最初<ハナ>から大嫌いでした。


紅き堕帝

 エスカデ編と宝石泥棒編に続く第3のストーリー、「ドラゴンキラー編」がここでようやくスタートです。ホント、ようやくです。しかし修学旅行のお土産で買うキーホルダーみたいなタイトルロゴですね。

 なんとなく、帰り際にいちいち「…運命からは逃れられんぞ。」と言ってくるラルクが面白かったです。家くらいは黙って帰らせてよ。そもそもみんな俺の家までついてくるなし。


夢の檻の中へ

「あなたのイメージが、
 この子をラヴでいっぱいにしたから、この子が選ばれたの。きっと。」

「草人はたくさんいるけど、本当は一個なの。だからこの子はボク。」

「草木にとって、水よりも空気よりも大切なもの、ラヴ。
 ラヴをありがとう。」

「ボクら、ただ、好きってことだけで、今ここにいます。」

 家の前の草人ちゃんが、突然倒れた。
 そしたら、増えていた。こわっ。

 この奇妙奇天烈かつエッジの効いたセリフ……どこかで見たことあると思っていたのですが、もしかして現代で最も聖剣LoMの世界観に近いのはナガノワールドなのではないでしょうか? なんか、ナガノ先生のすごい回を読んでいる時と同じ気持ちになる瞬間がある。

 しかも、「ちいかわ」じゃなくて、「ナガノ」の方ね。あのちょっとエグい方。自分どっちかっていうとナガノワールドの方が好きなんだ。うさぎがモチキンにすごい形相で「しみっしみの……」を唱える回が一番好き。あのエッジ効きまくりの火力、聖剣LoMにも感じちゃう。

「人は誰も愛していなくても、生きて行ける。
 けれど、愛すれば豊かになる。」

「人に足りないものは生きて行く糧なんかじゃない。
 愛するということさ。」

「愛が力になる。キミが誰かを愛すれば、キミも、その相手も、満たされる。罪を犯した者、あなたを憎んでいる者、親しい者、会ったことの無い誰か、そして自分自身、全てを許し、全てを愛し、全てを理解した時、全ては新しく生まれ変わる。」

「キミのイメージが力になる。
 キミの言葉が世界になる。
 信じるだけでいい。」

 聖剣LoM、人生。
 
いや、ポキールのセリフは本当に核心しか突いてないと思います。

 ここまで聖剣LoMをプレイする中で、おそらく「世界を作る」「イメージする」「愛(ラヴ)する」などのテーマが、全部繋がっているのは薄々わかってきました。そして、「あなたがイメージして作り上げた世界を愛してあげてね」といった言葉を、ランドメイクを通して語りかけてくる。

 これは……すごいゲームではないか!? 
 ホンマか~? 段々毒されてないか~?

ステージ名もなんかすごい

「ボクらのこと、いろいろ、ありがとう。」
「あなたが、ボクらを好きな時、ボクもあなたが好き。」

 すごい、セリフの意味は全くわからないのに泣けてきた。
 
なんか、ペットが愛情表現をしてきた時にやたら泣けてくるのに近い。

 『FF8』や『ゼノギアス』、『サガフロ2』なんかもそうだけど、PS期のスクウェアタイトルはどれもこれも「みんな作ってる途中でハイになっちゃったのかな?」と思える仕上がりなのが、結構好きである。むしろハイじゃねーとこんなん作れねえって。

 特に、聖剣LoMは開発室で危ないお香を焚きながら作っていたんじゃないかとすら思えてくる仕上がり。きっと、当時のスクウェアの開発室ではヤバいアロマの匂いが部屋中に充満していて、開発スタッフも全員草人のような目で淡々とパソコンに向かっていたのでしょうね。あ、褒めてますよ?


波間に眠る追憶

 やってきました港町ポルポタ。
 も~~~~~~~~~~~めちゃくちゃいい。

 この素敵なバケーション、マスター・シモムラ謹製の音楽、どこを取っても最高の街です。うーん、エスカデ編と草人のイベントで毒された思考回路が綺麗サッパリ洗い流されていくかのようだ。

 もうこれは何度でも同じことを言えますが、聖剣LoMの絵作りのすごいところは、心の底から「わー、こんな素敵なところに住んでみたい」と思えるところなんです。そこにおいて、ポルポタは最も「住みたい」と感じた街でした。六本木、恵比寿、ポルポタ。そのレベルです。


ボンボヤジの研究室~ゴーレム作成

 やっぱりお前ら俺の家レンタルスペースだと思ってんだろ?

 ゴーレム好きのオヤジを助けてあげたら、勝手に自宅にゴーレム研究室を作られた。このゲームにおける「マイホーム」の概念が割と好きになってきている一方で、みんな「おいすー^^」くらいのノリで不法侵入キメてくる。誰にも合鍵渡してないのに。

 そして解禁されたゴーレム作成ですが……うーん、説明されてもサッパリわかりません。PS期スクウェア作品あるある、「ゲーム内でものすごく真剣に長文テキストで説明してくれるのだけど、いかんせん長文すぎてサッパリ頭に入ってこない」。ゴーレムも完全にそれですね。

なんのこっちゃ

 とはいえ、なんとなくゴーレム作ってみました。
 攻撃タイプはスピア。私の思いつく「最も強い槍使い」の名を授けました。なんだか興が乗ってきて、手持ちの最強装備もバンバンゴーレムに突っ込んじゃった。おかげで、ステータスはかなりいい感じ。

 これって……
 ああ
 最強のゴーレムだ

 そう思ったのもつかの間、いざ実践投入してみると、ロジックブロックの配置をミスっているのか、「その場で屈伸を繰り返し花火を打ち上げるだけ」の奇妙奇天烈ゴーレムが生まれてしまった。あの素晴らしい装備から鍛造されたボディ、全く役に立たず。お前、もうリストラです。


群青の守護神

 ノルン山脈も、いいね(草人)
 ノルン山脈の雰囲気、好きだな(草人)

 しかし、自分がこんな進め方をしているせいなのか、どうもドラゴンキラー編が相対的に王道に感じてしまいます。エスカデ編と宝石泥棒編のエッジの効きっぷりに比べて、この「各地のドラゴンを倒していく」という単純明快なストーリー。すごく高低差の激しいゲームを遊んでいる気分です。


課外活動

 最近毎日こんな感じです。


紫紺の怨霊

 なんかいきなりラスボスっぽいやつ出てきた。
 でも中ボスだったらしく、割とあっさり倒せちゃった。

 あまりにも気になったので、調べてみることに。どうやらこのボス、各地でちょいちょい名前の出ていた「不死皇帝」その人らしい。嘘やろ? オレ、名前の匂わせ方的に不死皇帝ラスボスなんじゃないかと思ってたけど?

 あんなに各地で大物っぽい感じで扱われていた不死皇帝、なんとまさかのドラゴン前座。自由なゲームだな。こんな気合の入ったグラフィックなんだからもうちょいマシなポジション用意してあげてよ? マジで謎の中ボスじゃん?

 そしてこの不死皇帝周りについて調べている時、ひとつの隠し要素に気がつきます。それが、「特定条件を満たして、サガフロンティア2のセーブデータが同じメモリーカード内にあると丙子椒林剣が手に入る」というもの。

 いや…………あるよッ!!! サガフロンティア2のデータ!!!!!

 なんと、ちょうどピッタリ1年くらい前に、私はサガフロンティア2をプレイしていたのです。その結果として、奇跡的に「同じメモリーカード内に聖剣LoMとサガフロ2のデータがある」状態になりました。こんな奇跡が起きるのか? 2024年やぞ?

 このプレステのゲームにありがちな「同じメモリーカード内にこのセーブデータがあると何かが起きる」要素、まぁ私はその恩恵に預かれないことが大半でした。でも、今回とうとうそれが発生した。いやぁ、結構興奮しますね、コイツは!! マジに1年越しでサガフロ2のデータが光輝いてます。

 そして、思ったより貧弱な不死皇帝第二形態をあっさりと撃破し、無事に丙子椒林剣をゲット。攻撃力、93。終わりでーす。平均攻撃力が頑張って40程度のところにいきなり2倍以上の攻撃力。以降、ヌルゲーになりました。

 その攻撃力を讃えて、私の思う「最強の剣」の名を授けました。どうでしょう、「歴史を継ぐ」という意味でも、ピッタリじゃないですか。


ホワイトパール

 真っ当にやっていると気が狂いそうなレイリスの塔のマップ構造、相も変わらず身勝手な瑠璃、うだうだ言いながらも結局戦わない真珠姫……いよいよ、私の堪忍袋の緒は切れそうになっていた。

 「わたし……やっぱりあしでまといなの……?」とご自身で感じられているのであれば、どうして戦っていただけないのでしょうか? 自分の欠点を理解しているのに改善の傾向が見られないのは、単なる怠慢ではないですか?

 いけない、ついつい真珠姫相手にはなんだか厳しくなってしまいます。でも、私が「苦手」になる女性キャラクターって……結構珍しいんですよ。自慢じゃないですが、私は『バハムートラグーン』のヨヨだって結構アリですから。割とみんなかわいいと思うタイプです。

あたらしいなかまが姫だったら瑠璃くんは……
そしたら、わたし、ひとりだもの……

なかまなんて……
みつからなければいいのに……

 はぁ~~~~~~~~~~~~~?????????

 ハッ! つい、声を荒げてしまった……。
 でも、自分は結構「言っていたことを急にねじ曲げられること」が、かなり地雷なんですよ。昨日まではハンバーガーを食べたいと言っていたのに、いざ当日になったら「やっぱり今日はラーメンにしない?」とか。

 みなさん、もしかしたら「お前の中でマチルダと真珠姫のなにがそんなに違うわけ?」と思われているかもしれませんね。マチルダと真珠姫は全然違うでしょうがッ!! あと、別に「嫌い」ではないんですよ。真珠姫、「苦手」なだけです。まぁ、どっちにせよ負の感情ではありますが。

あなた……そういうのやめなさいよ……


砂浜のメモリー

 海岸と洞窟でウロウロしているカニにタッチすると、ものの見事に爆発四散した。そして最後に、私の殺したカニの数を告げてきた。ちょっと触っただけで爆散したのはそっちでしょうが! 被害者ヅラすな!!

 これ、なんか不気味なイベントですよね。
 いや、イベントの内容そのものより、タッチしたら「スパァン……」と軽快なSEで四散するカニの姿がホントにちょっと怖いんです。「オニ?」じゃねえわ。甲殻類なんだからもっとタフであれ! カニが四散するな!!

うるせー!


たゆたう歌声

 聖剣LoM、人生。

 ……と、相変わらずの自己啓発本みたいなセリフにグッときていると、あの植物みたいなモンスターのグラ使い回しverが出てきた。なんでお前こんなとこにまでいるんだ! もう嫌ああああああああ!!!!!!

 しかも、ちょっと強くなってる!
 クソッ、なにがどうなればこのボスを使い回す発想に至る!?
 1周に1体いれば十分なタイプのボスだろうに!!

丙子椒林剣のインチキ性能をもってしても、そこそこ苦戦しました

 聖剣LoM、愛。

 ただ、このイベントの一番好きなところは、「自由になったんだから、もっと嬉しそうにすれば?」という最後のセリフです。基本的に詩的かつ哲学的なセリフの応酬で畳みかけてくる割に、イベントのオチそのものは毎回シュールな感じになっているんですよね。ここがカッコいい。

 なんか、作品として「このお話を高尚に見せたい」という思いが滲み出てしまうと、それはそれで冷めます。付き合っていて、疲れる。でも、なんかちょっとこのゲームのイタさに自虐的で、自覚的で、シュールなセリフを入れてくる。この客観性が好きなところです。


ギルバート・愛の航海

 このイベント、短いながらも聖剣LoMの中ではトップクラスに好きです。

 自らの歌声によって船が沈むとわかっていても、それでもギルバートのために歌うエレ。まさに、「愛」のお話ですよね。ってか、聖剣LoMって「愛」のゲームなんですよ。ある意味、ギルバート編が最もストレートにそれを表現しているんじゃないかと思ったり。

 この「沈みゆく船の中で歌うエレ」のシチュエーションが、本当にバッチリ決まっている。ゲーム的な演出も非常に効いてて、純粋に「イベント」としての完成度がすごく高いと思います。

「逃げたってしょうがないもの。
 私が逃げてもギルバートさんが殺されるだけよ。
 私が悪いんだわ。好きなようにすればいいわ。」

「お嬢さん、アンタみてぇな優しい人が、そんなに自分を責めちゃいけねぇ。たかが歌で、船が沈むもんか。アンタの言い分は思い込みだ。アンタは何も悪くねぇ。」

「気力よ。男の気力で浮いてンだよ。
 特に俺様の気力が100で、おめぇ達の気力は1くれぇだ。俺様の気力で浮いてる船が、歌くれぇで沈むなど、本気で思ってやがンのか?」

「本物の男の船はなぁ、沈んだりしねぇんだよ。」

 合間合間は端折ってますが、このへんマジで名ゼリフの殴打です。

 別にギルバート本人はそこまで好きでもないのに、ギルバート関連のイベントは毎回「これ今までで一番好きかもな……」を更新していく。別にギルバート本人は好きじゃないけど。別にギルバート本人は好きじゃないけど。


ギルバート・愛の出席簿

 やっぱ大学生ってロクでもないわ。

 個人的には父さんがセミになった話でさすがに笑ってしまい、かなり悔しいです。これ本当の話なんですかね?

「僕は戦争が嫌いだし、戦争のために使う魔法も好きになれない!!
 僕の父さんは、有名な剣士で、
 魔王と対決するために、最強の鎧を探していたんだ。
 鎧を探して父さんは、地下深い土セミの国まで行ったんだ。
 父さんはそこで手柄を立てて、『土セミのヨロイ』と言う、
 世界最強の鎧をもらったのさ。
 土セミの王はその宝を父さんに渡す時に、こう言ったんだ。
 この鎧を身に付けたら、二度と脱いではなりません。
 脱いだら死んでしまいます。
 父さんは地上に戻り、その鎧を着て魔王と戦った!
 そして魔王に打ち勝った!
 平和がもどった町で、父さんは土セミの王との約束を忘れて、
 鎧を脱いでしまったんだ!
 すると、鎧を脱いだ父さんの背中から、
 セミの羽根がニョロニョロと生えてきたんだ!
 それから父さんは朝から晩までミンミンミンミン、
 鳴いて暮らして、1週間後の朝!!
 台所のすみで固くなって死んでいたんだー!!!!!!!!!!!!!」

「父ぉさぁぁんー!!!!!!!」


幸せの四つ葉

 このあたりから、本格的に宝石泥棒編の「設定のエグさ」が襲いかかってきたような感触がありました。エスカデ編は痴情のもつれを中心とした「話のエグさ」で攻め立ててきたけど、こっちは「設定のエグさ」がすごい。

 というか、珠魅まわりのエグめな独自設定感、だいぶアセルス編の妖魔まわりのあの雰囲気を感じますよね。んもー、好きなんだから。その空気感は、このイベントの「結果的にエメロードは死ぬ」というオチに詰め込まれている気がします。やたら残酷。

 まず、ヌヌザック先生がエメロードを大切にしていることを最初に提示し、ゲーム的にも割とウンザリするレベルでエメロードのために奔走させられる。その段階を踏んで愛着が湧いてきた頃に、無情にもエメロードが消滅する。かなり聖剣LoMらしいと思います。このゲーム、かわいいけど残酷。

エメロードがふつうに消滅した時の「え、殺すの!?」感

 そして平然と俺の家に上がり込んでいる瑠璃と真珠姫。
 お前らホイホイ俺の家上がりすぎだよね?

 ここ、私の家なんですけど? 緊急時とはいえ平然と「じゃあお前の家で休むわ」が選択肢に入っちゃってることがなんか釈然としないんですけど?

 そして、草人トリオと合わせて玄関前にたむろし始める瑠璃。結果として、玄関前に4人もウロウロしている最悪の家が完成した。川崎とかでもこんなに荒れてないと思う。もう引っ越そうかな。


サボテン

 ある日、サボテンが家出した。
 
家出の理由、「バドの病気を治す薬」を探すため。
 お前……日記の毒気の割にそういうとこ健気よな………。

 そして、ここで「推定数十年前の攻略メモ」が再び役に立つ。みなさん覚えてますか!? あのメモのこと覚えてますか!? あのメモの中の1枚に、「サボテン君の行き先」が書かれていたのです。なんかちょっと感動してきた。ありがとう先代所有者。おかげで結構ラクに攻略できました。

これ

ぼくもぼうけんしたくなった。
こころおどるぼうけんだった。
じつにさまざまなであいがあった。
くさむしくん、たこむしくん、
ぼくにえがおでこたえてくれた。
せかいをすくったきがした。
きがしただけでじゅうぶん。

 もう、文豪なのよ。

 「せかいをすくったきがした。きがしただけでじゅうぶん。」って、聖剣LoMを遊んでいる時の感覚をそのまま言葉にされた感じがします。クソッ、なんか悔しい! サボテンに表現力で1歩先に行かれてる感じが悔しい!!

 でも、サボテン君って聖剣LoM屈指の名キャラクターだと思います。
 あくまで家の植物だからメインストーリーには関わってこない絶妙な距離感と、「愛らしさ」と「憎たらしさ」のバランスがちょうどよく取れてる性格。うーん、これはナイスキャラクターデザイン。

このミチミチにされてるサボテン大好き


コスモ

 本気を出した真珠姫、すごいゴリラだった。
 突如現れた謎の存在レディパール。なに!? なんなの!?

 そして、宝石泥棒編が進むにつれ、これもエスカデ編と同じ「愛憎」を扱った話なのがわかってきた。しかし、エスカデ編とはまた角度が違う。お互いを愛し合っていたがゆえの悲劇がエスカデ編なのだとしたら、これは愛のために戦う人々のお話。聖剣LoM、愛のゲーム

「私は許せないのです。
 この娘が……珠魅のすべてが!」
「なぜ、涙を流せない?」

「悲しくても……
 涙が出ないの……
 わたしたちは泣けないのよ」

 戦いの中で傷ついた瑠璃、俺の家のベッドで休んでいる。
 いやだからここ俺の家なんですけど?
 しかもそこセーブポイントなんですけど?

 せめて1階で寝ろよ! なんで俺の部屋の俺のベッドで寝てるワケ!? 百歩譲って俺の家で寝るのはいいけどセーブポイントじゃないとこで寝てよ! この時、本当に自宅でセーブできないのが面白い。笑い事じゃない。


月読の塔の誘惑者~フローライト

真珠姫はオレのパートナーだ!
オレが守ると誓った。引くことはできない!

 瑠璃、ようやく漢見せたな?

 まぁ、それでこそ俺の家に泊め続けてやった甲斐があるってモンですよ。なんかこう書くと俺と瑠璃が肉体関係持ってるみたいだな? いや、別にそういう目で見たこと一切ないけど。マジで勝手に家に上がり込んでくるやつのイメージしかないんですけど。

 しかし、こうして振り返ってみると、宝石泥棒編って意外にも「登場人物の成長ストーリー」という側面も結構強いですよね。最初はよくわからない存在だった瑠璃と真珠姫が、少しずつ成長していく。エッジが効いているようで、その実割かし王道なのかも。

 だからこのへんになってくると、真珠姫も結構好きになってきました。なんだかウジウジして頼りないお姫様だと思っていたけど、旅の中で少しずつ強くなっていた。真珠姫は好感度の追い上げがすごかったですね。

憎しみじゃ、誰も救われない。
みんなが、昔みたいに、お互いのこと、好きにならなくちゃ。

珠魅には騎士と姫がいて、騎士は姫を守り、姫は涙で仲間の傷を癒すことができる。珠魅の騎士にとって、姫は命に換えても守るもの。

俺は自分の姫を守れなかった。
それができなかった俺に、騎士として生きていく資格など無い。

 ものすごくストレートに行ってしまうと、宝石泥棒編って究極の「少女趣味」だと思うんですよ。私は悲劇のお姫様で、いつか騎士様が助けに来てくれるかもしれない。そんな、糖度高めな夢が詰め込まれた宝石箱。

 でも、だからこそ、それがいいんじゃないか。

 凄惨なようで、ものすごく都合のいいお話。願望を投影しているようで、全く思い通りにならないお話。いやぁ、いいね。実にいい。私はきっと、「少女趣味」そのものが好きなのだと思う。誰だって、いつかきっと自分だけの騎士様が見つかるはずだから! そう願うことは罪じゃない!!


ティアストーン

 不思議なもので、その都市に足を踏み入れた時、なぜだか涙が出てきた。

 宝石泥棒編のラストステージ、「煌めきの都市」。
 煌びやかでありながらも、生命を感じない世界。絢爛でありながらも、時の止まった世界。流れ続ける、美しくも寂しい音楽。このステージに足を踏み入れた時、足を止め、コントローラーを置き、ただ立ち尽くしていた。

 なんというか、これもう自分の決定的な好みとして、「これから滅びを迎える(もしくは滅びてしまった)世界」が出てくると、毎度興奮してしまう。かつて栄華を極めた珠魅。その夢の跡。光り輝いていた、あの日の記憶。そして曲名、「滅びし煌めきの都市」。ウヒョーーー!!!

 実のところ、聖剣LoMの曲って、いままで自分があまり聞いたことのないタイプの下村陽子さんだったんです。だから、率直に「引き出しの多さすげー」とか思ってたんですが、滅びし煌めきの都市で「もうこれは間違いなくキンハとFF15を書いたヨウコ・シモムラだ!!!!!」と大興奮です。

 しかも困ったことに、このステージでの戦闘中、ずっとこの曲が流れ続けている。この世界にこの曲が流れ続けているシチュエーションがあまりにも良すぎて、段々と「宝石泥棒編を終わらせたくない」という気持ちが上回ってきた。せめて私だけでも、この世界を永遠にしたい。

とか言いつつ、レディパールの「常時必殺MAX」とかいう狂ったシンクロスキルのせいでボス戦は瞬殺でした。

 宝石泥棒編は、とにかく最後の畳みかけがすごい。
 というか、かなり「禁じ手」を使ってきていると思う。

 すべてに決着をつけた時、生き残った珠魅は蛍姫と、瑠璃と真珠姫だけだった。そんな結末、あまりにも悲しすぎる。そして、主人公がついに涙を流してしまった。聖剣LoMの主人公はあくまで「=プレイヤー」だったけど、とうとう、ひとりの人間として涙を流した。ここ、禁じ手①。

 「珠魅のために涙する者、全て石と化す」の伝承通り、石になってしまった主人公。だけど、流した一滴の涙が、これまでの旅で関わってきた珠魅を蘇らせた。うーん、これ何回思い返しても泣いちゃうやつ!!

 舞台は移り変わって、主人公の帰りを待つバドとコロナのシーンへ。
 ここ、禁じ手②。

 いやぁ、ズルい! 「マイホームでバドとコロナが待ってる」というゲーム的な部分を、そのままストーリーに組み込んでくる! ズルい!! バドとコロナを引っ張ってくるのは本当にズルい!!

 そしてマイホームに帰ってきた主人公が放つ一言、「ただいま……」。
 ここ、禁じ手③!!!!!!!!!

 本来は自らセリフを発することがないはずの主人公が、唯一ここだけでプレイヤーの意志を介さず、セリフを発する! あーズルい! そんなのズルい!! そんなことされたら泣いちゃう!!

 そして、クエストクリア時の主人公の絵。
 ここまで含めて禁じ手④かな。
 そう、これは誰でもない、「あなたの物語」だった。

 聖剣LoM、神ゲーです。

 自分のPS期スクウェアの頂点タイトルとして『ゼノギアス』と『サガフロ2』が双龍<ツインドラゴン>として君臨してたんだけど、これからは聖剣伝説LoMも加えて、三種の神器とさせていただきます。

 もう、宝石泥棒編のクライマックスはハッキリとそう感じました。というか、自分にとってはこれが聖剣LoMの終わりなのだと感じてしまうくらいには、心を揺さぶられた。FF14で漆黒が自分の頂点に君臨し続けているように、もう宝石泥棒編が絶対的な頂点になってしまった感覚があります。

 これまで感情を見せなかった主人公が、珠魅のために涙を流す。そんな主人公のために、珠魅が涙を流してハッピーエンドになる。自己犠牲だったとしても、涙を流した主人公。その犠牲によって、愛の呪縛から解き放たれた珠魅。そんな「誰かのために流した涙」が、最後の大仕掛け。

 聖剣LoMはきっと「愛」をテーマにしたお話だけど、これは友愛とも、愛情とも、博愛とも違う形で「愛」を表現した物語だと思います。そんな宝石泥棒編のラストが、主人公にとっての帰る場所の「マイホーム」なのが……ものすごく「愛」に対して誠実ではないか、と思ったりします。

それなーーーーー!!!!!

 サボテンお前いちいち冷や水ぶっかけてくるよね?
 
まぁ、このオチまで含めて宝石泥棒編なのだと思います。

 もう何度でも書きますが、私は聖剣LoMがストーリーをランドメイクを通して表現しようとしている、「あなたの手で作り出した世界を、物語を、人物を愛してあげてくださいね」的なテーマが大好きです。

 そして、その要素とかメッセージ性みたいなものが最も濃縮されているのが、「マイホーム」なのではないかと思うのです。最後に帰る場所。誰でも愛している場所。世界で最も落ち着く場所。そんな「マイホーム」は、このゲームにおいて、最も大切な存在なんじゃないかと思ったりします。

 ……なんか、正直自分の中では「宝石泥棒編で聖剣LoMへの熱量が燃え尽きてしまった」ような感覚すらありました。別にクリアしてないけど、終わりでよくない? このまま、この愛しいマイホームでサボテンに絵本でも読み聞かせながら平和に暮らすのが、私にとっての最善ではないかと。

 そのくらい、宝石泥棒編の眩い輝きに、私は焦がれ、心を奪われてしまったのでした。今でも、ずっと奪われたままです。



こおれる過去

 このイベント、意外とメフィヤーンス先生が人情派なことがわかって好きです。「メフィヤーンス支持派」の生徒が多いのもなんとなくわかる。

 というか、あの花火イベントと印象違いすぎますよね。逆にあの花火イベントの印象が悪すぎると言えなくもない。人は見かけによらない。

生徒へのさりげない優しさがいい


ギルバート・愛の履歴書

 長い長いギルバート編、感動の最終回です。
 むしろ長すぎる。あんな男になぜここまでの尺を割くのか。

 で、このフラメシュが教えてくれる「石化を解くための詠唱」、どっかで見たことある気がしてたんですよね。このアルテマの詠唱に似てるヤツ。

 光舞う天に、生命の水を還し、
 創世の記憶は、風となり、
 翻り巡りて、大気を満たせ。
 織りなす時は螺旋の相を巡り、
 失われし輝石も求めれば大きく我が胸を満たす。
 心震える時、力の塔となれ。
 幾百にも巡りたる時の、
 唯一なる真相を知れ。

 これ……まさしく、まさしくあの「数十年前の攻略メモ」にそのまま書かれていたんですよ。すげーな。なんかすごいロマンチックじゃない?

 先代所有者さん、ありがたく使わせていただきます。
 ってか、もし「これ書いたの俺かも?」と心当たりのある人がいたら、なんかメールとかで一報ください。さすがにお礼を言いたい。

 ギルバート……
 二人のハーモニー、うまく奏でられなかったけど、あなたは大切な友達よ。これからも、あなたはあなたのままでかまわない。

 だけど石のままでいたらダメ。
 帰って来て。新しい恋をしましょう。

 聖剣LoM、愛。

 リュミヌーとの失恋から始まったお話は、リュミヌーがギルバートを蘇らせることによって終わりを迎えた。うーん、めちゃくちゃいい構成してる。そして、石化を解くための「呪いをかけられた人が一番好きだった人が唱えればどんな呪いも消える」という条件も実にロマンチックで童話的。

 もうこれも何度でも言えるけど、「ギルバートへの好感度は一旦置いといて、ギルバート編の完成度はめちゃくちゃ好き」なんですよね。聖剣LoM遊んだ人みんなそうじゃないの? ギルバートはクズだけど話はいいよね?


Pちゃん

 殺しました。

 だって……このためにわざわざトレントのところに「ひらたい種」を取りにいくのがめんどかったんだもん……あの「黄金の種事件」が起きたからもう二度とトレントの顔なんか見たくないし……。


豆一族を探せ!

 このハッソンとヘイソンのクエスト名が出る演出……一見ギャグっぽく見えて、結構すごい演出なんじゃないかと思ったりします。

 なにがすごいって、この演出が出てから本当にゲーム内からハッソンとヘイソンが消える……というか、もう会えなくなるんですよね。つまりこの時、彼らの人生においては本当に「ハッソン伝説」と「ヘイソン伝説」というクエストが発生していた

 そして彼らは、いまもどこかでこの人生をかけたクエストに挑んでいる。そう考えると、すごくいい演出ですよね。聖剣LoMはゲームじゃない、「人生」なんだ。「世界」なんだ。そんな真剣さを感じる演出でした。


白妙の竜姫

 なんでドラゴンってこんな拒否権与えてくれないヤツばっかなの。

 ……いまだに覚えているのですが、このクエストを遊んでいる最中、「マイホームでリアル寝落ち」してしまったんですよね。別に悪い意味じゃなく、聖剣LoMのマイホームの音楽は異様に眠気を誘う作りになっていると思う。リアルに1時間気絶してました。

 しかも、元々聖剣LoM自体が白昼夢みたいなゲームだから、寝落ちして目覚めた時に「え、夢!?どこからどこまでが夢……!?」と、慌ててゲームを動かしたりしました。実に𝐋𝐄𝐆𝐄𝐍𝐃 𝐎𝐅 𝐌𝐀𝐍𝐀的な体験。

もはやただの「サボテンの感想」になってきてる


真紅なる竜帝

 もうみなさんの耳が腐るほど「聖剣LoMは愛(ラヴ)のゲーム」だと言い続けてきましたが、ここでドラゴンキラー編もまた姉弟“愛”の話をしていることに気づきました。エスカデ編、宝石泥棒編、ドラゴンキラー編、このすべてがそれぞれ角度の違う「愛」を描いている。

 素直に、ここまでテーマが徹底しているのがすごいと思います。メタなことを言ってしまうと、「大勢でものを作り、それぞれの箇所を分担する」ということをすると、なにかしらテーマにブレは生じると思うのです。それこそ、ミリ単位のズレが。どうしても各担当者の味も出ちゃう。

 でも、聖剣LoMはずっと「愛」を描いている。
 聖剣LoMの愛、ブレなし。「愛のゲーム」としての強度がすごすぎる。なにがスクウェアをそうさせたのか。この一体感はなにがどうなっているんだ。やっぱり開発室で危ないお香でも焚いてたんだろうか。

 まるで……まるで聖剣LoMが王道RPGみたいじゃないですか……!?

 ってか、ドラゴンキラー編って明らかに「(エッジが効きすぎている他のボンクラ共に対する)王道RPG」を意識してますよね。ティアマットのグラ、ボスの中では一番好きです。めっちゃ王道ファンタジーみたいじゃん?

 エスカデ編や宝石泥棒編のせいで相対的に真面目な印象を受けてしまうところもあるけど、ドラゴンキラー編もいぶし銀に面白いですよね。なにより、自分のイメージする「聖剣伝説」をストレートに見せてくれたのがよかったです。まぁ、ナンバリングの聖剣もそのうちやります。


ディドルの手紙~ディドルさらわる

「おかしいことなんて何もないよ。辛いことばっかりさ。
 ケガしたり、ケンカしたり、人と別れたり、
 悲しいことだらけなのに、カペラの芸なんか見たってしょうがないもん。
 カペラを見て笑ってるヤツらってボク、好きになれないもん!」

「つまんなくて、嫌なことばかり起きて……ギスギスした世の中さ……
 だけど、それでもオイラは世の中が好きさ……
 だから……、サヨナラ……。
 オイラが上の世界を、もうちょっと楽しくして
 住みやすい世界にするから……
 そしたら帰って来いよ。それまで待ってるよ。」

「カペラ……ボク、シャドールにはならないよ
 ボクはボクのままずっとここにいるから、安心して上に戻ってなよ。」

 自分の中での「聖剣LoM最高傑作」が宝石泥棒編だったとしたら、このディドル編は「聖剣LoMで最も驚かされたシナリオ」です。

 そもそも、このシナリオって最初の建てつけがギャグシナリオっぽいじゃないですか。だってこのふたり、ドミナの端っこで大道芸やってるNPCですよ? ふつうに考えたら、ギルバート編くらいのギャグだと思いません?

 そんな感じで舐めてかかったら、想像以上に濃厚な聖剣LoM原液を口に流し込まれた。もう、ポエトリーオーバードーズを起こすレベルに詩的かつ強烈なセリフが矢継ぎ早に飛んでくる。すれ違いざまにすごい深めなボディブローを撃ち込まれたようなシナリオだったと思います。

「ねぇ、カペラ、もう少し星をながめていようよ。」
「うん。でもちょっとにしようぜ。」
「どうして?」
「オイラ、すごくうれしくって、
 笑わないって約束、破ってしまいそうだよ。」
「いいよ、笑っても。息を切らしたあと、
 目まいが終わるまでの星はまわりながら落ちるんだ。」

 アタシ、化物語見せられてる?

 そして、これも「「「愛の話」」」なんですよ。
 怖い! アタシ聖剣LoMが怖くなってきた!!
 なんなのこれ!? 変な電波受信しちゃってんじゃないの!?

 特に、「息を切らしたあと、目まいが終わるまでの星はまわりながら落ちるんだ」とか、聖剣LoMに慣れてない人がいきなり触れたら卒倒するんじゃないかと思えてくる。でも、ディドルとカペラはガチ覇権カプだと思う。これだって、「愛」の捉え方のひとつなんだから。

 ディドル編の異様な熱量に比例して、サボテン君日記もヒートアップしてる。聖剣LoM、哲学。

 この異質なまでの「原液」っぷりを見ていると、「ひょっとしたらディドルとカペラの話も宝石泥棒編とかエスカデ編くらいのメイン格の扱いにしようとしていたけど、結局サブになったのでは?」という考察をしてしまいます。そのくらい、若干怖い熱量を感じる。濃さで言えば、ほぼメイン級。


静かなる海域、宝の地図、雪原の妖精

 アホの渚カヲル。

 この海賊シリーズ、やたらめんどくさくてあんまりいい思い出がありません。宝の地図ではアナグマを追いかけ、雪原の妖精では妖精に順番に話しかけて……宝石泥棒編でほぼバーンアウトしかかっている自分に追い打ちをかけるかのようなしんどさ。

 だから、結局「全イベント踏破」には至ってないんですよね。
 最初は「せっかくだし全部やろうかな」とは思ってたんですけど、黄金の種事件のせいで、2~3個は取り逃してます。なんならPちゃん殺したし。でもPちゃんを殺したことは別に後悔してない。俺は別に間違ってない。

これ発狂するかと思いました


続・ニキータ商い道中~ニキータ最後の商い?

 ニキータがただただ真正のド畜生であることがわかるシリーズでした。

 もうこの一行だけで終わらせたいのですが、なんとこれ「続・ニキータ商い道中」「続々・ニキータ商い道中」「続々々・ニキータ商い道中」「ニキータ最後の商い?」で、最初も入れたら計5つもあるわけですよ。なにが悲しくてこの邪知暴虐の畜生に5回も付き合わなきゃならんのか。

 「聖剣LoMは愛のゲーム」みたいなことを言ってましたが、その意味ではニキータはかなり異質ですよね。愛もクソもない。善性とかない。強いて言えば、「お金への愛」はあるのか。いいや、コイツはド畜生だね。

ちょっと詰め方が怖いんだよ


シュタインベルガー

 酒蔵のシュタインベルガーを飲み干し、べろんべろんに酔っぱらったニキータが問答無用で襲いかかってくる。コイツ、とうとう馬脚を露したな。なんかここだけ龍が如くのサブクエみたいなノリですよね。

 ていうか、ニキータ商い道中シリーズの最後がこれだったとしたら、なんかニキータの扱いがあまりにもあまりなんじゃないか。ニキータだからこんなもんでもいいのか。「勧善懲悪」ってこういうことですか。

 「心の中に樽を手に入れた!」というアル中のUNDERTALEみたいなイベントに遭遇しつつ、オアシスまでやってきたら……本当に身体の中から樽が出てきた。え、これ「心の持ちよう」的な話じゃないの? 抽象的な意味じゃなくてマジに「心の中に樽」があるってことなの!?

 なに……なんなのこのイベントは……!?
 もう頭痛い! 低気圧と聖剣LoMのWインパクトで頭痛い!!


レイチェル

 これ、最大の問題作だと思います。
 
元々問題作まみれの聖剣LoMですが、その中でも特筆して問題作。

 これも順を追って書くと無駄に長くなりそうなのでオチから話してしまいますが、「外部から見ればホラー、けれど当人たちにとっては現状の打開」という感じのお話だと思いました。まぁ、客観的にホラーなのは事実だと思います。

 だって、クエストを進める間に明らかにレイチェルが入れ替わってることがわかるくだりとか……ホラー映画の『エスター』を思い出しました。これを原案にしてホラー1本作れるんじゃない? とにかく不気味な空気感のクエストだと思います。そうだ、適切に言うなら「不気味」。これだ。

このセリフ本当に怖い

 外からこのお話を見ていると、「家庭内環境に嫌気のさした娘が家出し、中身だけ別の人間に変わって帰ってきた」という風に見える。けれども、いま緑色のぷにぷにとして暮らしているらしいレイチェル(本人)からすると、きっとこれは「いまから家族との溝を埋めていく」始まりのお話。

 もっと本質的に言うなら、これは「すれ違い」の話。
 そんなすれ違いが、ようやく解消されていくのかもしれない。これは「きっかけ」のお話。いや、にしたってアプローチが不気味すぎるでしょう。

 ハタから見たら完全にBADENDなのに、レイチェル当人的には別にそこまでBADでもない。むしろここから。聖剣LoM味すぎるってこれ!!

 個人的には、「レイチェルが(父親の夢である)ロケットを作ろうとしていたことに、父親は全く気づいていなかった」ことが、このクエストのすべてを物語っているのではないかと思います。ものすごく大きなテーマで、かつ異次元の角度で切り込んできた「家族愛」の話。気が狂いそう。

サボテンがクエストの内容に押し負けてるパターンかなり珍しいですよね


賢人を探せ!(with 世界辞典)

 このクエストの存在に気づいたの、実はめちゃくちゃあとになってからです。いや、さすがに時系列的にはレイチェルより先に発生してたけど、それでも全然気づかなかった。コロナばっかり仲間にしてて、バドに話しかける機会がなかったから。いまロリコンって言ったの誰?

 そんなこんなでバドと賢人を探しにいくのですが……そもそもこのゲームに出てくる「マナの七賢人」の設定がすごいと思いました。ガイア、ロシオッティ、セルヴァはわからんでもないけど、ポキールとトート(亀)とオールボンは大前提として「お前ら賢人なの!?」という驚きがある。

 せっかくそんな設定があるのだから、龍が如くのネームドキャラみたいに「トート マナの七賢人(迫力のあるSE)」みたいなテロップ出してくれてもいいのに、みんなシレっと世界のどこかにいる。

 ある人は街道で冒険者を待つ。
 ある人は亀として湖に。
 またある人は鍛冶屋でオルゴールを回しているかも。

 そんな、「世界の実在感」を徹底して作り上げているのがすごい。マナの七賢人といえど、結局はその世界で暮らす人。別に全員ド派手に世界を支配しているわけでもないし、スタバで一服したりするかも。そんな「意外と、身近にすごい人いるかもよ?」な描き方が、めちゃくちゃセンスいい。

個人的にはトートが一番驚きでした

 このクエストで七賢人に出会うと解放されるのが、「世界辞典」。これ…………まぁ~~~~~~~すさまじい。世界辞典、自分は割と冗談抜きに聖剣LoMで一番すごいコンテンツなんじゃないかと思いました。

 端的に言えば、「答え合わせ」だと思うんです。
 メインストーリーだけ追っていると、やっぱりわからないことが多い。というか、多分わからないように書いてる。冒頭にも言ってた「なにかがありそうで、その実なにもなさそう」の雰囲気に対して、「実はちゃんと全部考えてますよ」を長々と開示してくれるのが世界辞典だと思いました。

 そもそもこの世界はいかにして形づくられたのか? マナの七賢人とは何者なのか? AFとは? 属性とは? ゴーレムや妖精は何者? 各地にある不思議なエリアはどう生まれ、どんな歴史があるのか? 

 それらすべてを、ほぼ網羅する勢いで書き連ねている。もしゲーム冒頭にこれを読まされてもなんのこっちゃわからなかったかもしれないが、このド終盤に読むと、まさに「読める……読めるぞ……!!」状態なのだ。

 つまり、自分の脚で体験してきた世界を、最後にようやく解説してもらえた。真の意味で「答え合わせ」を最後にできた。このコンテンツ面白すぎ。

 ある意味、これも『ゼノギアス』式でストーリーを作ってしまったゲームなんだと思います。この世界を作るにあたって、本当に世界の創世から文明の発展にまで至る、壮大なサーガを生み出してみた。いまから触れるのは、そんな世界の一片。途方もねぇ! 途方もねぇがそれがいいンだ!!

 だって、これ妖精戦争の時代だけでゲーム1本作ろうと思えば作れますよね? ゼノギアスが実はEP5だったように、これも本当は『聖剣LoM』という壮大なサーガのEP6だか7くらいに位置してる作品なんじゃないか?

 聖剣LoMやゼノギアス、ガンパレード・マーチなんかもそうですが、「一応このゲームを作るにあたってものすごく膨大な設定と世界観を作ってみたけど、まぁゲーム内ではあんまり理解しなくてもok」みたいな態度のゲーム、すごいですよね。ただただ「途方もない」の一言に尽きる。


マナ

 ラスボスまでこんな調子なの聖剣LoMじゃなきゃ許されないですよね。

 ということで、そんなこんなしているうちにラストステージまで辿り着いてしまいました。なんかマナの女神と戦うことになり、割とあっさり決着がつきました。丙子椒林剣が全部悪い。まぁ、これはこれでLoMっぽい。

 強いて言えば、「マナの女神を倒した瞬間のすごい演出にうちの限界ハードが耐えきれず、ちょうど倒した瞬間にフリーズする」という最悪の事故が起きたくらいでしょうか。もう「倒した瞬間にフリーズするな!!」とお祈りする前代未聞のバトルが勃発しました。ある意味、最強のラスボス。

何気にProducer:Akitoshi Kawazuが一番の驚きかも

私を思い出して下さい。
私を求めて下さい。
私は全てを限りなく与えます。
私は『愛』です。
私を見つけ、私へと歩いて下さい。

 みなさんの耳が腐るほど言い続けてきた「聖剣LoMは愛のゲーム」という話……もうゲーム冒頭にマナの女神が言っちゃってたんですよね。「私は『愛』です」って。だからこれは、徹頭徹尾、愛のお話だった。

 クリアした時も、「これは間違いなく自分の歴代ベストオブRPGに入る作品だ!」という完成度を褒めたたえる気持ちもありつつ、なにより大きかったのは、「聖剣LoMが終わってほしくない」という惜別の思いだった。

 たぶん、このゲームはランドメイクとストーリーを通して、「あなたがイメージして、あなたがその手で作り上げた世界を愛せますか?」という話を投げかけてきている。終盤あたりから「終わってほしくない」と思えた時点で、たぶん私はそう思えていた。いつの間にか、世界を愛していた。

 このゲームの真骨頂は、ストーリーありきのRPGであるにも関わらず、拠点が「マイホーム」になっているから、徐々にファ・ディールという世界に暮らしているような感覚が芽生えてくるところ。つまり、RPGなんだけど、『どうぶつの森』のような愛着が湧いてくる。

 私はこの世界に住んでいて、この世界で生き続けることに意義を感じる。まさしく「永住したくなる」ゲームなのだ。だから、エンディングを迎えた時、感動よりも、真っ先に「寂しさ」がやってきた。永遠に続けばいいと思った世界が、終わりを迎えてしまう。そんなの耐えられない。

 聖剣LoMは、世界を愛したくなるゲーム。
 そして、世界が「愛」をくれるゲームだと思います。

少し泣く



アルティマニア編

 自分の中の「LoMロス」があまりにも著しく、この寂しさと孤独感を埋めるために、アルティマニアも買ってみました。分厚ッ! 冒頭に「いろいろ頑張ったら608ページになってしまいました」的なことが書かれてて超面白い。そら分厚いわ!! 攻略本作る側も変な“気”にあてられてるよ!!

 ついさっき「世界辞典」が聖剣LoMの答え合わせなのではないか……という話をしたけど、このアルティマニアまで含めて2段階式の答え合わせなんじゃないかという気もします。もう、読めば読むほど知らない設定が湧いてくる。不死皇帝ってジャジャラに従ってたんだ?

 やっぱり、このPS期スクウェア作品って、文字通り「全盛期」かつ「時代の到達点」なんですよ。そして聖剣LoMも、この圧倒的な絵作りも含めて、「極限まで行っちゃった」作品なのだと思います。もう一度作れと言われても、絶対に二度目が出てこない。その時じゃなきゃ作れなかった黄金。

 だから、最高のゲームでした。とても長く、それでいてひと時の夢を見ているような作品。一生忘れられませんね。生涯のベストオブRPGです。

 ここからは、「クリアして時間の経った自分」の話になります。

 さっきから言い続けている「LoMロス」、どんどん悪化してきています。聖剣LoMが終わり、ようやく長い冒険の旅にエンドマークがついた。だけどそれは「冒険の旅」ではなく、いつしか「私の住んでいる世界の話」になっていた。でも、あの世界とはお別れをしてしまった。それに耐えられない。

 ゲームを遊んでいて、「エンディングを見たくない」と思ったりしないでしょうか? アニメや漫画で「終わってしまうから、最終回を見たくない」と思ったことはないでしょうか? 

 私は結構それを感じてしまうタイプなのですが……困ったことに、聖剣LoMはエンディングを迎えたあとに、じわじわと「やっぱり終わらせなければよかった」という後悔が大きくなってきています。あんなに愛した世界に、私は自らの手で終わりの引き金を引いてしまったのだ。

 だから、聖剣LoMをクリアしてからの本当の気持ちを言ってしまうなら、「後悔」です。あの世界とお別れしてしまったことへの、「後悔」です。

「たのしいことは好きだけど、
 たのしいことは、すぐ終わってしまうでしょ?」

「たのしいことが終わって、
 カラッポになってると、
 ボクはどこにもいないような気分になるんだ。」

 いまの気持ちを表すのなら、ディドルのこの言葉が適切でしょう。

 あの愛しい世界は、いつの間にか愛しくなっていた世界は、すぐに終わりを迎えてしまった。そして空っぽになった私。居場所を見つけたと思ったのに、その場所はエンディングを迎えた。私はいま、どこにいるのだろう。

 極端なことを言うと、これは「世界讃歌」の作品ではないかとも思いました。世界は美しい。世界は愛しい。こんなにも彩りに満ちた世界、一体なにを脚色する必要があるのか。なにを誇張する必要があるのか。ただ日常を切り取り、風景をレンズで映せば美しいのだから、世界は素晴らしい。

 だから、最後に感じたのが、この「寂しさ」なのかもしれない。

 どこまでも美しくて愛しい世界だったから、その幕切れに、最も耐えられなかった。ただ寂しい。やっと得た居場所に、自分の手で終止符を打ってしまった。「自分の手で世界を閉じる」のは、こんなにも苦しいことなのか。

 愛を知る。哲学を知る。人生を知る。その繰り返し。意味があるような、ないような壮大な世界。その繰り返しの果てに、わたしは確実に「愛」を感じていた。人と触れ合い、世界を見て、「愛」を得たのだ。

 だけどその果てにあるのは、終わってしまった世界に呆然と立ち尽くす、孤独感だった。さよなら、私の愛しい世界。とっても、愛していたよ。

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