バディミッションBONDを愛してる
私は普段、「自分がやりたいゲーム」を遊ぶことが多いです。
いや、当たり前っちゃ当たり前なんですけど……「自分がやりたいゲーム」を中心に遊んでいるので、どうしても遊ぶゲームが「自分の好み」に寄ってしまうんです。つまり、自分の視界の中にあるゲームしか知らない。
で、今回遊んだ『バディミッション BOND』はあまりにも人から「やってみてほしい」と言われていたタイトルでした。自分はそんなに興味のある作品じゃないけど、とにかく人から勧められていました。多分100回くらい言われてたと思う。「絶対好きだと思う」って、もう何回言われたことか!
なので、流石に根負けして遊んでみました。
そんなに「好きだと思う」って言われると、流石にどんなゲームなのか気になってくる。普段触れないジャンルだし、その意味でも楽しみ……という感じで遊び始めました。そういう感想です。どうぞよろしくお願いします。
あ、あとめちゃくちゃネタバレしてます。
そこもお気をつけて。
……うん? 記事タイトルでデレてる?
いや、読んでみないとわかんないよ?
べ、別にバディミッションのことなんて好きじゃないし!?
ミッション0:ルーク×エドワード
このゲーム、思ったより気合入ってますね?
いや、別に「舐めてた」とかそういうわけじゃないんです。でも、想像よりずっとゲームとして気合が入ってる。基本はアドベンチャーだけど、コミック風の演出や、使っているイラストの多さもあり、とにかく見栄えが良い。もしかしてこのゲームめっちゃ気合入ってるのでは?
私は常日頃からアドベンチャーゲームに対して「魔法使いの夜くらい頑張ってる」という謎の褒め言葉カードを隠し持っているのですが、冒頭からいきなり「まほよくらい頑張ってるカード」を切ってしまいそう。
あと……バディミッションを遊んでいて最初に抱いた感想が「俺がタルタリヤとかシャルルマーニュにドキドキしてこっそり木村良平のドラマCDをサイトで買ったり聴いたりしてんのバレてんのかー!?なんなんだよーー!?!?」になってしまうの、本当によくないことかもしれませんね。
実のところ、木村良平さんって数年前まではそこまで意識してなかったんです。「ピングドラムの主役」くらいのイメージでした。でも、近年タルタリヤとシャルルマーニュで「この人はギャルっぽいキャラをやるとなんかすごい」ことに気がつき、猛烈に意識し始めてしまった。
ここでバディミッションを触るのは危険だったかもしれません。ルーク、いい声してると思う。俺がシチュボ聞いてるのバレてんのか?
あと、何気にルビーパーティーさんのゲーム遊ぶのも初めてなんです。ええ、あの……お名前は以前から拝見していて……。だから、遊んでいて「餅は餅屋」的なパワーを感じました。流石に男性キャラを作れば天下一品。
普段は明るいルークの幼少期が闇深そうなところとか。特にルークの幼少期が闇深そうなところとか。あとルークの幼少期が闇深そうなところとか……まさにルビーパーティーの「餅は餅屋」を感じました。
コミック風なアドベンチャー!
ルビーパーティー謹製の男!!
これは……無敵のゲームか!?
ミッション1:ルーク×アーロン
それ、十七分割にされたアルクェイドとほぼ同じ物言いやからね。
アーロンが本格登場しました。いきなり捕まって女騎士みたいな目に遭ってると思ったら、今度はアルクェイドみたいなことを言い始めた。アーロン、萌えです。しかも弟属性もある。これは完全に萌えです。
そんでアーロンのご機嫌を取るための3択まで出てくる。
これなんてギャルゲ?
遊び始めてから言うなよって感じですが、私は「謎解き」が大の苦手です。本当に、「頭を使って考えなければならないこと」が一切合切できない。ゼルダの伝説も、祠に入るたびに20~30分は平気で使います。
そして、アドベンチャーゲームでもそれは変わらない。
キャラクターのヒントっぽいセリフがなぜか頭に入ってこないし、いざ思い返すターンになっても、全然思い出せない。選択肢も何度も間違える。
あまりにも謎解きが苦手すぎて、『逆転裁判』で「相手のセリフひとつひとつに異議ありを突きつけていく異議ありローラー」を実行に移したことがあるレベル。ただ、バディミッションはそんな自分でもなんとか太刀打ちできるくらいの難易度だった。そこがありがたい。
ゲーマーの人からすると「ヌルすぎる」と思われるのかもしれないけど、自分はこのくらいが一番ちょうどいいです。まぁ結局「謎解きが苦手」なのは変わっていないので、バディミッションも少し辛かったのですが……「キャラ萌え」という餌を目の間に吊るされてなんとか頑張れました。
バディミッションもしかして面白い?
おい、なんかホテルでイチャついてんだけど?
なんすかここ。ラブホ?
隙あらば男性同士のイチャイチャをお届けしてくるじゃないか。
もちろんストーリーも面白いのですが、バディミッションはやっぱりこの「キャラの絡み」の味が濃いのがいいと思います。そう、味が濃い。調味料ドバドバ。自分自身が「薄味にされるくらいならなんぼでも鶏油入れてくれ」派なので、すごくテキストの濃さに身体が馴染みます。適合食材?
そして同時に、「テキストがおいしい」タイプのゲームでもある。
キャラのセリフひとつひとつにしっかりと味を染みこませたような……もうセリフひとつから同人誌を作れるような……そんなタイプのゲーム。
だから、ミッション1をプレイした段階で、できる限りサイドストーリーも回収しようと決めた。でも、いざルークとアーロンのバディエピソードを開いてみたら「1/16」とか書かれている。え? ルークとアーロンだけで16話分あるってこと? おっと思ったより話のスケールが大きいな?
ミッション2:ルーク×いやらしい看守
アタシいま同人誌見せられてる?
何が「セリフひとつから同人誌作れそう」だ。
公式が最大手だったわ。
目が覚めた時、ルークは監獄にぶち込まれていた。「いやらしい」という何とも卑猥な形容詞のついた看守に、それはそれはもうひどい拷問を受けていた。なにこの表情差分? 絶対犯されてると思うんだけど?
どうしてしまったんだこのゲームは。ミッション2から急に性欲を全解放しているじゃないか? 最初に見せていた「Nintendo Switchで遊んでいる子供たちに向けた少年漫画風アドベンチャー!」みたいな空気はやっぱりトロイの木馬だったんだ。吐けよ、村田雄介絵で卑猥なことしたかったんだろ?
よかった、急にルビーパーティーさんが同人誌書き始めたわけじゃなかったんですね。で、続きはFantiaに載っけてるってこと?
今回、私は『バディミッション BOND』のダウンロード版を、定価の7128円で買いました。とりあえず木村良平の拷問されて憔悴しきっているボイスで4128円は回収しました。ええ、このシチュボに4128円は出せるね。
なんだか、一周回って「よくこれをSwitchで遊んでいる子どもたちに向けた村田雄介デザイン少年漫画風アドベンチャーっぽく偽装できたね?」という感心の方が大きくなってきました。発売当時にニンダイかなんかで見ていた時の自分には、間違いなくそんな感じのゲームに見えていました。
実際、こんなゲームだなんて全く知らなかった。
何事も触れてみるものですね。なんか良い話にしようとしてる?
バディミッションもしかして面白い?
宗教画が2回も出てきた。
なんとなく、このミッション2で「バディミッションBONDというゲームにぶん殴れらた」ような感覚がありました。性的な意味でも、ストーリー的な意味でも。ゲームから「自分たちはこういうことをやろうとしているッ!!」を強く叩きつけられると、どうにも惹かれてしまいます。
もう、ミッション2の段階で内なるオタク君が「これはつまり“繋がりがない”ことにトラウマのあるルークがバディを得る=他者との繋がりを得るというテーマが……」「これまで単独で行動していたアーロンの壁を壊したのはルークで、そしてルークの恐怖という壁を壊したのはアーロンでぇ……」のテーマ深読みターンに突入している。早い早い。まだ考察には早いって。
ミッション3~4:モクマ×魅惑的なCA
ミッション2の「いやらしい看守」もそうですが、非ネームドキャラにも結構魅力的なヤツが多いですよね。特に、自分は「魅惑的なCA」が結構お気に入りです。一途な女性、とても素敵です。
見目麗しさに、内面が伴っている。
きっと、理想の大人の女性ってこういう人のことなのでしょう……。
魅惑的なCA気に入ってたのにィィィィィッッッッッ!!!
ということでチェズレイ登場です。
魅惑的なCAマジで気に入ってたんだよ。正体コイツでした。
ただ、「女装が完璧に似合う上に作中でキャーキャー言われるくらいには美形」という設定らしいので、まぁ許しましょう。俺はな、「作中で美形とされているキャラ」が好きなんや……美形キャラそのものというより、作品の中で美形という判定を受けている事象そのものが好きなんや…………。
それ、十七分割にされたアルクェイドとほぼ同じ物言いやからね。
わかってきた。俺はわかってきたぞこのゲームの手口。「あざとさ」だ。バディミッションのメインウェポンは、「あざとさ」なんだ。このあざとさが、段々と身体にスーッと入ってくる。脂っこいあざとさを、ひたすら口に流し込まれる。1杯1杯が家系。もう1杯で割とお腹いっぱい。
いや、これは一応褒めているつもりだ。
正直、自分は「あざとければあざといほど良い」と思う。だって、伝わらないような遠回しなことをされても、私のような鈍感には気づけないから。死ぬほど萌えをアピってくれた方が助かる。あざといって、良いことよ!
さっきから使っている喩えのチョイスで薄々察せるかもしれないのですが、私は数ある実家のうちのひとつが𝐓𝐘𝐏𝐄-𝐌𝐎𝐎𝐍だったりします。
だから、「普通の人間に魅入られてしまった怪物」みたいなテーマ性にものすごく弱いのですが……なんだか知らんけどバディミッションBONDでも同じ味を何度も提供いただけています。チェズレイが人外ヒロインすぎる。そしてモクマが超越系一般人すぎる。これ型月でめちゃくちゃ見た。
なんか、チェズレイの「こんなん人気出ないわけないじゃん!?」感がすごすぎます。ビジュアル自体はそこまで直球な人気路線というわけではないから、内面でここまで「人気出ないわけないじゃん」と思えるのがすごい気がする。チェズレイ絶対年末商戦用の新ドライバーで変身するやつ。
このチームBONDの4人が揃った段階で、うっすらと気づきました。
まぁ、「ルークとアーロン」「モクマとチェズレイ」がデザイナーズコンボ(隠語)なのだろうなと。ただ、わたしは結構TCGが好きなので、こうなってくると「デザイナーの意識していないデッキ」を探したくなるのです。
要は、狙って作られたデザイナーズコンボ(隠語)の濃い目な関係も好きなのだけど、アーロンとモクマのような「やや仲のいい同僚」くらいの関係も結構好きになってしまいます。俺、FF14の暁だとサンクレッドとウリエンジェの関係が好きなんですよ。アーロンとモクマ、かなり良い。
……で、そういう良くないメタ読みを決めていたら、ちゃんとバディエピソードに全員分(6パターン)用意されてて戦慄したのがこのあたりの話なんですけど。ホントに6パターンでエピソード作る奴がいるかバカ!!
ミッション5~6:ナデシコ×スイ
これでCV田中敦子は━━━マブすぎる━━━━━
もう抱いてくれ。このゲームで一番抱かれたい人。ちょうどこのミッション5~6あたりで、「ナデシコ」や「スイ」といった女性陣も本格登場です。
またしても私の逆張り野郎っぷりの話になるのですが、自分は「女性キャラ中心の作品では男性キャラを見たくなる」「男性キャラ中心の作品では女性キャラを見たくなる」という、ハイパーひねくれプレイをしてしまうのです。美少女ゲームに出てくる男性キャラが好きだし、少女漫画に出てくる親友の女の子とかが好き。なんか、希少部位を食べてる気分になるから。
そしてバディミッションはどちらかというと男性キャラ中心のゲームではあるけど、女性キャラもしっかりと華のあるビジュアルになっていて、「偏り」が発生しすぎていないと思いました。ここは流石にキャラクターデザイン:村田雄介の力を感じます。村田雄介いつもありがとう。
……で、ここはちゃんと言及しておこうと思うのですが、まさに私がバディミッションをプレイしている最中に、田中敦子さんが亡くなられてしまいました。全然「衰え」を感じない演技力の方でしたし、直近でナデシコの激マブ演技を聞いていた自分としては、全く実感が湧きませんでした。
それでも、バディミッションを進めている間に、少しずつ「あぁ、今まさにこうやって聞いている声の人が亡くなってしまったのか……」と、実感しました。余計に、ナデシコの演技が尊いものに聞こえました。
ナデシコ、最高の演技でした。ただのオタクのくせに何様って感じですが……田中敦子さん、素晴らしいキャラクターをありがとうございました。
これ告ってるよね?
チェズレイさぁ……隙あらば元カレの話するよね?
元カレの話ばっかりすると今カレに嫌われるよ……?
「あなたが生きている限り、私のターゲットはあなたで━━」って、オデ馬鹿だからよくわかんねェけどふたりは付き合ってるってことなのか? 「殺し愛」ってやつなのか? やっぱりこの2人エロゲみたいだよな?
真面目に考えてみると、多分チェズレイの人外ヒロインっぽさって「常識外の倫理で行動しているから、一般的な道徳の観点から見ると理解不能」なところに起因しているのではないでしょうか。要するにここのエッセンスがTYPE-MOONやニトロプラス的な味に繋がってるんだと思うんだけど。
ここら辺で気がついてきた。
ミッションをひとつ終わらせるたびに「バディエピソード6話+サイドエピソード2~3話」が一気に解禁されるバディミッションの異常な物量に。なにこの物量? もうサイドが群がってメインのボリューム感を上回ろうとしているじゃないか? アカン、物量に潰される!! ……と思い始めました。
当初、私は『バディミッション BOND』というゲームを、一品一品にこだわりを込めるタイプのおしゃれなカフェだと思って入店したんです。ルビーパーティー店長こだわりの、それはもう上品なお店なのだろうと。ところがコメダ珈琲みたいなサイズの飯がどんどん運ばれてきて戦慄している。
おかしいだろ、メインミッションを1話終わらせたら一気に6~9本はエピソードが解禁されるボリューム感。なにが「サイド」なの? シェフ、ここって外面はカフェみたいだけど料理のドカ盛り感ほとんどポムの樹だよね? アンタ今日からバディミッションKOMEDAって名乗りな。
ミッション7~8:アーロン×ルーク
なぁ、あざとすぎンだろ?
流石に俺も成人男性がお座りさせられてるとこ見て「おっ、アーロンとルーク仲良しっスね^^」で流すほど頭お花畑じゃねんだわ。なんすかこれ? コエテク任天ルビパの三羽烏が「バディミの同人誌みたいな展開いっちゃん上手く書けんのウチらなんで……」とか言い出し始めてないスか?
しかし同時に、この辺からバディミッションのエグさも垣間見えてくる。特にアーロンの過去回想なんかは、まさしく「バディミッション/zero」といった凄惨さ。平然と仲間が全滅した過去回想が出てくる。
段々わかってきた、このゲームの基礎構造が「ベースのエグさをキャラのあざとさでいい具合にコーティングしている」であることが。その辺、割と平成仮面ライダーっぽいんですよね。全然類似点がないのですが、個人的にバディミッションを遊んでいる時の感覚は、「仮面ライダー電王を見ている時」にかなり近かったです。伝われ!
非常にお恥ずかしながら……アーロン役を演じられている近藤隆さんのこと、バディミッションを遊ぶまで、あまり存じ上げていませんでした。
しかし、バディミッションを遊ぶ中で、流石に近藤隆氏の存在を意識せざるを得なくなってきた。もちろんアーロンは単体でも魅力的なキャラだと思うけど、他のキャラ以上に「フルボイスの恩恵」を受けていると思う。
テキストだけでは暴れん坊な側面が目立ちそうな中、CV近藤隆の絶妙に諦めきれない正義感のこもった演技が……アーロンという人物の造形を何倍にも鮮明に切り取っている気がする。いや、むしろ、近藤隆の入っていないアーロンはアーロンと言えない。割と本気でそう思えてくる。
そしてミッション7の最後、ゲーム冒頭のシーンに戻ってくる。
この「冒頭で見た時と、実際にそのシーンに到達した時には見え方が180度違う」という演出、結構ベタだけど、何回見てもいい。
もう、「アーロンこんな顔してたの……」とか、「ルークはどういう気持ちなのよ」とか、見え方が全く違う。ルークとアーロンを見ていると、すぐに「これは要するに人助けで大切なものを失ってしまったアーロンはルークに過去の自分を見ていてぇ……いやそれともあの時捨ててきてしまった光を見ていてぇ……」と、内なる深読みオタク君が起動してしまう。
個人的には、割かし「これどれ選んでも正解じゃない?」的な選択肢が多かったヒーローチョイスで、「撃つ」と「撃たない」の2択が表示され、「撃てるわけねぇでしょ……アーロンを……」と、事実上一択にされるところが本当によかったです。おっと、これはルーク解釈戦争が起きるかな?
もう、近藤隆パワーがすごいのよ。
近藤隆氏のキャラ全然意識してなかったけど、アーロンのせいでこれから近藤隆のことを意識してしまうじゃないか。このままだとひとりで勝手に「この近藤隆がすごい!2024」を開催してしまう。
「演技」というものに、常々思っていることがあって……本当にすさまじい演技って、20文字くらいのセリフに、10000字くらいの感情を詰め込んでくるんですよね。人によっては、「………!!!」という、もはや言葉は0文字のセリフにすら、文字に起こすと10000字くらいの思いを入れてくる。
アーロンは、そういうキャラだと思います。
たとえば、R-18の壁を突破しそうな「………っ… ……………」という、セリフとしては成立していない嗚咽が漏れているようなシーンに対して、近藤隆が10000文字くらいの思いを演技で詰め込んでいる。ここが、アーロンの魅力。もう、「アーロンの魅力=近藤隆」の図式が完成しそうだ。
どうなってんだ━━どうなってんだよ石田ァ!!!!!!!!!!!
ごめんなさい、匂わせ多すぎて無意味に石田雨竜に当たり散らす黒崎一護になりました。無理、死ぬ死ぬ死ぬ。ルビーパーティーに人質取られてる。
この間にもミッション2の対比構造みたいな宗教画とか挟まれてるので、もうバディミッション成分の過剰摂取でオーバードーズを起こす。バディミッション成分、1日につき1ミッションでだいぶお腹いっぱいです。それ以上は体調を崩す。肉体がバディミッションに耐えられない。
なんか、段々「あーあ、この“なんだか分からないけどすごい過去があるらしい”をずっと味わいたいからこれ以上進めたくないな………………」状態になってきた。この「焦らされてる感」を一生味わいたい。もうマゾでいいや。
ミッション9:イアン×シキ
このゲーム、QTEだけは本当にどうにかならないのか。
いや、私はむしろ「かわいげ」があって嫌いじゃない。
どんな作品にも、「愛嬌」は必要なのだ。何もかも完璧で口出しのしようがないゲームだなんて、そんなの逆にかわいくないじゃないか? でも、それと同時に「QTEだけはどうにかしてほしい」という気持ちは両立する。
QTEだけは、本当に終始「ハハッ、QTEだけはかわいいヤツめ」と思いながら遊んでいました。「どうにもなりませんでした」感がずっと漂っていて、人間味を感じる。ちゃんと手作りです。どうにもならなかったんやね。
で、この辺でシキが初登場ですね。
なんで誰も内山昂輝の陰キャ男性がいるって教えてくれなかったんだ。
シキ、めちゃくちゃビジュアル好みなんだけど。しかも、内面も根暗な感じで……非常に良い! 陰キャ男性大好き! 何気にこの「狩衣+パーカー」のような奇抜ファッションを上手いことまとめているところに、キャラクターデザイン:村田雄介の力を感じます。村田雄介いつもありがとう。
あと、私……内山昂輝の声もかなり好きなんです。そもそもキングダムハーツ好きだし……「野村哲也タッチの思春期感を再現できるのはお前しかいない」と思っていたし……あ、でもそろそろ小林千晃もいい線いってるかな? この記事半分くらい男性声優の話しかしてなくね?
このゲーム、敵側もバディミッション(動詞)してるのがかなり好きなんです。特に、「イアンとシキ」はめちゃくちゃ良い味が出ていると思う。
イアンとシキ……メインどころではないけど、「スイとナデシコ」に並ぶレベルで好きなふたり組ですね。自分的にはサイドの二大巨頭です。イアンが結構シキの度胸と図太さを評価してそうなのが良い。シキ、意外と根性ありますからね。そしてイアンが気に入るのもなんかわかる。
なんなら、イアンに至ってはマックスともバディミッション(動詞)してるし。このふたり作画がブレイバーンすぎるんだよな。
ミッション10:イズミ×モクマ×ナデシコ
最近、ずっと思っていることがあって……自分結構ノマカプも好きなんですよ。NL、いいよね? なんか最近かなり好きになってきました。
その上で、「初恋」というテーマも大好き。イズミ様、本当に素敵な女性……それに比べてモクマ、この初恋泥棒が。許せない。人の初恋をことごとく奪って、人生に忘れられない傷を残していく男。本当に許せない!
だけど、「初恋」は叶わないからいいものだと思う。
初恋を成就した人間なんて、絶対少数派でしょう?
誰かに言えなかった思いとか、伝えたかったはずなのに伝えられなかった気持ちとか、そういう心残りが積もりに積もって、人を形作っていくのだと思う。だから、叶わなかった初恋だって、きっと時間をかけて、かけがえのないものになっていくはず。初恋なんて、玉砕上等です。
もう、若モクマと若ナデシコでゲーム1本作れ!
初恋泥棒モクマ、第二弾です。もうモクマの野郎許せねえ。ナデシコの最高の女っぷりを見せられるほど、自分の中の「モクマ許せん」ゲージが上昇していく。モクマさん、ある意味マケイン製造機だよ。届けこの想いよ、夜空はキミへの滑走路。愛はどこからやってくるのでしょう。
バディミッションは、女性キャラクターがみんな魅力的な女性なのが……本当に良いところだと思います。主軸に据えられている男性キャラの魅力に、全く負けていません。大体叶わぬ初恋抱いてるけど。
なんなら、ルークとスイだって「ルクスイは純愛」というNL好きの自分と、「ルークが迎えに来てくれる時、あたしはスイだ」という夢女の自分がほぼ均等に存在していて、勝手にアルターエゴが生まれそうになっている。
この女性キャラ関係のお話は、特に今作の「絶たれた、失われた“繋がり”をもう一度得る」「登場人物それぞれが新しい居場所を見つける」というメインテーマをしっかりと描いていることが多くて、毎回グッと来てしまいます。まぁ、自分がNL好きだからそう感じてるだけなのかもですが。
ミッション11~12:
モクマ×フウガ×チェズレイ
子安の忍者だwwwwwwwwwwww
もう、全部「嘘」ですよね。
こんなんネタバレ見なくても裏切り者だってわかる。
「糸目」「忍者」「叔父」「子安武人」ってもう裏切り者の数え役満です。これで敵じゃなかったら逆に欺瞞。バディミッションって、キャスティング上手いですよね。もう「これはコテコテすぎないか?」と思うくらいのド直球キャスティングだけど、それくらいでちょうどいいと思う。
もう、メチャクチャや!!!!!!!!!
この辺で行われるモクマとチェズレイのやり取り、自分はもう国立バディミッション大学関係性科の入試問題なんじゃないかと思いました。そもそもモクマとチェズレイが複雑な人間性のキャラクターなのに、さらに乱れに乱れた展開がやってくる。
ただ、自分なりの解釈をするのなら……ここに至るまでに何度か行われていた「濁り」の話が、結構重要なキーになっているんじゃないかと思います。チェズレイは、「濁り」が許せない人間だった。しかしモクマは、お酒と同じく「濁り」すら一種の風味として良いものだ、と捉えている。
そうやって何度かこねくり回してきた「濁り」の話に対して、ここでようやくチェズレイがモクマという人間の「濁り」を受け入れた……というか、チェズレイが「モクマ流の“濁りの解釈”を認めた」のだと思いました。
こう言うと、すごく簡単な収まりになってしまいそうだけど、要するにこれは「相互理解」の話なのではないかと思いました。そして、「歩み寄り」の話でもある。手を取り合うには程遠いけど、とりあえず好きなお酒の味くらいは、一度飲んで確かめてみてもいいのではないか。
チェズレイとモクマは、お互いがお互いを下衆野郎だと睨んでいた。そしていざ仮面を剥がしてみたら、やっぱりお互いにそれなりの下衆だった。しかし同時に、下衆ではあるものの、それなりに矜持や正義があった。それはもう、「純粋」か「濁り」かで二分できることじゃなくない?
人間は、どぶろくのように清濁が混ざり合っている。むしろ、純粋か不純かで分別できないからこそ、理解不能だと思っていた相手にも、別の側面から理解し合うことができる。それが、人間の良さ。それこそが、人間同士のコミュニケーション。もう、真面目に考え始めると論文になります。
バディミッションというゲームは、キャラクター同士の無限の組み合わせによって無限の教科が存在しているゲームだと思う。そしてモクマとチェズレイは、本気で考え始めたら論文を書ける。モクマとチェズレイはほぼ大学院。もう、「人は何故わかり合えるのか」を考えるところから始まる。
もっと突き詰めるなら、これは「価値観」の話でもあると思う。
モクマとチェズレイは、人間的に相容れないというよりかは、お互いに「こいつの価値観だけはマジでないな……」と思っていたところからの、歩み寄りが描かれていると思う。他者の価値観の受容、譲り合い。
だから、いきなり和解に至るわけでもなく、「ちょっとずつ受け入れていけばいいじゃないですかね……」といった形の、少しずつ歩み寄っていくターンにシフトする。なんか、気取っていない距離感だと思う。ここが好き。
おそらく、バディミッションの根底にある「他者との繋がり」というテーマに対して、「相手(と、その価値観)を許す・受け入れる」という方法を持ってきているのが、モクマとチェズレイなのではないかと思う。
人間の繋がりにおいて、「許すこと」はすごく大切だと思う。だけど、どうしても軽んじられる。その選択を取れない人も多くいる。だからせめて、「受け入れる」ところから入ってみてもいいのではないだろうか。そうして初めて、誰かと理解しあえるキッカケを得られるかもしれない。
このふたりは、数多ある「人間のコミュニケーション手段」から、そんな側面を切り取っているのがすごく良いと思う。
…………えっ、なんか自己啓発本みたいになってきてる?
自分、ステイナイトだと間桐慎二好きなんですよ(自己紹介)
もちろん、フウガも大好きさ!
ただ、フウガってこの手のキャラにしては意外な方向性というか……「なぜ誰も私を見ていないのだ」という劣等感がベースにあるのは決して珍しくはないけど、同時に「いや俺は崇め奉られて当然でしょ」的な突き抜けた一貫性もあるヤツなんですよね。劣等感を抱えてる割に自己肯定感も高い。
だから、いろんな意味で「王の風格」はなくもない……というのが、面白いキャラ造形だと思います。劣等感キャラってどうしても「情けなさ」がつきまとうのに、フウガはなんだか爽やかな一貫性を感じる。
ミッション13:ルーク×チェズレイ
それ、もう恋じゃん。
人は、常に居場所を探している。
どこにも属さず、誰とも繋がらず、ただ無人の荒野で立ち続けられる人がいるのだとしたら、それはちょっと化け物じみている人だ。そこに複雑な理論はなく、きっと本能的に、人間に「居場所」は必ず必要なのだ。
そして、「熱量を傾けられる何か」というのは、厄介なことに「居場所」になりうる。それが羨望であれ、憎悪であれ、愛情であれ、復讐であれ、傾倒できてしまうことだったら、多分どんな形でも「居場所」になってしまう。だったら、少しでも幸せな「居場所」がほしいじゃない?
そんな幸せな居場所を見つけるために、人生には「濁り」が必要なのかもしれない。多くのものを知り、たくさんのことを受け入れることで、居場所は増えていく。人生は一瞬で過ぎ去っていくのだから、できるだけ、幸せな居場所をたくさん見つけられる毎日を送ろう。
「お前を幸せにするもののために、その熱量を使うといい」って……チェズレイのその後を考えると普通に泣けてきますね。
で、ミッション13でシキが一時退場……という感じですね。
ここらへんで気づいてきたのですが、バディミッションってそもそもが大盛り+味濃いめなゲームだから、若干疲れてる時にプレイするとバディミッションというゲームのエネルギッシュさにこっちが圧倒されるんですよ。
ちょうどこの辺をプレイしてた時、やたらとリアルが忙しくて、バディミの高カロリーっぷりに自分自身が負けそうになっていました。もう1日1ミッションが限界なんだわ! コイツらの元気さに俺がついていけねえ!!
正直、バディミッションのこと『パラノマサイト』くらいのボリュームでサクッとクリアできるゲームだと思って遊び始めたんですよ。でも40時間やって、全然終わりが見えない。もうアドベンチャー界のファミマです。
しかも、この学生食堂ばりのドカ盛りっぷりに慣れてきたところで、「特殊条件で解放されるバディエピソード」まで出てくる。もう勘弁してくれ。大盛系の店が「ウチは一見さんには提供してないメニューあるんで……」みたいなことすな。こちとらここまで来たらコンプに命かけとんじゃ。
ここまでの流れと全然関係ないのですが、自分結構ルークとチェズレイの組み合わせ好きなんですよ。率直に「バディミッションでどの組み合わせが好き?」と聞かれ、亀甲縛りにされた上で自白剤を飲まされたら「ルークとチェズレイ━━━」と吐露してしまうくらいには、好きです。
この「刑事と知能犯」という組み合わせもなんだか洋ドラっぽくて素敵だし、何よりあのチェズレイがルークのことを心の底から慕っているのがめちゃくちゃ良い。しかも、チェズレイが好きなことにちゃんと納得感もある。
バディミッションって、前提の部分に「明らかに登場する作品が違う4人がひとつの場所に集合している」という面白さがあり、その明らかに世界観を間違えている4人の組み合わせをとっかえひっかえして無限の関係性バリエーションを生み出している構造が、ゲームとしてよくできてますよね。
なんか、仮面ライダーWの「ダブルドライバー」みたいなゲームだと思ってます。基本の「サイクロンジョーカー(アーロンとルーク)」はもちろん強いんだけど、片方のメモリを入れ替えて「ルナジョーカー(チェズレイとルーク)」にしても結構強い、みたいな。とにかく全員にシナジーがある。
だからもう、「バディミッションの好きな組み合わせは?」とだけ聞かれると、ルークとアーロン、ルークとモクマ、ルークとチェズレイ、モクマとチェズレイ、アーロンとモクマ、アーロンとチェズレイ、ルークとスイ、イアンとシキ、スイとナデシコ…………みたいなことになる。脳内中川が「全部じゃないですか!?」とツッコミを入れてくる。
ミッション14:チェズレイ×ファントム
何気に、アッカルド社長も中々鋭いキャスティングですよね。
そもそものCV若本規夫で「この声の社長は絶対に敵キャラでしょ」「いや、むしろこれはCV若本規夫をダシにした罠なのでは……?」と読み合いをさせるハンターハンターばりの心理戦を仕掛けに来ている。「役者まで使ったギミック」として完成している気がします。
そして結果的には「娘を想う良い父親としてのアッカルド」と、「いかにも若本規夫な偽アッカルド」が両方存在していた。カーッ! なんだったんだこの無駄な心理戦は!? ルビパの掌の上で躍らされとる!
これだよ。バディミッションで一番好きなセリフかもしれない、「昔のお前ならルークごと俺を貫いていたよ、チェズレイ」。自分はシナリオ書いてる人の「癖」が見えちゃう瞬間がかなり好きなんですが、ここでそのセンサーが大反応しました。「いま、癖が見えた!!」と。
このセリフ、実際に聞いた時は「ヒヒヒヒヒwwwww」というオタク笑いが漏れてしまった。バディミッション指数が高すぎて。もう自分で自分のチェズレイに対する感情がよくわからない。助けてくれ。
なんとなく、チェズレイには吸血鬼は恋をすると好きな相手への吸血衝動に駆られてしまう的な、「だから人間の理の外にいる存在は人間を好きになっちゃいけないんだよ」ルールが適応されている気がします。え、真祖? 人外が人間を好きになっちゃうとこうなるんだよね……。
ミッション15:ヒーロー×ルーク
すごく素朴な感想なのですが、ファントムが初めて正体を現した時は「あぁ、今度はルークの親父に変装して精神的ショックを与えてやろう的な展開なのね」と思っていたんです。つまり、「エドワード=ファントム」ではないだろうと。だって、そうだったとしたらあまりにしんどくないか?
そう思っていたのですが、よくよく話を読み進めていると、どうやら本当に「ルークの親父=ファントム」で確定らしい。あまりにしんどくないか? あんなにお父さんを慕っていたのに? 唯一の心の支えだったのに?
……という、「遅れて辛さがやってくる」という鈍感ゆえのレアな体験をしました。遅効性ショック。無意識的に「いやいや、親父はいいやつでしょ」と思い込んで選択肢から外していたというか。クソッ、人の良心を弄びやがって! すまないな、人を謀るのが癖なんだ……じゃないよ!!
こんなん惚れてまうやろ。
アーロン、本当に惚れてまう。
この圧倒的な頼りがい、かなり「男が惚れる男性キャラ」だと思っています。もちろん村田雄介デザインも最高だけど、俺の脳内には野村哲也絵のアーロンと久保帯人絵のアーロンが存在してるんだ。
作中でやたらとアーロンを兄貴として慕う男性モブが出てくるのもよくわかる。俺だってアーロンに兄貴になってほしい。守られたい。まぁ、このあと撃たれるんですけどね。
このミッション15をクリアした時、流石に「バディミッション面白すぎ!!」と叫んでいた気がします。22時くらいに。賃貸で。流石にミッション15でバディミッション面白すぎボタン押しました。押させてください。
バディミッションBONDのダウンロード版定価7128円に対して、唯一のアイデンティティを奪われた上に大切な相棒が目の前で拷問されて憔悴しまくった木村良平の演技で14256円分は回収した感じがします。ミッション2の4128円と合わせて南青山あたりでディナーは行けちゃうね!
ミッション16:アーロン×ヒーロー
ヒ、ヒーローゲージがぁっ!!!!!!!!!
この手の「ゲーム的なシステムだと思っていたものが、ストーリー上の文脈を演出する舞台装置として起動する瞬間」を追い求めて、ゲームを遊んでいる。ヒーローゲージの破壊、それはつまりアイデンティティの消滅。
そして失意の中、いつもの操作システムでひとり牢屋の中をさまよう。
正直、バディミッションのゲーム部分が圧倒的な完成度かと言われると、なんとも言えない出来だとは思う。ただ、この「ここをやりたいがためのシステムだったんだ」という逆算で用意されたような演出を見せられると、一気に絆されちゃう! 「こういうのがやりたかったんや」感に弱い!!
こんなん泣いちゃうよ。
え、何? チェズレイルートのエンディング?
これPC版だった頃はチェズレイのCGあったやつ?
チェズレイからの「ボス」に対する最大の賛辞でしょう、これは!!
すごくストレートではあるのですが、「他者との繋がり」をずっと描き続けているこの作品が……「失意のルークを救ったのは、仲間との繋がりだった」という解決方法を見せてくるのが……ね! ね!! 泣いちゃう!!!
号泣。
ルークとアーロンの過去についてもそうですが、自分は「ルークは最初からヒーローだった」という過去に、かなり驚きました。
「ヒーローになること」は父親に植え付けられたアイデンティティだった。だから、その父親の正体を知ってしまい、ヒーローとしての自分<ヒーローゲージ>を失ってしまった。だが、そんな過去がなくても、最初からルークは「ヒーロー」だった。過去を知り、ヒーローとしての己を取り戻す。
え、名作?
これ、だいぶ悔しいんですよね。
そもそもバディミッションはルークが主人公……つまり、「ルークの視点で話が進むゲーム」なんです。だから、私たちプレイヤーには「アーロンの視点」が一切見えていなかった。隠されていた。そう、主人公であるルーク自身が、いわゆる「信頼できない語り手」というやつだった!!
クソッ、一生ルビパの姉ちゃんの掌で踊らされてんじゃねェか! この「アーロンの視点が全く見えないこと」に、ミッション16に至るまで全く気づかなかった! ゲームという媒体を使った叙述トリックに、最初からハメられていたのだ!! バディミ、おもしれ~~~っっっ
ミッション17:ヒーロー×ヒーロー
また宗教画だ。
宗教画ばっかじゃねえかこのゲーム!
でもこのシーンは本当に泣けると思う。
そして、ルークがルークを救出するという……過去にルークがヒーローを担いで運んだ時との対比構造ですよね。このゲーム、とにかく「対比構造」で魅せてくるシーンが多い気がする。特にアーロンとルークは。
ミッション2とミッション8の「アーロンがルークを助けに来る⇔ルークがアーロンを助けに来る」という対比もそうですが、ここでも過去と現在で「ルークがヒーローを助ける⇔ヒーローがルークを助ける」という対比を魅せてくる。こりゃあ……ルークとアーロンも大学院かな!? 論文か!?
ミッション18:
Beast×Outwitter×Ninja×Doggie
そして、最終回は4人揃って潜入開始。いいよね。
このゲーム、シンプルに「こういう演出いいよね」を外さない。
個人的には、最終回の「これまで出会った(ほぼ)すべてのキャラクター相手に聞き込みを行う」という捜査パートに一番グッと来ました。これは「繋がり」がテーマな作品だということは嫌というほどわかっていたけど、ここまでテーマに対して誠実であれるのか。
まさに「人との繋がりが力になるゲーム」というか……なんだかんだモブキャラも濃いゲームだったので、これまでの物語がこの形で報われるのが本当に良いと思う。とにかく、テーマに対して実直で誠実。
こんな伏線回収ある???????????
バディミッションというゲームのいいところとして、「とにかく全体の構成が綺麗」なところがあると思います。ほとんどの伏線は回収されるし、一見無駄に見えるシステムも最終的には上手いこと活かされる。ヒーローゲージとか、ファントムとAボタンで手を繋ぐくだりとか。
だから、スティック倒してお座りのくだりも回収されるんですね。これが逆転の一手になるとは思わなくない? あんな色ボケネタを最後の最後で回収しようと思うの……名シナリオだと思う! 盤面に無駄なコマがない!
そして、無事クリア。
クリアした瞬間、ガタっと席を立って「シェフを、シェフ<シナリオライター>を呼んでちょうだい!!」とルビーパーティーという名の厨房に向かって叫びそうになったけど、ご丁寧にエンドロールでデカデカと「STORY&LEAD SCENARIO Nozomi Sugihara」が出てきた。アナタがこの料理を…。
もう、これは間違いなく神ゲーです!
本当にありがとうございました!!
…………と思っていたのに、全然終わっていなかった。「残りのバディエピソードとサイドエピソードを回収して終わりかな」とのんきに構えていたら、全く新たなサイドエピソードが10話も生えてきた。バディミッション、全然終わってない。マジで田舎のばあちゃんぐらい無限に食わせてくる。
Another18:+AAA
どうやら、もうひとつのエンディングを見るためには「全メインミッションで評価A以上を獲得する」必要があるようだ。どこかで、「私はとにかく謎解きが苦手」という話をしたと思う。評価A、全然取れてませんでした。
ここから、地獄の「評価A回収作業」が始まる。
これほどまでに自分の「謎解き苦手」っぷりを憎んだことはない。こんなことになるなら最初から全部攻略を見ておけばよかった。
しかも、この作業中バディミッションBONDに「既読スキップ」という機能が存在していることを初めて知った。え、BOND温泉旅情でカピバラのくだりを6回も見た俺の時間は完全に無駄だったってこと? なにこの無駄なロングパス伏線回収? スキップ機能もっとわかりやすいとこに置いて!
で、これですよ。
ゲームに限らず、「後続のことは一切考えず、この1回に全てをかけてしまった」感じの作品が結構好きです。「続編やれたらいいなぁ」みたいな下心を全く感じないタイプの作品というか……そういう意味で、バディミッションBONDはAボタンと+ボタンが存在しないプラットフォームに移植されることを全く考慮していないのが本当に素晴らしいと思う。
まさに「Nintendo Switchの意味」ですよね。
これ、もしSteamとかに移植される日が来たら、やっぱりキーボードで入力するんですかね? プレステに移植されて、逆にシキのコードネームが「〇〇〇」とかにされてたらそれはそれで面白い気がする。
この「Another18」というエピソード……個人的には、極論必要のない話だと思いました。別に何かとんでもないひっくり返しがあるわけでもなく、『バディミッション BOND』という作品は、ミッション18で完結している。
ただ、「この話を描いて、ようやくバディミッションBONDを完結させられる」という役割も間違いなくある。悪は断罪され、舞台から退場してエンディングを迎えた方が、間違いなく作品としては美しい。だけど、「他者との繋がり」をテーマに据えたこの作品で、そのエンディングは正しいのか?
いや、AnotherだったとしてもバディミッションBONDの美学を貫かせてもらう。そんな、制作側の姿勢のカッコよさが伝わってくるアナザーENDだと思いました。要するに、これは『バディミッションBOND』という作品が掲げたテーマに決着をつけるルートなのだと。
これ、ちゃんとこのエンディングを「Another」と言っているところに、この作品の誠実さを感じて好きなんです。決して、「トゥルーエンド」ではないんですよね。あくまで、「もうひとつの終わり」。
正直、自分も「娯楽作品」としてはノーマルENDの方が好きだったりします。悪は成敗され、華々しく終わりを迎える勧善懲悪のお話。うん、これは完璧なエンターテインメント作品。しかし同時に、「バディミッションBONDのテーマ性を扱いきったシナリオの完成度」という意味では、アナザーENDの方が好き。マズいな、これは屈折した好みが生まれてしまうぞ?
すごく単刀直入ですが、『バディミッション BOND』は「愛」のゲームだと思います。それは作中のテーマ的な意味でもあり、私たちプレイヤーが感じる感情でもあり、制作陣の異様な熱量を指してもいる。
なんか、ひしひしと伝わってくるんです。
この「作ってる側が最もバディミッションBONDという作品にハマってるんだろうな」感。バディミッションBONDに最もハマってる人がバディミッションBONDを作ってないと、多分こんな内容にならないんです。その愛こそが、作品の強度を高めている。
メインミッション、バディエピソード、サイドエピソードをすべて回収した時の「もうこれ以上食えねぇ!」という異常な満腹感、間違いなく愛の結晶だと思います。ルビパ店長、そろそろお会計でいいかな!? 60時間やぞ60時間! 勝手に開催中の「このシナリオがすごい!2024」、贈呈します!
だから、「総評」なんて偉そうな言葉を使ってしまうけれど……とにかく、「人との繋がり」に誠実で、愛を大切にしたゲームなのだと思います。
全部のエピソードを回収して、ようやくわかるルークの生い立ち。
それは、「あの親を持たなかったとしても、ルークは最初からヒーローだった」と「あの父に育てられたから、ルークはヒーローになった」の相反する2点が両立されていること。この世界は、きっと愛で回っている。
そんな、「愛」を描き切った作品なのだと思いました。そしてこれだけの愛をぶつけられたから、私も……『バディミッション BOND』を愛してる。
おわりに
………………………ウス!
完全に終わったと思っていたバディミッション、まだまだ終わっていなかった。もう勘弁してくれよ。よく調べてみると、ドラマCDやら朗読劇まで存在しているらしい。しかも、ドラマCDに至ってはほぼ「完結編」。このドラマCD、すごいですよね。もう完全に本編じゃねえか!!
え、イベントのBlu-rayは買ってないのかって……?
いや、あの、普通に定価で1万くらいしてて若干及び腰になってるのが現状って感じですかね。つ、次に給料が入ってからかな……。
そもそもあまりこういうコンテンツに触れていなかったから、「ゲーム本編とは別にドラマCDやイベントが存在すること」に驚きました。割と未知の領域というか……こういうコンテンツの在り方もあるんですね。
ここから、極めて個人的な自分語りをします。
どうでもいい人は飛ばしてください。
なんとなく、バディミッションを触るまで「自分はあまりこういうコンテンツに触れないようにしよう」と思っていました。決して嫌悪感があったわけではないし、別に乙女ゲーではないけど、漠然と「いや、女性向け(的な)ゲームはやめておこう」と思っていました。だって、自分は男性だし。
たしかに男性キャラも結構好き……いや、かなり好きなのですが、本当に深い理由はなく、漠然と「封印」していました。自分があまり触っていいものではない。そこに、多分自分のような人間の居場所はないのだと。
これは何度でも念押しさせてほしいのですが、「女性向け的なもの」や「BL的なもの」が嫌なわけではありません。むしろ、自分はそこへの抵抗感は全然ありません。ただ、「抵抗感はないけど、いやむしろ抵抗感がないからこそ、大っぴらにするものじゃないのでは」的な、抑圧感がありました。
これは中学の頃に仲の良かった友人が『黒子のバスケ』と『Free!』が好きで、割とガンガン自分にその話をしてきたことがあって……いや、これは脱線しすぎるな。とにかく、「全然抵抗感はないし、むしろ好き」「だけど、自分みたいなものが大っぴらに本陣に乗り込むと失礼なのでは?」みたいなことを考えていました。なんだかこう書くと非常に前時代的な考えですね!
でも、最近「いや、別にそんなの気にしなくて良くない?」と思えるようになりました。明確にキッカケがあったのかはわからないのですが、ここ数年で『原神』とかでえっちな男に触れてタガが外れた感覚があります。
今回遊んだ『バディミッション BOND』も、ちょっと前まで「うーん、果たして自分がこれを遊んでもいいものなのか……」と思っていたところから、「いやいや、自分は一体なにを気にしているんだ?」と考え直して、プレイに至ったりしました。冒頭の「根負けした」は、半分建前です。
そして実際に遊んでみたら、超面白かった。うん、最高じゃないか! 本当に自分は数年前まで何を気にしていたのだろう!? ……と、改めて思いました。別に、そこに「居場所」を見出してもいいのだと思えました。
極論、なにかに居場所を見つけ出すのも、そこに繋がりを見出すのも、その人の自由。そして得た居場所で、繋がりで、日々を彩っていけばいい。それが人生を豊かにするコツなのだと、最近よく思います。
これは『バディミッション BOND』を遊んで、何か明確に考え方や人生の方針が変わった……とか、そこまで大層な話でありません。
でも、ちょっと世界の見え方が変わった。なぜか自罰的な考え方をしていたところに、「そうか、別にここにいてもいいのか」と思えた。
そんな、「ここにいたい」と思うその気持ちを、人は「愛」と呼ぶのかもしれない。