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彼女は大事な友だち

3年ぶり、くらいにある友だちから連絡がきた。私がまだ仕事を辞めると決める前の夏に大阪で会って、それから連絡もしていなかったし、こういうご時世に突入してしまったため、会うこともなかった。

住む場所も今や車で半日くらいかかる距離になってしまったし、もともと、お互いこまめに連絡を取り合う性格でもなく。けれど、一度会えば何時間でも話しが尽きないという、私にとってかけがえのない友だち。

彼女との出会いは、高校生の頃、同じクラスになったことだった。彼女は、当時から人付き合いが上手な愛されキャラで、私はド田舎育ちで性格をこじらせていて、本当はみんなと仲良くなりたいのに素直ではなく、不器用でツンツンしていた。でも、私たちは家のことで悩みがあること、心の底の方で「誰のことも信用していない」「自分のことが嫌い・自信が全くない」という点で共通していて、お互い心の内を話す内に仲良くなっていった。

お互い話す内、というよりは、彼女の雰囲気が、私を話しやすく、心を開きやすくしてくれたのだと思う。彼女は自分を守るために守備力を固める方ではあるけれど、攻撃的ではないし、なんともいえない可愛さがあって(私には絶対的に欠けている)、落ち着いていて、「この人になら本音を話してもいい」という気持ちにさせるものがある。

彼女とはいつも一緒にいるタイプの友だちではなかったけど、なにか、不思議な関係で繋がっていて、驚くことにもう20年くらい付き合いが続いている。

ただ、一度だけ、彼女と連絡を断ったことがある。いや、私の方が嫌われてしまったのだ。彼女が社会人になって初めて好きになった人が既婚者で、私がそれを咎めたから。

当時、私は、真剣に彼女の幸せを思って、正面から彼女を止めようとした。それに彼女が強く反発して、私たちは一度、絶交したのだ。

その後、彼女が相手と別れて、仲直りをした。

それからしばらく経って、彼女が「今、ある友だちが不倫していて。当時、私を止めようとした〇〇(私のこと)の気持ちが分かった」と言ってくれたけど、当時の私は私で若く青く、意固地だった。本当に彼女の幸せのために、私が彼女を咎めていたのならば良かったけれど。私が信じている、私が好きな彼女が「私が好きな彼女でなくなってしまう」ような気がしてとにかく怖かったし、やめて欲しいと思って、止めたというのが、本当のところだと思っている。私は、私の恐怖と不安を理由に、彼女を止めようとした。

それに、当時の私は、「清く正しい」ことに固執しすぎていた。それを鋭く真っすぐに押し通せば、悪や闇は消え去るはずだと思っていたし、彼女は目を覚ましてくれると思っていたのだ。

けれど、彼女は私より、相手の男との関係を大事にした。私は彼女を失ったことも、彼女が自ら幸せになる道を手放したことも、正義が悪に負けたことも、当時ものすごく辛く、悲しく、そして怒っていた。

だからこそ、後々、私は深く反省したのだった。彼女だけではなく、私にも頑なで偽善的で、悪いところがあったと素直に思うことができて。それで、「お互いごめんね」と、ちゃんと仲直りをすることができた。

今は、友だちが道を外れた恋愛をしていると知っても、私はなにも言わないと思う。全力で止めることも多分しない。でも、やっぱり彼女が何か道を外れることがあったら、不幸に突っ走っていくようなことがあれば、やっぱり一言言わずにはおれないと思う。

昔のように、真正面から一方的に責めるようなことはしないけれど、それでも。それは本当にあなたが望んだ道なのか、私はそれについてこう思うという気持ちと疑問だけは、伝えると思う。

でも、実に幸いなことに、私がそんなことを彼女に言わなければならなくなるような日は、多分もう来ない。

今回、彼女は結婚の連絡をしてくれたのだ。何年か前に、彼女がその彼のことを話してくれた日のこと、その時の彼女の柔らかく陽を受けたような、温かな表情を今でも覚えている。彼女が、誰かのことを、特に男の人のことを、あんなふうに穏やかに楽しそうに話すのは、初めてのことだったから。当時は住む場所の距離やお互いの仕事絡みで悩みがあるようだったけれど、それも解決されて、今は幸せに、今までで一番安定した気持ちで暮らしているという。

その報告を聞いた夜は、うれしくてワクワクして。彼女にも「きっと、今日は嬉しすぎて寝られないよ」と言ったけれど、実際は最近では珍しいほどスムーズに眠りについた。体がぽかぽかして、幸せな気持ちで。


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