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畑を尋ねて三千里

先日から投稿してきた人形劇について、
続きを以下、記載したいと思います。

本作は、

オープニング
   ↓
メインキャラ4人のコーナー
   ↓
エンディング

という形で、1つの回を構成していく前提で考えています。

今回は、4人のコーナーのうち、3つ目の

「さばみそ博士の『Best Hit DHA』」をお送りします。





<人形劇 登場人物>


・もんじゃ姫

 →本作の主人公。
  頭の上にもんじゃ焼きが乗った、ぼんやりしてて空想好きな女の子。


・さばみそ博士

 →語りたがりで、ついウィットに富んだことを言おうとする男の子。


・ハバネロ姉さん

 →メインキャラで唯一の突っ込み役。
  ピリッとした性格で、行動的な姉御肌。


・ブルーハワイ兄貴

 →きれいなお姉さんが大好きな、能天気で自由な大柄の兄ちゃん。





~さばみそ博士の「Best Hit DHA」~


今日羊毛フェルトで作った、猫ちゃんマスコットを机に並べて、
表参道のカフェで涼を取る4人。


外のあまりの熱気で、
すっかりぐでーっと机に突っ伏してしまうもんじゃ姫。


もん「あーっ、暑かったーっ」


兄貴「猛暑にやられて、アメンボの夢でも見てたのか?」


もん「えっ、何で夢の内容知ってるの!?」



羊毛フェルト教室で、
「田んぼが…、アメンボが…」などの寝言を聞かされた3人。


博士「姫もこれで、すっかり"アメンバー"の一員ですな」


姉さん「ブロガーみたいに言うな」



各自頼んだ冷たい飲み物が、運ばれて来るや否や、一気に消費されていく。



兄貴「くぁーっ、旨いんだなこれが!」


もん「生き返る~ぅ」


姉さん「しかしあれだな、こうやって誘っておいてあれだが、


    こうも暑いと、外で楽しいこと見つけるのも、何かあれだな」


兄貴「今更気付くのが、本当あれだよな」


姉さん「うるせぇよ」


もん「いやぁ、でも羊毛フェルト教室、楽しかったよ。


  初めて触れてから、作品を完成させるまでの、

  一部始終を満喫できたって感じ」


姉さん「後半は、アメンボの世界を満喫してたじゃねぇか」


もん「へへへ。


   …アイムソーリー(総理)、なんちゃって」




ストローからの、シュゴゴゴゴという音が鳴り響く。


「もう、喉乾いてしょうがねぇな」と、ドリンクメニューを開く兄貴。



姉さん「普段インドア派の博士は、最近何やってんの?」


博士「私は最近、垣谷美雨さんという作家の小説を読み漁っていますよ」


もん「相変わらず、読書好きだねぇ、博士は」


姉さん「しばらく、じっくり本も読めてなかったなー」


兄貴「姉さんは、読めない漢字が出てくると、すぐ破いちゃうからな」


姉さん「人をゴリラ扱いすんじゃねぇ!」



兄貴が2杯目を選んでいたメニューで、思いきり引っ叩く姉さん。



博士「その作家さんの小説を、先日10冊ほど読んでみたんですがね…」


もん「10冊も読んだの!?」


兄貴「もんじゃは1ページ読んだだけで、10時間は居眠りしちゃうもんな」


もん「そこまで活字弱くない!」


博士「しかしながら…、


   この方の作品は登場人物の年齢が総じて高い話や、


   全体を通してずっとトーンが暗いまま、最後まで行くのもあったり、


   やたら、嫁姑問題がリアルに描かれてたりするものも多くてですね。


   簡単に人に勧められるかというと、うーんとなってしまいますな」 


姉さん「その作者のファンなら楽しめる、って感じか」


博士「ただですね。


   その中でも、比較的万人に勧めやすい作品も、ある訳ですねぇ」


兄貴「全部ひらがなで、半分イラストみたいな?」


姉さん「幼稚園児の絵本じゃねぇんだよ!」



今度は、折り畳んだメニューでチョップを食らわされる兄貴をよそに、


バッグから一冊取り出して見せた博士。



博士「それが、この『農ガール、農ライフ』という作品です」



麦わら帽子で、鍬を持った女性の絵が描かれた表紙に、3人は釘付け。



姉さん「へぇー、農業の話か」


もん「このお姉さんが主人公なの?」


博士「そうなんです。


   32歳のOLが、色々あって農業を志すという、


   この方にしては珍しく、全体的に登場人物の年代層が若い、


   なおかつ、前向きな空気感のある作品なんですね」


姉さん「何か、割かし読みやすそうな内容だな」


兄貴「OLさんが異世界に飛んで、鍬一本で無双する話ではないのね」


姉さん「"なろう系"小説だろ、それは!」



手に取った小説を、ぱらぱらとめくりながら全体を眺める博士。



博士「とはいえですね。これも、この作家さんの作風なのか、


   主人公の方向性だったり、生き方自体は前向きなものの、


   …社会はやっぱり暗いのです」


姉さん「暗いんかい!」


博士「まず冒頭で、同棲していた彼氏さんに、浮気されるんですなぁ」


もん「ひどーい、いきなり?」


博士「そして、そこから間もなくして派遣切りに遭うと」


姉さん「踏んだり蹴ったりだな」


博士「そうして、すっかり絶望の淵に立たされているとき。


   ふとTVに目をやると、


   同年代の若い女性が農業で成功した、というのがやってるんですな」


姉さん「それに触発されて、一念発起して農業を志すという感じか」


兄貴「何つーか、世知辛いなぁ」


もん「でも何か、そういう生き方も、ロマンがあるよねぇ」



物語の序盤を聞いた3人は、そこからの展開をぼんやりと想像していた。



博士「この作品の面白い所は、単に農業の話だけをするのではなく、


   農業と繋がる、あらゆる業界や人々の様子までが広く描かれていて、


   色んな登場人物を通して、様々な切り口から


   農業を見つめることができるという点ですな」


姉さん「ずっと、ひたすら畑を耕してるだけではない訳か」


博士「後半になると、姉さんのようなキャラクターも登場しますぞ」


姉さん「おぉ、それは面白そうだな」


兄貴「山からヒグマでも下りてくるのか」


姉さん「誰がヒグマだ、この野郎!」



頭上に振ってくるメニューを、真剣白羽取りしようとして、失敗した兄貴。



博士「しかし、読んでいると実に、"スタートラインまでが長い"。


   畑で作物を耕すに至るまでに、


   様々な紆余曲折を経てようやくという所が、何とも、


   受験や就職、結婚などにも通じるものを感じてなりません」


もん「確かに、学校に合格するのとか、結婚とかって、


   新生活のスタートだけど…。


   そこに辿り着くまでで、まず骨が折れちゃうんだよね」


兄貴「もんじゃも、頭蓋骨骨折して、脳漿出ちゃってるもんな」


もん「脳漿じゃなくて、もんじゃ焼ですっ!」



もんじゃ姫の頭のもんじゃ焼から、怒りの湯気がモワッと立ち昇る。



博士「ただ読み終えてみると、


   これまでの色んな躓きの場面が思い出されて、


   それぞれの出来事に、味があったなぁーと振り返る訳です」


姉さん「何か読書も、その位の時間と心の余裕があってこそかもな」


博士「個人的には、畑を貸してくれる農家を探し歩いて、


   断られ続けた挙句に、そこで出会った婆さんから受ける説教が、


   実に含蓄があって、読み所だったかなという印象ですな」


もん「なかなか、前途多難な道のりなんだね」


姉さん「小説も読んでみたいけど、映画化とかはしないの?」


博士「この作品については、まだその予定はありませんが…、




   同じ作者の『老後の資金がありません!』という映画が、


   20年9月に公開予定ということで、




   …こちらも、是非お見逃しなく!」


兄貴「その作者、めっちゃ世知辛ぇー!!」





失恋に、派遣切り、婆さんの説教、そこにプラスして老後の年金問題。


人生のあらゆる苦しさを思い、つい顔をしかめた兄貴。




インドア時間に読む小説の作家選びも、人によって好き好きである。




~さばみそ博士の「Best Hit DHA」 終わり~

その100円玉が、誰かの生きがいになります!