異類との婚姻、人と人外の恋の果てを想う
挨拶と今回語りたいこと
こんにちは。古のオタク系Vtuberの翠屋よもぎです。
みなさま、「異類婚姻譚」というものをご存じでしょうか。
読んで字の如くではありますが、人間と人間以外の存在との恋愛、婚姻に絡んだ物語となります。
有名なものでいえば『鶴女房』という物語でしょうか。
ある日若者が鶴を助けると、後日若者のもとに「恩を返すため」と美しい娘がやってくる。
それを無下にもできず、娘を嫁として迎えると彼女が織った美しい布が高値で売れるようになりふたりは幸せに暮らすが、やがて娘の織る布の秘密を知りたがった者に唆された若者が、彼女の布を織る姿を見てしまい……。
という流れの物語。
このおはなし、どこかで聞いたことありませんか?
そう、やってくる娘が「娘」としておじいさんやおばあさんと暮らし、彼らに富をもたらすという昔話『鶴の恩返し』と同じ流れなのです。
鶴女房は発症が兵庫県だといいますが、伝わる地方によって恩返しに来るのが嫁だったり娘だったりするわけです。
今回は「異類婚姻譚」についてのおはなしなので、『鶴女房』のように男女の恋愛の話について掘り下げていきましょう。
とはいえ、今回の記事で学術的な方面でこの異類婚姻譚を語るつもりはまったくありません。
何よりも、下手の横好き程度で専門家でもありませんので、語るに落ちることになりかねないですし、読んでくれている方に間違った知識を語るのも避けたいのです。
では今回は何を語りたいのかというと、古くから伝わるこの物語をオタク的な視点で紐解いていこうと考えてます。
異類婚姻譚とは何か
人外との恋の物語とその結末
異類婚姻譚とは何かというと、つまりは人と人外の恋の物語なのです。
異類女房譚と呼ばれることもあり、人間の男性と人外の女性が結ばれる物語が多く見られます。
※もちろん、異類婚の話には人間の女性が人身御供のように、蛇や猿、あるいは神様に嫁ぐ話が描かれている異類婿の話も存在しています。
また、こうした物語の定番として、物語の結末は悲劇的な終わりを迎えることが多いのも特徴で、特に異類婿の話の結末は悲惨な終わり方をする傾向にあります。
ただ、異類女房の話が幸せな結末を迎えるかというとそうでもなく、「見るなのタブー」を男が犯してしまったことにより破綻してしまう結末が多く見られます。
例えば、『鶴女房』の場合は、正体が知られた鶴は男の元から離れてしまいますし、『蛇女房』という話においては、蛇が変化した女は男と結ばれ子を成しますが、その子を抱く蛇としての自分を知られて家族のもとを去り、さらに子どものために自身の目玉をすべて失ってしまいます。
このように愛しあったとしても、男の好奇心ややむにやまれぬ事情のために女は去っていくのです。
ここでいう人外とは何か
異類婿の説明で少し触れましたが、蛇や猿、犬や狐といったあらゆる動物が登場します。
中には竜宮の姫との婚姻や天人、雪女や鬼といった実在する生物ではない存在が人に化けたものと婚姻を結ぶケースも多いかと思います。
日本は古来からの文化的に蛇や猿、犬といった動物に神性を見出してきました。
また、鬼や狐といった存在は妖怪・怪異として恐れられているものでもありますね。
動物から妖怪、怪異に神様に至るまで、あらゆる存在との婚姻譚がこの世には存在しているのです。
人と人外との恋を描いた作品の紹介
ここからはオタクが語る人外との恋について、いろいろと語っていきたいのですが、まずはどんな作品があるのかを紹介していきたいと思います。
人外との恋というのは、多くの媒体で昔から描かれています。
恋愛漫画やライトノベルはもちろん、美少女ゲームや好感度システムを搭載したRPGなどでも昔からよく見ます。
わたしの主観で紹介していくので、ご存知ない作品も含まれるかと思います。
知っている作品については共感していただけたら嬉しいし、そうでなければ「そんな作品もあるんだ」と新たに知っていただければと思います。
ヴァンパイア十字界
原作が城平 京先生で、漫画を描かれたのが木村有里先生の作品。
2003年から2007年にかけて月刊少年ガンガンで連載されました。
かつてヴァンパイアの「夜の国」を滅ぼした王、ローズレッド・ストラウスと、人とヴァンパイアの混血であるダムピールの戦いを描いた序盤から二転三転してゆく物語。
序盤の視点はダムピール側に寄っているため、そちらが主人公かと思いきや、実はストラウスが主人公だったりします。
※単行本1巻の表紙を飾ったのがストラウスのため、想像は可能。
話の中で、ストラウスと人間の少女・ステラとの恋の模様とその結末が描かれます。
このふたりの恋の話が物語において非常に重要なものとなるわけですが、これが読んでいて本当に胸が苦しくなってきます。
物語の結末も綺麗なものなので、読める機会があればぜひ読んでいただきたい作品。
沙耶の唄
2003年に、ニトロプラス様から発売されたPC用ノベルゲームで、シナリオは後に『Fate/ZERO』や『魔法少女まどかマギカ』で知られるようになった虚淵玄氏。
虚淵氏が実際に発言されたらしいのですが、『火の鳥・復活編』のオマージュであり、作中にもそれを仕込んでいた本作は、グロテスクな表現を前面に出しておきながら、実のところその中身は純愛そのものという稀有な作品です。
事故に遭い脳挫傷を負った主人公匂坂郁紀は、最新の医療技術を利用した手術により生還するも、脳機能に障害を負ってしまい、見るものすべてがグロテスクな存在に見えるようになります。
そんな世界で唯一普通に見える少女・沙耶と出逢い、彼女との交友を深め、それはいつしか愛情へと変わっていきます。
そんなふたりの恋と、郁紀の友人たち視点で進む話が交互に展開していく中で、郁紀が抱える問題や沙耶の秘密など、それにまつわる狂気などが語られていきます。
さて、なぜ人外との恋で挙げたのでしょうか?
あ、このゲームはアダルトゲームなので良い子は絶対調べちゃダメよ。
テイルズオブファンタジア
1995年にSFCで発売後、何度もリメイクされて多くのハードで遊べる、バンダイナムコゲームス(当時のナムコ)から発売されたRPG。
この作品には、人間と、精霊に近しく長命の種族であるエルフの子として、ハーフエルフの少女・アーチェが登場する。
彼女はエルフ側には忌み子として扱われ、人間でもエルフでもない中途半端な存在として描かれます。
彼女はあっけらかんとした明るい性格なので悲壮感を抱かせない設計にはなっていますが、それでも彼女の両親のことに触れたシーンは、やはり種族の違いが大きな壁となっていることを実感します。
彼女は、同じく仲間キャラクターであるチェスターと良い雰囲気になっていくわけですが、ハーフエルフであるアーチェも長命の種族。
人間であるチェスターとの恋がどうなるのかは実は後日談の小説で語られていますので、もしご興味があれば探してみてはいかがでしょうか。
彼らの結末や未来を考える
今回はその恋の結末まで描かれる作品を中心に例として挙げましたが、中には恋が成就したところまでが描かれるだけで、その後は読者・視聴者の想像に任せる作品も多くあります。
恋愛ゲーム(ギャルゲー/エロゲー)なんかは特に顕著で、基本的に主人公とヒロインが結ばれるまでの過程を楽しむものがほとんどで、彼らが今後どうなっていくのかという部分に触れる作品はあまり多くありません。
一部はファンディスクなどの追加シナリオで、簡単なその後を描いてくれる作品もありますが、その結末までは描かれず日常のひとかけらが描かれる程度に留まっています。
そんな人と人外の恋のその先がどういう道をたどっていくのかを考えてみましょう。
種族の違いの壁を考える
作品の世界観にもよりますが、獣人やエルフなどの人外種に対してあまり好意的でない世界の場合もあります。
その場合は、大きな壁を乗り越えて結ばれたふたりを待つのは更なる大きな壁の連続。
彼らは衆目の非難を浴びるでしょうし、差別も受けてしまうでしょう。
果たして彼らは一時の恋愛感情だけでそれらを乗り越えて添い遂げることができるのでしょうか?
苦難に耐え、苦労しながらもなんとかそれを乗り越えて笑っているふたりを想像したいのですが、もしかしたら破綻してしまう未来もあるのでは……と考えてしまうのです。
寿命の差を考える
人の寿命はせいぜい多く見積もっても100年。
それに対して、妖怪や神様などの既に長く生きている存在や、エルフといった長命の種族との恋愛は、その結末は須らく悲劇であるといえるでしょう。
長年生きてきた中で、一度や二度は人の男性と添い遂げた経験があり、それを引きずって向き合うことができないという描写が作中でなされることもあり、その悲しみを乗り越えて結ばれたとしても、結局男性が人間として生きる以上、彼の死によって必ず別れが訪れてしまうわけです。
人に恋し、愛した果てに永い間悲しみを抱えることになる人外の女性は、次に自分に向き合ってくれる男性と果たして同じように向き合えるのでしょうか。
結末を考えれば考えるほど胸が苦しくなってしまいますが、わたしはこういった結末を迎える物語が大好物なのです。
永遠に共にいるための選択
人間側の選択肢として、「人外側と同じかそれに近しい存在となる」というものがあります。
人間と吸血鬼の恋を扱う作品なんかでは、こうしたケースもあることでしょう。
ここで生まれる葛藤もわたしは好物なのです。
人として生きてほしいと考える吸血鬼、あるいは、血を吸って自分の眷属にしてしまい永遠を共に過ごすか。
人としての生を選べば、必ず訪れる別れがある。
吸血鬼や眷属になることを選べば、永遠に共にいられる代わりに死という終焉・安らぎを失ってしまうことになる。
そんな究極の選択を迫られた時にふたりがどんな選択をするのか。
どちらも正解であり間違いでもあり、そこで揺れ動くふたりの心理に対するもやもや感の果てに、悩みぬいた彼らが選ぶ答えにカタルシスを得ることができるのです。
まとめ
今回は人と人外との恋について語ってみました。
少しとっ散らかったような気がしますが、何が言いたいかというと、
①人外との恋愛要素は良いぞ
②その恋路の果てに何を感じるかは人それぞれ
③描かれなかった未来を想像するのも楽しいぞ
④結末は悲劇的なものになるのが多いけどそれも良い
こんな感じ。
あくまでもわたしが抱いているイメージと好きな部分なので、わたしと違って、結ばれたふたりに幸せになってほしい、というかそうじゃないと許せないっていう人もいると思います。
それぞれの楽しみ方をしっかり楽しむのが一番ですね。
わたしも、必ずしも悲劇的な結末しか好きじゃないというわけではないのですが、そうした結末がもたらす胸の苦しさ、切なさというものが好きなんですよね。
そういう意味でも異類婚姻譚(異類女房)に属する物語や、人外との恋愛を描いた作品が好きなんですね。
こうした作品に限らず、みなさんが好きなジャンルをどうして好きなのかというのを考えてみるのも面白いかもしれませんよ。
それでは、今回はこのあたりで。
また次回の記事も読んでいただけると嬉しいな。
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