夢日記(2024/09/26)

取引先の接待パーティのようなものへ参加することとなった。会場はホテル。練馬にあるという。
会場へ向かう途中、公園でたばこでも吸おうかと立ち寄る。木製のテーブルとベンチが6セット以上、整然と並ぶ。各テーブルの上にはテーブルと一体となっている灰皿があり、おお、こんな便利で喫煙者に優しいとは、などと思う。
それゆえか、もちろん喫煙者の集う場所となっていた。
他人同士でベンチに横並びになるというのはやはり気が引けるのだろう。喫煙者はそれぞれ斜向かいに座り、結果として誰も座っていないベンチは残っていなかった。
とはいえ腰を下ろして一服したいもの。仕方なく先客の横に座りたばこを吸う。気まずさのようなものを誤魔化すために彼の横に背を向ける形で浅く腰かけた。

吸い終わり、会場であるホテルへと向かった。途中の道は狭く、辺りは所々雑草の茂る土地で商業ビルなどは少なく、思いのほか栄えていないなという印象だった。
ホテルはやや黄みがかった白の外装で、決して新しいものとは言えない。昔からある、それでもこの地では格式の高いホテルなのだろう。
会場内は昼白色の照明で、どことなく年季を感じさせたが温かみがあった。少しばかりの退屈さ、停滞感のようなものが漂っていた。
スイーツビュッフェのような形式で、トレーに各々好きなものを選びとって席につくことになるようだ。会場内で中村と酒井の姿を見た。
到着が少し遅めだったせいか、座席はほぼ埋まっており、また仕方なく空いている席に座る。見知らぬ4人組が出来上がる。さほど面白くもない講演が退屈なBGMとなり、見知らぬ人と囲む席がさらに退屈さを増し、ケーキを楽しむなど到底できなかった。個人的にはあまり懇意にしている取引先でもなかったし、他に話す相手も居ないため、講演が終わるとそそくさとその場を去った。
澱んだ空気から解放され、どっと心労が込み上げる。
一服して帰路につこうと、再び先ほどの公園へ向かった。
公園の、吸えるベンチは相変わらず人気で、このときも知らない男の横に座った。
接待パーティの退屈さもあって、あまり隣の男のことは気にならなかった。一人でたばこを吸っている時間が疲れを癒してくれるような気がした。煙とともに疲れを吐き出しているような心地だった。

「これ吸いますか?」隣の男が声をかけてきた。
見ると、既製の紙巻きたばこではないようだった。雑に巻かれたそれを見て、これは大麻か何かの類だと思った。断り、自分のたばこを吸っているとなにやら騒がしい声が聞こえてきた。
若い男たちが公園に大挙して、どうも半グレかヤンキーかその辺りの風貌だ。リーダー格の男が声を張りながらベンチで喫煙している人々の間を歩く。
面倒なことに巻き込まれたなと思った。
彼らはこのベンチに集う一般人が気に入らないらしく、処刑ないしは粛清をしようというようだ。
この場は彼らの空気に支配され、人々は委縮していた。

「この中で○○したい人、いますかぁ?」
男は笑みを浮かべ上ずった声で聴衆に尋ねる。自らが場を支配し、集団を弄ぶというのは気持ちがよいのだろう。調子に乗っているとはこのことだ。
聴衆は相変わらず委縮し、男の呼び掛けに応える者は居なかった。
すると男は怒りを露にして、聴衆から一人を選び出し立たせた。酒井だった。
死に至るほどではないが、選ばれた酒井は衆目のもと極めて暴力的な仕打ちに遭っていた。只事ではないという空気が聴衆の間で共有され、震え上がるような緊張感が走った。

一人の粛清を終え、物足りないのか、さらに男は次に「これ食べたい人いますかぁ~?」と問う。見るにトーストのようだったが、ただの食パンというわけにはいかないだろう。覚醒剤などの薬物が練り込まれているか塗布されているようだった。
聴衆のなかで挙手する者は居なかった。皆、恐怖に呑まれ臆しているようだ。
男は池上を選んだ。池上は恐る恐るトーストを手に取り、しばしの時間の後、意を決したかトーストに食らいついた。
完食した池上の顔には汗が吹き出て、血管が浮き上がり、やや粘度のある鼻水が垂れていた。目を大きく開き、歯を食いしばり、必死に堪えているようだった。
池上は両方の拳を握り親指を立て、堪えきったという仕草を見せた。池上の粛清は終わった。

男は続いて、「この中でタイキック受けたい人いますかぁ~?」と問う。すると聴衆は男も女も皆、自分を選んでくれと言わんばかり次々に立ち上がる。リンチ、薬物と来て、次にタイキック。これまでの手酷さに比べれば、蹴りの一発程度は軽いものだと読んだのだろう。加えてここで粛清を受けておけば後に選ばれる恐怖からも解放されるというわけだ。

一方、私を含め数人は立ち上がらなかった。私は選ばれないという自信があった。聴衆を完全に支配できていない男の逆鱗に触れ、タイキックどころではない仕打ちを受ける可能性もあるが、どういうわけか選ばれないだろうという目論見のもと、少数派に賭けたのだ。

選ばれたのは先ほどの酒井だった。タイキックを食らった酒井は「こんな理不尽なことあるかよお」と漏らしていたが、そんな理不尽なことはある。理不尽とはこういうものだ。

帰りの電車の時刻が迫っていたので駅へ向かった。
行先、時刻表示の電光掲示板の文字のLEDは緑とオレンジだった。JR東海のそれに近い。

ホームへと向かう下りエスカレーターを少し急ぎ気味で下りていると、若い男女二人組が並んで立って先を塞いでいた。女は背と腰の露出が高い黒のマーメイドワンピースのような服を着ていた。
ホームへ急いでいた私がすみませんと声をかけると、女は一段下りるでもなく、横に立つ男に密着するように抱きつき、道を空けた。狭い男女の横を下り、ホームへ辿り着くと、発車ベルが鳴っていた。
少し慌てたが、反対方面行きの列車だった。こういうときに飛び乗るのは避けて正解だ。ましてよく知らない駅では。
その列車が過ぎ去るとホームに立ち、待った。結局時間に余裕はあったみたいだ。

遠くから列車の近づいてくるのが見えた。よく見ると貨物列車だった。貨物列車は特急くらいのスピードで緩いカーブを曲がり、大きく砂煙を立てて通過していった。これはすごい砂煙だなと思っていると、大型のドローンのようなものが後から飛んできて、白い薬剤を散布していった。砂煙はおさまった。

目が覚めた。



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