「キネマの神様」感想文
ギャンブル依存症のゴウちゃん。
現金を持つと、すぐに麻雀や競馬で溶かしちゃうダメな父親。
友達にも借金しまくってて、それを返すのは家族で。
家族にとっては悩みの種。ってか悩みの大木。それさえ無ければ家族は幸せになれるのに。それがあるから幸せになりきれない。
でも、側から見ると憎めないキャラクター。憎めないから、友達はお金を貸しちゃうのです。志村けんさんのイメージがしっくり。
ゴウちゃんは、ひょんなことから好きな映画の評論をブログに書くことになります。人差し指だけでポチポチと。
ゴウちゃんの文章・言葉は、じわーんと心に染み込みます。琴線に触れます。文章の力って凄い。ゴウちゃん(原田マハさん)は凄い。
やがて、ゴウちゃんはアメリカ人のローズ・バッドとブログ上で対決をします。いわゆる炎上系の罵り合いではなく、お互いをいじりつつ、敬いつつ。相手に阿るのではなく、自分の映画への想いをぶつけ合う。気持ちのいい対決。
本当の友人になれた病床のローズ・バッドに会うためにアメリカに行くことになります。アメリカに向かう直前の壮行会のような場面が始まってしまい、死亡フラグが立ったとピンと来てしまいました。どうかゴウちゃんをローズ・バッドに会わせて下さい。キネマの神様に祈りながら読みました。その祈りも虚しく、二人は会うことなく、ローズ・バッドは天に召されました。
最後の映画館のシーンで、彼の魂は確実にゴウちゃんの隣の席にいたと思えます。
あぁ、鼻の奥がツーンとするラストでした。
最後に、片桐はいりさんのあとがきも良かった。本当に本作のエンドロールのようでした。