おじいちゃんと桜
2024年春。今年は去年より桜の開花が遅かった。
満開に咲いた翌週、おじいちゃんが他界した。
90代で、20年以上も体に不自由さを抱えながら暮らしたおじいちゃん。努力家で、美味しいものと犬が大好きで、家族思いだった。
小さい頃はおじいちゃんと、おじいちゃんの部屋で水戸黄門を見てから寝るのが習慣だった。小学校から帰ると日向ぼっこをするおじいちゃんの隣にいき、お話しした。
高校生になると、おじいちゃんの部屋を私の勉強部屋として使わせてもらった。おじいちゃんがおばあちゃんに頼みこんで飼い始めた犬に「まて」と「おすわり」を教えた(気がする)。彼は足が不自由なおじいちゃんをそっと気遣うとてもいい子に育った。
大学生になり、実家を離れた。帰省するとおばあちゃんに秘密でお遣いを頼まれ、こっそり買ってきたいちご大福をふたりで食べた。帰り際には「ちゃんと車間距離あけて走れよ」と言って見送ってくれた。
そんなおじいちゃんも介護施設に入ることになった。リハビリが本格的にできて嬉しいと喜んでいた。少しでも生活が楽しくなるようにと、海外に行くたびにTシャツや帽子をお土産で買って渡した。港町の介護施設にハイカラなおじいちゃんが誕生した。
少しずつおじいちゃんが弱っているのは話に聞いていたけれど、ずっといると思っていた。遠い先だと思っていた別れの日がついに来てしまった。
さいきん迷ったり、悩んだりすることがあると、おじいちゃんだったらなんていうかなふと考えることが増えた。
きっとこう言うよね
「起きたことを悔やんでもしょうがない。今からどうするかを考えろよ」