吉川尚輝がGGを獲るには?
吉川尚輝は今年1年間、将来的にはGG(ゴールデングラブ賞)を獲るのではないかと思わせるプレーを何度もしてきた。彼のプレーは見ている人をワクワクさせる。他の二塁手よりも後ろの方にポジショニングをとり、「その打球に追いつくのか?」という打球に追いついて、処理してみせる。無理な体勢からも素早く送球動作へと移り、力強い送球をするのである。
そんな吉川の守備の良さはデータにも表れている。
DELTAのデータによると、1200イニング換算のUZR(守備指標)は15.8で、500イニング以上守備についた二塁手の中ではトップである。
特に注目して欲しいのはRngRという守備範囲を表す指標である。吉川のRngRは5.5で山田の9.0に次ぐ2位である。ただ、この指標は守備イニングにも影響してくるので、吉川が怪我なく試合に出続けていたら1位であった可能性もあるだろう。彼の長所というのは、なんと言っても守備範囲の広さなのである。
GGへの大きな壁
データだけで見ると、吉川のGGはそう遠くない話にも見えてくるが、そこには大きな壁がある。広島の菊池涼介である。菊池は2013年から2018年(今年)まで6年連続でGGを獲得している日本を代表する守備職人である。
ここで、菊池涼介の守備の変化について見てみよう。
DELTAのデータによると、RngRが下がってきていて、ErrRが上がってきていることが分かる。守備範囲が狭まってきてはいるが、安定性は上がってきてると言えそうだ。そして、UZRは年によって変動はあるものの、昔ほどの数値ではない。
GGは記者投票
ここで思い出してもらいたいのは、GGは記者の投票で選出されるということである。
記者の多くは''菊池涼介=守備が上手い''という印象を持って、日々の菊池のプレーを見ている。菊池はただ守備が上手いだけでなく、観客や見てる人を魅了するプレーを多く見せるので、記者の記憶にも残りやすい。つまり、菊池涼介はこの先、歳をとったことによって守備力が低下したとしても、記者投票で票が集まりやすいのである。
過去のGG受賞者
次に過去10年間(2009~2018)で二塁手でGGを獲った選手に焦点を当てて見ていこう。
これを見ると、どの年においても、GGを獲った選手は1年間のほとんどの試合に出場していることが分かる。記者の印象に残るために多くの試合に出ることが必要不可欠と言えそうである。また、失策数は1桁の選手が多く、守備率は限りなく1.000に近いことが分かる。
今年の吉川は二塁手として71試合・3失策・守備率0.992、遊撃手として19試合・2失策・守備率0.976であった。
吉川に必要なもの
①守備イニング1000イニング
怪我なく、1年間試合に出続けること。打撃の不調が長く続くようだと、出場機会も減ってきそうなので、打撃も重要である。
②ハイクオリティな守備
彼が挑むのは守備の名手・菊池。彼をも上回る印象を記者に植え付けなければならない。守備のあらゆる分野における圧倒的な力の確立が必要である。失策数1桁、守備率.990などを筆頭に各々の守備指標の向上を求めたい。
③時間
来季、いきなり菊池と吉川の立場がガラッと変わるというのは考えにくい。圧倒的な守備を見せ続けることでいずれは立場逆転、GGへの道が開けるだろう。
ぜひ来季の吉川尚輝の守備に、注目して見て欲しい。