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正月新聞広告のマニアックな世界 2024年

この年の見どころ

1月1日の能登を中心とした北陸の大地震、2日の羽田空港での航空機事故と、信じられないような悲劇が重なる新年の幕開けでした。3日以降の一面は、一般紙は震災報道を中心に展開。スポーツ紙は箱根駅伝か否かで判断が分かれました。
テレビCMの場合はACに切り替えることもできたと思いますが、新聞の場合はどうなることか。特に出版社は印刷所や物流が止まる年末年始は完全にオフに入っている場合も多いので、広告代理店が担当者と連絡とろうとしても大変だったのではないかと思います。裏で様々な調整があったのか否かは不明ですが、「不謹慎」と眉をひそめられるような広告はなかったように思います。

今年の正月広告を眺めていると、「好景気」「実績重視」「新たな収益源の開発」という3つのキーワードが浮かんできました。

「好景気」をまず感じたのは、2021年から元日第1部のページ数を38、36と段階的に減らしていた読売新聞が一気に40ページに戻りました。朝日新聞も2023年に40ページから一気に36ページまで減らしましたが、やや戻し手38ページとなりました。
日本経済新聞4日2面、3面が東洋経済新報社とダイヤモンド社が向かい合う形に変わりました(ただし、日本経済新聞1日3面のダイヤモンド社はなくなりました)。
業績好調のハルメクが読売新聞4日20面、21面で全5×2の見開き展開もいいですね。
読売新聞5日1面、従来はモノクロのサンヤツだった枠をカラーサンムツに。こういうチャレンジはいいですね。
5日の名物、宝島社の見開き広告は、朝日と毎日は球場の写真ですが、読売新聞は富士山。この富士山、読売新聞本社ロビーに飾られている横山大観の巨大な富士山の絵を思い起こさせます。
NISAやお金関係の書籍も目に付きました。

「堅実」という視点から見ると、乾坤一擲の期待作を打ち出すより、既に実績のある書籍を中心に打ち出している傾向を感じました。
今年、最も目に付いたのは、何より講談社の黒柳徹子さんの全15段広告。誰が見ても一目瞭然の黒柳徹子さんの髪型を鏡餅に見立てたクリエイティブは面白いですね。このクリエイティブを見て『続 窓ぎわのトットちゃん』を買いたい衝動に駆られるかはひとまずおいて、同日掲載の朝日新聞インタビューや前夜の紅白出場がどれくらい売上を後押ししているかが気になります。
文藝春秋の阿川佐和子さん『話す力』(文春新書)は、2012年の年間ベストセラー1位となった『聞く力』のシリーズ。読売新聞のみカラーで華やかですね。
毎日新聞1日8面の筑摩書房はベストセラー『思考の整理学』(外山滋比古)の新版発売。「旧版中は大変お世話になりました。」という校閲チェック風の見せ方がいいですね。
飛鳥新社は昨年のベストセラー小説部門1位の『変な家』の続編。
光文社の東野圭吾「ブラック・ショーマン」シリーズも鉄板でしょう。
毎日新聞出版『ある行旅死亡人の物語』も話題を呼びましたね。
新潮社は話題となった『成瀬は天下を取りにいく』と、その続編を中心に複数書籍を並べて取りこぼしなく告知しているように見えます。
幻冬舎といえば、正月からドカンと勝負作を放り込んで雰囲気を盛り上げて行く手法がお得意ですが、今年は5日に全5モノクロ1ページで村木嵐さんの『まいまいつぶろ』。直木賞候補作で既に評判の高い作品。村木嵐さんが注目を集めるのは嬉しいですが、幻冬舎らしいドヤッという感じはないですね。
毎年、集英社が色々なクリエイティブを新聞ごとに出し分けて楽しませてくれるのですが、今年は各紙共通で、写真が本社ビル。うーむ。電子コミックで儲かっているだろうに、経費の節減なのか、本社社屋を広告に使うってインナープロモーションには良いかもしれないけど……、と寂しく思っていたところ、4日の朝日と読売で、「呪術廻戦」の「25巻本日発売」と、カラー全15段広告。しかも別原稿という贅沢ぶり。そうか、このための予算捻出だったんですかね、勝手にがっかりしてすみません。とはいえ、これも確実に売れる実績のある本に予算投下の流れといえば、そうとも言えます。
そんななかで、Gakkenが毎日新聞1日10面に出したモノクロ全15段「今日、いくつ挑戦した?」が存在感を示していました。良く見ると、「学研の朝鮮を語るには紙面は狭すぎたので、QRに込めました。」

「新たな収益源の開発」は今に始まったことではありませんが、より一層感じる年となりました。
特に印象的なのが、出来上がった本を売ってお金を貰うのではなく、本を書きたい人からお金をいただく自費出版の案内。1日日経掲載の日経BP「日経で社史を作りませんか」。全5段広告で社長が顔出ししているクロスメディアパブリッシングや22世紀アートも企業出版や自費出版が得意な会社ですね。
文芸社は4日の東京新聞2面は半5、5日産経新聞3面半5、朝日新聞30面(テレビ欄)で「出版相談会」開催の広告。テレビ欄というのが、狙っているターゲットが見えるようで興味深いですね。
中央公論新社が読売新聞で確保している正月用スペースで何を訴求してくるかは毎年の注目ポイントのひとつですが、今年は「婦人公論えふえふ倶楽部」という無料デジタル会員サービスを中心に据えて押し出してきました。
雑誌がリニューアルして好調と聞いていましたが紙に留まらない施策が必要との判断なのでしょう。
「日経ビジネス」の名前を冠した「課長塾」のようなセミナービジネスも気になりました。

その他の話題としては、NHK大河ドラマとの連動は主に毎日新聞が得意としていて今年も掲載があるのですが、産経新聞が関連自社本(ムック)をかなり力強く展開しています。

東京中日スポーツ紙が『南海トラフ地震の真実』を載せていて、これは東京新聞の記者が、南海トラフの発生率が特殊な計算式で大きく水増しされていることを明らかにしたノンフィクションで昨年の菊池寛賞を受賞していました。著者の小沢慧一さんは授賞式で、それによって他の地域の防災活動に振り向けるべきリソースが不足する事態になっていることを、北海道地震の被災地取材で出会った少年の思い出とともに、切々と語っていました。一日と5日の紙面に掲載されいて、少なくとも1日は能登の地震とはまったく関係なく掲載されているものですが、この機会にあらためて注目をされて良い書籍と思います。東京新聞に広告掲載が無いのは残念です。


(スペースは特に断りが無い場合は全5段広告です。調査の深度は年によってバラツキがあります。など、あくまで個人の見解であり、所属団体組織の意見を代表しません)

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2024年1月1日(月)

日本経済新聞

1面 岩波書店、みすず書房、東京大学出版会、中央経済社、日本評論社、朝倉書店、東京化学同人、白桃書房

2面 文藝春秋

3面 あすなろ書房

4面 集英社(雑誌)(全15)

31面 日経BP(日経ビジネス課長塾)

32面 日経BP日本経済新聞出版本部(社史 全3)

39面 日経ナショナルジオグラフィック社(全7)

43面 日経BP日本経済新聞出版本部(日経MOOK 全3)

47面 日経サイエンス(全2)

第二部
1面
かんき出版

第二部
2
面 大修館書店、金融財政事情研究会、経済法令研究会、国書刊行会、かんき出版、実務教育出版、1万年堂出版、成美堂出版

第二部
3面
クロスメディア・パブリッシング

第二部
4面
日本図書普及(半5カラー)

第二部
5面
22世紀アート

朝日新聞

1面 サンヤツ
有斐閣、東京大学出版会、みずず書房、朝倉書店、風間書房、偕成社、青土社、研究社

2面 新潮社

3面 文藝春秋

4面 大修館書店

5面 岩波書店(全15)

6面 講談社(全15カラー)

7面 光文社(東野圭吾)

8面 集英社(全15)

9面 マガジンハウス(BRUTUS)

35面 あすなろ書房

第三部
3面
聖教新聞社

読売新聞

1面 岩波書店、朝倉書店、風間書房、国書刊行会、青土社、みずず書房、農文協、研究社

2面 文藝春秋 (カラー)

3面 東洋経済新報社

4面 中央公論新社(えふえふ倶楽部)

5面 集英社(全15)

6面 聖教新聞社

7面 講談社(全15カラー)

10面 TOブックス(全15)

第二部
10面
文響社(夢をかなえる像)(全3)

毎日新聞

1面 サンヤツ
岩波書店、みすず書房、山川出版社、朝倉書店、青土社、現代書館、農文協、双葉社

2面 新潮社

3面 文藝春秋

4面 講談社(全15カラー)

5面 三省堂

6面 集英社(全15)

7面 大修館書店

8面 筑摩書房(全15)

9面 国書刊行会

10面 Gakken(全15)

13面 自由国民社

14面 西村書店

エンタメ
1面
NHK出版

スポーツ
7面
聖教新聞社

産経新聞

2面 新潮社

3面 文藝春秋

4面 集英社(全15段)

5面 ワック

7面 飛鳥新社(変な家2)

8面 双葉社

9面 徳間書店

10面 東京大学出版会、国書刊行会、1万年堂出版、錦正社、徳間書店、筑摩書房、アリス館、悠光堂、KKベストセラーズ、展転社、佼成出版、コスモ21、双葉社、緑書房、ワック、モラロジー研究所出版部

東京新聞

1面 サンヤツ
岩波書店、東洋経済新報社、朝日新聞出版、致知出版社、サンマーク出版、ダイヤモンド社、池田書店、農文協

2面 新潮社


3面 文藝春秋、ダイヤモンド社(半5×2)

4面 二見書房

日刊スポーツ

1面 マガジンハウス(TARZAN)

2面 1万年堂出版

3面 光文社(光文社文庫)

スポニチ

無し

サンケイスポーツ

20面 サンケイスポーツ

スポーツ報知

1面 マガジンハウス(TARZAN)(全3)

東京中日スポーツ

1面 1万年堂出版(全3)

7面 東京新聞出版(全3)

12面 東洋経済新報社(半3)

13面 東京新聞出版(全2)

14面 東京新聞出版(全4)

デイリースポーツ

無し

日刊ゲンダイ

8面 日刊ゲンダイ


2024年1月3日(水)

日本経済新聞

1面 サンヤツ
有斐閣、同文館出版、吉川弘文館、山川出版社、弘文堂、築地書館、金融財政事情研究会、偕成社

2面 とうこう・あい企画
東京書籍、国書刊行会、技術評論社、詩想社、大和書房

3面 明日香出版社

朝日新聞

1面 吉川弘文館、東京化学同人、ミネルヴァ書房、明石書店、勉誠社、幻冬舎、農文協、国書刊行会

2面 とうこう・あい企画
東京書籍、帝国書院、詩想社、技術評論社、大和書房

3面 小学館

4面 東洋経済新報社

読売新聞

1面 サンヤツ
有斐閣、光村推古書院、メディックメディア、西村書店、戎光祥出版、水声舎、二見書房、偕成社

2面 とうこう・あい企画
東京証券取引所技術評論社、大和書房、詩想社、成美堂出版

3面 ビジネス社

毎日新聞

1面 サンヤツ
有斐閣、水声舎、戎光祥出版、展望社、柊風舎、メディックメディア、築地書館、光村推古書院

2面 毎日新聞出版

3面 青春出版社

4面 文芸社(人生十人十色大賞)

22面 毎日新聞(サンデー毎日)(半角)

産経新聞

2面 産経新聞(光る君へ)

3面 産経新聞(正論)

東京新聞

1面 サンヤツ
朝倉書店、日本加除出版、三一書房、東信堂、東京創元社、詩想社、1万年堂出版、東京書籍

2面 東京書籍、白水社、国書刊行会、技術評論社、成美堂出版

3面 明日香出版社

日刊スポーツ

9面 ダイブックス

スポニチ

無し

サンケイスポーツ

1面 白秋社

3面 サンケイスポーツ(カラー)

スポーツ報知

無し

東京中日スポーツ

1面 サンヤツ
朝倉書店、日本加除出版、三一書房、東信堂、東京創元社、詩思社、1万年堂出版。東京書籍

9面 東京新聞出版(全2段)

10面 東京新聞出版(全2段)

12面 東京新聞出版(全2段)

13面 東京新聞出版(全1段)

14面 東京新聞出版

デイリー

21面 竹書房


2024年1月4日(木)

日本経済新聞

1面 事業構想大学院大学、社会構想大学院大学

2面 東洋経済新報社(週刊東洋経済+書籍)
3面 ダイヤモンド社(週刊ダイヤモンド+書籍)

4面 日経BP(日経トレンディー)、新評論

7面 国際商業出版

31面 日経BP(日経ビジネス電子版)、日経広告研究所(半2各出版社)

朝日新聞

1面 サンヤツ
水声社、技術評論社、22世紀アート、小澤昔ばなし研究所、毎日新聞出版、バジリコ、朝日新聞出版、リットーミュージック

4面 選択

5面 集英社(呪術廻戦)(全15カラー)

7面 ハルメク

10面 文藝春秋(週刊文春)

11面 小学館(週刊ポスト)

読売新聞

1面 サンヤツ
東京大学出版会、東信堂、未知谷、技術評論社、ブックマン社、かんき出版、1万年堂出版、大和出版

2面 あすなろ書房

3面 文藝春秋(文春文庫)

4面 文藝春秋(週刊文春)

5面 集英社(全15カラー)

17面 小学館(週刊ポスト)

20面、21面 ハルメク

毎日新聞

1面 サンヤツ
大修館書店、春陽堂書店、原書房、河出書房新社、緑書房、太陽出版、実務教育出版、偕成社

2面 毎日新聞出版

3面 あすなろ書房

15面
小学館(週刊ポスト)

20面 毎日新聞(サンデー毎日)

21面 文芸社(人生十人十色大賞)

産経新聞

6面 第三文明

22面 扶桑社(半5))

東京新聞

1面 サンヤツ
朝日新聞出版、毎日新聞出版、青春出版社、潮出版社、双葉社、築地書館、農文協、Gakken

2面 敬文舎、文芸社(半5×2)

3面 選択(選択)

4面 小学館(週刊ポスト)

日刊スポーツ

21面 集英社(週刊プレイボーイ)

スポニチ

21面 集英社(週刊プレイボーイ)

サンケイスポーツ

無し

スポーツ報知

14面 報知新聞(半1)

東京中日スポーツ

8面 東京新聞(全2)

11面 東京新聞出版

12面 東京新聞出版

14面 東京新聞出版 (半2、半3)

デイリー

無し

2024年1月5日(金)

日本経済新聞

1面 金融ジャーナル、ライノス・パブリケーションズ、日経BP、宣伝会議、日系なら、緑書房

2面 毎日ワンズ

3面 講談社

5面 財界展望社(ザイテン)、ごま書房新社(半5×2)

8面 日経BP(日経MOOK)(全2)

22面 宝島社

43面 日本経済新聞出版社(半2)、日経広告研究所(半2)

朝日新聞

1面 サンヤツ
東峰書房、築地書館、キクロス出版、大和出版、東京図書出版、日本文芸社、小澤昔ばなし研究所、KKベストセラーズ

2面 朝日新聞出版

3面 幻冬舎

4面 PHP研究所、すみれ書房

7面 講談社(FRIDAY)、文藝春秋(週刊文春Woman)

16面、17面 宝島社

24面 小学館(女性セブン)

28面 光文社(女性自身)

29面 主婦と生活(週刊女性)(半5)

30面 文芸社(角)

読売新聞

1面 サンヤツ
あさ出版、Gakken、KADOKAWA、G.B.、白泉社、風鳴舎(サンムツカラー)

2面 文響社

3面 幻冬舎

4面 潮出版(潮)、小学館(女性セブン)

8面 テーミス(テーミス)

16面、17面 宝島社

29面
光文社(女性自身)

毎日新聞

1面 サンヤツ
東京大学出版会、白秋社、未知谷、三一書房、ブックマン社、大和出版、ペガサス、鳥影社

2面 東京書籍、国書刊行会、技術評論社、詩想社、大和書房
とうこう・あい企画

3面 コスモ21

22面 まいにち書房(角)

産経新聞

1面 告知カラー

2面 テーミス(テーミス)

3面 文芸社、産経新聞(半5×)

東京新聞

1面 サンヤツ
吉川弘文館、山川出版社、大修館書店、、日本評論社、飛鳥新社、双葉社、徳間書店、Gakken

2面 ハルメク(ハルメク)

3面 小学館(女性セブン)。光文社(女性自身)

日刊スポーツ

12面 ダイブックス

18面 双葉社(週刊大衆)

スポニチ

16面 双葉社(週刊大衆)

サンスポ

3面 秋田書店(別冊ヤングヤンピオン)

9面 産経新聞(週刊ギャロップ)角

18面 双葉社(週刊大衆)

スポーツ報知

3面 報知新聞、秋田書店(別冊ヤングヤンピオン)(半5×2)

18面 双葉社(週刊大衆)

東京中日スポーツ

5面 東京新聞出版(全1段)

9面 東京新聞出版(全3段)

10面 東京新聞出版(半2×3)

12面 双葉社(週刊大衆)半5、東京新聞出版(半3)

デイリースポーツ

14面 双葉社(週刊大衆)


その他の気になった広告

以前も見かけたことはあったと思いますが、産経新聞1日14面に漱石記念館の寄附のお願いが載っていました。

各紙に出ていた甲子園100週年。様々なスポーツ漫画の舞台になってきたことが一目瞭然。これだけのキャラクターの許諾を取るのは大変だったのではないでしょうか。

箱根駅伝も第100回。きれいな広告でした。
ここ数年、出版社の100周年も続いており、大正末期はいい時代だったのだなあと改めて思います。

「ブルーロック」は映画化の話題で広告主はバンダイナムコですが、「原作コミックス 推計発行部数3000万部突破!」の文字が入っていて良いですね。

「ダンジョン飯」広告主はKADOKAWAですが映画の話題です。

時代劇チャンネルも華やかですね。


バカラのカラー広告の絶妙なグラデーションは、新聞の印刷技術がここまで来ているのかと改めて驚きがありました。



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