常連になりたいお店の話〜近藤史恵『間の悪いスフレ』〜
かおりさんへ
バタバタと過ごしているうちにあっという間に今年も数日を残すのみとなってしまいました。お互いに、50代らしくいろいろ自分の意思ではどうにもできない出来事に振り回されることが多い1年だったね。
今年最後のお手紙には何を書こうか悩んだんだけど、今日は私たちのはじまりの本『サクリファイス』の作者である近藤史恵さんの『間の悪いスフレ』について書いてみようかなと思います。
この本はビストロ・パ・マルシリーズ の第4作目の本なの。第1作目の『タルト・タタンの夢』を読んだとき、なんておしゃれな本なんだ!と思った記憶がある。うまく言えないんだけど、スマートな感じなんだよね。
美味しいものを作るのが上手な三舟シェフがちょっとした謎や相談事を解決していく話なんだけど、世の中にはそういう話は結構ありふれている。食いしん坊の私は美味しいものの話は大好物だし、ちょっとした謎を解いていく話も大好き。
だから、図書館ではレストランや食堂を舞台にした話は積極的に借りているんだけど、ビストロ・パ・マルシリーズはなんというか問題を抱えているお客さまに立ち入りすぎないというか距離感の保ち方が心地いい感じがします。三舟シェフが自然体だからかな。
第4作は時流に合わせていて、コロナ禍でテイクアウト始めたり、料理教室を始めてみたり、円高で原材料が値上がりしてしまって、秋ならではのチーズ、モンドールを出すかどうか悩んだりと飲食店って大変だなという話が盛り込まれている。
私は、フランス料理をあきらめようとしている若いシェフを特別な料理で思いとどまらせる『モンドールの理由』が好きでした。三舟シェフは、未来ある若者に、とくに優しいのだ。
そして、やっぱり出てくるお料理は変わらず美味しそうなの。本当に描写がお上手。近所にあったら、かおりさんと一緒に美味しい料理はもちろんワインもデセールも楽しみに行ってみたいわ〜。
そんなわけで、ビストロ・パ・マルにはどんな状況になっても、スタッフで協力して、心を許せる人と美味しいものを食べられる癒しの場所でい続けてほしいなと思いました。第5作目も楽しみです。
さて、今年も「読みたいふたり」を毎週更新して、「しゃべりたいふたり」のネタのためという口実を使って、気になる場所に行ったり、本にまつわる話をしたり、楽しい時間を過ごすことができました。お互いの記事の一番最初の読者であることが、とてもうれしいよねと言いながら、たくさんの本に出会えたことはとても幸せです。
私たちに鍛えられて、花のイラストも描くスピードが上がり、インパクトのあるものになってきたなと思います。3人のユニット(?!)として、来年も細く長く頑張っていきましょう。よいお年を。
2024年12月27日
やすこより