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創作童話「初雪をながめる夜」(朗読動画あり)

シチュボリクエストから創作。
いただいたお題は、「空と雲と月の会話」。
今回はシチュボではなく、創作童話の朗読動画を作成しました。
テキストバージョンをここに残しておきます。

朗読動画

創作童話「初雪をながめる夜」

 それは、ある冬の夜のことでありました。
 人々はあたたかな家でこたつに入り、動物たちは毛皮をふくらませ身を寄せ合うほど寒い寒い夜でしたので、あたりはしんと静まりかえっておりました。

「やあ雲さん」
 空は言いました。
「そろそろ君は、雪を降らすのかね」
 白というよりは灰色がかり、分厚くなってきた雲はこたえます。
「ああ、もうすぐしたら僕から落ちるのは雪だよ」
 雨になるか雪になるか、はたまなみぞれやヒョウになるかは、雲にもわかりません。
 けれどこれまでの経験から、そろそろ自分は雪を降らせるのだなと思いました。
「ほう、私は雪で真っ白になった地上を見るのが好きなんだ。楽しみだなぁ」
 そう空が笑うと、月がすねた口調で言いました。
「あたしも好きよ。でも、雲さんったらいつも私から地上をかくしてしまうのだもの」
「ごめんよ。雪や雨を降らせるときは、どうしてもぼくの体が大きくなってしまうんだ」
 こまったように雲はうなりますが、空は気にせず、うっとりと歌うように言いました。
「月さんが雪を照らすのが好きだなぁ。ぽうっと白く光るような景色は、とても美しいよ」
「まあ、空さんったら」
 月は恥ずかしくなって、そっと雲に呼びかけます。
「雲さん、ちょっとこっちに来てあたしをかくしてちょうだい」
「かくさないでと言ったり、かくしてと言ったり、月ったら都合がいいんだから」
 苦笑いしながらも、雲は月を包んで、「もう大丈夫よ」と言われるまでかくしてあげました。
「君たちはなかよしだなぁ」
「ケンカもよくするけどね」
 くすくすと、月と雲は笑いました。
 笑った拍子に、雲からはらりと白いふわふわしたものが落ちはじめました。
「ああ、やっぱり雪になった」
「月さんがいるから、きらきらしているね」
「雪はあたしの光をまとってくれるから、大好きよ」
 しばらくおしゃべりをとめて、雲からはらはらと落ちる雪をながめます。
 そして、ほうっと気をつきました。
「いい夜ね」
「しずかで、幻想的だ」
「ああ、冬はこうでなくっちゃ」
 月と空と雲はうっとりとささやきあっていましたが、雲がどんどん大きくなって月を隠してしまいます。
 「ひどいわ」とすねた月に、雲は「ごめんごめん」と謝って、空がそんな月と雲をやさしく見守っておりました。

そんな、初雪の降る夜でした。

(おしまい)


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