キスも知らない17歳が、銃の打ち方は知っている「Elephant」
今回は、1999年4月20日にコロラド州で起きたコロンバイン高校銃乱射事件を作品の題材に撮られた映画
ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant エレファント」について。
あらすじ
オレゴン州ポートランド郊外のワット高校。ある初秋の朝、生徒たちそれぞれの、いつもの一日が始まる。ジョンは、酒に酔った父と車の運転を交代して学校に到着。だが、遅刻した彼は校長から居残りを言い渡される。写真好きのイーライはポートレート制作の真っ最中。女子に人気のアメフト部員ネイサンはガールフレンドと待ち合わせ、食堂では仲良しの女子3人組がダイエットや買い物などの話で持ちきり。そんな中、いじめられっ子で内向的なアレックスとエリックは、ネットで入手した銃器を手に学校へ向かっていた...。
第56回カンヌ国際映画祭 パルム・ドール賞 受賞
第56回カンヌ国際映画祭 監督賞 受賞
この映画・・・とてもよかったです。。
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劇中のなんでもない日常に、観客が無意識的に溶け込んでしまう、カメラワークとセリフ
長回しの固定カメラで学生たちの日常が映し出されます。
生徒のセリフもほとんどがアドリブで、耳に入ってくる言葉も、聞き流すようなどうでもいいこと。何の変哲もない日常の中に、いつの間にか自分もいる感じ。
色々な目線から、フューチャーされる生徒たち
色々な生徒の目線から学校生活が映さる。重要人物か?物語が動き出したか!?
でもそこでフューチャーされる生徒たちは、その後の悲劇で生きるか死ぬかも関係ない、ただの生徒。
でも、一人ひとり 小さな問題を 抱えて生きている。
本人にとっては当たり前になりつつあって、対処さえしないような、小さそうで大きな問題。
そんな「闇」は、私たちが生活する日常でも、当たり前にある。それを観て見ぬふりして生活している私たちを強制的に、俯瞰的に見せられているような・・・。
題名の由来「Elephant The Room」
Elephant The Room:部屋の中に巨大な象がいるのに、誰もその存在を認めず、見て見ないふりをする状態をさす。すぐ目の前にトラブルがありながら、その人はなぜか無視してしまう、ということわざ (DMM英会話Blogから引用)
実話である題材 コロンバイン銃乱射事件は、とあるいじめられっ子が、学校内で残虐的に生徒や教師を無差別に銃殺した事件。
映画を観始めたときから、私が溶け込んだ日常が、突然ぶち壊されて非日常に変わる……
悲惨な事件の当日でも、いつもとなんの変わりはなく、空は青いし、鳥はさえずっているし、音楽は美しい。
そんな違和感、わたしは大好きです。
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映画のテーマ曲である、アレックスがピアノで弾く「エリーゼのために」は役者さんがアドリブで弾いて採用になったようですが、
おどおどとテンポが定まらなくて、音色は綺麗なあの曲は、良くないことが起こるカウントダウンのように感じて、とっても耳に残っています。
不穏………美し〜〜…
この映画は、悲惨なシーンでも 演出・撮り方が綺麗だから、、なんだか混乱するのです。
そりゃそうか。事件当日だって、いつもの日常と 変わりはないんだから。
まとめ
人が殺されようが、なんだろうが、ただの「出来事」として時が流れていくこの映画。奇跡も起きない。それが、世の構造に逆らってなくてとてもよかったです。
81分という短い映画を観た後とは思えないほど、ずっしり感じます。とてもダウナーにはなります。でも、観てよかった。そして、観てほしい映画です。