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見守ることが子どもの「好き」を伸ばす! 子どもの頃の話を聞かせて!「画家 カマノレイコさん」
温かな色彩と筆致で、白猫のチャオ、黒猫のぐうちゃん、しましま猫のちふをはじめとする動物たちの日常を描く画家・カマノレイコさん。2016年から子育て中にイラストをSNSにアップする中、その優しい絵柄が多くの人のハートを射抜き、日本だけでなく世界からも注目を集めるように。今では、さまざまな企業からコラボグッズが販売される人気作家さんになりました。2024年7月には、チャオ、ぐうちゃん、ちふたちが暮らす村のできごとを描く初めてのフルカラーコミック『ひなた村の3匹』を刊行し、多くのファンに癒しを届けてくれました。そんなカマノさんに、子どもの頃のことや子育てについて聞いてみました。
【プロフィール】
カマノレイコ
画家。セツ・モードセミナー卒業(途中フランス・パリ留学ののち復学)。雑貨屋経営やアクセサリー・オブジェの制作活動を経て、2016年より絵画制作を開始。普通の生活の素晴らしさを、猫や動物の姿を通して描いている。著書に「Reiko KAMANO artworks カマノレイコ作品集」(ホビージャパン)などがある。
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絵を描くことが大好きな子ども時代
どうやら2歳の頃、すでに顔が描けたらしいんです。それを見た母がすごく喜んで「きっと絵を描くのが好きなんだろう」と、いろいろ画材を与えてくれていたんだと思います。なので、物心ついた時には「絵を描くのが好きだな」「将来は絵描きになりたい」と思っていましたね。
現在、漫画家として活動している3歳年上の姉がいるのですが、私とはタイプが違って、頭もすごく良くて、絵も立体物とか無機質なものを捉えるのが上手なんです。小さい頃は雨降りの日は一緒にお絵かきしていましたが、二人とも外でもよく遊んでいました。結果的に、姉も私も絵を描く仕事に就いているのですが、母は「絵を描きなさい」「得意なものを伸ばしなさい」というよりも、全般的に見守ってくれていましたね。「こうなって欲しい」という願いもなく、いい意味でほうっておかれたと思います。
母は、一見するとおだやかでおとなしそうな人なんですけど、ものすごくアクティブな人なんです。羊の毛糸を作りたいといって山梨の工房に一緒に連れて行かれたりしていました。一方の父は、昭和の人間なので、仕事ばかりで子育ては母に任せきりでした。とは言え、休みの日にはバイクに乗ったり、日曜大工が好きだったりしたので、「大人が楽しそうなのっていいな」と思っていたことを覚えています。なので、私も自然と「好きなことやっていいんだ」「むしろ好きなこと見つけないとつまらないだろうな」と思っていました。
私は、自分の軸がしっかりあるようなタイプではなく、割と流されやすい性格なんです。だからこそ、子ども時代に自由にさせてもらえてよかったな、と思っています。「こうしなさい」「ああしなさい」と締めつけられていたら、それに従っていたような気がします。
海外の絵本、そして白猫のチャオとの出会い
家族で共通していたことと言えば、みんな本が大好きですね。図書館や書店に家族で行って、各々好きな本を選んでくる、みたいな感じでした。私が好きだったのは、『長くつ下のピッピ』のアストリッド・リンドグレーンや、『かいじゅうたちのいるところ』で知られるモーリス・センダック、『がまくんとかえるくん』シリーズのアーノルド・ローベルや『モモ』のミヒャエル・エンデといった、海外の絵本や児童文学でした。あとは江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズも読んでいました。特に、子どもの頃に買ってもらった『モモ』や、センダックのミニ絵本セットは、とても大切にしていて、今は私から子どもたちへと引き継がれています。
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そして、私の絵のモチーフになっている白猫・チャオをはじめとする猫も大事な家族です。チャオと一緒に暮らす前にも猫と暮らしていたのですが、子どもの頃から大人になるまで、一番濃くて長い時間を一緒に過ごしたのがチャオでした。最初は妹みたいな存在だったのですが、だんだん「おばさま感」が出てきて、最後はおばあちゃんみたいな雰囲気をかもし出していましたね。チャオが亡くなった時、ちょっと寂しいから、と彼女の絵を描いてみたら、なんだか勝手に一人歩きしてくれて。今では多くの皆さんに愛される猫になったのは、本当にすごいことだと思っています。
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その一方で、子どもの頃に苦手だったのは、虫です。今もそんなに得意ではないですが、虫が嫌いだといって騒いでいる自分が嫌になってきて(笑)。「虫=気持ち悪い、嫌なもの」という思い込みを変えたくなって、自分から積極的に虫に食らいついています。やっぱり、よく知らないと怖いんですよね。だから、まず知ることが大事だと思い、観察しています。二人の娘も、最初は私の反応を見て「虫は怖い」と敬遠していましたが、今では興味を持ってくれていますね。特に次女は、虫を見ると本能的に嫌がって逃げたりしていたのですが、みんなで観察しているうちに、怖くなくなったのか、この前は手のひらいっぱいにダンゴムシを乗せていました(笑)。やっぱり、嫌いだとか苦手と思い込んでるものは、少ない方がいいですよね。どうしてもダメならダメでいいんですけど、最初から決めつけない方がいいのかな、と思っています。
挫折や結婚・子育てを経て、画家としてデビュー
子どもの頃は、書道とピアノ、絵画教室に通っていました。絵は、ずっと描き続けていて、小学・中学生時代に描いた、お尻に手足がついているオリジナルキャラクターが登場する漫画は、友だちに人気がありました(笑)。美術系の高校へ進学したこともあり、高2くらいからは予備校に通って放課後4時間、デッサンや油絵を描き続けていましたが、いざ美術大学受験となった時に、どんな絵を描いていいのかがわからなくなってしまったんです。「大学に受かる絵」を描くことと、予備校の先生から言われた「お前の絵を描け」という言葉の間で混乱してしまい、結局、大学受験はせずに、専門学校のセツ・モードセミナーに通うことにしました。その間、フランス・パリへ一年間留学したり、帰国後は母とアンティーク&雑貨の店や、インテリア雑貨店を開いたりと、忙しくしている中で、結婚・出産・子育てという人生の大イベントが発生しました。
長女が赤ちゃんの頃は、しっかり子育てをしようと考えていたのですが、ちょうどその頃、「自分って何ができるんだろう?」と真面目に悩むようになっていたんです。お店を畳んだ後にハンドメイドのコサージュやオブジェなどを作りはじめ、銀座のギャラリーや都心部のデパートなどで展示販売していたのですが、それもやりきった感じがして。「もっと、一生できることがあるんじゃないか」「ある気がするけど何だっけ?」と考えていたなかで、夫やお姑さん、そして母が「チャオを描いたらいいじゃない」と言ってくれたんです。「でも、しばらく描いていないし…」と思いながらも、「これかもしれない」と描き始めました。
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やっぱり、姉のように好きなことを仕事にしている人がうらやましかったんですよね。好きなことと仕事がイコールじゃないとちょっとつまらないし、自分で「これだ」って思ったことが仕事になるということが楽しかったですね。やっぱり、仕事っていろんな人から必要とされないといけないんですけど、その厳しさもいいな、そこに身を置きたいなと思って、勝負したかったんです。それまでの社会経験は、家族のおかげでできていたことばかりだったので、一人できることに挑戦しなきゃって思ったんです。
画家としての道を切り拓いてくれたSNS
70代で本格的に絵を描き始め、80歳で初めて個展を開いたグランマ・モーゼスことアンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼスの存在を子どもの頃に知っていたので、スタートが遅いという感覚はなかったですね。描いた絵をSNSで発表する中で、いろんな方から反応をいただいて、仕事に繋がっていったのは、本当に時代というかタイミングが良かったと思っています。私が若い頃、絵を描いて生きていきたいと思ったとしても、画廊に絵を置いてもらったり、知り合いに購入してもらったり、雑誌に掲載してもらうくらいしか手段はありませんでした。でも、今はSNSで個人が自分の作品を全世界に向けて発表することができて、いろいろな企業さんからお声がけいただけるのは、本当にありがたいことだと思っています。
実は、イラストを掲載する雑誌に何度か投稿したこともあるのですが、あまり良い結果を残すことはありませんでした。一瞬、「自分ってやっぱり絵描いちゃダメな人間なんだろうな」と思ったこともありましたが、自分の変なところをとにかく頑張って伸ばしながら、ひたすらSNSに上げてくことをとりあえず続けようと思って。それがちゃんと実を結んでくれたんですよね。自分の向いてる場所をちゃんと選ぶことも大切だなって思いました。本当にうれしいし、今後も頑張ろうって思いますね。絵や書籍、グッズを購入してくださった方からの感想を拝見するたびに、「自分の描いた絵からいろいろなことを感じ取ってくださっているんだ」と感動しています。
子育ては、子どもの「好き」を最優先にのびのびと
娘たちは私と同じで、絵を描くのが大好きなようです。長女は描きまくっていますし、次女は塗り絵が好きで「お絵かきしないの?」と聞いても「わかんない」とか言っていたのですが、今では姉や私に感化されたのか、一緒にお絵かきしています。長女は絵を描くのも好きなのですが、それよりも可愛いものが大好きで、「将来はキャラクターやぬいぐるみを作る会社を開きたいな」といって、裁縫なんかもしていますね。次女は、幼稚園の先生になりたいといっているので「すごく大事な仕事だから頑張れ!」と応援していましたが、最近は小学校の先生へと進化していました(笑)。
基本的には、子どもの好きなことに関しては、特にアドバイスしないでおこうかなって思いますね。片付けに関してはうるさいですけど(笑)。好きそうなことには、やっぱり余計なこと言わないほうがいいですね。そのために必要なものを買ってあげるなどのサポートはしますが、口を出さないことが大事だと思います。
初のフルカラーコミック『ひなた村の3匹』は、今までは一枚絵で描いていた動物たちが、どんな日常を過ごしているのかな、と思いながら描きました。短いながらもお話になることで、チャオ・ぐうちゃん・ちふの3匹を頭の中で動かす作業がプラスされたことで、すごく個性が出てきて、今後、描く絵にも広がりが生まれたと感じています。書籍も装丁事務所のアルビレオさんが、とてもほのぼのしたデザインに仕上げてくださり、すごくうれしかったです。
夫からは「『ひなた村の3匹 2』は描かないの?」と、すでにリクエストが来ています(笑)。漫画を描くのは本当に大変なのですが、3匹をはじめ、いろいろな動物たちの日常を今後も綴っていければ、と思っています。
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ライター:中村実香