算数力は0歳から育める! 幼児さんすう教育のプロが1・2・3歳におすすめする「さんすうセンスを養うおもちゃ」
子どもが苦手意識を持ちやすいといわれる「算数」。楽しく、ストレスなく算数力を養うには、いつごろから、どのようにしたらいいのでしょうか。幼児さんすう総合研究所代表で、「幼児さんすうスクールSPICA®」を運営している大迫ちあきさんに、算数力の育み方と算数センスを養うおもちゃについてお話を聞きました。
3歳までに「さんすう」のコップを満たすことが大切
中学受験の塾で算数の講師を務めていたころ、算数に苦手意識がある小学生をたくさん見てきました。中学受験では、得意な子も苦手な子も、算数と向き合うことは避けられません。楽しくないことをやるのは、子どもも大人もつらいもの。公式を覚えて、ひたすら問題を解く以外のアプローチはないものかと考えるなかで、幼いころから「算数の土台」を築いていれば、算数好きな子どもがふえるのではないかと考えるようになりました。そうした信念から、3歳から小学生低学年を対象に、算数力を育てるスクールを運営しています。
算数力を養うために大切なのは、「適切な分量を、適切な時期に、適切な方法で教える」こと。幼いころから、実体験を通じて順番に正しく知識を積み上げていけば、算数力は自然と身についていきます。
算数力は、生まれたときから育めると私は考えています。子どもが言語を獲得する過程について、「言葉のシャワーをたくさん浴びせて、子どものコップを満たしましょう」とよく表現されます。じつは、算数も同じです。数や形などの情報を子どもにどんどんインプットすることで、コップが満ちて、算数を楽しむ力があふれてくるのです。3歳までに算数をどれだけ意識して過ごしてきたかで、その後の力に大きな差があらわれます。
ただ、同時に知っていてほしいのは、「3歳までは成果は求めない」ということです。なぜならば、少なくとも3歳までは、ひたすらインプットすることが大切な時期だからです。この時期に成果を期待すると、「どうしてできないの?」「どうしてわからないの」という声かけがふえてしまいます。3歳まではひたすら与えることに徹して、その子の「さんすう」のコップを満たしてあげましょう。
「さんすう言葉」を日常的に使っていこう
子どもの「さんすう」のコップを満たす方法としておすすめなのが、「さんすう言葉」を使った声かけをすることです。
「大きいにんじんを1本とってくれる?」
「絵本を左から背の高い順に並べてみようか」
「タオルは半分に折ってたたんでね。半分にしていくと、だんだん小さくなるね」
「時計の長い針が6のところにきたら、出かけるよ」
じつはどの会話にも、「さんすう言葉」が使われています。「さんすう言葉」とは、大きく次の3つに分類できます。
①かず
②かたち
③すいり
もっともイメージしやすいのが、「かず」をあらわす言葉ですね。たとえば、次のような声かけを意識して、具体的な数値を会話の中に入れていきましょう。
「たくさんあるね」 → ○「10個あるね」
「かたち」についても、丸・三角・四角など、具体的な形の名称を言葉にして子どもに話しかけます。
「はい、どうぞ」 → ○「まるいの、ひとつどうぞ」
「すいり」には、「位置」「比較」「思考」があります。
位置のさんすう言葉といえば、「なか・外・上・下・前・後ろ」などですね。「前から3番目の、右から2番目」など、ものの位置を表現することも算数の学びのひとつです。ゆくゆくは、「右に30度回転する」などの図形問題にもつながっていきます。
「比較」は、「大きい/小さい」「高い/低い」「長い/短い」「太い/細い」「深い/浅い」「濃い/薄い」など「量」をあらわす言葉のことです。将来的には、「電車Aは電車Bより3分早く駅に到着した」「AさんはBさんより5センチ身長が高い」などの文章問題に結びつきます。
最後の「思考」は、「なぜ」「どうして」「どうやって」などですね。こうした言葉を使うことで、論理的思考力が養われます。
幼児さんすう教育のプロがおすすめする「知育玩具の使い方」
「楽しいから、続けられる」というのは大人も子どもも同じです。私のスクールでも、算数そのものはもちろん、ママ・パパと一緒にできることを楽しんでいる子どもたちの姿が見受けられます。親と一緒に楽しくやるということが、子どもの大きなモチベーションになっているのですね。
知育玩具は種類が豊富で、何を選ぶか迷うことがあるかもしれませんが、「何を使うかより、“どう”使うか」が肝心です。このあとおすすめするおもちゃについても、先ほど紹介した「さんすう言葉」を織り交ぜながら、子どもと大人が「一緒に」「楽しく」使っていきましょう。
1歳におすすめ!さんすうセンスを養うおもちゃ
さまざまな「かたち」を知るきっかけに『つみきのいえM』
大迫さん:
1歳から使える積み木を選ぶなら、いろいろな「かたち」があるものがおすすめです。丸・三角・四角などの「かたち」にふれて、丸いものはコロコロと転がる、三角の積み木の上には積めない、四角い積み木の上には積めるなどの体験をしていきましょう。「さんかくだね」「しかくの積み木、ひとつどうぞ」など、「さんすう言葉」で遊ぶのも楽しいですね。少し大きくなったら、同じ形を集めたり、色で分けたりするのも◎。算数の「仲間分け」の学びにつながっていきますよ。
ちぎって、こねて、指先を動かす『お米のねんど12色』
大迫さん:
“第二の脳”といわれることもある「手」。3歳までは、指先の動きをなるべく多く体験するようおすすめしています。指先を動かすおすすめの遊びが、「ねんど遊び」。ねんどをちぎったり、くっつけたり、伸ばしたりすることで、指先の運動になり、脳の神経回路が刺激されます。
鉛筆をしっかり握って字を書くためには、指先の「つまむ」力が必要です。早くから鉛筆の練習をはじめるより、ねんどや折り紙などの遊びを通じて「つまむ」力を育てていきましょう。
2歳におすすめ!さんすうセンスを養うおもちゃ
遊びを通じて指先の動きをうながす『動物のひもとおしM』
大迫さん:
指先遊びのひとつが「ひもとおし」。ものをつまんで、ひもを穴に通すという動作を通じて、細かな指先の動きをうながします。「今日は5つ通してみようか」と「かず」のさんすう言葉で声かけをしたり、かたちや色で仲間分けをしたりするのもいいですね。ひもの長さが2種類あるので、「いちばん長いひもには何個通せるかな?」と、「かず」や「ひかく」を意識した遊びもできますよ。
3歳からおすすめ!さんすうセンスを養うおもちゃ
付属テキストが知育遊びのきっかけに『立体パズル』
大迫さん:
平面と立体、どちらも作ることができるパズルです。思いのまま組み立てる創作遊びをしてもよし、付属テキストの課題にトライしてもよし。幅広い遊び方が楽しめます。3歳からは『立体パズル』のように、テキストや指導書が付いた知育玩具を活用するのも一案です。「日曜日に1つ作ってみようか」「今日はこれをやってみる?」などと声かけして、知育に入るきっかけにするのもいいですね。完成できないこともあるかもしれませんが、そんなときもポジティブな声かけを忘れずに。でき上がったときは「できたね!」と一緒に喜んで、親子で達成感を味わいましょう。
磁石でピタッとくっつく『ピタゴラスBASIC知育いっぱい!きほんボックス』
大迫さん:
『ピタゴラス』の魅力は、磁石のついた平面パーツをくっつけて、立体をつくれるところ。三角形や四角形の平面パーツを組み合わせて、立方体や三角錐などをつくれます。
かつては、折り紙がこうした遊びに使われていて、小さいころに折り紙で風船を作ったり、サイコロを作ったりしたことがある方もいるでしょう。最近はすぐれた知育玩具がたくさんあるので、それらを活用して、平面と立体という「かたち」遊びを広げていくのもおすすめです。
幼児期こそ、学校でやらないことを満喫しよう!
「小学校に入学するまでは、小学校でやらないことをとことんやってほしい」と大迫さん。鉛筆で字を書いたり、計算をしたりということは、入学後に十分やる機会があります。それよりも、身近にあるおもちゃや遊びを通じて、「さんすう」の実体験を積み上げていくことが何よりも大切なのだそうです。大迫さんのアドバイスを参考に、親子で一緒に楽しく「さんすう」遊びをしてみましょう!
取材・文 三東社
【プロフィール】
大迫ちあき
大手個別指導塾で中学受験算数の担当講師として勤務したのち、2015年より東京・恵比寿で未就学児から小学生低学年対象の「幼児さんすうスクール・SPICA®」を運営。公益財団法人・日本数学検定協会認定資格講座「幼児さんすうインストラクター養成講座」を立ち上げ、幼児期のさんすう指導法の確立及び指導者の育成に力を注いでいる。