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【感染力が強い! 子どもがかかりやすい夏の感染症〜手足口病/ヘルパンギーナ/アデノウイルス/RSウイルス】「小児科医ツカダ先生に聞く 子どもの病気・ケガ&ホームケア」

 子育てをされている保護者の皆さんは、子どもの成長とともに、実にさまざまな病気やケガがあることを実感しているのではないでしょうか。特に自分で症状が伝えられない小さなお子さんは、急に症状が現れたり、症状が長引いたりしたとき心配ですね。この連載では子どもの病気・ケガとホームケアについて、現役小児科医として多くの症例を見ている塚田こども医院院長の塚田次郎先生にわかりやすく教えていただきます。 

 今回は「子どもがかかりやすい夏の感染症」について取り上げます。暑くなるこれからの季節は、お出かけも増えていろいろな夏カゼをもらったり、うつしたりしやすい時季です。中でも、特に子どもがかかりやすい4つの感染症をご紹介します。

子どもがかかりやすい夏の感染症①

 <手足口病>

からだの広範囲に発疹ができる

 主に手のひら、足の裏、口の中にブツブツと発疹ができるため「手足口病」と呼ばれています。

<主な症状としては>
●   手のひら、足の裏、口の中にブツブツと発疹ができる
●   ひじやひざ、おしりなどにも発疹ができる
●   口の中の発疹は痛がることがある
●   熱はあっても微熱程度      
     などがあります。

 特に治療をする必要がなく、自然と治る場合がほとんどです。発熱したり、口内の痛みがあったりするときは薬が処方されます。

 ただし、まれにですが、ウイルスが脳や髄膜に入り込んで、けいれんや脳炎、髄膜炎などを起こすことがあります。高熱や強い頭痛や嘔吐を繰り返す、ぐったりとするなどの場合はすぐに受診しましょう。

手足口病になったときのホームケア

  • 口の中が痛いときは、しみない食べものや飲みものだけにしておきます。熱いもの、塩味や酸味の強いもの、かたいものは控えるといいでしょう。

  • お風呂は、熱がなく元気なら入ってもかまいません。ただし二次感染を防ぐため、タオルの共有は避けましょう。

子どもがかかりやすい夏の感染症②

 <ヘルパンギーナ>

高熱とのどの強い痛みが特徴

 大人は聞き慣れない病名かもしれませんが、乳幼児のあいだでは大変流行りやすい、夏カゼのひとつです。

<主な症状としては>
●   38〜40度の高熱が2〜3日続く
●   のどの痛み
●   のどの奥に水疱ができる  
     などがあります。

 特効薬はありませんので、症状を抑える治療をします。多くの症状がのどの痛みによるもので、食べられない、ひどいときは水分もとれない状態になります。熱や痛みを抑える解熱鎮痛剤で症状を緩和させつつ、脱水状態に気をつけることが大切です。手足口病と同じく、けいれんのほか、まれにですが髄膜炎や心筋炎を起こすことがあります。強い頭痛や嘔吐を繰り返す、ぐったりとするなどの場合はすぐに受診しましょう。

ヘルパンギーナになったときのホームケア

  • 水分を十分にとらせます。果汁はもちろん、ひどいときはスポーツドリンクもしみるので、痛みが強そうなら麦茶や水をおすすめします。1回分は少量でいいので、回数を多くとらせることが脱水を防ぐコツです。

  • のどの痛みが強いと食欲もなくなりますが、冷たくてのどごしのよいもの(ゼリーや冷ましたおかゆなど)を食べさせてみましょう。栄養は十分でなくても、少しずつ食べものをとれていれば大丈夫です。

  • 高熱が2〜3日続くので心配かと思いますが、解熱剤を使いすぎないよう医師の処方を守ってください。

  • 二次感染を防ぐため、家庭内での手洗いはしっかりとして、タオルの共有は避けましょう。

子どもがかかりやすい夏の感染症③

 <アデノウイルス感染症>

別名「プール熱」や「はやり目」とも

 アデノウイルスにより引き起こされる感染症ですが、このウイルスには多くの型があり、それにより現れる症状はさまざまです。

<主な症状としては>
●   38〜40度の高熱が4〜5日続き、のどが痛む(咽頭炎・扁桃炎)
●   目の充血や目やに(結膜炎)
●   下痢、吐き気、腹痛(胃腸炎)
     などがあります。

 結膜炎のみであれば「流行性角結膜炎」、いわゆる「はやり目」となり、結膜炎に加えて「咽頭・扁桃炎」の症状がある場合は「咽頭結膜熱」、いわゆる「プール熱」と呼ばれる状態となります。夏にプールを通して感染することがあるため「プール熱」と呼ばれますが、実際にはプール以外での感染が多くあります。結膜炎の場合は目薬、高熱には解熱剤など、症状に応じた薬が処方されます。

アデノウイルス感染症になったときのホームケア

 基本的にヘルパンギーナと同じホームケアで大丈夫です。

  • 水分を十分にとらせます。果汁はもちろん、ひどいときはスポーツドリンクもしみるので、痛みが強そうなら麦茶や水をおすすめします。1回分は少量でいいので、回数を多くとらせることが脱水を防ぐコツです。

  • のどの痛みが強いと食欲もなくなりますが、冷たくてのどごしのよいもの(ゼリーや冷ましたおかゆなど)を食べさせてみましょう。栄養は十分でなくても、少しずつ食べものをとれていれば大丈夫です。

  • 高熱が4〜5日続くので心配かと思いますが、解熱剤を使いすぎないよう医師の処方を守ってください。

  • 二次感染を防ぐため、家庭内での手洗いはしっかりとして、タオルの共有は避けましょう。
    ※流行性角結膜炎は感染の恐れがないと医師が認めるまで、咽頭結膜熱は主要症状が消えた後、2日を経過するまで登園または登校停止となっています。

子どもがかかりやすい夏の感染症④

<RSウイルス感染症>

近年では夏季から流行

 RSウイルスという、非常に感染力の強いウイルスによる呼吸器系の感染症です。9月ごろから初春までが流行時期のイメージでしたが、最近では初夏から流行し始めることがあります。

<主な症状としては>
●   発熱
●   鼻水
●   せき
●   ゼイゼイして呼吸が苦しくなる
     などがあります。

 2歳以上だと軽めの鼻カゼで済むことが多いのですが、1歳未満、とりわけ生後6ヵ月未満のお子さんや、心臓や肺に病気があるお子さんなどがかかると、重い症状になる傾向があります。ゼイゼイ、ヒューヒューと音がする、肩で息をしている、胸やおなかをペコペコさせて息をしている、などは呼吸が苦しいサインです。呼吸が苦しいとミルクや母乳が飲めない状態になることもあります。最初は軽いカゼに見えても状態が急に悪くなることがあるので、一度受診して診断されたのちもよく観察し、おかしいと思ったら再受診してください。休日や夜間の場合は救急受診が必要です。とりあえず相談するなら、こども医療電話(#8000)もあります。

RSウイルス感染症になったときのホームケア

  • 部屋が乾燥しないように十分加湿してください。

  • こまめに水分をとらせましょう。ミルクや母乳を飲んでいる場合は、1回に飲ませる量は少なくてよいので、何回かに分けてこまめに飲ませます。

  • 二次感染を防ぐため、家庭内での手洗いはしっかりとして、タオルの共有は避けましょう。

    原則として、症状はかかってから5〜7日でピークを越えますが、せきがおさまるまでには2〜3週間かかります。心配かと思いますが、2歳になるまでにほとんどのお子さんがかかるといわれる感染症です。大切なのはお子さんの状態の変化を見極めること。重症化する前に受診できるよう、かかりつけ医や救急医療機関の情報を確認しておきましょう。

<ツカダ先生 今月のひとこと>

【プロフィール】
塚田次郎(塚田こども医院 院長)
1981年自治医科大学卒業、同年医師国家試験合格。新潟市民病院にて臨床研修、新潟県立坂町病院小児科勤務を経て、1990年新潟県上越市栄町にて塚田こども医院を開設。日本小児科学会認定医。

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