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飼育していた昆虫が死んだらどうしたらいい? 昆虫採集YouTuberむし岡だいきさんが解説

夏休みに捕まえた昆虫たちを、お家で飼育している人もいるかと思います。
しかし、昆虫たちの命は他の生き物に比べて短いものが多く、夏が終わると死んでしまうものも少なくありません。今回は昆虫が死んでしまった際、どうすればいいか? ということについてお話ししていきます。



昆虫の寿命は?

 昆虫の寿命は種類によってさまざまです。カブトムシは秋に卵から幼虫が産まれ、次の年の春から夏にかけて成虫になります。しかし成虫になってからの寿命は大変短く、野外ではそのほとんどが8月中に死んでしまします。
 
 おうちで大切に飼育しても、10月や11月頃にはほとんどが死んでしまいます。カマキリも春に卵から生まれ、夏頃に成虫になり、11月頃には死んでしまいます。
 
 このように日本の昆虫の多くは、冬が来る前に死んでしまい、卵や幼虫の状態で冬を越える種類が多いです。どれだけ大切に飼育しても、昆虫たちとの別れはきてしまいます。
 
 それでは死んでしまった昆虫たちはどのようにしてあげればよいのでしょうか?

昆虫が死んだ際の適切な対処方法

 基本的に昆虫が死んでしまった場合は「燃えるゴミに捨てる」のが適切です。
 
 お庭の地面に埋めるという方法もありますが、実はあまり推奨できるものではありません。捨てるというのはとても冷酷な方法に感じますが、きちんと理由があります。
 
 その理由は、昆虫の死骸についた寄生虫や病原菌の流布を防ぐためです。近年、外国産の昆虫たちを専門店やホームセンターなどで簡単に購入できるようになりました。それらの中には、海外で採集してきた野生の個体を販売しているものも多いです。しかしそれらの生体には、ダニなどが付着していることが非常に多く、中には病原菌などに感染している個体などもいる可能性があります。
 
 そういった昆虫が死んでしまい、それを野外の土に埋めてしまうと、付着していた寄生虫や病原菌は野外に放たれてしまいます。それらが日本の昆虫たちに感染し、日本の生態系に大きな影響を与えてしまう可能性があります。実際に外国のクワガタに付着しているダニの中には、日本のクワガタを弱らせて死に至らせるものもいるようです。
 
 また、海外の昆虫でなくても、専門店で販売されている腐葉土やケースに、すでにそういうダニや菌がついているケースも近年では少なくありません。そのため海外の昆虫でなかったとしても、一度飼育した昆虫が死んでしまった場合は、燃えるゴミで捨ててしまうことが適切と言えます。

絶対にしてはいけないことはある?

 SNSでもよく見かける事例ですが、昆虫の死骸だけではなく、飼育していたケースの中の昆虫マット、木、ゼリーなどを公園に捨てるマナーの悪い方がいます。
 
 もちろんこういったものの中にも、ダニや病原菌が含まれている可能性も高いです。また、昆虫マットや木の中に、卵や幼虫が含まれているケースもあり、知らずに外国産の昆虫を生きたまま野外に放ってしまっていることもあります。近年、ペットとして入荷された外国産のカブトムシ・クワガタが野外で発見されるケースも増えてきています。中には定着が危惧されている種類もおり、特にヒラタクワガタのなかまなどは、在来のヒラタクワガタとの交雑なども懸念されています。
 
 不要になった昆虫マットや木なども、燃えるゴミとして捨ててしまいましょう。

昆虫葬を利用する

 上記のような正しい理由があったとしても、燃えるゴミで捨てるのは気が引けるという方もいらっしゃるかもしれません。
 
 実は死んでしまった昆虫たちを供養してくれる「昆虫葬」というものを行なってくれる霊園施設もあります。近年は利用者も増えてきているとのことなので、どうしても丁寧に供養してあげたいという方は、こういったものを利用するのもよいかと思います。

捨てる以外の方法はある?

 家で常に百匹以上の昆虫を飼育している筆者ですが、昆虫が死んだ際、そのまま燃えるゴミに捨てることは実は少ないです。主に2つの方法で昆虫の死骸を活かすようにしています。
 
 ひとつは標本にすることです。
 
 昆虫の死骸を標本にして残すということは、もちろんその昆虫を採集して飼育した思い出を残しておけるという面もありますが、「この時代にこの場所でこんな昆虫が採集できた」という学術的にも大変貴重なデータになりうることがあります。実際に採集家の自宅や町の施設などで長年保管されていた標本が、当時の生態系を詳しく解明する手がかりになったケースも多数あります。

 もうひとつの方法は、他の昆虫の餌にしてしまうということです。
 
 昆虫の中には、死んだ昆虫を餌にするものがいます。身近なものだと、アリなどが、死んだ昆虫に群がっているのを見たことがある方も多いでしょう。死骸を分解して土に返してくれる昆虫たちが自然界にいるからこそ、公園や森が他の生き物の死骸で溢れかえらないようになっています。
 
 筆者の自宅ではアリだけではなく、バッタのなかまやゴキブリたちが、そういった昆虫の死骸を喜んで食べてくれるので、死んでしまった昆虫は、新しい命たちの栄養として利用させてもらっていることもあります。

まとめ

 今回の記事では「昆虫が死んでしまったらどうする?」ということについてお話ししていきました。
 
 一番適切な方法は「燃えるゴミで捨てる」ということですが、昆虫葬を利用したり、標本や他の生き物の餌として利用したりする方法もあります。昆虫飼育は気軽に始められるものですが、死んでしまったらどうするか? ということを考えてから飼育することをおすすめします。
 
写真:PIXTA

【著者プロフィール】
昆虫採集YouTuber 。チャンネル登録22万人 、一番好きな昆虫はコロギス。



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