
『いそがしいよる』を紹介! <聞かせ屋。けいたろうのおやこ絵本さんぽ>
ヨメルバ編集部がセレクトした絵本を、聞かせ屋。けいたろうさんといっしょに掘り下げます。第八回は、子どもの心に寄りそう絵本『いそがしいよる』です。



今日は「ばばばあちゃんシリーズ」から『いそがしいよる』です。今回もシリーズでしたね。シリーズの1作目です。

シリーズが出てるっていうことは、1冊目がおもしろいということなので、絵本を選ぶのに迷ったときは、“シリーズもの”っていうのは手が出しやすいと思います。特にシリーズ序盤のものは、おもしろさが凝縮されていると思うので、おすすめですね。

今回編集部から提案したのは「ばばばあちゃんシリーズからどれか」というざっくりした提案だったんですよね。その中から、けいたろうさんが『いそがしいよる』を選ばれた理由は何でしょうか。

『いそがしいよる』は、ばばばあちゃんらしさがよく出てるなと思ったのが一番の理由ですね。あとは、単純に自分もばばばあちゃんのように、思い立ったらやりそうだなって共感したところもあります。

今回のお話は、ばばばあちゃんが夜空を見上げると星がすごくきれいで、素敵な夜だから外で寝ようって思いついたところからスタートしています。外で寝るために、ばばばあちゃんが家の家具一切合切を外に運び出しちゃうというお話ですが、けいたろうさんも家具を出しそうですか(笑)?

ぼくもやりそう(笑)。ぼくは楽しいこととか気分を変えるとか、レジャー気分っていうのが好きなので(笑)。

ヨ:なるほど(笑)。この絵本をお子さんと一緒に読まれたりとか保育園で読まれたりとかしますか。

家で寝る前に読んでいて。ひとつ家具を家から出すと、そのあとどんどん家具を出す展開がおもしろいみたいです。やっぱり、エスカレートするところがおもしろいんですね。
この絵本のストーリーを最初から追っていくと、ばばばあちゃんが子どものように感性が豊かだなって思って。ばばばあちゃんのセリフで「まるで わたしが そらを うごかしているみたいだね」というところも、すごく感性豊かだなと思って。あとは、家の中からベッドを引きずり出してきたところで、子どもは「えー」って言いながらも、いいアイディアだと思うはずなんですよね。

キャンプみたいなね。

そう、すごく子どもっぽい発想で。だからおもしろいなと思うんです。このシリーズ。

星がきれいだから椅子を外に持ち出して。外で寝ちゃおうと思いついて、ベッドと毛布と枕を持ち出すまではいいんですけど、そのあとにテーブルやらレンジやら冷蔵庫など、持ってくる品数がどんどん増えてくんですよね。

そうですね。エスカレートの仕方がわかりやすい。
わかりやすいっていうのは、子どもに優しい本だなと思うんですよね。これ園庭でも同じことができるんですよ。多分先生にダメって言われるんですけど(笑)。ダメって言われそうだけど、やってみたいことをやってくれる、かわいい大人がばばばあちゃんなんじゃないかなと思って。テラスで給食とかお弁当とかそんなこともおもしろいですし、そういうのを先生としては認めてあげたいんだけど、どうしてもいろんな事情があって認められなかったりしますよね。それを絵本の中でやってくれるから、子どもとしては爽快な部分もあるんじゃないかと。

確かにそうですね。

あと、家の荷物を全部出し終わったところで、雨が降ってきたら大変じゃないかってばばばあちゃんが考えるんです。子どももそう思いそうですよね。ばばばあちゃんが子どもと同じ歩幅で歩いてる感じがして、改めて見ていて、子どもに寄り添う絵本ってこういうものかって思ったんです。「寄り添う」っていうと、感動的な話とかいい話をイメージしがちなんですけど、子どもの想像に寄り添うっていう感じですよね。子どもを置いていかない感じ。

ばばばあちゃんの舞台に一緒に連れていってあげる。

そういうふうに思います。

それはばばばあちゃんの発想からですか?

そうですね。発想がそうだし、ばばばあちゃんの感性もそうだし。
おばあちゃんの風貌ではあるけど、子どもみたい。それがいいんじゃないかな。本当に楽しいことを提案してくれるし、気づきもくれるし。

確かに雨が降ってきたら大変じゃないかって言って、やっぱり家に戻ろうって、おとなだったら言いたくなっちゃうんだけど、そこのテントの中で寝ることを楽しんでいるっていうのが、子どもっぽいですよね。

そうですね。それで、寝る準備をしていたら夜が明てしまいましたっていうオチ。

ばばばあちゃんが子どもと同じ考え方で、楽しい方向に素直に歩いていくっていう。それに尽きるかなと思いました。内容もシンプルだし、すごくわかりやすいですね。

この絵本は誰にすすめますか?

いたずらっ子でもいいなと思いますし、やんちゃな子どもたちや、いろいろやりたがりの子どもたちに、こんな大人がいてもいいじゃんみたいなところで、読んで一緒に笑い合いたいですよね。

【書籍情報】

『いそがしいよる』
作・絵:さとう わきこ
【定価】1,100円(本体1,000円+税)
【発売日】1981年7月
【サイズ】20cm×27cm
【ISBN】978-4-8340-0299-7
※第一、二回は、「ヨメルバ」復旧後に読めます。