ヨシタケシンスケ初の全編モノクロ絵本『そういうゲーム』ができるまで
大人気絵本作家、ヨシタケシンスケ氏。今回は、初めての全編モノクロ絵本『そういうゲーム』刊行を記念して、編集担当に本書の企画のきっかけやこだわりなど、制作秘話を聞いてきました!
◆「考え方のヒント集」が1冊に
ーー『そういうゲーム』とは、どのようなテーマの絵本なのでしょうか?
前作『メメンとモリ』に続き、結果として「人はどうやって生きていったらいいの」をテーマにした本になったのかなと思っています。ヨシタケさんは発想絵本やユーモア絵本など、子どもを対象にしたすばらしい絵本をたくさん出版されていますが、私は以前よりヨシタケさんの裏側、「じゃない部分」が絵本になったらいいなと思っていました。そういう側面を、割とストレートに出していただいたらできあがったのが『そういうゲーム』です。
毎日ものすごくしんどい、生きているのがイヤだ、とまではいかないけど「このままあと何十年も生きるのか…(ため息)」と思っている方に、自分にとって楽になる「考え方のヒント集」というくらいの気持ちで読んでいただけたらいいなと思います。
◆ずっとやりたかったモノクロ絵本
ーーヨシタケシンスケ氏初の【全編モノクロ絵本】とのことですが、なぜモノクロになったのでしょうか?
「じゃない部分」を本にしたい、と思ったときにヨシタケさんとイメージが一致したのがエドワード・ゴーリーとM.B.ゴフスタインという絵本作家でした。特にゴーリーのブラックユーモアはヨシタケさんと通じるものがあると勝手に思って推していたら願いがかなったという感じです。
実は『そういうゲーム』のアイデアは5年前にいただいていたのですが、いろいろあって形になっていませんでした。『メメンとモリ』の次回作をご依頼したら、『そういうゲーム』をやるならこのタイミング、と仕上げてくださったのです。ラフを拝見したとき「もうこのテーマはゴーリーしかないでしょ」とすぐにモノクロに決定しました。
余談ですが、ペンが入ったときはその「むき出し感」みたいなのにクラクラし、黒い塗りつぶし部分のバランスとタッチにシビれました!!
◆迷走したカバーデザイン
ーーカバー制作時の裏話などがあれば教えてください。
大人っぽいテーマで、カバーイラストも大人、しかもこちらを向いていない構図という今までのヨシタケ作品とまったく違うので、最初は私も悩み、イラストを子どもや赤ちゃんにしたり、せめて色はピンクを提案したりと迷走しました。でも相談させていただくうちに、内容と一番合っていて、想像力をかき立てるということで最初のイラストに決定しました。
書体や色は『メメンとモリ』でもお世話になったボラーレの関さん(@seki_yoshi)にたくさん候補を考えていただき、色は関さんが「こんなのもありますけど」とそっと最後に出してくださったものをヨシタケさんが気に入ってくださって決まりました。
◆最初のラフにはなかった「そういうゲーム」
ーー印象的な「そういうゲーム」は何でしょうか?
何度読み返しても新しい発見があるし、読むときによって響くページが違うので難しいのですが、中でも6~7、42~43、54~55ページが印象に残っています。
特に54~55ページは大好きなページです。このページは最初のラフにはありませんでした。元のラフがほかのページとちょっと似ていたので別のものをとお願いした打ち合わせのときに、雑談で知人の話をしたら、次の日にこのイラストとテキストをいただいて…胸がいっぱいになりました。
ヨシタケシンスケ氏の「考え方のヒント」がたくさんつまった『そういうゲーム』。
どのような物語になったのかは、ぜひお手に取ってお確かめください!