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コスパのいい鑑賞がしたいなら

皆さん、お久しぶりです!
一ヶ月のお休みをいただいた後まさかのコロナウィルスに感染してしまい前回から二ヶ月近く空いてしまいました。にも関わらず、今回も読んでくださっている方ありがとうございます!!そして今回から読んでくださっている方、ようこそ「欲、鑑賞しよう」へ!!
体調も万全になったのでこれからも皆様にとって興味深く、楽しめる内容をお送りできるよう頑張ります!!

前回はジャンルに構わず縦横無尽に鑑賞し、それらを自分なりに混ぜたり引いたりして新しい考え方を生み出す錬金術的鑑賞についてお話ししました。そして最後に鑑賞におけるコスパについて少し触れたところで終わっていましたね。
今回はこの鑑賞におけるコスパについてお話ししていこうと思います。

鑑賞とコスパ・タイパ

社会的に軽視される鑑賞という娯楽

「コスパ」「タイパ」…なんだかここ5〜6年で急激に聞く回数が増えたような気がします。私は元来、ぼーーーーっとしたところのある人間なのでそこまでコスパもタイパも気にしたことがありませんが、仕事面以外の生活全般においても効率よく生きることを求める人には結構出会います。
効率重視の生活をする人にとって鑑賞は娯楽の一つとしてさして重要視されないようです。
これは個々人のみに言えることではなく社会的にも言えることです。コロナ禍で外出制限がかかり始めた時、真っ先に「不要不急」の外出先として演劇の劇場や映画館、美術館、ライブハウスが対象にされました。
ウィルスの感染率を効率的に下げるためにやむ負えない措置であった事は理解できます。つい先日コロナにかかった身なのでこの苦しみが何万人にも広がってしまったら大変!!患者さんも医療従事者の方達も辛い!!と痛感しています。
私がひっかかっているのは娯楽が「不要不急」と表現されていた点です。
あれ?コスパの話は?と思った方。なんとかつながるのでお待ちください!笑
謎のウィルスの蔓延によって生きるか死ぬかの世界において娯楽は「不要不急」のものでしょうか?感染率をさげ患者の回復を早めることに娯楽は「不要不急」??

明日を生きるための美的快楽

リチャード・シュスターマンという哲学者がいます。彼は『身体感性と文化の哲学』(勁草書房/2019)という著書の中で芸術作品などの鑑賞から得られる快楽は早く強力に活動に駆り立て、持続していく生(人生と捉えて良いでしょう)に可能性を与えうるものであるとしています。この時の快楽をシュスターマンは「美的快楽」と呼び、ジャグジー付きのお風呂に入って気持ちいい〜!とか、ちょっとお高めのコーヒーを飲んでうま〜!と感じるような快楽とは一線を画したものとして表現しています。
では「美的快楽」とは具体的にどのようなものなのでしょう?
シュスターマンの定義する「美的快楽」は「激しいがしかし十分に制御された感情の経験を含み、それだけでなく、意味深さとコミュニケーションに対する私たちの要求を満たす意味の表現の満足を含む」もの…だそうです。
含むものめっちゃある!笑って私は思ってしまいました。笑
まぁものすごーく簡潔に言うと「自分を強く突き動かすくらいの強さはあるけどどう行動に移すかは自分でコントロールできて、かつ興味深くて一人だけでは完結できない面白さ」といったところでしょうか。
うーん…そんなんに簡潔じゃなかった。笑
気を取り直して!これらから何が言いたいかと言うと、娯楽から得られる快楽は、人間が死を迎えるまでの人生を楽しんで生き続ける種となり、しかもこの快楽は人と人を繋げさらなる快楽を知ることでまた人生が面白みを増していく…という人間が生きるために行動するのに重要な感覚である!と言うことです。
ここでコロナ禍での「不要不急」と言う表現に話を戻します。
コロナ禍ではウィルスが拡散されるのを防ぐために「行動」自体を制限していました。
「快楽」はその快感を得るために速く強力に人を突き動かします。「娯楽から得られる快楽」もただの「快楽」と同じように人を突き動かすだけのものであったなら「不要不急」の外出先に指定する事でウィルスの拡散がかなり効率よく防げるでしょう。しかし、先述の通り「娯楽から得られる快楽」=「美的快楽」は行動を自分でコントロールできるものであり、人生をより面白く生きるために必要な感覚でした。未知のウィルスの脅威に怯え外出すらできない閉塞的な環境下でも生きることに可能性を見出すためには娯楽は「不要不急」のものではない!と高らかに言いたい!!と筆の乗ってきた私は思います。笑
実際、直接観にいくことは叶わなくても生配信が可能になったものはたくさんありました。私はコロナ禍中に友人に宝塚の生配信を見せてもらい、その後実際に東京の大劇場で舞台を鑑賞しました。生配信ではPCの画面以上の大きさでは見れないものの煌びやかな衣装で朗々と歌う役者さんたちに感動しきりでした!体感では自分の目が少女漫画の主人公のようにでっかくキラキラしていました。笑
コロナ禍を無事生き抜いて劇場で実際に見よう!と友人と約束し無事その後に生でみることも叶いました。
このように「美的快楽」は明日も見えないようなくらい環境下に「明日も生きていたい!」と思わせてくれる灯火になります。
しかも嬉しいことに「一筋の灯火」にはなりません。面白いと思えたものの数だけ灯火の数は増えていきます。宝塚に限らず、BTSや星野源の楽曲も入江亜季や和山やまの漫画だって灯火になりました。野田秀樹の戯曲集を読んで決してDVD化されない彼の作品を生で見にいきたいという思いも灯火でした。

それでもコスパは重視したいなら…

ここでやっとコスパの話に戻りましょうか。長かったですねーーー泣
コスパ重視、タイパ重視の方を見ていると「どれだけ少ないエネルギーで大きい利益が得られるか」と言うゲームをこなすことに快楽を感じているように見えます。
あくまで非コスパ・タイパ重視の私から見た感覚ですが「これは…面白い…のか?」というくらい必死にコスパ・タイパゲームに興じている方も見受けられます。
そしてこのような人たちは共通して娯楽をエネルギーを注ぐに値しない無駄なものといった感覚で捉えているように見えます。
以前、何気なく「あの企画展面白かったよ!もう行った?」と知人に聞いたら

「美術館て行っても速攻で出てきちゃうから時間の無駄なんで言ってないです」

と返ってきた時は心の中で「こーのコスパゲーマーめ!!」と思ったっものです。笑
娯楽といえどなんのエネルギーも注ぐ気がなければその面白みも掴めません。
あえてコスパ・タイパ重視でどうしても生きていきたいという方には五感全てをフル活用する舞台やライブの鑑賞をお勧めします。
舞台では舞台上を縦横無尽に動き回る役者さんたちやさまざまに変化する音響やライティングを追うだけでもエネルギーの出し惜しみをする余裕などありません。ライブならば屋外でのライブをおすすめします。刻一刻と変化する気温や天候、明るさ、周りにいるオーディエンスの声や体温。それらとともに見て聞く音楽は強く記憶に刻まれ自分の人生へも多大な影響を与えてくれるでしょう。
様々な体感が同時に感じることができる鑑賞は一度の鑑賞で多大な影響力を持つのでコスパ最強です。
詳しくは次回になってしまいますが、私自身の経験として五感をフルに活用して鑑賞したものは創造的な活動に多大な影響を与えてくれています。創造的な活動というのは何も私のように絵を描くといった特殊な行為だけでなく普段のコミュニケーションや生活を楽しむ行為全般を指します。創造的な活動=生きることを楽しむ活動と行って良いでしょう。

今回はなんだか社会派っぽい内容になりましたね。
ちょっと堅苦しかったかもしれません。
次回は私の鑑賞体験をもとに五感と鑑賞の関係についてお送りできたらと思います。
また、お会いできるのを楽しみにしています。

コロナには気をつけてくださいね!本当に!!笑
ではまた一ヶ月後〜!!!




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