サウンド制作会社ディレクターのプレイリスト #001 歌ものギターソロ名演
ご覧いただきありがとうございます。ノイジークロークのディレクター工藤です。
今回からプレイリストのシェアをスタートということでどんなテーマでやっていくか考えていたのですが、前回のご挨拶にもあった通り、ギターを中学で始めたのが私の音楽の原体験だったこともあり、まずはギターにまつわるもので始めてみたいと思います。
さてギター関連といえば(少し前ですが)一時Twitterトレンドにも上がっていた"ギターソロ"の話題がいまだに印象に残っています。
多くの著名アーティストも反応していた話題でしたが、ざっくりどのようなことかというと
という話ですね。スマホ片手に画面をタッチすれば簡単に曲送りができるわけで、何かと忙しい現代においては飛ばしてみたくなる気持ちはわからないでもない…のですが、洋邦問わず名曲のギターソロを沢山コピーしてきた私のような人間にとっては「ああ飛ばすなんて勿体無い…!」という気持ちが最終的に勝ってしまうのが正直なところ。
ということで今回は「歌もの楽曲における名ギターソロ」にスポットを当てたいと思います(インスト曲は対象外としますのでポップス〜ロック系が多いでしょうか)。
歌との対比や構築美が素晴らしい…といった視点で楽しんでいただけそうな10曲を挙げてみます。音楽やギターの用語を使用したお話も多いですが、それがわからなくても楽曲の素晴らしさを感じていただければこれに勝るものはありません…!
また聴取のしやすさを考慮し主にYouTube(リンク先で楽曲の権利表記がされているもの)を使用していこうと思います。
文章中の人物名など、基本的に敬称略とさせていただく点もご了承ください。
それでは聴いていきましょう。
1.「Time Heals」Todd Rundgren
ギターソロ:トッド・ラングレン(1:52〜)
今なお現役バリバリのレジェンド、トッド・ラングレンは作詞・作曲・アレンジ・歌唱のみならず多重録音の草分け的存在として様々な楽器演奏、エンジニアリングまでもこなすことで知られますがギターの名手でもあります。デビューから50年を超える彼のキャリアの中でも、'81年リリース『Healing』に収録の本楽曲では20秒に満たない程度ながら起承転結が見事なソロを楽しめます。9thのロングトーン(コードAmに対しシ)を交えたクールかつ流麗な導入部とエレキギターならではのブルージーなニュアンスに富んだ中後半の対比も流石!
2.「That's Really Super, Supergirl」XTC
ギターソロ:デイヴ・グレゴリー(2:09〜)
続いてはXTCの8thアルバム『Skylarking』より。
前述のトッド・ラングレンのプロデュースでも知られるヒット作ですが、この曲でのギターソロは当時のXTCメンバーであるデイヴ・グレゴリーによるもので、トッド所有のGibson SG(サイケデリックなペイントが施され、前オーナーはエリック・クラプトンということでも非常に有名なギター)を使用しています。
リフレインによる導入部 → 連続した4度音程も使用のクールな上昇 → 歌メロをさりげなく引用したフレーズ → コードで着地…からの歌への繋ぎ
と、こちらも構成や起伏が見事ですね…!
3.「Nothin' You Can Do About It」AIRPLAY
ギターソロ:ジェイ・グレイドン(2:37〜)
AORの聖典とも評される'80年作より。本作リリース後に世界的なヒットメーカーの道を歩むデヴィッド・フォスターと、緻密なスタジオワークで知られたジェイ・グレイドンによるスーパーユニット = AIRPLAYによる唯一のアルバムですが、全編通じて凄まじいエネルギーと美しさを携えるギターには特に耳を奪われます。中でも上質なブラスアレンジとの呼応(時々ユニゾン)もクールなこちらのソロはロングトーンやグリッサンドのニュアンスも含めジェイ・グレイドンの天賦の才を感じます。
4.「Hold the Line」TOTO
ギターソロ:スティーヴ・ルカサー(1:49〜)
「Africa」「Rosanna」など多くのヒット曲でも知られる大御所バンド、TOTOの記念すべき1stアルバム('78年)より。売れっ子スタジオミュージシャンの集合体だったこともあり、全編で確かなテクニックとセンスを味わえますが本楽曲をはじめスティーヴ・ルカサーによるパワフルなギターが他バンドと一線を画すことに寄与したのは確かでしょう。
深めのビブラートの多用、速弾きによる豪快な音の詰め込み(←個人的には少し強引さを感じるのもののレイドバックしたソウル〜R&Bの趣もある本楽曲においてはそれがむしろポイントが高い気がします)、そして高めの音域でのハモリ*でキッチリ締めるという、ワイルドかつクレバーな名演です。
5.「When It's Love」Van Halen
ギターソロ:エディ・ヴァン・ヘイレン(2:54〜)
前述のスティーヴ・ルカサーの盟友でもあったエディ・ヴァン・ヘイレン。
圧倒的なテクニックとサウンドで世界を魅了したギターの革命児エディの演奏といえば「Eruption」「Jump」など彼の代名詞とも言えるライトハンド奏法を使用した派手なものが浮かぶ方は多いと思いますが、この楽曲では(本人が大きなインフルーエンスを公言する)エリック・クラプトンばりの歌心あふれるソロを楽しむことができます。途中から甘めのトーンに切り替えているのも実に効果的ですね。
そういえばソロ入ってすぐの休符(2:56辺り)で髪をシャカシャカ掻いているのがとてもお茶目だなと思ったのですが、なんとライブでも再現していたのを最近知りまして驚きました。彼ならではのこだわりだったのでしょうか。
6.「Still My Bleeding Heart」Vai
ギターソロ:スティーヴ・ヴァイ(2:52〜)
特にエディ・ヴァン・ヘイレンの登場以降、隆盛を極めたハードロック〜ヘヴィ・メタルシーンのギタリストの中でも際立った才能を発揮したスティーヴ・ヴァイ。
'93年発表の本作はヴァイに加えデヴィン・タウンゼンド(ヴォーカル)、T.M.スティーブンス(ベース)、テリー・ボジオ(ドラム)という超強力メンバーによるバンドで制作され、特に本楽曲ソロはクールな前半と、エスニックな響きを伴ったスリリングな後半の対比が見事です。ロック界屈指の難解な楽曲群で知られるフランク・ザッパのもとで演奏のみならず採譜も務め、音楽理論にも精通した彼ならではの知性が光る名演ではないでしょうか。
7.「Under a Glass Moon」Dream Theater
ギターソロ:ジョン・ペトルーシ(4:37〜)
現代の超絶技巧バンドの代名詞ともいえるドリーム・シアター。彼らの名を一躍世に知らしめた、プログレ・ハード(〜プログレ・メタル)の歴史的名盤とも評される2ndアルバムに収録されたこちらの楽曲では、コンテンポラリーなテクニックの数々を詰め込んだ、まさに玉手箱さながらのソロが楽しめます。
どういったテクニックが使われているかざっくり列挙してみます↓
ということで約1分に渡る比較的長尺なソロとはいえ、これだけの要素がカッチリと詰まった演奏なので、特にギター弾きの方にとっては自身のレベルを把握するのにも良さそう?でしょうか。今回ご紹介するソロの中でも最も演奏難度が高いのではと思っています。
ちなみに本作リリース時点('92年)でギターのジョン・ペトルーシは若干24歳…にしてこの完成度の高さにはあらためて驚愕せざるを得ません。
8.荒井由実「卒業写真」
ギターソロ:鈴木茂(1:39〜)
わりと音数多めのスリリングなものが続きましたので少し落ち着けるものを。
デビュー50周年を迎えたユーミン(おめでとうございます!)の楽曲の中でも、もはや説明不要ともいえるナンバーですが、楽曲の世界観により添ったギターソロはまさに珠玉の名演。歪んだサウンドだけではなくソフトなニュアンスを出せるのも(エレキ)ギターの魅力ですが、それを如実に証明したのがこちらではないでしょうか。
ワウ・ペダルを併用しているかと思いますが、トーンの絶妙なコントロールはまさに鈴木氏の職人芸…!ダブルストップによるオブリや後奏も含め素晴らしいですね。
9.「Nevermore」U.K.
ギターソロ:アラン・ホールズワース(3:04〜)
唯一無二の音楽性と超絶技巧で魅了した孤高の天才ギタリスト=アラン・ホールズワース(2017年逝去)。彼の歌もの名演といえば本作『U.K.』1曲目「In The Dead Of Night」でのソロがよく知られるところですが、イントロでの美麗なアコギ、エディ・ジョブソン(キーボード)との白熱のインタープレイも含め実に見事なこちらの楽曲を個人的には推したいです。ロック史屈指のテクニシャンが揃った第1期U.K.においても、この曲にいたっては演奏難度の高さゆえか(?)ライブで演奏されることがほとんど無かったようです(そもそも活動期間が短かったというのはありますが)。
10.「海を渡る橋」冨田ラボ
ギターソロ:冨田恵一(2:40〜)
ラストを飾るのはキリンジやMISIA「Everything」等のプロデューサーとしても知られる冨田恵一氏のソロプロジェクト、冨田ラボの1stアルバムより。氏が影響を公言するスティーリー・ダン(以下SD)を色濃く感じる楽曲ですが、ブルージーなオブリ〜ソロ前半はラリー・カールトン、またソロ後半のレガート具合は同じくSDで活躍したデニー・ダイアスのタッチを想起しました(特にSD「Aja」「Your Gold Teeth II」でのソロと聴き比べてみると面白いかもしれません)。またソロ締めの6音(ソラ/レミ/ラシ)は実に渋いアプローチ…と思いつつこれ以上ないくらいに楽曲の世界観が凝縮されたものではないかと聴くたびに驚愕します。
あとがき
いかがでしたでしょうか…?
登場アーティスト同士の繋がりや楽曲の流れもある程度考慮してご紹介してみた次第です…!(私自身は特に今回のような、アーティスト同士の繋がりを色々調べて聴取対象を拡大してきたタイプのリスナーです)
まだまだご紹介したい名演はたくさんあるのですが、それはまたの機会にさせていただこうと思います。
不定期での更新になるかと思うのですが、次回更新をお待ちください♪