絵本の蔵書(その5)「オフェリアと影の一座」「ミリー」他
今回の1冊目は、映画『ネバーエンディング・ストーリー』の原作で有名な『はてしない物語』の作者ミヒャエル・エンデの作品。
…劇場の舞台のかげでプロンプターの仕事に一生をささげたオフェリアさんは,ふとしたことから影たちをひきつれて巡業に出かけます.なにしろ古今東西の名作のセリフは,お手のもの.幻想的な美しい絵本.(岩波書店)
「オフェリアと影の一座」をようやくきちんと読みました。短いですが、とても凝ったお話でした。このラストは何を意味するのか。自分の人生について少し考えたくなります。
賢くて何でも知っているアナグマは、いつもみんなから頼りにされ慕われていました。でも、秋の終わり、年取ったアナグマは自分の死を悟ります。そして、ある夜、長いトンネルを浮き上がるように走る夢を見ながら死にました。「長いトンネルのむこうに行くよ、さようなら アナグマより」という手紙を残して――。かけがえのない友だちを失い、残された仲間たちは悲しみでいっぱいです。みんな、どうしていいかわかりませんでした。
「わすれられないおくりもの」のテーマは、以前ご紹介した湯本香樹実の「くまとやまねこ」という絵本に近いです。親しい人が亡くなると辛いものです。しかしその悲しみは時間が癒してくれます。そして思い出は消えることがありません。だからいつまでもくよくよしていないで、元気に楽しく生きるのです。
村にいくさが近づいたので、「3日たったらもどっておいで……。」と言って母親は娘を森の奥深く逃します。W・グリムがミリーという少女にあてた手紙に添えられたこの物語は、母と娘の永遠の愛を語っています。昔の宗教観ではハッピーエンドなのかもしれませんが、現代の価値観で考えると不幸なエンディングであるように思います。
絵を担当しているモーリス・センダックは、映画化もされた『かいじゅうたちのいるところ』が有名です。
「きかんしゃトーマス」を想起させますが、全く別のものです。トーマスのすぐ後に書かれているのでインスパイアされた(パクった)感じが無きにしも非ずですが、絵本「小さな乗り物シリーズ」の中の1冊目。いろいろな車両を擬人化して、子供と大人の関係性を寓話にしているようです。子供には少しくらいの冒険心は必要だし、大人はきちんと叱ることも大事ですが、褒めることも必要です。どれか一つだけではダメ。グレアム・グリーンは、映画化が有名な『第三の男』など大人のサスペンスを描いた小説家です。
今から100年以上前、アメリカのニューヨーク州ハドソンからそれほど遠くない山あいの地方に、かごをつくって生計をたてる人たちがいました。じょうぶで美しいかごをつくるための技術としずかな情熱は、長い間、父から子へ、こんなふうに伝えられていたのです。木の声をきき、風の歌を編む、かごつくり職人の「こころ」を描いた絵本。
バーバラ・クーニー、最後の作品。
たぶんどこの国にもある人の知恵が生み出した物作りの確かさと、新しい物や技術しか信じない都会人の大衆心理。本当に大事な物は忘れられて、浮ついた見た目だけの物ばかりがいつも持てはやされるのです。
この記事は、終了した「クックパッドブログ」で以前連載していた(所有している)絵本の紹介です。最終的には103冊ありました。(その20)まで続きます。古い名作絵本は、図書館に行けばたぶん見つかります。