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絵本の蔵書(その12)「おちゃのじかんにきたとら」他

 とてもシンプルな一冊ですが、ちょっと気に入っている絵本です。

おちゃのじかんにきたとら 
作・絵:ジュディス・カー 訳:晴海 耕平 (童話館出版)

 ソフィーとお母さんが、お茶の時間にしようとこしをおろした、ちょうどその時、玄関のベルがなりました。いったい誰かと思ったら、なんと、大きなトラだったのです。トラは、お茶のごちそうになろうとやってきたのでした。でも、とらは大きいし、おなかをすかせていたので、テーブルの上のサンドイッチやパン、ビスケット、ケーキだけでなく、家にある食べ物をすべてをたいらげてしまい……。(童話館出版)

 人助けというのは見返りを求めてするものではありません。だから私は積極的にはしません。自分が無理をしてやるのは意味がないと思うからです。物質的にも精神的にも余裕があって、そこに偶然助けたい人が現れた時に迷わず救いの手を差し伸べれば良いのではないかと考えます。また、子供のように損得を考えない誠意だけが、本当の人助けをできるのだと思います。
 この絵本に登場する“とら”とはそういう存在ではないでしょうか。


ナイトシミー 元気になる魔法
絵:アンソニー・ブラウン 文:グウェン・ストラウ
訳:灰島かり (平凡社)

 人とのつながりを避け、自分だけの世界にひきこもっている少年エリック。でも、ある日、ほんの小さなできごとをきっかけに、心の扉が少しずつ、開きはじめます。だれかと心がつながっているって、幸せなことなんだ。生きるって本当は楽しくてすてきなことなんだ。イギリスの人気作家アンソニー・ブラウンが魅力的な絵で生き生きと伝えてくれます。(平凡社)

 私はコミュ障…かも知れないですね。この本の少年ほど自分の殻に閉じこもった経験はありませんが、近所づきあいや他人と気さくに会話をすることは苦手です。仲の良い同僚たちばかりの飲み会でも、ほとんどしゃべらないのが普通です。その反動でブログが文字だらけになると言うわけです。


青い馬の少年
文=ビル・マーティンJr.ジョン・アーシャンボルト 絵=テッド・ランド
訳=金原 瑞人 (アスラン書房)

 生まれつき目が見えない少年と、そのおじいさん。ふたりの語らいで物語が進みます。 少年が、どのようにものを見、生きる力を身につけてきたか。 暗闇を恐れず、馬に乗って走れるようになった少年が、やがて一人で生きていく日のことを、 おじいさんは静かに語りかけて…。(アスラン書房) 

 障害を持って生まれて生きている人たちを見ると、多くの人は“可哀想に”と思います。自分より不自由な暮らしをし、自分のような楽しみを得られないから、五体満足ではない体は自分より劣っていると考えるのは主観です。他人を思いやる心を持つには、相手の立場を想像できる客観性を学ばなければいけないと思います。生まれつき不自由な体を持っているなら、当人にとってはそれが普通です。“可哀想に”と言われるのはむしろ心外かも知れません。しかし、事故などによって障害を持った人はどうでしょうか。それでもやはり“可哀想に”というネガティブな言葉より、もっとポジティブな言葉をかける方が正しいような気がします。


どんぐりぼうやのぼうけん
作・絵:エルサ・ベスコフ 訳:石井登志子 (童話館出版)

 風の強い秋の日、どんぐりぼうやのオッケとピレリルは葉っぱのひこうきにのり、お母さんにないしょででかけました。野原や畑をこえ、となりの森までぼうけんです。家では、お母さんが心配しています。ちょうど、あそびにきていた仲良しのはしばみのヌッタとお部屋を借りるための交渉にきていたリスのスバンスさんが、2人をさがしにでかけることに。(童話館出版)

 少し地味に見える表紙とタイトルですが、1本のアニメ映画が作れそうなお話です。小人を主役にすると、動物たちと世界を共有できるから、わくわくするような冒険物語を描きやすいのかも知れないと思いました。子供の喜びそうなストーリーですが、大人も楽しめるでしょう。


クリスマスのものがたり
作・絵:フェリクス・ホフマン 訳:生野幸吉 (福音館書店)

 およそ2000年の昔のこと、ユダヤの国の小さな町ナザレに、マリアという娘がいました。マリアは大工ヨセフのいいなずけ。ある日、天使ガブリエルがマリアの前に現れ、「おめでとう、マリアよ。わたしは神の言葉を伝えにきた。あなたは男の子を生むだろう」とイエス・キリストの誕生を告げました。その頃、ローマ皇帝は人口調査をするため、人々に自分の故郷に帰り、家族の名前と人数を届け出るように命じました。ヨセフはベツレヘムの生まれだったので、身ごもったマリアを連れ、ベツレヘムを目指し長い旅に出ました。(福音館書店)

 見た通り聖書のキリスト生誕を描いた絵本ですが、先にご紹介した「ねむりひめ」と同じ絵本作家の作品で、絵画的に素晴らしいです。ピカソのゲルニカを想わせるダイナミックな画風と豊かな色彩感覚にうっとりします。
 こういう本に出会うと、絵本は画集だなあと思います。


「絵本の蔵書」は、終了した「クックパッドブログ」で以前連載していた(所有している)絵本の紹介です。最終的には103冊ありました。(その20)まで続きます。古い名作絵本は、図書館に行けばたぶん見つかります。


<(ↀωↀ)> May the Force be with you.