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空気読め

 嫁の料理はいつもおいしい。毎日嫁に「おいしかったよ」と感想を伝えている。最初は「ありがとう」と嬉しそうにしていたが、最近は「それ以外に感想ないの?」と言われてしまう。

 『おいしい』のはわかる。しかし、何がどうおいしいのかと問われると言葉に詰まる。

僕はいわゆる『味音痴』だった。

 しかし、そんな僕にも味が細かくわかるものがあった。

飲み物とタバコ。この2つにはとても味のこだわりがあって、少しの味の違いでもわかる。

なぜそうなるのか考えたが、飲み物(液体)やタバコ(気体)は、舌の一部だけでなく、口の中全体に広がり、舌の全体で味を感じとれるからだと結論が付いた。

 そして思いついたのが『空気の評論家』だ。

日本各地の空気を自分の舌で評価して、ブログで発信していこうと思ったのだ。

 評価の方法は、樹木の葉をちぎり、紙に巻いて火を付け、それをタバコのように吸うという方法だった。樹木は、その地の空気で呼吸をしていて、空気の味を知っていると思った。

この方法はブログには載せていない。環境破壊だとか言われて怒られるから。

 ブログのアクセス数がかなり増えてきたため、広告を入れて収益を得て、その収入で日本各地に飛び、空気の評価を行った。喘息を持っている人や、老後は環境の良い場所に移住したいと思っている人たちの参考資料になっているようだった。

 僕は、空気で生計を立てることができるようになっていた。僕の生活全てが空気になった。

僕の存在も、嫁もブログも空気になった。

環境破壊も気にしなくていい。この話も空気になり、全てが空気になった。

 冒頭で出た飲み物の伏線は、思いつかなかったため、蒸発したことにしてほしい。

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