【BRUTUS裏話】中村明美の、心に響くおすすめ一行。詩「いつか冬になる前に」より。
前回の投稿で、雑誌『BRUTUS No.1008 特集〔一行だけで。〕』に、柴田三吉さんの詩「エコー ――出産する娘に」からの一行を紹介させていただいた話を書きました。
実はあの時、「エコー」とどちらにしようか、とても迷った一行がありました。
中村明美さんの詩「いつか冬になる前に」からの、一行(下記)です。
私はこの言葉に、とても気持ちが救われました。
残念ながら『BRUTUS』ではご紹介できませんでしたので、この場でご紹介いたします。中村明美さんに一篇全文の掲載許可をいただきましたので、ぜひ前後の文脈も含めて味わっていただけたら、と思います。
許せない人がいる。そんな自分の心の狭さに悲しくなる。…誰にでも経験のあることではないでしょうか。
この詩は、
と、クールでありながらも温かく、私たちに「一つの価値観に固定されなくてもいい」と伝えてくれているようです。
そして、
と、強く優しく寄り添ってくれます。
この詩を読むと、道徳観とか倫理観とか、「人としてこうあるべきだ」といった、他者から植え付けられた観念に気付いて、解き放たれるような気がします。大好きな詩です。
この詩「いつか冬になる前に」は、詩集『ひかりの方へ』(青森県詩人連盟賞)に収録されています。この詩集の中では、他の作品とはちょっと毛色の違う作品です。
中村さんの作品は、故郷・青森や、東京、子供時代を過ごされたブラジルの風景を縦横無尽に行き来しながら、ファンタジーのように死生観が入り混じるところが特徴ではないかな、と思うのですが、この作品はかなり現実感が強いですよね。
ですので、ぜひ詩集をまるごと読んで、中村さんの作品の全体像を味わっていただけたら嬉しいです。ジブリ映画のような?、大人の絵本のような?、独特な小物使いと色彩感覚で(フェジョアーダ、蛇皮の指輪、味よし(青森ではおなじみ?)などが出てくる)、本当に不思議な魅力の詰まった詩集です☆
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