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上手宰『二の舞』~詩人会議新人賞2024・審査員のすごい詩集(1)

 現在作品募集中の「第58回 詩人会議新人賞」で審査員(選考委員)を務められる上手宰さんの詩集の中から、『二の舞』をご紹介します。今年(2023年)の6月に発行された、上手さんの最新詩集です。新人賞に応募してみたい方にとってはヒントが満載の、詩を読むのが好きな方にとってはじっくり楽しめる、超おすすめの一冊です。

 まずは、貴志さん(ツイッター:https://twitter.com/yuuhigamannnaka)よりレビューをいただきましたので、ご紹介します。

上手宰さんの詩集、楽しく読ませていただきました。日常の些細な事柄を丁寧に文字に起こしていらっしゃって、きついことが多かった自分にとっては心に沁みるものがありました。

貴志さんより、上手宰著『二の舞』レビュー

…この詩集は、本当に心に沁みますよね!、共感です。素敵なレビューをありがとうございました!

▶読みどころ1:すでに目次が楽しい

 まず目次を見ると、

「二界――蓋のあるなし」
「二層――滅びた遺跡を歩む」
「二架――うす緑の本」
「二頁――読めない古代語」
「二世――私を忘れよ」

…と、全ての作品タイトルに「二」が入っていることに驚かされます。すでにコンセプトに興味を惹かれますよね。

 しかしよく探しても、この詩集には「二の舞」というタイトルの詩はないのです。では、なぜ上手さんは『二の舞』という書名になさったのでしょう?…ふふふ、その理由は、上手さんのホームページ(http://kamitelyric.web.fc2.com/ninomai.html)にてお読みください。じ~んと感動しますよ!

▶読みどころ2:比喩表現がすごい

 数々の賞を受賞されている上手宰さんの技巧を今さら褒めるのも間抜けですが(笑)、それにしてもこの『二の舞』は、素晴らしい比喩表現の宝庫です。「どうやったらこういう表現が生み出せるのだろう?!」と思うようなグッとくる表現が、それぞれの詩篇に、本当に全ての詩篇に散りばめられています。上手さんのホームページで10篇も公開されていますので、是非ご覧ください。

…ただ、私が最も凄いと思う作品「二層――滅びた遺跡を歩む」は、ホームページでは公開されていません。↓冒頭の二行だけご紹介。

言葉は誰かを抱きしめて滅びた遺跡のようだ
地上に掘り出されても使える者とてない

上手宰「二層――滅びた遺跡を歩む」
上手宰詩集『二の舞』より

 この二行だけなく、この詩は、書かれている内容が本当に凄いのです…!私は一度読んだだけではよく意味がわからなかったのですが、何度か読んで自分なりの解釈が成立した時、「何と温かい詩なのだろう!!」と感動でぼろ泣きでした(笑)。記憶を掘り起こせば私もたくさんの言葉を…、おっと、私の解釈を言わない方がいいですね。この詩は抽象的でちょっと難しいので、多分、人それぞれに解釈が分かれると思います。各自でお楽しみいただければと思います。

▶読みどころ3:「読みごたえ」と「読みやすさ」のバランス

 上記にご紹介した「二層――滅びた遺跡を歩む」はちょっと難しめの詩ですが、この詩集には易しい詩も多数収録されています。この「読みごたえ」と「読みやすさ」のバランス(甘辛?)が、満足感の高い、何度も読みたくなる一冊に仕上げているのだと思います。これが達人のバランスか…と、上手さんの偉大さをまた一つ思い知った訳ですが(笑)、こういった構成の工夫は、一篇の詩を仕上げる上でも同じことが言えるのではないでしょうか。さらっと読めてしまうだけでは物足りないし、難しい表現ばかりだと読み手に伝わらないし。そんなことを考えながら読むのも、書き手にとっては大きな勉強になると思います。

▶読みどころ4:温かい気持ちに包まれること間違いなし

 レビューをくださった貴志さんも「心に沁みる」とおっしゃっていましたが、この詩集『二の舞』は、上手さんの愛情と感謝の心に溢れていて、とても温かい気持ちにさせてくれます。

 「Ⅰ」は、自然や人間全体といった、大きなものに対する愛の詰まった作品群。「二人――自分に気付かれる」は、大切な人を亡くした喪失感と、それを忘れていたのに、また思い出してしまう悲しさを表現した作品。「忘れえぬ」とあるように、こういう悲しみはなかなか癒えないものですが、私は中間にある「あの人が死んだと聞くのと/この地上のどこかにいて永遠に会えないのと/初めからいなかったように忘れてしまうのと/どれが一番いい?」という問いに、少し救われる気がします。初めからいなかったのではなく、まだこの胸にいるから悲しいのだと。

 「Ⅱ」は、「Ⅰ」よりもう少し身近な社会に対する作品群。「ヨッコイショ!」と自分を励ましてバスに乗るおばあちゃんが印象的な「二声――自分を励まして」、教え子の父親の葬儀で、お坊さんの代わりにお経を読む教師の人生観・生きざまが胸に響く「二徒――学のありかた」、「お嫁に行く日が決まったから/マフラーを編んであげるとあなたが言う」で始まる、切なくも優しさに満ちた「二本――練習用は何色で?」などは最高に素敵な作品ですが、上手さんのホームページでは公開されていません。

 「Ⅲ」は最愛のお父様、二人のお母様、ご兄弟に対する作品群。「Ⅳ」は奥様へ贈る作品群。もうこの2群は、一気に読んで、感動と幸福感に浸ってきただきたいです。こんなにも愛し愛されるなんて…!特にお父様に対する想い、奥様に対する一途な想いに、キュンというかじわ~というか、あぁ、なんて素晴らしいんだろう…!と温かさで胸がいっぱいになります。辛いことの多い世の中ですが、やっぱり生きていくって素晴らしいことなんだ、と思わせてくれる作品群です。上手さんのホームページでも4篇読めますので、ぜひこの世界観を味わってみてください。

 そしてお気に召しましたら、どうぞ紙の詩集をご購入下さい。これは財産と言っても過言ではない一冊ですし、どの作品も、ホームページの横書きより、やっぱり落ち着いた縦書きの方が似合うと思います。ページの紙質も、ほっこり温かいですよ。

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