【魔法のことば】
小6の時に、入院した。
僕には生まれつき腸に問題があって、いずれは手術が必要だったらしい。その「いずれ」が、小学6年生の2学期だった。
11月のはじめに入院して、2回の手術を受けて、年内には退院できる、と言われていたのが予後が悪く、それから3回の手術となった。
退院したのは、3月の卒業式の前日だった。
1年後に、再手術をする予定で、僕は人工肛門になっていた。
お腹から腸の一部が出た状態になった。
直腸近くにできてしまった穿孔が塞がるまでの措置だと説明された。
24時間、お腹の腸にパックを装着することになった。
月に1度、洗浄のために病院に通うようにと指示された。
それでも退院して卒業式に出られたのは嬉しかった。
本来なら出席日数が足りなかったらしい。
が、同級生と一緒に進学することができたのも嬉しかった。
新しい自転車で学校に通うのは楽しかった。
中学になってふえた友達と、毎日のように遊んだ。
なぜ、それほど明るさを失わずにすんだのだろう。
それはおそらく、当時周りにいた、
大人達からの励ましがあったからだったように思う。
特に父方の祖父は、めったに他人を褒めない人だったらしいが、
一度ふたりきりの時に、こんな言葉をかけてくれた。
「こんなに辛いことによく耐えて、お前は偉い。これからどんなに苦しいことがあっても、かならず乗り越えられる」
あれは祖父が僕にくれた、ほんとうの魔法の言葉だった。
僕には子供がいないけれども、身近な子どもたちに、若い世代の人たちに、そして関わってくれるすべての人に、そんな魔法のことば・・自分を肯定してくれる言葉を、贈ることができればと思う。