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アナログVTX VS デジタルVTX

MV撮影やTVCM、企業のWEB広告などFPVドローン動画が広告用途で使われるシーンが結構増えてきている。

プロペラ剥き出しの5インチの機体はスピード感のあるダイナミックな動きが特徴だが、静止している人に寄ることは出来ても、動く人にはなかなか難しい。というか危険。

そうなるとガード付きになったり、3インチやさらに小さなサイズになったりして、重たいカメラを積むと更にもっさりとした動きになり、本来のスピード感が失われるというジレンマがある。

”デジタルVTX”は、そうした悩みを幾分解決してくれるアイテムだ。というのも、デジタルがゆえに、よく見えるために木の枝のギリギリまで寄ったり、これまでマイクロドローンでしか通れないと思っていたところであっても、5インチはもちろんα1を搭載した機体でも難なく通れたりする。

これは実際にやってみて体感する新しい発見であり、食わず嫌いや何か拒否感を持ってやってない人には是非やってみてほしいところだ。

簡単にアナログとデジタルの特徴やそれぞれの利点を見てみよう。


アナログVSデジタル①映像品質で変わる安全マージン

ドローンにFPVカメラを搭載し、ゴーグルで映像を受信し、それをもとにドローンを操縦するのがFPVドローン。このゴーグルに映り込む映像が

・SD画質(480p)でノイズ混じりになるのがアナログ
・HD画質(1080p)でクリアになるのがデジタル

この映像品質がアナログとデジタルの一番の違いであり、スイッチしたくなる大きなのきっかけだ。見た目の違いは圧倒的だが、キレイになったからといって、別に操縦時に景色を楽しむわけではない場合がほとんど。

アナログの品質でも十分飛ばせるよ!

なんて声があがってきそうだが、デジタルを試してみれば”ただキレイなだけではない”のが体感できる。

よく見えるというのは以下のような置き換えができる。


よく見える
≒物体を認識しやすい
≒”距離感を掴みやすい


真っ暗闇の中でわずかな光だけを頼りに飛行したら誰だってスムースに飛ばすことはできない。反対に”よく見える”ということは被写体や物体をより正確な位置関係で捉えることができ、より安全マージンを除去した飛行をすることができる。

この安全マージンとはドローンを飛行させる時に、周囲のオブジェクトや人に対して離す距離を指している。湖上を低空飛行する時に、5インチなら1m、75Xなら30cmくらいの間隔をあけるが、使う機体性能やサイズによってその時の角速度は大きく異なり、その差を無意識のうちに安全マージンとして飛行させているはずだ。

安全マージンが大きくなる要因には、機体のサイズや性能だけでなく、映像の視認性も大きく左右するとアナログもデジタルも実際に使用して僕は理解した。同じ機体でもデジタルVTXなら安全マージンを少なく見積もってアナログVTXでは通過できなかったところもできてしまうのだ。

アナログVSデジタル②電波到達距離と電波の途切れ方

FPVカメラの映像をゴーグルに送信するために、VTXという機器から電波を出力する。この時の出力度合い(10mW〜1W)が大きければ大きいほど電波の到達距離は相対的に長くなる。(適切なアンテナをつけることや向きなどは重要だが、ここではそれらはほとんど同じ条件として考える。)

アナログFPVとデジタルFPVにおいて構造的な部分における大きな違いが

利用する周波数帯がを固定するのがアナログ
利用する周波数帯を動的に可変できるのがデジタル


アナログVTXでは「F1(5705MHz)使いまーす!」とか周波数を指定して利用しますが、デジタルVTXでは「CH1を使いまーす!」というように表記的にも周波数を限定していない。そもそも本来ならCHすら意識する必要はない。

現在国内で使う場合は法的な理由から決め打ちする必要もあるのだが、本来的には100MHz使える周波数帯があるなら「空いているところをホッピングしながら自動的に選択して映像送受信を行う」ことができるのがデジタルだし、今後そうなっていくはず。

データを暗号化できるのでセキュリティレベルも上げられるし、デジタル信号にするがゆえに、映像にプラスアルファの機能を追加することもできます。(TVのアンケート機能のように。)

これらを考慮すると、本来ならばアナログよりもデジタルのほうが周辺の電波干渉への対応力が高く電波の到達距離もデジタルの方が高いし、今後発展的に増えていくのは間違いない。

しかし、ここで現時点におけるデジタルの最大の欠点が出てきます。電波が到達できる距離が最大値に達して「途切れる瞬間」どうなるかというと、アナログの場合は、徐々にノイズが増えていき、最終的に砂嵐の映像になるため”段階”があるのが特徴

これに対してデジタルの場合は「フリーズ」してしまう。デジタルの場合は、まだ見えているのにいきなり映像が止まるのだ。ノイズ混じりで少し見えないくらいなら良いが、完全に止まってしまったらFPV飛行はどんなプロフェッショナルでも飛行することができない。

ちなみにこれ自体は2021年現在のデジタルTV放送でも同じような問題が起きているため、しばらく解決しないのではと考えている。

さらに、ロングレンジで飛行させるならやはりアナログに軍配が上がると経験値で理解している。どんなに見通しが良く向きを調整してもデジタルVTX(800mW)では距離が1kmくらいだったがアナログVTX(500mW)で1kmでは全然余裕だ。

こうしたことから長距離飛行や電波を遮蔽されすぎるような環境ではデジタルFPVを避けたり、なるべく電波の見通しが良い場所や近距離での飛行に限定しているのが現状だ。


アナログVSデジタル③バリエーションと価格

これまでの話は、TV業界における「アナログ放送からデジタル放送への切り替わり」と全く同じ内容である。昔はTVにダイアルがあり、ガリガリとチャンネルを回して周波数を合わせることをしていた。現在はデジタル放送となり、チャンネルをリモコンをポチポチ押したりスマホからいじったり、サーバーで中央管理してコントロールもできている。

アナログ放送の画質はいまよりも格段に悪く、雨風が強い日はノイズが交じり放題だったのを覚えている。面白いのは、2008年ごろアナログからデジタルに移行しようかどうしようかと悩んでいるユーザーが多い時期は「ニュースやバラエティ番組が高画質でもそれほどメリットとは思いません。」(価格コムより)なんて声があった。

現在のデジタルFPVに否定的な人の意見に似ている気がするのは僕だけだろうか。

FPVドローンにおいては、アナログからデジタルに移行しているユーザがまだまだ少ないので、どうしても需要が少なく、供給価格が高くなってしまっている現状がある。しかし、今後デジタル化するのは時間の問題であり、時間とともに安くなっていくのも間違いない。

具体的な価格差を比べると、

品質の良いアナログVTX&カメラ=1万円
DJI FPVのデジタルVTX&カメラ=1.5万円

ゴーグルの値段も大きく変わらないことを考えると、コスト的な面ではすでに大差はなくなっている。ただし、製品のバリエーションは全く異なるのが、現状だ。

現在世界でもデジタルFPVができるのは、Amimon ConnexかDJI FPV(DJIを改造したcaddxも有力)の二つくらいだが、アナログFPVができるパーツの数は数百以上の組み合わせがある。技術が汎用化しているので、新興メーカーでも作れるし低価格なVTX&カメラが溢れている。

安く済まそうとするなら、セットで2000円で揃えることもできるので、エントリーモデルを考えるとアナログにはまだまだ軍配があがる。


アナログVSデジタル④法律と申請

日本国内においては、アナログからデジタルにスイッチしたり、デジタルFPVを始めようとする人が懸念するのが「法律面」。結論から言えば、僕は大して気にしないでいいと思っていてアナログの場合と同様に申請許可をすればいいだけだ。

DJI FPV(V1のAir Unitを指す)を国内合法で利用するには、業務用無線(3級陸特)を取得して、業務用の開局申請を総務省にする。”業務”という言葉が紛らわしいが、すでに本来の法律上の意味合いからかけ離れている。法律は自体によって解釈がかわるのでいたしかたない。謎の勢力もいるので至極面倒だ。

ただし趣味が本来の目的だとしても、こじつけでいくらでも解釈できる。既存のルールに沿って処理することはいくらでも可能なので、あまり悩みすぎないでどんどんデジタルVTXをやる人が増えたらいいと思う。


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