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「家族が動いてくれない」に応える、片付けに必要な問題設定のチカラ

整理収納アドバイザー1級・防災備蓄収納1級プランナーのyokoのnote。Profile&Conceptはこちら

片付けレッスンの中で「パートナーや子供が散らかしっぱなしで、全然片付けてくれないです。どうしたら片付けてくれるようになりますか?」という質問をいただくことがあります。
状況とクライアントの気持ちを確認した上で必要だと判断すれば、私は「それはぜひ一度相手と話し合ってみてください」と答えます。

でも、皆さんがイメージする整理収納アドバイザーの回答って、こんな感じだと思うんですよ。

こんな収納にすれば誰もが片付けられるようになります!」
こんな便利グッズを使えばらくらく解決です!」
こんな声かけをすれば片付けてくれるようになります!」

確かにこれは間違っていなくて、大事な解決策の1つです。
しかしこれが効果を発揮するのは、「お互いの捉える『課題』が同じとき」だけなんです。
そもそも相手が「散らかっている状況をなんとも思っていない」「あなたが家が散らかって困っていると知っていても、大きな問題だとは感じていない」...そんな状況なら、上記の解決策では効果が薄いです。

今回は、今年6月に出版されたばかりの「問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション」(安斎勇樹・塩瀬隆之.学芸出版.2020)を読んで得たエッセンスを元に、片付けにおける問題設定のしかたについて書きます。

この本、問題と課題の関係性や本質的な問題を捉え直す方法について書いてあって、「これ!片付けでいつもクライアントの皆さんに伝えていたのはこういうこと!」という再発見がありました。
これまで、私1人の力では論理的に説明することが難しい部分があったのですが、この本のおかげで「こういうことがずっと言いたかった!」と感動しています。仕事に限らず日常生活の場面にも応用できますし、働いている方だととくに、ワークショップや研修の企画、組織課題を解決する業務をされている人にもおすすめです。


問題と課題は違う

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片付けたい人にとっては「だから...『散らかっていること』が課題なんですよ。それを解決したいんですよ。」と思いますよね。
でも実はそれ、「あなたが感じる課題」でしかない...という可能性、ありませんか?
「散らかっていることは2人共通の問題だ」と1人が決めつけるのは、相手の意思を無視していることになり得ます。

相手にとっては、そもそも散らかっていることは「問題ではない」こともあるわけです。「部屋が散らかっている」状況は気にならないことであり、本人はそれによって不快感もないし、生活が困ることもない。
片付けは生活習慣の1つ。整えることの気持ちよさ、実生活への効果、家事の非効率化の要因...これらを知らない/価値を感じない人にどれだけ「散らかっているのは問題だよ!」と言っても、馬の耳に念仏です。

私が片付けレッスンの中で「あなたが問題だと思っていることについて、パートナー(またはお子さん)と話し合ったことはありますか?」と質問することがあるのはこれが理由。あなたが問題だと感じていることについて、相手がどのような反応だったのかを確認するためです。

もし、「言ったけど、その後何も変わらなかったです。」「ちゃんと聞いてくれなかったです。」「喧嘩になってしまいました。」という場合、その相手は「あなたの問題」をそもそも「問題」だと思っていない可能性が高い

片付けで見据えるべき本当の問題

問題の定義
何かしらの目標があり、それに対して動機づけられているが、到達の方法や道筋がわからない、試みてもうまくいかない状況のこと
(引用:P.49)

著者の定義によれば、「問題」とはあくまで「何かしらの目標があり、それに対して動機づけられている」というのが前提
上述のように自分の捉える問題を相手にぶつけてみたけど、暖簾に腕押しだったなあ...という場合、「共通した目標もないし、それに対して動機づけられてもいないんじゃないか」という可能性を考えてみるのはどうでしょうか。

ここで捉えるべき「本当の問題」は、「散らかっていることが問題だ」と決定づけることではなく、「あなたと相手の関係性そのものに問題がある」と捉えることです。

本では、問題を捉える具体的な思考法について、5つ提案されています。

問題を捉える思考法
(1)素朴思考
(2)天の邪鬼思考
(3)道具思考
(4)構造化思考
(5)哲学思考
(引用:P.65)

それぞれの思考方法についてはぜひ本を読んでいただければと思うのですが、私は(4)の構造化思考が片付けにおける本質的な問題をあぶり出す方法としてマッチすると感じました。


構造化思考
問題状況を構成する要素を俯瞰し、構成要素同士の関係性について分析・整理し、問題を構造的に捉える考え方のこと
(引用:P.71)

マッチすると思った理由は、「散らかっているのが問題だ」とあなたが感じるのは表層的な1つの事象であって、問題だと感じる要因がもっと他にある場合があるからです。

例えばあなたがパートナーに対して、心の奥ではこんな風に感じていたとしたら。

・子育てを主体的にしてくれないのが嫌だな
・家事をやってくれないのが嫌だな
・本当はもっと2人でゆっくり話したいな
・子供を預けて2人だけで遊びに行きたいな
・もっと1人の時間がほしいのに、パートナーばかり自由にしていてずるい

こういった気持ちになることが日常的にあったら、自分でも気づかないうちに相手に対してイライラが蓄積されていきます。
でも、直接的に言うと角が立つし、喧嘩になるかもしれない、結局解決しないんだろうな...といった遠慮や諦めもあったりして、なかなか話し合うことができない。
故に、「リビングが散らかっているから片付けて!」という、瞬発的に切り出しやすい文句を発してしまいがち、という構造があると思うんです。

逆に言えば、上記の不満が解決されたり気持ち的に満たされていれば、少々の散らかりは気にならなかったりしませんか?「ちょっと散らかっているのは気になるけど、でもいい関係性だし、何より今のままでとっても幸せだしね!ちょちょっと自分で片付けて終わりや〜」って。

そう、よーーーく考えたら、あなたにとっての本当の問題って、

相手が片付けてくれないことなんじゃなくて、相手との関係性に不満がある

ってことだったりするんじゃないでしょうか。


課題を正確に定義する

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「片付けてほしい」の裏に宿る本当の気持ちにもし気づいたのならば、それがあなたの本当の問題です。満たされていない理由を考え、相手と一緒に目標を再設定していくのがいいと思います。

そこまで考えたけど、やっぱり「片付けてくれないことが問題だ。自分はこんなライフスタイルが理想だから、相手に理解してほしいと思ってる。」と思えたのなら、相手と一緒に目標とするライフスタイルを話し合うのがいいと思います。

いずれにせよ、本当に感じていることを隠さないで、対話してみるというのが私がおすすめすることです。

「便利な収納術」とか、「相手が動いてくれる声かけ」というのは、話し合いができてから!

課題設定の方法についても本に詳しく書いてありますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。


私は、片付けは自分の気持ちに気づくための方法の1つだと考えています。それによって、皆さんの生活が結果的に楽しく心地よくなっていくものだと願っています!


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