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「自然から感じる思いを形に。」―YURI MIYATAデザイナー宮田有理さん

前日の雨天が嘘のように、からっと晴れた10月2日(土)。
この日は、アクセサリーブランド YURI MIYATAのデザイナー宮田有理さんをゲストにお招きした「はじめるのはじめかた」3限目。

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今回の会場は、通常のYOKOSAWA CAMPUSを飛び出し、明治時代の建物をリノベーションした『日詰町屋館』。歴史ある建物に、突如YURI MIYATAのポップアップショップが現れました。滅多にない特別な機会にも関わらず、違和感もなく、不思議となじむYURI MIYATAの商品。

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その空気感に吸い寄せられるように、設営準備中の段階から商品が売れていくほどの人気でした。

第一部:デザイナー宮田有理 の道のり

今回お呼びした宮田さんは、紫波町の地域おこし協力隊として活動するはんこ作家のあまのさくやと、東京の創業支援施設『台東デザイナーズビレッジ』で行われた講座で受講して以来の作家仲間。第一部ではあまのが聞き役となり、宮田さんの経歴をともに振り返っていきます。

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ご出身は?

岡山県倉敷市出身です。田舎で育ちました。まわりは田んぼと用水路ばかりで、毎日そこで遊んでるような子供でした。紫波は今回初めて来ましたが、少し地元と似てる気がして、安心感がありますね。
父は公務員。母は元々OLで、結婚してから主婦という普通の家庭の中、私は3姉妹の真ん中っ子として育ちました。わりと静かで大人に迷惑をかけない子供だったと思います。家族も、文化への興味が高かったわけでもなく、でも家族の中でも私ひとりだけ、作ることや絵を描くことが好きだったんです。」

高校の先生との出会いが転機

「大学を決めるとなったときに、美術系以外の大学にまったく興味が持てなくて。その他の世界を知らなかっただけだと思いますが。小学生のときに絵を褒められたことはあったけど、才能があるわけでもなく、ただ好きっていう、それだけで。褒められて伸びるタイプです(笑)。

高校のときの美術の先生が、彫刻をされていて自分の作品も制作もされている方だったんですけど。その先生が映画や音楽や本などいろんな文化を教えてくれたんです。そこではじめて世界が広がったというか。恩師です。先生にデッサンや、美大についても色々教えてもらいました。その先生に出会ってなかったら今はないくらい、大きな転機でした。」

地元・岡山の大学のデザイン科へ

「東京の美大に進むかという話も出たんですけど、実家にいたほうがいいかな…という家庭内の雰囲気を感じ、岡山県内の大学のデザイン科に進学しました。セラミックデザインを専攻し、主には焼きもの、陶芸を学びました。そこでろくろを使ったり、量産型の食器づくり、石膏で型をとって土を鋳込んで造形をつくったり…。内容としてはアートよりもプロダクト系の、機能から考えて組み立てて考えるような、デザインの考え方などを勉強していました。アート分野の先生から教わることもあり両方やりましたが、自分としてはプロダクト寄りが合っていましたね。」

名古屋・洋食器メーカーに就職

「卒業後は”食器を生産している会社に行きたい”と思い、名古屋の洋食器メーカーに入社しました。入社してからは2年目くらいまでは、優秀な先輩方に囲まれながら、自分の造形力のなさにショックを受けながら毎日仕事をしていました。それでも私、結構メンタルが強くて、わりと頑張るタイプなんです(笑)。

”やっていれば技術は身に付く”と、OBの先輩に励まされ、その言葉を信じて頑張ってるうちに、徐々に技術を身につけました。石膏ろくろという機械の上で、三角カンナで回転している石膏を削ったり。カップソーサーのカップのハンドルなどをナイフで削ったり。彫刻みたいな細かい作業で。自分の技術不足に焦りを感じながらも、3年目くらいから先輩にも少しずつ認めてもらえるようになってきて、仕事が楽しくなってきました。」

趣味で立ち上げた写真のブログ

「就職して岡山から名古屋にきて、すべてが新鮮で。その頃写真を撮るのが好きで、名古屋から東京にもよく行っていたり、旅行したときの風景や美術館・ギャラリーや、カフェなどを撮って趣味でブログにアップしていました。その頃はSNSも出始めた頃でしたけど、自分の写真の世界観でサイトからつくりたいという興味があって、HTMLを勉強しながらWordpressでサイトづくりからやりました。特に深く考えず、本屋で偶然見つけた"FUNNY HAHA"という言葉を少し変えて、"Hello haha”というタイトルにして、アクセサリー販売当初はそのままブランド名にもしていました。」

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「写真を撮ってブログを書いてるうちに、会社の先輩に写真を褒められたんです。仕事で褒められたことなかったのに(笑)。それがとてもうれしくて一眼レフカメラを買うきっかけにもなりました。

2013年に富士山が世界遺産に登録される少し前、周囲でも富士山に登りたいという人が増えた頃で。私も"カメラを買ったから、山の景色を撮って帰ろう!"というモチベーションに背中を押されて登ったんです。その時に登山靴やレインウェアなど、山道具を揃えたのでせっかくだからと、木曽駒ヶ岳とか御在所岳など…他の山も登るようになったんです。

そのとき会社で造形作業をするときに、唐草模様だとか、本を見て参考にしていたんですけど。山にいったら参考になる形状がたくさんある!と驚きました。山を歩きながら"削りたい!"って思ったんですよ。

山登りながら"削りたい"?

「本当に可愛い植物がたくさんあって。名前もわからないんですけど。花もきれいなんですけど、私は葉っぱに目がいってしまって。葉っぱの茎がきゅっとなってるところとか、薄くて丸い、綺麗なラインとか。わあ!削りたい!と直感で思うんですよ。それぞれの山で見える景色も違って、週末どこの山にいこうかな?で頭がいっぱいになるくらいになりました。」

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「山では町で見られない形がたくさんあって、本よりも参考になる!と思いました。もちろん山頂の風景も気持ちいいし…そこで感動した、というのが大きなことでした。ブログの内容も山のことでいっぱいになりました。写真を撮ることや、美しい形状をみて削りたくなる気持ち。山に登ったことで、自分のバラバラだった”好き”がひとつにつながってきた気がしました。

ずっと"削りたかった"形をアクセサリーに

「会社は5年勤めた後、結婚を機に退職して、東京に引越しました。自由な時間も増えて、今まで削りたかった形をアクセサリーにしてみよう!と思いました。焼き物をやるには窯や土練るスペースが必要ですし、型をとって作る方法は自宅では難しくて。また植物は繊細な形が多いので素材を変えたほうがいいと思い、"金属"に思い至りました。金属も、”原型をつくって型を作って流し込んで同じ形を複数作る”という工程が、今まで自分がやっていた型物と似てるんです。素材が違うだけでほぼ一緒だなと。」

創作を趣味ではなく"ビジネス"に

「アクセサリーの制作を仕事として頑張りたい!と意気込んで、2016年に創業支援施設・台東デザイナーズビレッジの入居を申し込んだんですが、落ちました(苦笑)。その3年後に再度申し込んで、現在は入居しています。」

アトリエ風景写真

台東デザイナーズビレッジ(通称:デザビレ)
ファッションやザッカ、デザイン関連ビジネス分野での起業を目指すデザイナーやクリエイターを支援する施設。入居者は、バッグ、帽子、シューズ、ジュエリー、アクセサリー等の材料仕入れや加工関連企業が集まる台東区にて、旧小学校の教室を低額な家賃でアトリエにすることができ、ブランド育成のアドバイスを受けたり、区の支援メニューを活用できる。
『デザビレ村長のクリエイター起業塾』も開講。
http://designers-village.com/

会社員デザイナーからブランド起業へ

「私はこれまで会社でのデザイナーの経験しかなかったので、販売・営業・総務・経理とか…やったことのないことばかりでした。"いい形をつくれば受け入れてもらえる!"と思って始めたんですけど、それだけじゃだめだってことを、アドバイザーの鈴木淳さん(通称:村長)にアドバイスをもらって。それから考え方が変わり始めて、つくることで満足するのではなく、使う方の手にわたって使ってもらって、その方にどんな風になってもらいたいのかまで考えたいと思うようになりました。
自分がやりたいことと、これから頑張りたいことが明確になってきたんです。そのくらいのタイミングで、改めてブランドとしてのあり方を考えた結果、ブランド名も"YURI MIYATA”に変更しました。人のアドバイスは、きちんと聞くものですね。」

"自分で仕上げる"こと

「アクセサリーを作るには、まずワックスの塊からナイフで作りたい形を削り出します。ナイフは会社員時代から使っているものです。その削り出した形を鋳造して金属にしていくのですが、その型取りと鋳造は工場にお願いしています。工場でできたものを私がやすりがけして整えて、ピアスなどの金具をつけてリューターで磨いて仕上げます。」

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「会社員時代に高級食器を作っていたとき、最後の仕上げや細部の削り込みで形が引き締まることを自然と学べたので。最後の仕上げは職人さんにお願いするにしても、人によって違ってどうしてもニュアンスが変わってくることもわかりました。すべてを職人さんにお願いするという方法もあると思いますが、最後は自分で仕上げるのが一番納得ができたので、今はそうしています。
"削る"のは好きですし、黙々とした作業がもともと好きなので。苦痛になるものって続かないですよね。」

和やかなムードでトークが終了し、換気休憩を挟みワークショップへ。

第二部 ワークショップ:紙粘土でマグネットをつくろう!

実は、今回の10月のワークショップが決まってから、"一度岩手の山に登りたい!"と思い立ち、7月に安比高原の前森山〜岩手山にかけてのロングトレイルに出発した宮田さん。四日間かけて、夫婦ふたりで山小屋に泊まりながら、縦走ルートを成し遂げたのです。

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illustration: 火詩

今回は岩手限定のワークショップとして、実際に宮田さんが安比高原の前森山から岩手山にかけて歩いた際に気になった植物の形をモチーフに紙粘土でマグネットをつくります。⠀

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「植物のマグネットで、おうちの冷蔵庫を岩手の森にしていただけたら嬉しいです」という宮田さんの言葉で、ワークショップはスタート。

①モチーフを選ぶ


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②紙粘土の色を選ぶ
*混ぜたり重ねたりすると、マーブルになったり模様や色をつくれます。

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③モチーフ写真に直接、輪郭を鉛筆でなぞってはさみで切る。

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④板状にのばした粘土に重ね、カッターで切り出し、ヘラなどで形を整える

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紙粘土をこねこねして、感触を楽しみながら……

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そして、完成!!!

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宮田さんが実際に岩手の山を歩きながら見つけた風景を作品に落とし込む、その過程を少し体験できるワークショップ。参加者さんは楽しそうに、一人5個ほど、あっという間に作られていました。紙粘土をこねているうちに、いつの間にか山を歩いている気持ちになってしまうような、ただ作るだけに止まらないワクワク感に満ちた時間でした。

〈講師〉YURI MIYATA デザイナー 宮田有理
「自然から感じる思いをかたちに。」
山で見つけた植物や景色、実際に歩いてその場で感じたことを大事にしながらデザインと制作を行っています。身に着ける方の生活に寄り添い、街でも自然の空気を感じられるようなアイテムを提案しています。
オンラインショップのご案内は、SNSHPからご確認ください。

フォトグラファー宮田森平による、国内外でのトレッキング風景をフィルムカメラで撮影した、ZINE BRANCH PAPERも発刊。盛岡・BOOKNERDでも取扱中。

YOKOSAWA CAMPUSでは、新しく"はじめる"あなたが一歩を踏み出せるようなイベントを開催しています。

第1限のようすはこちら:

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イベント主催:YOKOSAWA CAMPUS
トーク進行・記事執筆:天野咲耶
サポート:岡本夏佳
感染症対策:星真土香
写真:宮田森平(2,7)、宮田有理(3-6)、南條亜依(1,8-13)

会場:日詰町屋館
明治時代から建っている町屋を、(有)箱崎工務店をはじめとする地域関係業者が共同でリノベーションして作られたイベントスペース。
平日午前中に見学が可能です。
【お問い合わせ先】(有)箱崎工務店 TEL:019-672-2556

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