「お店を通して人を育て、まちをつくる。」―ALAYA 戸田宗輝さん
新鮮な空気の匂いに冬の訪れを感じた、11月20日。コロナで延期になっていた、「はじめるのはじめかた」2限目のこの日は、福島県いわき市にてALAYAを経営されている、戸田宗輝さんをお呼びしてのトークイベント。あわせて、ALAYA によるPOP UPイベント・Iwate Fashion Mediaによる企画展示「記憶」・県内の大学生によるフリーマケットも同時開催しました。
左から南條、戸田、照井。照井くんは現役の大学生で、2021年6月に古着イベントをYOKOSAWA CAMPUSと共同開催した縁もあり聞き手として登壇。
ALAYAでも提供している伊良コーラ、岩手で飲むとまた格別。
朝から温めていた会場も沢山の若者の熱気のお陰で温まった昼下がり、ALAYA のドリンクと焼き菓子を片手にイベントがスタート。今回はALAYAの戸田さん、Iwate Fashion Mediaの照井さん、YOKOSAWA CAMPUSの南條の3人で、トークイベント「はじめるのはじめかた」を開催しました。
〈ゲスト〉ALAYA 代表 戸田宗輝 / HIROKI TODA
「お店を通して人を育て、まちをつくる。」
福島県いわき市出身。いわき名星大学(現:医療創生大学)卒業後、東京でアパレル会社に12年勤務。いわきにUターンし、18年9月に独立しALAYAをオープン。アメリカ、ヨーロッパなど、年数回の海外へ古着の買い付けをしながら店舗の運営をする。店舗ではハンドドリップのコーヒー、抹茶も提供。20年11月にはALAYA2階オープン。
東京以外の選択肢はなかった。
戸田:大学は行ったほうがいいかなというぐらいの気持ちで進学したのですが特にやりたいことも見つからなくて(笑)。でも、何かはしなきゃな〜とは思っていたので海外に行ったり色々しました。
当日は古着やコーヒーの匂いに導かれ、10代、20代も多く訪れました。
南條:就職は東京なんですね。いわきでの就職は考えてなかったのですか?
戸田:当時は東京に行きたいというよりも、地元にいたくなくて。当時のいわきには働きたいと思える場所が全然なかったので、地元を出たいなと漠然と思ってました。そして、いわきは立地的にも福島県の最南に位置しているので、東京行きのバスが30分に1本位出ていて、小さい頃から東京が身近にあったので、上京するなら仙台よりは東京かなと思ってました。出身がいわきじゃなくて、相馬の方(福島県北部)だったら仙台に行ってたかもしれないですね(笑)。
レディースの奥深さを知り、転職。
戸田:上京してからは、古着が沢山売っていた時代のWEGOに就職しました。そこではメンズ担当で接客をしていたのですが、メンズファションのラインの少なさがつまらなく感じてしまって(笑)レディースだとメンズに重ね着したり、パンツやワンピースとか沢山あって、レディースの方が楽しそうだなと直感的に思ってしまいました。メンズはテンプレートがあるので、コーディネートを提案したら終わりというか。(笑)
女の子の、直感で「かわいい」と思ったものを買うという消費行動が面白いなと思いました。男はウンチクが多いですよね(笑)。歴史とか、素材とか色々言いだすんですけど、歴史があるからいいものなのかって言われたらそれもちょっと違うかな〜と思って。その点、女の子が直感で判断して購入するので面白いなと思いました。バイヤーとしてもそうやって本能的に選んで買って貰える方が嬉しいなと思いますね。
照井:たしかに(笑)。男は知識でマウントとってくること多いですよね(笑)。知識は、自分と服の関係性を充実させるためのものだと思うので、心にしまっておく方がかっこいいですよね〜。
戸田:服が好きだったら、通る道だとは思いますね。自分も昔はそうでした。あえて知識と情報を知ってて、どう行動するかが大事かなと思います。
戸田:そして、このままじゃつまらなくなるなかな〜と思って1年ほど働いた後にレディースのアパレルの会社に転職しました。ここで沢山学ばせてもらいました。全部やらせてもらいましたね。店頭販売から商品管理、出店、店舗づくり、海外への買い付けなど、幅広く携わらせて頂きとても勉強になりました。
そのときの経験があって、ALAYAを開業時は、アメリカ、ヨーロッパ、タイなどに長期滞在して、古着の買い付けをしていたのですが、古着は行ってみないと集まるかどうかわからないので、空振りや移動だけで終わる日もあって。買えなかった日は、戒めのために車で寝たりしてました(笑)。お金使うのもったいないから車で寝ようみたいな。買付けはすごく楽しいですね。コロナ落ち着いたら早くアメリカやタイにいきたいなと思って計画中です。
南條:なんでタイなんですか?
戸田:よく聞かれるんですけど、古着って圧縮されたベールっていう束が世界中を先進国から順に点々と回ってるんですよね。1トンくらいの圧縮された塊になっていて、アメリカについたら一度開けられてアメリカ国内で必要なやつを抜いてまたその地域で詰められるんですよ。日本の文化にはあまりないんですけど、アメリカの文化でドネーションっていうのがあって、いらない服をリサクルショップに持っていくんですよね。だから、タイは東南アジアの拠点になっているのでアメリカやヨーロッパの服があったりします。だけど、暑い国なので冬服が全然集まらないんですよね。
南條:エスニック系の服を買い付けにいってるのかと思ってました。
戸田:タイパンツとかは沢山ありますね!(笑)
照井:こういう話を聞くと見え方が変わって見えますね。
まちづくりがしたくて、いわきにUターン
戸田:まちづくりがしたいっていうのがずっと頭にあって、前職でもお店は作れたんですけど、やっぱり売上を上げるために中枢都市にお店を作るんですよね。達成感はあったんですが、もっと、いわきのまちをどうにかしたいと思うようになりました。東日本大震災の時には東京に居たので経験をしていないので、それもあって自分には、なにができるんだろう。お店づくりだけでいいのか…?と考えるようになりました。
自分の経験でできるのは古着屋さんだけど、意外と飲食もできるんじゃないかなと頭にあったので、決意していわきの物件探しを始めました。でも、その時は会社でも立場と責任があったので、社長に辞めると伝えて1年間ぐらいかかって、すぱっとは辞めれなかったですね(笑)。なので、働きながら金土日はいわきに行って解体するような生活を半年くらいしてました。
照井:結構リノベーションしたんですか?
戸田:そうですね。できる限り自分たちでやれるところはやりました。2階は7、8t くらいのコンクリートを自分たちで解体して捨てました。(笑)安く良く見せたいので、ボンドで端材を貼り付けたりしました。壁も、もう全部剥き出しにして、雑巾で拭いただけです。(上写真)
営業時間は、15時から24時。
戸田:ALAYAは1階を15時から24時で開けてて、みんなに不思議に思われるんですけど。僕的には全然良くて、なんというか自分が、朝だらだら過ごしたいから(笑)。15時からオープンだとお昼もどこかに食べに行けて、お店の人と話をして勉強もできるし、そのお店の人が今度は夜にALAYAに来てくれたりするんですよね。なんか働いてる人が行ける場所を作りたいという気持ちがあって、ちょっと寄れる居場所があったらいいなと思ってました。夜に行ける所がないって、町の課題だなと。ファミレス以外の選択肢があるといいなと思ってやってます。
南條:日詰商店街の印象はどうですか?こっちも夜にあいてるお店が少なくて…。
戸田:思ったより都会だなと思いました。岩手来て、訛ってるのを期待していたんですけどみんな全然訛ってなくてびっくりしました。いわきの子の方が訛ってますね(笑)。
南條:ALAYAの客層は若い子が多いですか?
戸田:若い子多いですが、上は70歳とか80歳の方にも来て頂いてます。誰にでも響く所があればいいなと思ってお店をやってますね。
照井:マーケティングですね...。
戸田:前職でもマーケティングやってたんですけど、人がいないなら人を呼べばいいかなと思って(笑)。人が来るような店づくりを目指す方が楽しいかなと思ってます。
インスタグラムは投稿しない。
イベントの1ヶ月後初めての投稿がされてました。
照井:ALAYAさんのインスタって、投稿がないですよね、その理由が知りたいです。
戸田:これも前職の影響が強いんですけど、お店のブログとかインスタの投稿を後輩にやれって言う側だったんですよ。自分だったら「やってらんねーよ。載せるもんねえよ。」と思いながらも立場上言わなきゃいけないから言うっていう矛盾があって。
内心、載せるのないなら載せなくていいんじゃないかなと思ってました。その禊でやってます。投稿とかしないで、ストーリーズ機能だけでどこまで伸ばせるだろうって言うチャレンジでもあります。フォロワーを伸ばすのが純粋なフォロワーさん(オーガニック)を増やすにはどうしたらいいのかなと思って、投稿をするとうちに興味のないフォロワーさんも増えて来るのが気がかりだなと思って。
南條:確かにタグ付けできないようになってますもんね。
戸田:え、そうなの?それは単純に俺が機能を知らないだけかも(笑)。
全員:(爆笑)。
戸田:一応ブランディングといったらおこがましいですが、ブランディングを意識しています。と思ったらめちゃめちゃ投稿するかもしれないし、自分の変化があるかもしれないです。3年間運用してみて、ある程度わかってきたので次のフェーズの入ってきているかもしれないです。アレルギー情報とかはストーリーズだと消えてしまうので、投稿した方がいいかなと思っています。
南條:そういう戸田さんの考えとかブランディングのことは今いるスタッフの子に伝えたりしてるんですか?
戸田:思いは伝えるようにしています。聞かれたら基本的に答えるようにはして、頭の中がオーバーにならないようにはしてあげたいなと。お店を回すことでいっぱいなのに、こっちの思いを伝えるようなオーナーが僕は嫌いなので(笑)。スタッフが付いてきてないのに、一方的に喋るような人にはならないように気をつけてます。
南條:今日もALAYAは営業してますよね?
戸田:そうですね、みんなに任せないと次に進めないし、次にやりたいことが出てきた時に次に進む為にもスタッフのせいにしちゃうのは、ダメだなと思って。自分が育てないのが悪いのに、スタッフのせいにするのは良くないし。育てる側の責任があると思ってます。あの子ができないから俺がいなきゃいけないとか、それは完全のオーナーの言い訳でしかなくて。そう思うと、任せてやってダメだったらフォローは全部しますし、責任は全部こっちが負うので、好きに楽しくやってくれたらいいなと思ってます。1階も任せて手が空いたら次のことをしなきゃいけないのが、自分の次の役目だなと思うので、そうやって育てていけたらいいなと思ってます。
南條:戸田さんは若い子の悩みに耳を傾けている印象があるのですが…。
戸田:お店が暇で時間があるんですよ(笑)。やっぱり12年東京にいていわきに帰ってきて、地元のことを全然知らなさすぎるので、お店にいるからみんなから話を聞く方が楽で聴きやすいし。そこで意識的に話を聞いて話すようにはしてますね。
照井&南條:私たちもお悩み相談しましたね(笑)。
照井:1時間以上話込んでましたね。
戸田:なんかいいこと言ってた?(笑)
照井:めちゃ言ってましたよ!
NEXT
戸田:3年ほどお店をやってやっと地域の人との関係性も築けてきた感じでです。地元の商工会の人と話していた時に空き家の話も出るようになってきました。でも、地元の年配の人が「若い子が物件借りたいって言ってたけど、口だけでやらなかったから若い子に貸したくないんだよね。」と言われて。なんか失礼だなと思って、だったらちゃんと銀行行ってお金借りてお店作りますっていう気持ちを伝えてたら貸してくれることになりました。
僕はまちを作りたいと思っていて、お店を作りたいだけじゃないんですよね。だからお店を作りたいと思っている子には言っちゃうんですけど、お店は作ろうと思えばすぐ作れちゃうから、完成したら満足感出ちゃうんですよね。そこからスタートなのに、お店作って満足して終わっちゃうパターンを今までも結構見て来たので「お店をやってどうしたいの?」ってみんなに聞きたいんですよね。自分でも何かを始める時に自分自身に問いただすようにしています。僕の場合は、その空いてる物件でまた何かを作って自分のお店の通りがまた盛り上がって、人が歩く姿が見れたらいいなと思うので、何かします(笑)。
( 文・写真:YOKOSAWA CAMPUS )
YOKOSAWA CAMPUSでは、新しく"はじめる"あなたが一歩を踏み出せるようなきっかけになったらいいなと思いを込めてイベントを開催しています。
〈 第3限の様子はこちら〉
会場:日詰町屋館
明治時代から建っている町屋を、(有)箱崎工務店をはじめとする地域関係業者が共同でリノベーションして作られたイベントスペース。
【お問い合わせ先】(有)箱崎工務店 TEL:019-672-2556
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