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オリンピック歴史〜過去5回の中止の振返り〜

1896年アテネ夏季大会において、フランス人ピエール・ド・クーベルタン男爵が提唱し近代オリンピックが復活してから今年で124年である。1992年のバルセロナ夏季大会(西)、アルベールビル冬季大会(仏)迄は、夏冬が同時開催であったが、1994年のリレハンメル冬季大会(ノルウェー)からは、現在のような2年毎の偶数年で開催されている。

4年間を一単位とするオリンピアード(Olympiad)は、古代オリンピックで4年毎のオリンピックを数える紀年法として使われている。例えば、東京夏季大会は、32回目のオリンピアード競技大会という風にも表現される。

なお、もし何らかの理由でオリンピックが中止になった場合も、オリンピアードのカウントは止まらず、中止になった○○回大会となる。

東京オリンピックがコロナウィルスの世界的な蔓延のため、当初の予定通り2020年に開催できないという事が明らかになってきた時、多くの五輪専門家と呼ばれる人達が「延期はありえない、中止しかない」と拘ったのは、このオリンピアードの伝統を考えると、奇数年度に行われるという前例がなかったからだと考える。結果として、国際オリンピック委員会(IOC)は2020年(第32回オリンピアード)の名称を残したまま延期という初めての対策をとったのである。なお、一方で冬季は中止年を数えず、実際の実施回数に沿った回数が反映される。

これまでの中止になった5大会を振り返ると、いずれも戦争によるものであり、今回の東京のように、自然災害としての「コロナによるパンデミック」による「延期」は五輪史上初めてである。2016年のリオ夏季大会では、ジカ熱という蚊を媒体とする伝染病が流行し、選手がオリンピックの参加辞退を希望するなど危機は高まったが、ボイコットや大会の中止には至らなかった。2018年から1920年にパンデミックを引起こしたスペイン風邪は、世界で数千万人の死者を出すに至ったが、1920年のアントワープ夏季五輪(ベルギー)は中止に至っていない。

国際社会やオリンピックにとって、勿論これまで通り国際政治の緊張や戦争は脅威であるが、10年に一度ぐらいの周期で、新たな種が発生し世界に蔓延する感染症、つまり自然のもたらす脅威は、間違いなく21世紀において人類が直面し続ける課題だと言えるだろう。東京以降のオリンピックは、続く北京やパリも当然のように、この課題と向き合い、その猛威を想定し対応できる大会のあり方を早期に模索していかないと、今迄のようには4年毎のオリンピアードを継続していく事は難しく、延期ではなく中止に至る可能性もあると言える。いや、来年に開催される予定の東京だって、まだ無事に延期開催ができると確定している訳ではない。これから1年の間に、コロナとの「闘い」、あるいは「共生」に向け国際社会が納得する形で決着をつける必要がある。

東京オリンピックまで、あと468日。

〜参考〜
<中止になった夏季大会>
1916年 ベルリン(第6回夏季大会) 第1次世界大戦により中止
1940年 東京(第12回夏季大会)アジア初の大会とされるはずだったが、日中戦争のため開催2年前に返上した。
1944年 ロンドン(第13回夏季大会)第2次世界大戦により中止。4年後の48年、第14回大会がロンドンで開催された。
<中止になった冬季大会>
1940年 札幌(第5回冬季大会)
1944年 コルチナ・ダンペッツオ(イタリア)(第5回冬季大会)
いずれも同年開催予定だった夏季五輪と同様の理由で中止された。


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