電通と米国ベンチャーが描くスポーツの未来

2019年4月、電通と米国ベンチャーキャピタルのScrum Venturesがミッドタウン日比谷にて、SPORTS TECH TOKYO(スポーツテック東京)の発表イベントを行った。世界19カ国からスタートアップ104社を含む159社が東京に集結して行われ日本を代表するスポーツチームや事業創出を目指す企業が多数参加し、564件のマッチングが行われたという。イベントには鈴木大地スポーツ庁長官が参加し、今後スポーツの成長産業化に向けた取組を官民一体となって推進していく姿勢を示した。

日本のスポーツ産業は今後急速に拡大するとされており、スポーツ庁の試算では2012年には国内のスポーツ市場は5.5兆円に過ぎないが、これを2025年までに15.5兆円、つまり2012年比で276%、2015年比では176%の増加を予想している。オリンピック・パラリンピックで盛り上がる日本市場と、官民の経済投資の活発化、これを狙って海外からの参入や投資も活発になりそうだ。SPORTS TECH TOKYOはスポーツ産業界の多くのメンターとの連携に加えて、企業パートナーも従来のスポーツメーカーやスポーツチームに限定されず多彩だ。主催者である電通以外にも、伊藤忠、ソフトバンク、ソニー・ミュージックエンターテインメント、日本マイクロソフト、CBCなど様々な業種のビッグネームがすでに名乗りを上げている。

記事によると、日本以外にも、世界ベースで見てもスポーツテックのベンチャー投資総額は2013年の4億9千万ドルから2018年には25億2千万ドルと4倍以上に成長し、アジアでの成長率は40倍と言われる。(金額ベースで2013年の4千万ドルから2018年16億5千万ドルの約41倍に拡大)

SPORTS TECH TOKYOが設定するカテゴリーは、「ファンエンゲージメント」、「スタジアム体験」、「アスリートのパフォーマンス」の3カテゴリと、13のサブカテゴリを基本の枠組みとしている。つまり、競技選手、オンサイト視聴者、ファン層の3つのステイクホルダーによるスポーツ体験をどのように拡大していくかという尺度である。

国が掲げるスポーツの成長戦略でも、「国や自治体、競技団体等の各主体が連携し、スポーツ市場を構成するスタジアム・アリーナ投資、スポーツ観戦、スポーツ用品、周辺産業等に対する 需要をそれぞれ拡大させると同時に、スポーツ経営人材の育成・活用等を通じて競技団体等の スポーツコンテンツホルダーの経営力の向上に取り組むことが課題となる。」とあるので、双方が掲げる方向性の中でも、特にスタジアム改革や、観戦体験の向上、またスポーツを行う層の拡大という意味でも掲げる分野においては非常に親和性が高いわけで、米国やグローバルの新たなアイデアや技術を取り入れてスポーツテックが拡大していくという流れは加速するだろう。

なお、SPORTS TECH TOKYOは、2020年2月14日に発表された内閣府による「第二回日本オープンイノベーション」も受賞している。

東京オリンピック・パラリンピックは1年後の開催に延期されたが、コロナとの闘い・共生という新たな挑戦(新たな要件)も踏まえ、さらにスポーツテックは広がりを見せるのではないかと考える。

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