映画『ジュディ 虹の彼方へ』と『ジョーカー』と。人は誰のために笑うのか?
ジュディ・ガーランドと聞いて思い描くこと。それは、『オズの魔法使い』の子役時代がほとんどで、そこに、『スタア誕生』、「お騒がせ女優」。そして、「ゲイ・フレンドリー」ということが頭に浮かぶくらい。私の彼女に対する知識はそれくらいだった。
レネー圧巻の演技
映画『ジュディ 虹の彼方へ』を観た。
とかく偉人を演じることで、単なるモノマネになってしまいがちだが、レネー・ゼルウィガーのそれは一線を画していると思う(役づくりと歌の稽古に1年半!)。「演技が上手なレネーが演じているジュディ」ではなく、「一人の孤独なアーティストとしてのジュディ」を観ている。最後はそんな気分に浸れることができた。
『ジョーカー』のホアキン・フェニックス同様、『ジュディ』のレネーが最優秀主演女優賞をとるのは必然とされ、その通りとなった。
Put on a happy face.
舞台に上がる前、鏡に向かってジュディがメイクをするシーンは、ほぼ『ジョーカー』のアーサーのそれと同じだった。
Put on a happy face.
アーサーは、ステージ前にたびたび自分にそう言い聞かせていた。ジュディもそうだったのだろう、きっと。
【注】アーサーは、情動調節障害と呼ばれる疾患で笑いたいわけではないのに笑ってしまうというキャラクターでもあった。
余談だが、個人的には、自分にではなく、他人に「Let’s Put A Smile On That Face」と強要するジョーカー(『ダークナイト』より)のほうが、やっぱりジョーカーなんだよな〜と思っている。
この映画は47歳の若さで彼女が亡くなる半年前、1968年に行われたロンドン公演にスポットをあてている。幼き頃から、まわりに搾取され続けてきたジュディの晩年のステージを描く。
Put on a happy face.
そう、たくさんの大人たちに言われ続けてきたであろうジュディ。求められる自分と自分自身の乖離に戸惑い、抗議するも、いつしか大人たちに薬漬けにされてしまう。楽しいから笑う。いつの間にかその単純で当たり前のことが上手くいかなくなっていったに違いない。
私は、ジュディを悲劇的な女優と思ってきた。けれど、人生の最後にも素晴らしいステージをやりとげていた女優だったのだ。彼女の人生の闇が深い分だけ、その光が閃光のように眩しい輝きを放っている。
誰かのために無理やり笑顔をつくることをやめる。まずは、自分のために。感じるままに。ジュディは最後の最後で、その感覚を取り戻したのではないか? そう、思える作品だった。
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作品をもっと楽しむために
普段は、「前情報を入れずに観た方がいいですよ」とオススメするが、この映画の場合は、前情報でジュディのことを分かってから観たほうが感じるものが大きいと思うので、以下の記事を。
さらに、動く本物のジュディを観るとより楽しめると思うので、映像も。
↓『オズの魔法使い』より。
↓晩年のステージ。
この動画(↓)が、ジュディらしさがよく出ている気がしている。
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