『フリーバッグ』。そして、新作『007』へ‼︎
皮肉屋で性欲は強め、怒りに駆られ悲嘆に暮れる。『フリーバッグ』は、現代のロンドンを生きる1人の女性の心理を描き出す、抱腹絶倒かつ辛辣なドラマである。
BBCで放送された最終話は250万人の視聴者数を記録し、BBC Threeでは16歳~34歳の視聴者の約4分の1が視聴したのだという。アメリカのエミー賞では最優秀コメディ賞を受賞。
『フリーバッグ』。人から良く思われたいという承認欲求がなく、だれにでも率直。これまでの女性主人公像であったキラキラ女子ではないのはもちろん、恋に仕事に七転八倒しながらも健気に頑張る主人公ともちょっと違う。忖度なくシニカル全開でまわりにガッツンガツンとぶつかりながら生きる主人公は、「こんな自分勝手な奴、無理」と視聴者に共感どころか、拒絶される危険性もはらむ。おそらく、なかなかに観る人を選ぶ作品だ。
でも、これが欧米ではバカウケ!(個人的には、なんとも、うらやましい)。
始めはなんとなく観ていたのたが、シーズン1の途中、とあることが判明してからはグイッと主人公の根底にある人間性に感情移入。シーズン2を見終えた時は「完璧!」「天才!」と、本作で製作・脚本・主演を一人でこなしたフィービー・ウォーラー=ブリッジを抱きしめたくなったくらいだった。
もともとは、2013年に同名の一人芝居をフィービーが初演したのがキッカケでドラマ版『フリーバッグ』は生まれた。現在、その原作舞台が映画館で公開されているので足を運んだ。今作は、ナショナル・シアター・ライブで劇場公開されるのは、イギリス・ロンドンのウィンダムズ劇場で上演した際に収録したものだ。
もちろんドラマを観た後なので、あらすじ自体は把握してしまっていたのだが、より皮肉っぽさと下ネタが色濃く、一人芝居のため、最後に話が収束し、見事な“サゲ”に向かっていく様は、落語のようでもあった。
ドラマ未見でも(いや、未見のほうが?)、十分に楽しめると思う。
フィービーは、新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の脚本チームのメンバーにも抜擢され、召集されている。
「『フリーバッグ』第1作から彼女に注目し始め、『キリング・イヴ』で彼女の仕事ぶりを観て、その才能がぜひ欲しいと思った…。彼女の才能は唯一無二のもので、彼女を迎えられたことはとても幸運なことです」(ダニエル・クレイグ)
新作は4月公開予定だったが、新型ウィルスの影響で興行成績が落ち込まないよう11月に延期になってしまった。彼女は仕上がった脚本のチェックのタイミングでの参加だったようなので、彼女がゼロから脚本に参加したボンドを観たくもあったが、いずれにせよ、今回、どんなボンドに仕上がっているのか楽しみだったので、私は焦れている。
とにもかくにも、フィービー・ウォーラー=ブリッジ。関わる作品をずっと追いたいと思う。
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