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椎名林檎が完璧な布陣で『正しい街』を歌った夜

これまでにいちばんカラオケ印税を払っているアーティストは椎名林檎だと思う。椎名林檎しばりのカラオケを何回開催したか分からない(勝手に自縛していたこともあるけれど)。歌舞伎町のカラオケスナックで夜更けに『歌舞伎町の女王』をシャウトし、ママに「また、出た!」と言われた回数、数知れず。

そんなことで林檎ファンを名乗るつもりはないけれど(なにせ、心のベストテンは、『無罪モラトリアム』『勝訴ストリップ』という1st、2ndアルバムで締められている。アーティストという者は、特定の時代に縛られるファンを敬遠するものである)、一定以上の思い入れはあるのかな、とは思う。

昨晩、椎名林檎がMステに出た。サポートメンバーは、ドラム→bobo、ギター→田渕ひさ子(NUMBER GIRL)、ベース→TOKIE。完璧な布陣。ちなみに、椎名林檎がNUMBER GIRLの追っかけやってたのは有名な話。

とりわけ、左から田渕、林檎、TOKIEが横一線に3人並んだ姿は神々しく、その佇まいだけで何杯御飯が食べられるだろう。フェミニズム論争が混沌としている昨今、モノ語らずしてこのバンドが露出を増やしていけば、「すべて解決できるのでは」と思ったほどだ。

話はやや逸れるが、Mステは照明なのか、演出なのか、音響なのか、とにかくアーティストが安っぽく見える。これは他の音楽番組にも言えるが、もう少しアーティストに配慮してあげてほしいなぁ、と常日頃から思っている。でも、昨晩の椎名林檎を観て、これはテレビ局側だけの問題ではないことが如実に……。

番組ではカラオケで椎名林檎を歌う世代の半数以上が10代、20代だというデータも紹介された。彼女の作品には、「私の歌だ」と思わせる強さと時代や世代を超える普遍性がある証拠だろう。

彼女は、10数年ぶりに1st アルバムの1曲目に収録されている『正しい街』を歌った。故郷福岡を歌う楽曲を、同郷である田渕ひさ子と。デビュー当時によくつけていた小さな王冠型のティアラをつけて(当時のものかどうかはわからない)。泣ける。

以前、林檎は東芝EMI同期の宇多田ヒカルとの対談で、「私は自分に関わるスタッフ全員を、その家族を食いっぱぐれさせるわけにはいかない」という覚悟を語っていた。とにもかくにも、私は昨晩も彼女のはかりしれない覚悟をしっかり感じたのだった。



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