不動産の仕事が天職だと思っていたあの頃
毎週楽しみにしていた正直不動産がきのうで終わってしまった。前のシーズンに続いて本当に楽しいドラマであった。
私の今の仕事は習字教室であるが、それまでにいくつか関わった職のひとつに不動産の仕事があり、当時はこれこそ天職!と思うほど熱心に取り組んでいた。ドラマに出てくる専門用語、業界用語を聞きながらその頃のことを懐かしく思い出した。
私が所属していたのは賃貸営業部。アパートやマンションの仲介である。店頭にいらしたお客さまの希望を聞いて物件を紹介、内見してあれこれ検討して、そこに決まれば契約、という流れになる。接客も営業も初めての経験であったが、自分でも驚くほど成約率は高かった。しかしこれは私が優秀だったわけではなく、ここの不動産屋さんが地元に根付いているお店であり、多くの地主さんを抱えることで、いわゆる自社物件を豊富に持っている所以なのである。他の店では紹介できない物件がたくさんあるのは大きな強みになる。
また、強みといえば、不動産業は生きるための基礎ともいえる「衣食住」のうちの「住」を担っているところだろうか。お客さまがそれを求めてあちらから訪ねてきてくれるのだから。営業というよりは住まいを貸したい大家さんと借りたいお客さまとの橋渡しである。そして私はその仕事が大好きだった。
本来であれば住まいを決める経験はよほど引っ越しの多い人生でない限りは片手で数えるほどだと思うのだが、私はお客さまが決める瞬間に何度も立ち会うことで、その喜びや満足感を一緒に味わうことができたのだ。物件の良し悪しを一緒に吟味し、共感し、時には背中をそっと押すこともあった。
前の記事(名前書きの仕事)にも書いたのだが、たぶん私は誰かの人生の一瞬に関われることに喜びを感じるのだと思う。自分が役に立てたことで自分の存在を肯定したいのかもしれない。
そういえば、ドラマの中で永瀬くんも言ってましたね。
『自分のやったことで一人でも幸せだと感じてくれたらそれでいい』
うん
まさにこれなのかもしれないね。