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農業を始めたきっかけ


今回は農家になってから様々な場面で開口一番に聞かれる質問について、今の気分で書いていきます。

その前に、この質問についてはもう一年以上聞かれ続けていることではありますが、まだ自分の中で腑に落ちた回答ができたことはありません。

その理由は、脱サラを決める理由が明確にあったのは事実だが、多くの人が考えるよりも退職する事に対する抵抗感がなかったこと。
そしてこの決断が100%正しかったと思える成功体験がまだない事です。

現段階では過去の自分の判断を60%の確率で肯定しています。
今回も納得のいく回答にはなりませんが、会社を辞めた理由と農業を始めた理由をまとめて箇条書きにしていきます。

会社を辞めた理由と農業を始めた理由

  • 20歳の時のオーストラリア留学を機に挑戦することの簡単さ、そして大抵の心配事は何とかなるということを知ったこと。

  • 留学時のファームジョブが楽しかったこと。

  • 何か芸を身につけたいと思ったこと。

  • 自然が好きだったこと。

  • 会社員の生活が自分に合わなかったこと。

  • 外で働きたいと思ったこと。

  • いつか地元に貢献したいと思ったこと。

これらの経験や心情によって会社を退職しました。
因みに前職では自動車部品の設計開発を行っており、職場環境も人間関係も割とクリーンだったと思います。当時の私は学生の延長線のような、大きな何かに守られているようなそんな安心感のある職場に嫌気がさしたのを覚えています。何とも理不尽ですが、当時はソローのある言葉を信じていました。


退屈するのはその中に野生がないからだ。

ヘンリー・D・ソロー

オーストラリアの農場で住み込みのアルバイトをしていた当時、広大なイチゴ畑の一角にプレハブ小屋があり、そこで30~40人が共同生活を送っていました。早朝5時、夜明け前の霧がかった畑に出るとカンガルーが農作物を食べており、あまりの大きさにビビったり。お昼からお酒を飲みながら覚えたての英語と、日本語が混ざった幻のような言語でひたすら話したり…
収入は歩合制で金銭的な豊かさには欠けましたが、毎日が新鮮だったような気がします。

あの時のような精神状態で、且つ自身が幸せなのを前提に、周りの人間にも幸せを分けていけるような生活をしたいと思っていました。

そして、退職後はすぐに地元には帰らず、1年間熱海のゲストハウスにいました。バブル崩壊後の衰退した熱海を復活させた市来さんの本を読んで、実際にお会いしてみたいと思ったからです。その時はまだ農業よりもコーヒーに関わる仕事に興味があったり、まちづくりに興味があったり、とにかく何を仕事にするか考えている時期でした。ヨーロッパでは大学卒業前にギャップイヤー制度がありますが、それをセルフでやっていたつもりです。

ゲストハウスでの住み込み生活の期間、毎日色んな面白い人間と会いました。

  • 若手の起業家

  • 日本一周中の人

  • 愛人と旅行中の人

  • 熱海の老舗企業の人

  • まちづくりをテーマに卒論研究をしているインターンの大学生

  • アート系のちょっとやばい人

  • 美人だけど発想がぶっ飛んでる人

  • 妖精みたいな人

  • ヴィーガンの人

熱海は特に銀座通りという海沿いのエリアが移住者と地元の人間とが官民連携をきっかけに入り乱れ、カオスさながら程よく調和し街を盛り上げていました。
そんな中でも私は上記に含むような、そこまでお金はないけど楽しく生きてるよ、という人々に会う機会が多く、じゃあ私もやりたいことをとりあえずやってみるかという気分になりました。

実際に地元にUターンしてみて、今は金銭的には満足できていませんが、何とかなるものです。
土地もノウハウも農機具も人脈もありませんでしたが、強く望みを持ちさえすれば周りが協力してくれて先輩農家さんに会う機会を下さったり、土地を紹介していただいたり何とかなるものです。ブラジルの巨匠パウロ・コエーリョのアルケミストという小説の一説もまた私を常に後押ししてくれています。

おまえが何かを望む時には、宇宙全体が協力して、それを実現するために助けてくれるのだよ

パウロ・コエーリョ


大抵のことは途中で辞めさえしなければ大なり小なり成功します。

農業はきつい・汚い・稼げないというイメージではないでしょうか。
大体その通りですが、前に書いた通りいろんな方に会った中で、このイメージを覆すようなスマートな農家さんにも出会ったことがあります。
表面的なこと(一般的に定着しているイメージも)は調べるとわかりますが、本質的なことは飛び込んでみないと分かりません。

横枕農園は開業2年目ですが以下のような目標をもって営農しています。

横枕農園の目標は生産者と消費者が食卓を囲み食事を共にする環境を作ること

横枕農園は、農業と食文化をつなぐ新しい取り組みを行っている農園です。横枕農園の目標は、生産者と消費者が食卓を囲み食事を共にする環境を作ることです。自作の肥料と綺麗な水を活かし、季節に応じた栄養満点の野菜をお届けします。

https://karatsu-f-f.com/yokomakura.html

農園に訪れた人がワクワクするような、農業楽しそうだな!と思っていただけるような仕組みを作ります。

そして数年後には地元の棚田(耕作放棄地)で、ヨーロッパの遺跡を活用したレストランのような、完全予約制のレストランをオープンさせます。
日が沈んだあと、棚田の石垣に沿って配置されたキャンドルの光を見下ろしながら、一流のシェフが横枕農園の野菜を使って料理を提供するような場所を作ります。また近所には酒蔵と日本百名滝の一つである見返りの滝があります。
棚田のレストラン→横枕農園→酒蔵→滝→etc
唐津に訪れた人の中でも、よりローカルな体験を求めている方に楽しんでいただけるようなサスティナブルツーリズムの計画も進行中です。

新しいものに飛びつかず、古いものに立ち返って地元の良いところを楽しみたいです。そしてそれを多くの方と共有できれば、農業やっていてよかったな!ときっと思えます。

農業は野菜を作って売るだけの仕事ではありません。以前は百姓というように、季節ごとに百の仕事をこなします。自然に触れながら、時にはビビりながらやりたいことを百個実現できるように頑張ります!






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