【SYNCROOMでアカペラを】第1回 SYNCROOMとは
【SYNCROOMでアカペラを】
第1回 SYNCROOMとは
第2回 導入編~機材や回線はどうしたらいいの?
第3回 設定編~一人でできるところまでやってみよう
第4回 実践編~実際にアカペラを歌ってみよう
コロナ禍にあって、アカペラや合唱の活動が長期間できない人も多いことでしょう。対面で活動するのは大変な時期ですので、皆さんリモートで何かをしたいと考えているのではないでしょうか。
ヤマハの開発したSYNCROOMは、遠隔地でアカペラを行う一つの方法です。PCとインターネットを使って、5人(やり方によっては10人)でお互いに音を聞きながら歌うことができるシステムです。ZOOMなどの会議システムと違って、遅延がほぼ0で合わせることができるので、アカペラも歌えちゃいます。しかも無料。私は2020年の春から使っていて、それ以来、家から出ないでアカペラを満喫しています。私の周囲の人もSYNCROOMを使ってアカペラ活動をしている人もいますが、まだ、「やり方がわからない」「どんな機材をそろえればよいのかわからない」という人も多くいるでしょう。これから、自分の体験をもとに、SYNCROOMを使ったアカペラのやり方を紹介してきます。
■まずは、SYNCROOMを使って歌ったアカペラ
バンド練習の音源です。5声のアカペラですが、5人が別々の場所でリアルタイムで合わせています。要するに「せーの」で歌っています。ガイドメロディーやガイドリズム、メトロノームは使っていません。
この音源は、リアルタイムで合わせたものを各パート別にマルチ録音し、ノイズ除去やリバーブなどのMIX処理をしたものですが、タイミングやピッチは一切修正していません。パートごとのレベルも途中では変化させていません。
いかがですか。
顔は見えませんが、声だけでリアルタイムに音楽を作っていくのは対面のアカペラ練習と同じ。それどころか、リモートのメリットもあります。
■SYNCROOMを使ってよかったこと
まず、SYNCROOMを使ってよかったことをお話ししましょう。
・リアルタイムでアカペラができる
ZOOMでは遅延があったり、複数の人を同時に聞くことが難しいなどの制約があり、皆で声を合わせて歌うのは現実的ではありませんでしたが、SYNCROOMはリアルタイムセッションの目的に作られたシステムですので、普通に歌えます。普通に、っていうのがとても大事ですね。
・マルチチャンネル録音が可能
DAWを使うと6人までのチャンネルを別トラックとして録音可能です。スタジオでマルチチャンネル録音するためにはMTRを自分で用意して持ち込んだりしなければならず結構面倒ですが、SYNCROOMを使うとPCだけでできてしまうので、ある意味お手軽です。
・「返し」を調整できる
スタジオで練習すると、モニタースピーカーの音を聞いて歌うことになります。レコーディングスタジオでもなければひとりひとり、他の人のバランスを調節してモニターすることはできませんが、SYNCROOMは簡単にできます。
・パート練習可能
うまくハモらないときにパートを少なくして練習することがあります。対面練習の場合、他の人は黙って聞いているだけですが、SYNCROOMはマイクをミュートしておけば他の人に聞こえないので歌い放題。こっそり練習できます。
・場所の制限がない。出かけずに済む
コロナ禍でなくても、メンバーが離れていて集まるが大変とか、夜なら時間取れるけど、帰る時間気にしなければならないとか、子供を練習に連れていけないとか、アカペラバンドで集まるハードルは意外に高かったりしますが、出かけないことで解決することも多くあります。
・スタジオ予約不要、スタジオ代もかからない
スタジオマイク練をやろうとすると、メンバーのスケジュールとともにスタジオ押えなければなりません。うまくいかないからあと30分やりたいと思っても次が埋まっていたらできない。しかも人数で割ってもそこそこお金かかる。SYNCROOMならタダです。
■SYNCROOMが対面練習にかなわないこと
もちろんSYNCROOMが対面練習にかなわないところもあります。
・機材、回線が必要
高速なインターネット回線、PC、オーディオインターフェイス、マイクなどが必要です。宅録をしている人はともかく、たまにスタジオでマイク練するという人にとって、機材をそろえるのは大変かもしれません。
・設定が必要
回線の設定、PCとオーディオインターフェイスの設定、SYNCROOMの設定。やり方がわかればそれほど難しくはないですが、初めてのことだと、どのつまみをどう回せばいいか、そこから考えなければならないので大変です。
・アイコンタクトができない
声だけでつながっているので、身振りや目でのコミュニケーションができません。もっとも、それができないから耳の感性が研ぎ澄まされるという利点もありますが。解決策としてはZOOMやLINEビデオ通話を併用してお互い顔が見ながらやることもできます。ただし映像はどうしても遅延が出てしまいます。
・遅延が0ではない
セッションができる程度に遅延は少ないですが、全く0ではないので、歌っているうちにだんだん遅くなってくることがあります。歌い方にコツが必要です。
・人数は5人までがベスト
SYNCROOMの「ルーム」には5人まで使えます。6人の以上のバンドでもルーム連結という機能を使えば利用可能ですが、人によってモニターや音量調節に制限があり、少し使いずらいかも知れません。
■この記事が目指すもの
SYNCROOMをつかってアカペラを始めようとすると、意外に情報が少ないことに気が付きます。
SYNCROOMのホームページには詳細なマニュアルがあるけど、具体的に何をどうやったらよいかの事例が少ないので、やってみてもこれでよいのかわからないし、遅延が多少あるといっても自分たちの環境が普通かわからない。うまくいかないときに何が悪いのかわからない。具体的に何を買えばよいのかわからない。
このシリーズでは、実際にSYNCROOMでアカペラを練習している経験を皆さんに伝えることで、少しでもSYNCROOMのハードルが低くなることを目指します。
最後にお伝えしたいことが一つあります。
「やはり対面でなければリアルのアンサンブルできない」
「ネット使っているのはしょうがないから?」
という考えもあります。確かに、SYNCROOMを使う前は、皆で集まれないから次善の策としてSYNCROOMを使うという気持ちもありました。でも、やってみるとSYNCROOMならではのいいところもたくさんあります。環境が用意できる人はぜひ一度体験してみていただければと思います。
次回の第2回は導入編として回線や機材についてご紹介しましょう。
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