![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/127944964/rectangle_large_type_2_8f25c6af9c84ca4904d53f0937f9e882.png?width=1200)
少しだけ辛い君へ。 第三の場所とゆるいつながり
教室の真ん中に、いつも空いている席があった。中学二年生になって、急に学校に来なくなった子がいるらしい。
教員になったばかりの私は、成績優秀でスポーツ万能というA君が、なぜ学校に来ないのか不思議だった。
彼は、3か月ほどで登校するようになった。しかし、教室に入ろうとない。別室で過ごしていたので、私も空き時間に会いに行き、英語を教えたりしていた。
半年ほどすると、なぜか教室に入れるようになっていた。何事もなかったように、教室で授業を受けている。
理由をきいてみると「親友とのケンカ」が原因であったらしい。教室に入れたのは、親友と仲直りしたからだった。
彼は、深く狭く友人をつくるタイプのようだった。休み時間はいつも、親友と一緒にいる。
「親友とのケンカ」は、世界が揺らぐほどの一大事だったのだ。
わかるな。私もそんな子どもだった。大好きな友だちができたら、その子だけでいい。遊ぶのも勉強するのも、他の友だちなんていらない。
だから、ケンカをしたり、第三者がはいってくるともう大変だ。私の大切な世界が壊れてしまう。心が引き裂かれる。
そんな子ども時代ではあったが、ここ最近の生活は、ぼんやり幸せだ。今までを振り返っても、これほどまでに平和だった経験はない。
フルタイムの会社勤務と、ライター仕事。家族との関係。趣味や「推し」があるわけでもない。
なぜ、平和で幸せでいられるのか?
私には、3つの場所がある。「家庭」「会社」「ライター」の3つの世界に属している。
3つの居場所があると、常に「どれかは、どれかよりマシ。」と言う状態が保たれる。
子育てに自信がなくなっても、ライティングで心が落ち着く。ライターの仕事が減っても、本業で頼りにされていたりする。
つまり、どれかひとつ、うまくいかなくても「私の人生、過半数はマシ」となるのだ。
しかも、レバレッジも効く。
例えば、ライターとして「傾聴(興味を持って聞くこと)」のトレーニングをする。すると、会社や家庭での会話が弾む。この気づきを、ライティングに生かせる。
アメリカの都市社会学者である、レイ・オルデンバーグが「サードプレイス(第三の場所)」を提唱しているらしい。
【サードプレイス(第三の場所)の効果】
自分らしさを体現でき、ストレスや精神的不安が軽減され、生活に潤いを与える
共通の関心を持つ仲間に囲まれ、心を通わせることで、疎外感や孤独感を覚えにくくなる
新しい価値観や人とのつながりを得ることができる
市民活動が活発になり、文化や心の豊かさが生まれる
・中立性のある場所
・すべての人に平等な場所
・会話が重視される場所
・アクセスしやすい場所
・常連のいる場所
・控えめだが安心感のある場所
・陽気な雰囲気のある場所
・第二の家となる場所
よく考えてみると、2つしか居場所がなかったときは、気持ちの落差が大きかった。
子どもの時は「学校」と「家庭」だけ。大人になったら「家庭」と「仕事」だったり、「家庭」と「ママコミュ二ティ」だったり。あの時は、楽しくもあったけど、辛さも同時にあった気がする。
三番目の場所を作るって、面倒だし、怖い。「今でも大変なのに、何かを始めるなんて無理」って思うかも。
でも「今、ちょっと辛いかも」って思う人は、世界を少しだけ広げてみて欲しい。
「広げる」って大したことじゃなくて。これくらいのことでいい。
趣味が同じ人に、SNSでコメントしてみる。
学校や会社で、あまり話さない人に話しかけてる。
コンビニを出るとき「ありがとう」って言ってみる。
ゆるーい、ゆるーい「つながり」が、君の世界を1ミリずつ拡張させる。視界が広がり、クリアになって少し楽になる。広がった先に、三番目の場所が待っていることだってある。
いきなり、超ハッピーにはなったりはしない。でも、昨日よりマシってくらいにはなれる。それが毎日続いて、あるとき「あぁ、幸せだな」って気づく。
今のわたしなら、あの時の君に何て声をかけるだろう。