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中東情勢緊迫化 世界のマネーフローを読む 河北博光氏 ラジオ日経10/2/2024

ファンドマネージャーの河北博光さんがマーケットプレス(2024/10/02/水 前場)にご出演され、世界のお金の流れについてお話されており、勉強になったのでシェアします。radikoでも1週間放送を聴くことができます。

中東情勢を巡る地政学リスクの上昇

岸田 中東情勢を巡る地政学リスクが昨日かなり高まりました。ここまではあまり市場には影響してこなかったんですが、昨日はヨーロッパアメリカでかなり意識されたようですね。

河北 そうですね。やっぱりさすがにここまでやられたい放題なってくると反撃も出てくるっていうことで、これはしっかりリスクが高まってきてるっていう風に捉えられると思います。

岸田 はい。イランが関わってくるというと、これはやはり原油にも影響してくるということですので、その意味でもマーケットへのインパクトがありますね。

河北 そうですね。昨日もそれをしっかり反映して動いてるっていう風に思います。

ただ、 株の下げほどは金利が低下しなかったっていうのは、物価の上昇が意識されてるんじゃないかなという風に思います。

アメリカの雇用統計

岸田 はい、おっしゃるように、昨日アメリカでは債券は買われたことは買われましたが、10年債、利回りは 0.05 ポイントの低下ということで取引を終えておりました。

昨日はアメリカで月初ということで、 ISM製造業景気指数、それから雇用動態調査(JOLTS)などの発表されておりました。

第 1 週というのは雇用関連の統計が集中するで、 8 月、 9 月はこのISM製造業景気指数が悪化し、雇用もあまり良くないということで、マーケットにマイナスのインパクトが大きかったんですが、昨日出た指標についてはどう見てらっしゃいますか?

河北 昨日はですね。ISM製造業景況指数は内訳の雇用が弱かったのかなという風に思いますけども、一方で求人件数なんかは市場予測よりも良かったということでまちまちだったんじゃないかと思います。

NIKEの決算

岸田 そしてNIKEが決算を発表いたしました。こちらがあまり良くないということでNIKEの株価、時間外取引で 5.9% の下落、少し大きめの下落となりました。9四半期ぶりの減収減益ということですけれども、あのどちらかというとこうした。ビジネスに携わっているところの悪材料というのは気になりますね。

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河北 そうですから、NIKEに関しては経営再建中っていうことなので、新CEOの人がどういう風に立て直すかということになります。

今回ですね。業績予想の取り下げですとか、投資家説明会の延期ということもあったので、そのようなこともあって、大きく下げてるんじゃないかなという風に思います。ただ、アメリカの小売全体というよりは、NIKEの個別要因っていう側面が強いんじゃないかなという風に見ています。

岸田 全体というよりも個別の企業の問題の面がかなり大きいということですね。

河北 そうですね。アメリカの小売に関しては結構業績はまちまちな状態になってるので、全体像を見るのは非常に難しい状況が続いてるという風に思います。

米利下げが新興国経済に与える影響

岸田 はい。さて、アメリカは利下げ局面に入ったわけですが、この 0.5% という FOMC で発表された利下げはどちらかというと予防的な効果があったという受け止め方がされているようですけれど、アメリカの景気、それほど減速しないで済む場合、この後アメリカの金利やドルはどう動くとご覧になりますか?

河北 そうですね。ソフトランディングが進むということを前提としますと、アメリカの金利は少し上昇傾向になってくるんじゃないかなという風に思ってます。

実際に10年債と2年債を比べて見ますと、10年債の方が上昇基調になってきていますので、そういうことが今折り込まれつつあるんじゃないかなという風に思います。株とかも基本的にプラスになってくるという風に思います。ドルに関しては少し売られていたわけですけども、これ以上売られてこない可能性も出てくるんじゃないかなという風に思ってます。

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岸田 はい。これ以上あまりドルが売られないということですが。河北さんのnoteで色々と今のマーケットの見方をお書きになってらっしゃるんですが、アメリカの利下げによる世界的なマネーフローの変化に注目していると書かれていらっしゃって、特にアメリカの利下げが新興国にどう影響が出るか、この辺りに関心があるということですね。

河北 そうですね。マーケットはそのアメリカの金利の低下幅ですとか、そのスピードに対する議論が多いんですけども、日本にとって見ると、それだけではなくて、新興国への影響ってのはかなり大きいんじゃないかなっていうふうに思います。

どういうことと言いますと東南アジアですね。新興国はこれまで、アメリカ金利が高かったので、なかなか金利を下げることができなかったんですね。景気が悪い中でも金利を下げられませんでした。

それがアメリカより利下げに転じたということで、彼らも金融を緩和する余地が出てきます。その結果、実際その年初から 6 月くらいまではMXSO の東南アジア指数なんかほぼ横ばいてきたわけですけども、7月以降、顕著に上昇基調になってまして、先進国の株価が調整する局面でもあんまり影響を受けず、ほぼ一貫して上昇してます。

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東南アジアの景気が良くなるということは日本や中国にとってメリットが大きいんじゃないかって考えています。

岸田 はい。これまでは利下げしたくてもできなかったような、新興国がアメリカが利下げしたことによって、今後は利下げすることができる、そしてアメリカだけでなく、新興国の方も景気がよく回復してくるということがこれ、やはり世界経済にも良くなるということですから、そういう意味での、マネフローの変化が考えられるということですね。

河北 はい、特にやはり東南アジアの景気が回復してくると、日本の消費企業や消費財企業なんかにとってメリットが大きいという風に考えます。

中国の強烈な株価対策

岸田 はい。そして、世界経済への影響というところで、中国についてもかなり関心が高まっていて、ここまでは中国かなり厳しい状況だと、特に不動産不況をから起きる様々な負のインパクトが大きいということで、株価もだいぶ下がっていたんですが、 9 月下旬に相次いで発表されました。

経済支援策、金融緩和それから株式市場の支援策これが矢継ぎ早と言っていい状況ですけれど。株価対策は結構効果があったようですね。

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河北 そうですね、この株価対策がかなり強烈だなっていう風に思っています。日本や先進国でこれをやろうとすると、かなり議論を呼ぶような政策じゃないかなっていう風に思います。これまでの中国の経済対策っていうのはま不動産市場ですとか、消費刺激策を通じて株式市場にポジティブな与えるっていうものだったわけですけども、今回とにかく株を上げるっていう施策になっています。

その1つはスワッププログラムと言いまして、ETFとかCSI300の構成銘柄を担保にして、株を買って入れてくださいっていうものと、自社株買いに対して低利融資をするっていうものですね。

あと、日本みたいですが、PR 1 倍割れの企業に対して対策プランを要求するという風なことやっています。そのスワッププログラムと自社株買い資金の提供っていうのは、 資金使途を株式購入に限定したものなので、レバレッジをかけてどんどん株式市場に資金を投入するっていうことを鮮明にしてるわけですね。非常に株価対策の色彩が強いという風に思ってます。

岸田 はい。スワッププログラムも5000億元(約10兆円)ということなのですが、債券とかETFですとか、こう言ったものを担保に株を購入する資金を提供するということなんですね。あのレバレッジもかけられるということですし、いまこの自社株買いのための資金に低利融資する資金も3000億元からということですけれど、自社株買い、これはやろうとする企業にとってはまかなり魅力的ということなんですね。

河北 そうですね。 6% の金利のところを 2.25% で貸すということなので、これであればその株主資本コストを考えてもどんどん借りて自社株買いするいうインセンティブがわくという風に思います。

岸田 はい、あと日本みたいだとおっしゃった。その PBR 1 倍の企業に対して改善プランのページを要求しているということなんですね。

河北 はい、そうですね。確かに。あの、日本と同じような感じですね。

河北 そうですね。日本の政策をコピーしたんじゃないかなという風に思いますけども、中国はPBR 1 倍割れだけではなく、株が継続して下がってる場合にも改善プログラムを出すということで、株が上がらなかったら改善プラン出さなきゃいけないっていうことですから、もっとすごい厳しいかもしれないんですね。

岸田 とにかく株を上げるというこの試作ですけれども、結構中国の投資家の方々は株式投資をされてる方が多いとされていますので、資産効果という意味で内需に巡って押し上げる効果が期待できると言えるんでしょうか?

河北 もう少しこれ様子見てみなきゃ分かりませんけど、そういう効果も期待できるという風に思っています。

岸田 中国では国建設の長いお休みが始まったのですけれども、やはり節約思考が強そうだというふうには言われていますよね?

河北 そうですね。消費のところはまだそれほど大きく回復してきてません。けども、そこを刺激したい部分があるという風に思います。

岸田 はい。少なくとも株価対策は効果があったという中国ですが、本当に景気が底入れできるかどうかっていうのは、もうちょっと時間がかか理、見極めに時間がかかるということですね。

河北 そうですね。不動産とかは構造的な問題があるので、そこの改善も一気にできるかっていうと外はなかなか難しいという風に思っています。

日本株のボラティリティがなぜ高いのか

岸田 はい、そして日本株相変わらず不安定な展開が続いています。アメリカ以上に変動率が大きい日も結構多いんですが。そもそもですね。日本株、なぜこんなにボラティリティが高いんでしょうか?

河北 これは難しいんですけども、マクロトレードが中心になっていまして、ボトムアップで売買をしている人が極端に少なくなっていることは原因なんじゃないかなという風に思います。

やっぱりここ数年ですね。ここ 5 年ですかね。日本のアクティブファンド達のパフォーマンスの不振が続いていますので、そういった意味でマネーの流出が続いているという風に思います。

なので、本来だったら買うべき人が買いませんし、銘柄の入れ替えも起こりにくいっていうことで、ヘッドラインニュースだけで動いてるという風な感じになってまして。一方通行の相場になり安い。市場の厚みがないっていう、そういうことを意味してると思います。

石破政権誕生の株式市場への影響

岸田 はい。そして石破総理が誕生したわけですが、まその警戒感も日本株を買いづらくしているという指摘があります。新しく誕生したこの石破政権に対する見方はいかがでしょうか?

河北 金融所得課税ですとか法人増税なんていう話もあるわけです。ですが、私はどれも短期間で実現するものではないと思っています。基本的には岸田政権の経済政策を引き継ぐだけと考えています。なので具体的にその石破首相の経済政策が不安ということではないと思うのですが。

初日の下げていうのは石破ショックって言われてますけど、むしろ高市ロスっていうかですね。高市氏に期待した時に株式が非常に強かったので、それがなくなったという風なことかなと思います。

しかし、政権基盤が脆弱ですし、衆議院選挙や来年の参議院選挙がありますので、日本の政治はどういう風に変わっていくのかっていう漠然とした不安はあるんじゃないかなという風に思っています。

岸田 はい。石破総理となったことで、日銀の政策への影響はどうご覧になりますか?

河北 日銀の政策に関しては日銀がかなりフリーハンド持っているようになったんじゃないかなという風に思っています。選挙が今月末まで終わるということで、その後の日銀政策決定会で利上げがテールリスクとしてはあるんじゃないかなという風に思ってました。けれども、昨日とか出てきてる日銀の議事要旨とかを見てますと、かなりハト派の内容になってるので、そういった心配は少ないのかもしれません。

岸田 あの、石破さんが勝ったということが伝わった直後、大きく円高になりました。

けれども考えてみると、これ円高になるということは、インフレ圧力は緩和されるということにはなりますよね。

河北 そうです。

日銀の利上げはあるか

岸田 ということはますます。日銀は利上げをする必要性は低下するということにもなりますね。

河北 そうなりますし、この日銀の議事要旨を見ていますと、このハト派の人たちの意見ってかなり、慎重と言いますか、ここまで慎重な意見だと、本当に利上げできないんじゃないかなと思うぐらい。慎重な意見も目立っていますね。

だからそこなんでちょっと、昨日発表されたこの議事要旨は主な意見のところはかなりハト派だなという風に思いました。

中東情勢の緊迫化、海外の富裕層の資産運用に変化はあるか

岸田 はい。河北さんは ご著書などで世界標準となっている資産運用、海外富裕層の資産運用というのは、インフレや地政学リスクから資産を守ることを目的しているということをおっしゃっていらっしゃいます。

今、その観点で考えると、どのような運用方法が考えられますでしょうか?

河北 著書『世界標準の資産の増やし方: 豊かに生きるための投資の大原則(東洋経済新報社)』の中でも書いているんですけども、基本方針に変化はないという風に思っています。

彼らの運用方針っていうのは、インフレや地政学リスクに備えた運用を行ってるわけですね。海外では期待リターンの見直し。期待リターンに見合った運用の定義というのが。 1990 年代ぐらいから明らかにインフレという物も入れるっていう風な形になってきています。

その結果、インカムゲイン中心の現金だとか債券中心の運用からエクイティを中心とするトータルリターンの運用に変わってきたわけです。さらにその資産も債券ですとか不動産中心からオルタナティブを含むような様々な資産に分散投資してるわけです。運用資産も高流動性のものから低流動性のものへという風な動きを進めてるので、この程度の動きでですね。ドラスティックに運用方針を変えるってことはないっていうことです。

さらにその地政学リスクに関してはスイスのプライベートバンクの運用のことを書いてますけども、欧州は徹底した国産分散投資をしてますので、彼らは儲かるためにお金を動かすというよりもすでに分散させていますので、大きな変化がないっていう風に思います。あるとすると、ボランティリティが変化してますので、リスクウェイトの調整ってことあるかもしれせん。


岸田 その辺り資産運用に対する考え方、日本と少し違うところがありますよね。そうですね。

河北 日本はやはりずっとデフレで来たので、そのインフレを考慮した運用の方針の変化に少し遅れたということはあるという風に思います。

岸田 河北さんのそうしたお考えですとか、日々のマーケットの見方などはnoteというツールの方で公開されていらっしゃいます。けれど、ご著者の方が 8 月に出されたご著書の方ではその辺り求めてお話があるということですね。

河北 本では基本が書かれていて、その実際のマーケットの動きに合わせて、補足する形で私のnoteでは出してるイメージです。

✅河北博光さんのnoteはこちらから


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花輪陽子(FP@シンガポール、経営者、著者)
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