見出し画像

世界標準の資産の増やし方: 豊かに生きるための投資の大原則(東洋経済新報社) はじめに抜粋

世界標準の資産の増やし方: 豊かに生きるための投資の大原則(東洋経済新報社)から、note限定ではじめにを抜粋します。


「インフレで日本円の価値が目減りしたらどうしよう」
「年金だけで老後まで豊かな生活が送れるのか不安」

 新 NISA が始まり、日経平均株価が史上最高値を超え、いよいよ「貯蓄か ら投資へ」の流れが加速しようとしています。しかし、そんな中でも、自分 は株式市場の上昇とは無縁で、老後や日々の生活が心配という声もよく聞き ます。また、このような上昇相場は異常で、いつか泡のように弾けてしまう のではないか、という不安を抱えている方も多いでしょう。 この本は、デフレからインフレへの大転換に向かっている日本で、将来の 生活力を維持し、豊かに生き抜くために世界標準の資産形成の方法をお伝え する本です。世界ではインフレ率を超える運用はスタンダードであり、日本 のように恵まれた社会保険制度がない国もたくさんあります。それでも、早期から資産形成をすることで老後生活に十分な財を成し、豊かに生活をして いる方が海外には多くいるのです。

 まず、私のファンドマネージャーとしての経験をお伝えさせてください。

 私は約 30 年、日本株ファンドマネージャーの仕事を追求してきました。 学生時代から現代ポートフォリオ理論を専攻し、新卒で日本生命保険相互会 社の運用部門に所属し、ニッセイ投資顧問株式会社(現ニッセイアセットマ ネジメント株式会社)に異動。当時、派遣されたボストンのパトナム・イン ベストメンツ(1937 年設立のグローバル資産運用会社)では、バラエティー に富んだアメリカ人の運用者たちと出会い、メンターであるスティーブン・デクスターからは多くのことを学びました。
 彼は確率に従って計算しつくした上で市場にアウトパフォームしやすい形 を作り、統計的に有意に勝てる回数投資判断を行うというスタイルで運用も していました。また、間違いを発見すると、柔軟にその形を修正することが できる人でした。リーマンショックの直前にアメリカの大手証券会社である ベアー・スターンズの問題が起きた時に、彼はリセッションを予測し、多くのポジションを現金化させ、運用ルールの範囲内で可能な限りディフェンシ ブなポートフォリオを作りました。 結果的に大暴落の時でも大きな超過収益を上げることができたのです。また、私は彼の手法を日本に輸入し、リーマンショックで傷ついていたファン ドを再生させ、その後 5 年間安定的に超過収益を得ることに成功しました。 多くの方が苦戦を強いられたリーマンショックでは、下げ相場でも上げ相場 でも、結果的に超過収益を得られた数少ないファンドの 1 つとなることもで きたのです。
 また、シンガポールでは、ゲイツ財団や AP2(スウェーデンの公的年金 運用ファンド)など世界的なアセットオーナーを顧客に持つ独立系運用会社 である APS アセットマネジメントで日本株の CIO(首席投資責任者)に就 き、2017 年にはマーサーのパフォーマンス調査において海外投資家による 日本株運用で世界 1 位となりました。集中投資で無駄な銘柄を一切入れない というスタイルで、私が当初選んだ 20 数銘柄の中に APS 時代の 3 年間にお ける東証の値上がり率ランキング上位銘柄が複数入っていたという幸運にも 恵まれました。情報過多の日本から離れることで、海外から日本マーケット を一歩離れて俯瞰することや、海外企業と会合をすることで、日本企業を別 の角度から見ることの重要性を改めて感じた期間でもありました。
 新型コロナウイルス感染症の影響で日本に戻ってからは、独立系のヘッジ ファンドのプラットフォームであるユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン株式会社で、自分自身でファンドを立ち上げました。ファンドを立ち上げ るには運用以外の仕事もあり、運用以外に割く労力が大きいと感じた時期も ありました。日本で、自分自身のファンドを立ち上げることに挑戦をする方 が少ないのは、このような理由もあるからでしょう。私は日本の大手運用会 社、外国の運用会社、自分のファンドと様々な環境での経験を積みました。 その間に、海外顧客との対話の中から培った世界標準の資産運用の考え方を、 日本に住んでいる皆さんにお伝えしたいと思います。 また、海外から戻って再認識した日本の良さとして、急速に日本企業が企 業価値の向上に積極的になっていることを挙げることができます。例えば、 コーポレートガバナンス、株主還元、アクティビストへの対応、経営者の世 代交代などです。私は日本企業の価値が上がるのはむしろこれからだと信じ ています。当然、企業価値が上がれば、適正な株価が付いている場合、株価 は上昇します。もちろん株式なので、短期・中期での下落はあるものの、年 率 8%の上昇ができたとすれば、2030 年代半ばに日経平均株価が 10 万円を 超えているということは十分にあり得る話なのです。したがって、日本企業 への投資は有効で、その恩恵は地の利もある日本人が是非享受して欲しいと 願っています。

「でも、私はあなたのように、投資のプロではないので、資産運用ができ るか不安だ」
「海外旅行に行かないから、外国のことは関係ない」
「仕事が忙しいから資産運用に取り組めない」
「株式市場が突然、大暴落したら怖い」

 そう思われる方もいるかもしれません。資産運用を始める上で、「なんだ か難しそうだし、面倒くさそう」というのはハードルになるでしょう。しか 投資本(DIC2587).indd 2-3 2024/07/03 15:23 4 はじめに 5 し、何もしないでお金の問題を放置していると、老後生活費が足りなくなる という問題に直面するリスクがあります。海外旅行に行かない方も、今、日 本で生活をしているだけで、ガソリンや輸入品の値上がりなどに苦しめられ た経験をしているはずです。しかし、資産運用をして、株高や不動産高の恩 恵をしっかりと受けている方は、物価の値上がり以上に保有資産が上昇し、よりよい暮らしを実際に送っているのです。 本書では私の運用哲学や思考法を学生や年金生活をされている方々にも分 かりやすく、楽に運用ができる方法に絞ってお伝えします。プロ投資家がや るような難しい手法は一切ありません。また、多くの方から相談を受ける 「いつか来るかもしれない大暴落」で大きな被害を受けないように、日頃か らの資産運用で気をつけるべきことについても言及しています。 私自身も仕事に忙殺され自分の資産運用を放置しがちです。そんなズボラ な方でも、新 NISA を使って、毎月自動的に積立、老後資金を形成する方法 なら、楽に継続させることができます。 皆さんには、早期から正しい資産運用とライフプランニングを身につけて、 時間を味方につけ、豊かになっていただきたいと思います。お金の心配がな くなれば、少なくとも人生の選択肢が広がり、その後の生活が楽になります。

 第 1 章では、日本で行われている資産運用が場当たり的で、個人のライフ プランやインフレに対応をした世界標準の資産運用といかにかけ離れている のかをお伝えします。シンガポール在住、FP(ファイナンシャルプラン ナー)の花輪陽子さんに事例を出していただき、花輪さんと一緒にこの章を まとめました。
 第 2 章と第 3 章では、世界標準の資産運用の思考法を 6 つのポイントから 解説します。海外ではインフレが運用の大前提になっています。日本では運 用は儲けるための「投機」と思われていますが、海外では資産を守るために必須な「投資」として捉えられています。資産を適切に管理するための投資 はそれほど複雑ではありません。誰でもできる資産管理と、私の思考法をま とめました。
 第 4 章では、新 NISA 時代の老後の資産形成のポイントをお伝えします。 新 NISA の年間投資枠に人気の投資信託をどんどん入れていく方法に潜むリ スクについても触れています。また、インフレを前提とした人生設計や キャッシュフローシミュレーションが日本ではほとんどないのですが、本書 ではインフレ前提で老後資産の守り方を解説しています。FP の花輪さんに 年代別の事例やライフプランを出していただき、この章を一緒にまとめまし た。

 本書を読み、少しでも「老後の不安が解消された」「資産運用での迷いが 小さくなった」「将来の目標や人生設計がより明確になった」と言っていた だけるのが何よりも嬉しいです。老後も明るく、幸福で豊かな人生を送り続 けるために、今すぐお金に向き合い、小さな行動を起こしましょう。


いいなと思ったら応援しよう!

花輪陽子(FP@シンガポール、経営者、著者)
いただいたサポートはクリエイターとしての活動費(書籍代や取材費など)等に使わせていただきます。!記事のオススメもいただけると嬉しいです♡