あの人に話を聞きたい!でもどうやって?
インタビューが記事のクオリティを決める
取材して物を書く、という時、取材にもいくつかのパターンがあります。
ネットで調べるのも取材です。公的な機関などが発表する生データを駆使して、深く分析するようなデータジャーナリズムも立派な取材です。この場合は、数字をどう料理するかという手腕が問われますね。
私の場合は、統計はもちろん大事にしますが、ネットの情報だけを材料にそのまま記事にした、ということは、新聞記者時代を含めてほとんどありません。ごく短い記事を書く場合でも、プレスリリースを出している人には必ず電話して追加取材した上で記事を書いていたし、とりわけデンマークに来てから書いているような一本4000字とか時に7000字だとかの長大な原稿の場合、その記事の構成の核となる部分で、複数の人にインタビューをしています。対面で会うのが難しい場合は、Zoomなりで話を聞いています。
ストーリーの核となるような登場人物や、その分野の専門家から話を聞き、インタビューに出てきた組織や会社にさらに話を聞きに行ったり、もしくは紹介してもらった人に会いに行ったり…と何人もの関係者に会い、いろんな角度から話を聞いてはじめて、「そういうことか!」と納得することが多いです。この「Aha!」というひらめきの瞬間が面白くて、取材をしているようなところがあります。
現場を訪ねて、人から話を聞き、写真を撮ってその場の雰囲気が伝えられると、記事の説得力も違いますよね。だから、記事の面白さは、誰からどんな話が聞けたか次第だと思っています。
というわけで、Business Insiderでの連載のような取材では、まずはテーマのリサーチをした上で、「この人にこういう角度で話を聞けたら理想だなあ」と思うような人の候補をリストアップして、インタビューを取り付けるのが、かなり重要な仕事となります。
さて、ここで問題が出てきます。日本で新聞記者として仕事をしていた時は、「読売です」と言えば、かなりの打率で取材をさせていただいていました。とても楽をさせていただいてたなあ、と思います。
ところがデンマークではまったくの無名のフリーランスな私。ふつうにメールなりで取材依頼を送ったとしても、お前は誰やねん、ということで、ガン無視されて終わりです。特に、労働時間が短く、就業時間の時間配分には厳しいデンマーク人。貴重な自分の仕事時間を割いて協力してあげよう、と思ってもらうには、よほどちゃんと説得しないと難しい。
さてどうするか?
自分が何者かを知ってもらう
まずは、取材の依頼文にくどくどと自分の自己紹介を書いても読んでもらえないので、自分が何者かを端的に知ってもらう必要があります。デンマークで仕事をする上でまず学んだのは、LinkedInのプロフィールは不可欠、ということです。ごくシンプルなものを含めて、年齢問わずほとんどの人が持っていて、”この人物が実在している”と証明するのと同じくらい大事なもの、という感覚です。
プロフィールはデンマーク語である必要はなく、英語で問題ないですが、日本語だと読めないし英語ができない人と思われるので、海外で取材をしようという人(で、大きなメディアの肩書きなどがない人)は、英語のLinkedInプロフィールをまず用意しましょう。
私の場合は、自分のウェブサイトも作りました。そこに、これまでの自分の仕事を簡単に紹介するページを作り、過去にお仕事をさせていただいた会社のロゴウォールも入れています。「この人はこれまでも、色々と仕事をしてきている人なんだな」と信頼してもらうためです。
私はSNSは苦手で、個人的なSNSのアカウントはほぼ更新してなかったんですが、フリーランスで仕事をする以上は必須と思い、ぼちぼちとやりはじめました。記事のお知らせなどを含めて、LinkedIn, Facebook, Instagram, Twitter(これは日本語)を使っていて、少しずつですが、更新するようにしています。本当は減らしたいんですけど、LinkedInは必須だし、TwitterとInstagramも必須だと言われるし、デンマーク人はいまだにFacebookを使っている人が多いから、Facebookにも他のプラットフォームと同じ内容のコピペとはいえ書くようにしています。要は「この人は実在する人で、最近はこういう仕事をやってるんだな」というのが少しでもわかることが大事、と思っています。
また、私は今年から、International Press Centreという、海外メディアの特派員などジャーナリストが集まるプレスセンターに、個人用のデスクをレンタルして仕事場として使わせてもらっているんですが、これがコペンハーゲンでもど真ん中の、すごくいい場所にあるんですよね。というわけでこの”地の利”も活用させていただき、メールで取材依頼をする時には、最後の署名のところに、自分の名前、肩書き、(とってもいい場所にある)IPCの名前と住所に加えて、自分のウェブサイトと、LinkedIn, Twitterへのリンクを同時に載せています。
これもすべては、インタビューを受けてもらう確率を上げるための工夫です。
相手が断りにくい依頼法
さて、ここまでは自分を知ってもらうための工夫でした。仕事の幅が増えてきて、自分のウェブサイトで紹介している仕事のラインナップとかLinkedInのポストが増えれば増えるほど、インタビュー依頼の打率も上がってきた感覚はありますが、それでも一番大事なのは、当たり前ですが依頼文の内容です。
メールの取材依頼では、この記事で何を伝えようとしているか、日本の人に伝えることの意味というのを、練りに練って、でも簡潔に説明します。長文だと「めんどくさい人」と思われて、読んでもらえない可能性があります。
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